15 / 112
第二章 Another Unrequited love
第六話 鶏と卵
しおりを挟む
会議室の扉が閉まり、いまだに口を開けている春人の横で中年二人が「助かったよ、アルバート」「いや構わない」と会話をしている。
そして資料の確認を済ませた村崎が「問題ないよ、さすがだ」と返却し、会議室を後にしようとした。
やっと我に返った春人がその背中に声をかける。
「すみませんでした!」
「どうした?」
「僕のせいで……」
資料の確認を忘れていなければ、今ここで田中と会う事もなかった。そして運送関係の自分では営業成績を上げられない事、色々な事が混ざり、春人は言葉に詰まってしまった。最近まで片想いで苦労をかけたのに、これでは更に恥と迷惑の上塗りだ。
恐る恐る顔を上げる春人。それを慰める様に微笑んだ村崎は
「大丈夫。気にするな」
と言って「出張だから」と急いで会議室を後にした。
残された二人。落ち込んでいた春人がアルバートに痛い視線を向ける。
「いくらなんでもあれはないよ。田中部長を褒めるにしてももっとマシなのなかったの?」
春人の好きな人を知っていながら、その人を見下げる様なアルバートの発言に、春人は呆れていた。自ずと声にも怒気が含まれる。
「僕の前で村崎部長を悪く言わないで。それともそれで評価を落とすつもりなの?」
怒り心頭の春人にはこれがとんでもなく己惚れている発言だとは気が付かなかった。
それどころかアルバートの謝罪の言葉を待ち続けた。しかし彼は意に反して真面目な表情のまま。
「まさか。私は田中部長を褒めた事など一度もないよ」
「褒めていたじゃん! 日本人上司の鑑だって!」
全く動じないアルバートが、左手を顎にやり右手で左肘を支る考えるようなポーズをしながら「それか」と呟いた。
「ああ言ったよ。日本人は曖昧な返事が多い。即決力のある上司が好まれるイギリスでは嫌われる。私から見ればああいうタイプの人間は優柔不断で見習いたくない部類の上司だ。だから彼を「日本人上司の鑑」と言ったのだよ。何を勘違いしていたのか、とても満足そうな顔をしていたね」
アルバートは、顎を撫でていた手で口元を覆いながら、その下で細く微笑む。
「じゃ、あれは……」
目を細めて春人を見ながら人差し指を天に向かって伸ばす。
「皮肉だ」
春人が己惚れと勘違いに気付き顔を真っ赤にする。せめてもの情けだとそれを見ないようにアルバートはごく自然に会議室の扉に視線を向けた。
「もちろん村崎部長も気が付いているよ。つい最近、その話をしたところだったから。彼はイギリスでもやっていける男だよ」
「は、はずかしい」
春人は誰も傷つけることなくあの場を終わらせたアルバートに頭が下がる。日本の丁寧な心遣いを学びに来た男は完璧だった。
今だけではない。アルバートは春人をいまだに「月嶋さん」と呼ぶ。春人は「アルバート」と砕けて呼んでいるのに「やはり指導員だから」とそれを貫き通していた。
そして貿易に関する知識も春人よりはるかに多い事は普段の話す内容や行動でもう分かっている。
それなのに彼は春人を「指導者」として引き立ててくれている。
(完璧だ)
あの時、気を揉んでいたのは春人だけだったのだ。
浅はかな考えをしてしまった自分に不快感が伴い絶望する。そして田中のあの言葉が蘇り、沈んだ心が自信をも底に引きずり込んでいく。
(僕は所詮運送関係の担当だ)
「インテリア事業部にはきちんと営業担当の方がいるから、そっちと交代してもらう?」
「どうして? 何か至らぬ点があっただろうか」
「アルバートじゃないよ。僕だと研修の役にてないと思って。何度も言うけど、僕は運送関係を担当しているから」
運送を軽んじているわけではない。だが、資料作成が多く、彼が望むような研修には至っていなかった。
気落ちする春人の肩にアルバートは大きな手を優しく乗せた。
そしてアルバートが身体を曲げて、目線が同じ位置になる。交差した視線は春人が初めてみる力強い目つきで、急にアルバートを上司と錯覚してしまう。
「運送は貿易の要だ」
アルバートの言葉が春人の胸を熱くする。
「運送が発展すれば貿易も発展する、勿論逆も然り。貿易と運送はまさに鶏と卵の様な関係に似ている。月嶋さんがいないとこの関係は成り立たないのだよ」
春人の考えを救ってくれる説得に、気持ちが一気に軽くなりため息が零れた。自分の仕事を認めてもらえ承認欲求が満たされていく。そしてそれを簡単にやってのけるアルバートに嫉妬を覚える。
「……」
——ずるい。
仕事もできる、顔もルックスもよし、そして何より誰かを救う優しさを兼ね備えている。
そんな完璧な男に好意を抱かれているとんでもない事実に身を焦がされる。
(この感覚知っている……)
仕事への自信と熱い想いが芽生え、その息吹に固まる春人にアルバートは眉間の皺を深くした。
「例えが悪かっただろうか?」
「え? 違う! そうじゃなくて……」
春人の中ではまだ底に抑えこんだ上司がチラついている。それでもその上から霞がかる桃色。
——ギュッ。
色づこうとする胸を押さえる。
そして……
「好き……かも……」
アルバートも固まるのが肩に置かれた手から洩れることなく体中に伝わる。
「え?」
嬉しそうに口角が上がりそうになるアルバートの顔を春人の小さな両手が覆う。しかしすぐ手首を掴まれ強制撤去された。その下からは満面の笑みが現れた。
「本当に?」
「あああ! 待って!」
「好きって言ったのかい?」
「言ってない! いや、言ったけど! かも、かもだから! 好きかも‼ 付き合うとかは、まだ無理!!」
頬を真っ赤にして荒げた呼吸を整えながら春人はアルバートを見る。優しい目をしていた。
「それでも嬉しいよ」
人差し指が春人の前髪をサラリと撫でる。
「もっと好きになって」
羞恥心で視線を落としながら首を小さく縦に振る春人。指が頬を掠め離れて行く。
それを寂しいと思いつつ、自分が独り占めしてもいいのかと疑問が浮かぶ。
「でも、どうして僕なのか分からなくて」
「月嶋さんは最高だよ」
「でも、背は小さいし、顔は良くないし、仕事もあんな感じだし、気も利かないし」
欠点を列挙しだしたらきりがない。一つ一つ上げるたびに気が重たくなる。
離れて行った熱が頬に戻ってくる。そして五本の熱が春人の顔を持ち上げる。
「そんな顔をしないでくれ。私は君の笑顔に惚れてしまったのだから」
「笑顔?」
「ああ」
——恋をする君の笑顔に、私は全てを持っていかれたのだ。
そして資料の確認を済ませた村崎が「問題ないよ、さすがだ」と返却し、会議室を後にしようとした。
やっと我に返った春人がその背中に声をかける。
「すみませんでした!」
「どうした?」
「僕のせいで……」
資料の確認を忘れていなければ、今ここで田中と会う事もなかった。そして運送関係の自分では営業成績を上げられない事、色々な事が混ざり、春人は言葉に詰まってしまった。最近まで片想いで苦労をかけたのに、これでは更に恥と迷惑の上塗りだ。
恐る恐る顔を上げる春人。それを慰める様に微笑んだ村崎は
「大丈夫。気にするな」
と言って「出張だから」と急いで会議室を後にした。
残された二人。落ち込んでいた春人がアルバートに痛い視線を向ける。
「いくらなんでもあれはないよ。田中部長を褒めるにしてももっとマシなのなかったの?」
春人の好きな人を知っていながら、その人を見下げる様なアルバートの発言に、春人は呆れていた。自ずと声にも怒気が含まれる。
「僕の前で村崎部長を悪く言わないで。それともそれで評価を落とすつもりなの?」
怒り心頭の春人にはこれがとんでもなく己惚れている発言だとは気が付かなかった。
それどころかアルバートの謝罪の言葉を待ち続けた。しかし彼は意に反して真面目な表情のまま。
「まさか。私は田中部長を褒めた事など一度もないよ」
「褒めていたじゃん! 日本人上司の鑑だって!」
全く動じないアルバートが、左手を顎にやり右手で左肘を支る考えるようなポーズをしながら「それか」と呟いた。
「ああ言ったよ。日本人は曖昧な返事が多い。即決力のある上司が好まれるイギリスでは嫌われる。私から見ればああいうタイプの人間は優柔不断で見習いたくない部類の上司だ。だから彼を「日本人上司の鑑」と言ったのだよ。何を勘違いしていたのか、とても満足そうな顔をしていたね」
アルバートは、顎を撫でていた手で口元を覆いながら、その下で細く微笑む。
「じゃ、あれは……」
目を細めて春人を見ながら人差し指を天に向かって伸ばす。
「皮肉だ」
春人が己惚れと勘違いに気付き顔を真っ赤にする。せめてもの情けだとそれを見ないようにアルバートはごく自然に会議室の扉に視線を向けた。
「もちろん村崎部長も気が付いているよ。つい最近、その話をしたところだったから。彼はイギリスでもやっていける男だよ」
「は、はずかしい」
春人は誰も傷つけることなくあの場を終わらせたアルバートに頭が下がる。日本の丁寧な心遣いを学びに来た男は完璧だった。
今だけではない。アルバートは春人をいまだに「月嶋さん」と呼ぶ。春人は「アルバート」と砕けて呼んでいるのに「やはり指導員だから」とそれを貫き通していた。
そして貿易に関する知識も春人よりはるかに多い事は普段の話す内容や行動でもう分かっている。
それなのに彼は春人を「指導者」として引き立ててくれている。
(完璧だ)
あの時、気を揉んでいたのは春人だけだったのだ。
浅はかな考えをしてしまった自分に不快感が伴い絶望する。そして田中のあの言葉が蘇り、沈んだ心が自信をも底に引きずり込んでいく。
(僕は所詮運送関係の担当だ)
「インテリア事業部にはきちんと営業担当の方がいるから、そっちと交代してもらう?」
「どうして? 何か至らぬ点があっただろうか」
「アルバートじゃないよ。僕だと研修の役にてないと思って。何度も言うけど、僕は運送関係を担当しているから」
運送を軽んじているわけではない。だが、資料作成が多く、彼が望むような研修には至っていなかった。
気落ちする春人の肩にアルバートは大きな手を優しく乗せた。
そしてアルバートが身体を曲げて、目線が同じ位置になる。交差した視線は春人が初めてみる力強い目つきで、急にアルバートを上司と錯覚してしまう。
「運送は貿易の要だ」
アルバートの言葉が春人の胸を熱くする。
「運送が発展すれば貿易も発展する、勿論逆も然り。貿易と運送はまさに鶏と卵の様な関係に似ている。月嶋さんがいないとこの関係は成り立たないのだよ」
春人の考えを救ってくれる説得に、気持ちが一気に軽くなりため息が零れた。自分の仕事を認めてもらえ承認欲求が満たされていく。そしてそれを簡単にやってのけるアルバートに嫉妬を覚える。
「……」
——ずるい。
仕事もできる、顔もルックスもよし、そして何より誰かを救う優しさを兼ね備えている。
そんな完璧な男に好意を抱かれているとんでもない事実に身を焦がされる。
(この感覚知っている……)
仕事への自信と熱い想いが芽生え、その息吹に固まる春人にアルバートは眉間の皺を深くした。
「例えが悪かっただろうか?」
「え? 違う! そうじゃなくて……」
春人の中ではまだ底に抑えこんだ上司がチラついている。それでもその上から霞がかる桃色。
——ギュッ。
色づこうとする胸を押さえる。
そして……
「好き……かも……」
アルバートも固まるのが肩に置かれた手から洩れることなく体中に伝わる。
「え?」
嬉しそうに口角が上がりそうになるアルバートの顔を春人の小さな両手が覆う。しかしすぐ手首を掴まれ強制撤去された。その下からは満面の笑みが現れた。
「本当に?」
「あああ! 待って!」
「好きって言ったのかい?」
「言ってない! いや、言ったけど! かも、かもだから! 好きかも‼ 付き合うとかは、まだ無理!!」
頬を真っ赤にして荒げた呼吸を整えながら春人はアルバートを見る。優しい目をしていた。
「それでも嬉しいよ」
人差し指が春人の前髪をサラリと撫でる。
「もっと好きになって」
羞恥心で視線を落としながら首を小さく縦に振る春人。指が頬を掠め離れて行く。
それを寂しいと思いつつ、自分が独り占めしてもいいのかと疑問が浮かぶ。
「でも、どうして僕なのか分からなくて」
「月嶋さんは最高だよ」
「でも、背は小さいし、顔は良くないし、仕事もあんな感じだし、気も利かないし」
欠点を列挙しだしたらきりがない。一つ一つ上げるたびに気が重たくなる。
離れて行った熱が頬に戻ってくる。そして五本の熱が春人の顔を持ち上げる。
「そんな顔をしないでくれ。私は君の笑顔に惚れてしまったのだから」
「笑顔?」
「ああ」
——恋をする君の笑顔に、私は全てを持っていかれたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる