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第四章 Virgin
第三話 開発される大晦日(※)
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年末で引っ切り無しに電話が鳴るオフィスの音を遮断するように春人はアルバートとミーティング室にいた。
今日は年内最後にして、研修生が門司支社で勤務をする最終日でもある。
先程まで、筆頭の赤澤やダグラス、陽気な先輩の松田にヴェネットを含む6人と最後の挨拶をしていた。椅子に座る春人はいつもより姿勢が良く、何かをかばっているようには見えない。しかし、実際は鈍い痛みが連日続いていた。それを感じさせぬまま、研修生の最終ミーティングは終わり、4人が退出した瞬間、春人は腰から力を抜いた。
「大丈夫かい?」
こめかみに指を当てながら尋ねる目の前のイギリス人は心配そうな声を出す。
それは春人の腰と下半身を襲っている鈍痛の原因を知っているから。
だが、それを悟られたいのか悟られたくないのか春人は相変わらず意味の分からない例えを繰り出す。
「鎖国は続く、どこまでも」
何百年も前の日本と何かを重ねる春人の目は憂いて遠くを見つめている。アルバートは愛用しているポケットサイズの辞書を捲った。
「何調べてるの?」
節が太く、長い指が辞書の上を滑っている。
「……ほう。つまりあと200年は抱かせて貰えないということか?」
鎖国を調べたと分かる発言に春人はムスッとした。
「流石は長寿大国だ。だが、私はそう長くは生きられない。大砲を撃ち込めば開国するそうだが?」
悪戯っぽく微笑む紳士が鎖国を終わらせる手段を口にするが、春人は猛反発した。
「大砲ならね! アルのはビッグ・ベンじゃん」
いじける春人が腰を擦る。
立ち上がったアルバートが横に座り直し、一緒に撫でた。
「からかいすぎたね、すまない。今日は止めておこう」
「……今日も行く」
と仕事の後、アルバートの家へ行くことを伝える。そして「も」と付けられている通り、クリスマスから毎日アルバートの家に通っていた。
「今日こそ……挿れるんだ」
と視線を落とす。
全く膨らんでいないアルバートの下半身。しかし、座ったことで波打つ衣服の皺がその下が膨らんでいるかのように錯覚させる。だが、所詮は錯覚で本物はこんなものではない。
外国人の性器の大きさを目の当たりしたあの日、奮闘も虚しく、その先端すら春人の秘部は侵入を許さなかった。
「今日こそは……」
と拳を握る春人は、今日で研修生と指導員の関係が終わる事にさほど悲しんでいなかった。
だが、アルバートにとってはどこか寂しく、彼の挑戦を止める振りをしながらも夜の逢瀬を心待ちにしていた。
見つめる横顔が急に我に返る。
「そういえばアルはお正月どうするの? イギリスに帰るの?」
「いや日本で過ごすつもりだ。春人は?」
「僕もこっちで過ごす。そろそろ炬燵ださなきゃ」
福岡の冬は北海道育ちの春人には過ごしやすい方だ。しかし、寒さを全く感じないわけではない。特に門司は海風が吹きつけ威力もある為、想像していた福岡の寒さを超えていた。念のため持ってきていた炬燵もようやく出番が回ってきたのだ。
冬のボーナスで炬燵布団をお洒落なのに新調しようと考えていた春人を、口を半開きにしたアルバートが見つめていた。
「どうしたの? 変な顔して?」
「……」
「アル?」
「春人!」
アルバートが春人の両手を勢いよく握る。それに圧倒され手を握られていなければ椅子ごと倒れるところだった。
「え?! 何?!」
少し呼吸を荒げたアルバートが春人を強く見つめ……
「一緒に年を越そう。勿論君の家で」
と、目じりを下げてお誘いをしてきた。二人きりの初めての年越しに春人の胸も躍ったが、
「炬燵と共に!」
と付け加えられ、頬を膨らませる。それにハッとなりフォローを入れるアルバートだったが、瞳が煌めいている。
その後、春人の家に今はあまりお目にかかれない「掘り炬燵」があると期待するアルバートが落ち込むのは、除夜の鐘が鳴るより早かった。
◇ ◇ ◇
12月31日、春人の1DKの部屋で大きな身体がしゃがみ込んでいた。
「とても暖かそうだ」
と、炬燵の中から目を逸らした声はとても残念そう。
「掘られていない」
「ここ賃貸だよ」
「だが日本なら掘り炬燵を想定した設計がされていると思っていたのだが」
「間違った認識だったみたいだね」
少し肩を落としたアルバートに春人はご満悦だ。
「僕より炬燵を選んだ罰だよ!」
軽やかに冷蔵庫へ向かい、ここへ来る前に買い込んだ食品をしまう。小さな一人暮らし用の冷蔵庫は大晦日と正月が一緒くたになっていてもう調味料のチューブが入る隙間もない。
そこへようやく立ち直ったアルバートがやってくる。
「食事の準備は私が」
「ダメ! 今日は日本の文化をプレゼントするんだから!」
自分の勝手な思い込みで期待外れの日本文化を食らったアルバートは、黙って春人に任せる事に決めた。
「て、言っても大したことはしないけどね」
年末年始の豪勢な料理は春人にはハードルが高く、ほとんどが惣菜だ。する事といえば年越しそばを準備するくらいで、思った以上に時間に余裕ができた。
「とりあえずお風呂に入る?」
「まだ明るいのだが」
「僕の家では、早めにお風呂を済ませて、あとは年越しのテレビを見るの! そして年越し蕎麦を食べる!」
人差し指を立てて月嶋家の年越しを説明する。
「初詣は?」
「それは寒いから行ったことなかったなあ……福岡なら行けるかな?」
ちゃっかり初詣という新しい計画を追加して、二人だけの年越しの過ごし方が出来上がっていく。
この日の為にアルバートが喜びそうな温泉気分を味わえる入浴剤入りのお風呂を用意した春人。楽しませてくれる彼にキスをして浴室へ消えたアルバートを見送り、春人はベッドへ向かった。
ベッド横の本棚は引き出し付きで、そこからプラスチックの容器を取り出す。その中では気泡が浮いた透明な液体がゆっくりと動いている。
使用済みの形跡があるローションを自身の着替えに忍ばせる。そしてさっぱりして戻ってきたアルバートの横を慎重に通り過ぎた。着替えは身体の前で抱きしめ、緊張でスリ足になっている。入浴剤に満足したアルバートはそんな春人に気が付いていない。
「ゆっくりしていてね」
とだけ残し、脱衣場の扉を後ろ手で閉めた。着替えの隙間には硬い容器。それを浴室に放り、服を急いで脱ぐ。
身体を丹念に洗い、湯船に浸かるが、極楽な溜息は出ず、代わりに重たいため息が水面を揺らした。意を決してザバっと上がり、ローションの容器を掴む。
「ッ?!」
温もった秘部にローションの冷たさがダイレクトに伝わる。それすら慣れない身体に鞭を打つように恋人よりか細い人差し指を差し込む。
こうやって春人が一人練習に勤しんでいる事を部屋に居るアルバートは知らない。
経験豊富な彼に追いつこうと必死に足掻き、恥ずかし気に買ったローションが割れ目から太腿を伝う。
「ふあ……」
思わず漏れる声も、一人でする時は我慢が効かずに口から零れ落ちる。だが、恋人がいることを思い出し慌てて唇を噛みしめた。
今日こそはアルバートの大きなあれを受け入れたいと二本目に挑戦する。軽い痛みを伴い目を瞑るが、勢い任せに三本目を挿入した。ゆっくりとバラバラに指を動かし入り口を解す。
「はっ……あ、んあ……」
苦しそうに息を吐き、最後にもう一度ローションを中に流し込む様に指を動かした。
そしてさすがにタイムアップを迎え、何事も無かったかのように部屋着に着替え、隠れる場所を失ったローションを背中に隠して部屋に戻った。
「おかえり」
時間を気にしていた春人とは違い、長風呂を気にも止めないアルバートは炬燵に入り読書を楽しんでいた。
「何読んでるの?」
アルバートが日本語を勉強する為に買った文庫本には日本語で表題が明記されている。しかし、ローションを背中から元の位置に戻すタイミングを伺っているだけの春人にはそれが何の本なのか全く興味はなかった。「スタンダールの『赤と黒』だよ」と丁寧に教えてくれたアルバートに「ふーん。派手な色の組み合わせだね。色の話?」と返事をする。
「いや、中世ヨーロッパの話だ。諸説あるが赤は軍人を表し、黒は聖職者を表している」
説明しながら視線を本に落としたアルバート。チャンスとばかりに騎士も驚く手さばきで春人はローションを引き出しに直し、何処かにいるであろう神に今の所業がばれていない事を祈った。
「炬燵はどう?」
と、身軽になった春人が対面に座る。足を入れると中には既にアルバートの足があって軽く触れる。
「暖かいよ」
「狭くてごめんね?」
「その分、人肌も感じられる」
と言いながらアルバートが春人と足を絡めた。
「ここだけじゃなくて、部屋も。アルの家に比べたら狭いかも。寝室ないし」
玄関を開ければ、一枚扉を隔ててキッチン、そして更に扉があり生活のほとんどが集約されている。テレビに炬燵テーブル、折り畳み式のベッドに本棚、アルバートの部屋に比べれば半分以下の面積だ。
「悪い事ばかりではない。ほら」
長い手が「春人にすぐ手が届く」という言葉と共に伸びてきて、紙の香りがする手が春人の頬に触れた。まだ火照りが収まらぬ春人が、アルバートの冷たい手にうっとりと目を細める。頬を一度擦りつけ掌から離れる。そして主の元へ四つんばいで近づき、初めての日と同じように足の上に跨った。
炬燵と身体の間にすっぽりと納まった春人が今度は額を肩に擦りつける。
優しく漆黒の頭を撫でつけるアルバートはその手を欲しい場所へは持っていかない。それに我慢が出来なくなり、勃ち始めたそれをアルバートの腹部に擦りつける。そして最後に強くひと撫でされ「用意していない。」と宥められる。
さすがに年の瀬にしかも人様の家に準備万端でお邪魔することに躊躇いがあったアルバートの荷物は最低限だった。今日はこのまま春人を抱きしめるだけで十分だと思っていたが、当の本人は今日もやる気満々だ。
「後ろは駄目だよ」
と、せめて前だけでもとようやく手を伸ばしたが、その手は弾かれた。
「後ろが良い。今日こそ挿れたい」
震える声はやけにしっかりしている。
「怪我をしてはいけないから、こっちはまた今度だ」
「大丈夫だってば! ……んあっ!」
何もしていないのに突如甘い声が漏れる。
「春人?」
「早く……中の……出ちゃう」
腰をくねらせる春人。その瞬間微かに卑猥な音がした。「早く。早くして」と腰を落とし塞ごうとする春人は必死に懇願し続ける。
「長風呂の理由はこれか。やられたよ」
「日本人がみんな長風呂だと思ったでしょ」
とまるで勝ち誇ったように言う声に余裕は感じない。限界までじらすのもありだと思ったが、積極的な春人に甘え、彼のズボンと下着を下ろした。
ふわりと漂う石鹸の香り。滑らかな臀部を撫でて割れ目に指を伝わせる。跳ねる身体を宥めようと腰に手を回し抱き寄せると心臓の音が興奮と緊張を伝えてくれる。その早鐘でアルバートも高まり、心臓の音で返事をする。
「アルもまだ緊張してるの?」
「君が突拍子もない事をしてくれるせいでね」
へへへと笑う春人が目をギュッと瞑る。それと同時に秘部も硬くなり、迷ったようにアルバートの指が離れて行く。しかし再び戻ってきて緊張をほぐす様に優しくマッサージした後、グッと力を込めてきた。
「……」
「痛い?」
「……大丈夫」
お風呂で慣らしたおかげでいつもよりすんなりと一本目の侵入を許した。それでも入り口を丹念にクニクニと解し、奥のローションが外へ出ようと下りてくる。次第に卑猥な音を響かせ始め、聴覚の興奮が始まりだした頃に二本目がやって来た。
今度は二本の指が、しなやかな足のように開脚を繰り返す。時たま何かを探す様に奥へと進んで来ようとするが、結局入り口で足踏みをしている。
だが一度細く息を吐いた後諦めたように「やはり我慢できそうにない」と声を放つ。
その発言に覚悟を決めた春人は
「今日こそ頑張るから」
とアルバートの後ろの引き出しでローションと並んでいる避妊具に手を伸ばした。しかし伸ばした手がピンと張る。
「ひうっ」
引き出しの取っ手にかけた指がプルプルと震える。
「待って! 抜いて!」
「我慢できない」と告げたアルバートは指を抜くことなく、逆に奥に侵入してきた。
あの迷いは消え、クネクネ波打つように蜜壺を押し広げてくる。
二本の指先が硬い何かを捉えて侵入を止める。そして小刻みに先端を動かし、春人の新しい性感帯を刺激する。
「ぁあッ!」
背中が仰け反り、腰から脳天にかけて神経を貫かれた様な衝撃が春人を襲う。
「んあ! やだ! そこっ……だめぇ!」
今まで声を我慢していた春人が甲高い声を発し、アルバートにしがみついた。蜜壺の中で動く指は硬いもの——前立腺を何度も刺激する動きを止めない。
「いやぁ、あっ気持ちい……なに、これ。ああっ‼」
経験した事のない快楽に、天を仰ぐ春人。絶妙な力加減でされれば「っ‼」と声にならない声が出て、力の抜けた頭がぐったりとアルバートの肩にもたれかかる。
「んんん」
「また我慢する。こっちを、向いて」
肩に押し付け喘ぎ声を我慢する春人の顎を奪うアルバート。
持ち上げた表情は恍惚な表情を浮かべ、口は真一文字に結ばれている。
「日本人は声を我慢する癖でもあるのかい?」
と、どうしても喘がせたいアルバートは顎を捕らえている親指を春人の咥内に捻じ込んだ。どうしても喘ぎたくない春人は顔を背けようとするが顎は固定されていて、仕方なく捻じ込まれた指をペロリと舐めた。喘がせるつもりが、春人の可愛い行動を見せつけられ、アルバートの下腹部が熱くなる。
「ああ堪らないよ、春人」
まだ前立腺は早いかと迷っていたアルバートなどお構いなしにどんどん煽ってくる春人。これが無意識なのだから余計に恐ろしいと、アルバートは興奮も含めて背筋がゾクリとした。
「もっと見せて。もっと喘いで。気持ちよくなっている君を見せてくれ。私はその姿が一番興奮するのだ」
と、獲物を狙うような鋭い眼光が春人を見下ろす。どうにか収めようと細く息を吐くが、アルバートの下半身も我慢の限界を迎えていた。
「ア、アル……」
指を咥えたまま春人が必死に喋る。最後まで言わずとも熱い雄を欲しているのは濡れた瞳がありありと伝えている。
さっきは届かなかった避妊具に手を伸ばす春人に釣られ後ろを振り向いたアルバートがローションにも気が付く。
クチュッと唾液を絡ませながら口から離れて行った手がそのキャップを片手で簡単に開けてしまう。
そして直接ではなく割れ目からローションを垂らし伝うそれを拭い、熱いそこを解し直す。
「欲しいかい?」
「……うん」
ローションを床に置き、その間も春人から視線を離さず、手探りでベルトを外していく。流れるような動作に春人はうっとりしながらも、その意識は確実に最大の敵にして、今一番欲している物に向けられていた。
顕なったアルバートの下半身は相変わらず春人の倍はある。それをみとめると、いつも通り春人の身体が硬直し、その背中を撫でてから口で避妊具を開封し被せていく。
ゆっくりと腰を上げる春人に合わせ、卑猥な音と共に指が抜かれる。
そして反り勃つそこに腰を下ろしていく。
——グチュ
と音を鳴らし秘部と先端が何度目かの接吻をする。そして太いそれが春人の中へ入りたいと力を込めた。
「っ‼」
「力を抜いて」
「分かってる。んっ……くっ……」
息を止めて腰を深く沈めようとするが、割れ目からもはみ出る性器に阻まれる。
もうこれ以上の失敗は嫌だとグチャグチャに混乱する春人は自身の性器に手を伸ばし扱き始めた。そしてその快楽で痛みを隠し一気に中に誘い込む。
──キリッ
「いたっ!」
と零してしまい慌てて口を噤んだが、先端を蜜壺に締め付けられたアルバートは苦しそうに「くっ」と言いながら春人を抱きしめた。
「はあ、はあ、ちょっとだけ入ったね」
少しだけだが大きな進歩だ。肩で息をしながら春人は唇を突き出す。そこに吸い付いたアルバートが「大丈夫かい?」と心配しながらも感嘆のため息を漏らす。
「熱くて溶けてしまいそうだ」
もっと喜んでほしくて春人は更に奥へと性器を沈めて行く。押し広げられる激痛は自慰では分散できない。だが、アルバートの為に春人は最後の力を振り絞った。
——ズブ、ズブブ、ズプン
「ふあー」
全てが入りきった幸福で情けない声がでて、肉壁が中で脈打つ雄を締め付ける。
今度は腰を上げようとするが、春人の太ももは震えていた。無理な体勢と激痛に身体が悲鳴を上げているのだ。
「い、痛い。無理無理無理無理無理無理無理無理」
騎乗位などまだハードルが高かったかと落ち込む春人の性器をアルバートが包み込む。そして「動かないで」と言いながら上下に扱いてくれる。
結局、今日も春人だけが快楽に落ち、欲を吐き出すことになる。どうにかして食い止めたい所存だが、ぐったりとしている春人にはもう抵抗する力は残っていない。時折、蜜壺の中で膨れる性器に身体を跳ねさせながら、アルバートから施される愛撫に全てを預けてしまった。
「……あっ!」
ブルッと震えた春人がアルバートの手の中で果てる。そしてその声に反応する雄を諌めながら、アルバートはゆっくりと蜜壺からそれを抜き、キスをした。
横の折り畳みベッドの上に春人を寝かせ、用意したホットタオルで優しく春人の身体を拭いていく。衣服も身にまとい、性欲など感じさせない男の首に春人は抱きつきベッドへ引き込んだ。
「ごめん」
「どうして?」
「またアルだけいけてない」
それどころか新たな場所まで開発されてしまった。一方的に与えられる快楽に春人の重たい脳が更に重たくなる。
「最後まですることはさほど重要ではない。私は十分楽しんだよ」
「本当に?」
「ああ。気持ちよさそうな顔に下腹部は疼き、君の行動一つ一つに何度理性が切れたか」
「それって僕がエロいみたいじゃん!」
「間違っていないだろ? できればもう少し君の気持ちよさそうな声に浸っていたかったがね」
「もっと喘いでほしいって事?」
春人が事前に予習した動画も外国人の喘ぎ声は我慢を知らなかった。逆に日本人は口を押さえ、ベッドのスプリングだけが音声の大半を占めていた。信じていなかったが、喘ぎの文化は動画の通りで間違っていないのかもしれない。
「それもあるが」
綺麗にした春人の臀部をアルバートが撫でる。そしてツンツンと突いた。
「せっかくだからもっとしてあげたかった」
前立腺が与える快楽を思い出した身体が強張る。そしてゆっくりと足を開いた。
性に目覚めた春人は快楽に抗うことが出来ない。
「年が明ける前までね」
と照れ隠しをした春人。
二度目の射精を迎えた頃には除夜の鐘は鳴り終わり、瞼が意識を攫う間際に聞こえたのは流暢な新年を祝う英語だった。
「A happy new year.」
今年最初のキスを落としアルバートもベッドで春人と夢の世界へ落ちて行った。
今日は年内最後にして、研修生が門司支社で勤務をする最終日でもある。
先程まで、筆頭の赤澤やダグラス、陽気な先輩の松田にヴェネットを含む6人と最後の挨拶をしていた。椅子に座る春人はいつもより姿勢が良く、何かをかばっているようには見えない。しかし、実際は鈍い痛みが連日続いていた。それを感じさせぬまま、研修生の最終ミーティングは終わり、4人が退出した瞬間、春人は腰から力を抜いた。
「大丈夫かい?」
こめかみに指を当てながら尋ねる目の前のイギリス人は心配そうな声を出す。
それは春人の腰と下半身を襲っている鈍痛の原因を知っているから。
だが、それを悟られたいのか悟られたくないのか春人は相変わらず意味の分からない例えを繰り出す。
「鎖国は続く、どこまでも」
何百年も前の日本と何かを重ねる春人の目は憂いて遠くを見つめている。アルバートは愛用しているポケットサイズの辞書を捲った。
「何調べてるの?」
節が太く、長い指が辞書の上を滑っている。
「……ほう。つまりあと200年は抱かせて貰えないということか?」
鎖国を調べたと分かる発言に春人はムスッとした。
「流石は長寿大国だ。だが、私はそう長くは生きられない。大砲を撃ち込めば開国するそうだが?」
悪戯っぽく微笑む紳士が鎖国を終わらせる手段を口にするが、春人は猛反発した。
「大砲ならね! アルのはビッグ・ベンじゃん」
いじける春人が腰を擦る。
立ち上がったアルバートが横に座り直し、一緒に撫でた。
「からかいすぎたね、すまない。今日は止めておこう」
「……今日も行く」
と仕事の後、アルバートの家へ行くことを伝える。そして「も」と付けられている通り、クリスマスから毎日アルバートの家に通っていた。
「今日こそ……挿れるんだ」
と視線を落とす。
全く膨らんでいないアルバートの下半身。しかし、座ったことで波打つ衣服の皺がその下が膨らんでいるかのように錯覚させる。だが、所詮は錯覚で本物はこんなものではない。
外国人の性器の大きさを目の当たりしたあの日、奮闘も虚しく、その先端すら春人の秘部は侵入を許さなかった。
「今日こそは……」
と拳を握る春人は、今日で研修生と指導員の関係が終わる事にさほど悲しんでいなかった。
だが、アルバートにとってはどこか寂しく、彼の挑戦を止める振りをしながらも夜の逢瀬を心待ちにしていた。
見つめる横顔が急に我に返る。
「そういえばアルはお正月どうするの? イギリスに帰るの?」
「いや日本で過ごすつもりだ。春人は?」
「僕もこっちで過ごす。そろそろ炬燵ださなきゃ」
福岡の冬は北海道育ちの春人には過ごしやすい方だ。しかし、寒さを全く感じないわけではない。特に門司は海風が吹きつけ威力もある為、想像していた福岡の寒さを超えていた。念のため持ってきていた炬燵もようやく出番が回ってきたのだ。
冬のボーナスで炬燵布団をお洒落なのに新調しようと考えていた春人を、口を半開きにしたアルバートが見つめていた。
「どうしたの? 変な顔して?」
「……」
「アル?」
「春人!」
アルバートが春人の両手を勢いよく握る。それに圧倒され手を握られていなければ椅子ごと倒れるところだった。
「え?! 何?!」
少し呼吸を荒げたアルバートが春人を強く見つめ……
「一緒に年を越そう。勿論君の家で」
と、目じりを下げてお誘いをしてきた。二人きりの初めての年越しに春人の胸も躍ったが、
「炬燵と共に!」
と付け加えられ、頬を膨らませる。それにハッとなりフォローを入れるアルバートだったが、瞳が煌めいている。
その後、春人の家に今はあまりお目にかかれない「掘り炬燵」があると期待するアルバートが落ち込むのは、除夜の鐘が鳴るより早かった。
◇ ◇ ◇
12月31日、春人の1DKの部屋で大きな身体がしゃがみ込んでいた。
「とても暖かそうだ」
と、炬燵の中から目を逸らした声はとても残念そう。
「掘られていない」
「ここ賃貸だよ」
「だが日本なら掘り炬燵を想定した設計がされていると思っていたのだが」
「間違った認識だったみたいだね」
少し肩を落としたアルバートに春人はご満悦だ。
「僕より炬燵を選んだ罰だよ!」
軽やかに冷蔵庫へ向かい、ここへ来る前に買い込んだ食品をしまう。小さな一人暮らし用の冷蔵庫は大晦日と正月が一緒くたになっていてもう調味料のチューブが入る隙間もない。
そこへようやく立ち直ったアルバートがやってくる。
「食事の準備は私が」
「ダメ! 今日は日本の文化をプレゼントするんだから!」
自分の勝手な思い込みで期待外れの日本文化を食らったアルバートは、黙って春人に任せる事に決めた。
「て、言っても大したことはしないけどね」
年末年始の豪勢な料理は春人にはハードルが高く、ほとんどが惣菜だ。する事といえば年越しそばを準備するくらいで、思った以上に時間に余裕ができた。
「とりあえずお風呂に入る?」
「まだ明るいのだが」
「僕の家では、早めにお風呂を済ませて、あとは年越しのテレビを見るの! そして年越し蕎麦を食べる!」
人差し指を立てて月嶋家の年越しを説明する。
「初詣は?」
「それは寒いから行ったことなかったなあ……福岡なら行けるかな?」
ちゃっかり初詣という新しい計画を追加して、二人だけの年越しの過ごし方が出来上がっていく。
この日の為にアルバートが喜びそうな温泉気分を味わえる入浴剤入りのお風呂を用意した春人。楽しませてくれる彼にキスをして浴室へ消えたアルバートを見送り、春人はベッドへ向かった。
ベッド横の本棚は引き出し付きで、そこからプラスチックの容器を取り出す。その中では気泡が浮いた透明な液体がゆっくりと動いている。
使用済みの形跡があるローションを自身の着替えに忍ばせる。そしてさっぱりして戻ってきたアルバートの横を慎重に通り過ぎた。着替えは身体の前で抱きしめ、緊張でスリ足になっている。入浴剤に満足したアルバートはそんな春人に気が付いていない。
「ゆっくりしていてね」
とだけ残し、脱衣場の扉を後ろ手で閉めた。着替えの隙間には硬い容器。それを浴室に放り、服を急いで脱ぐ。
身体を丹念に洗い、湯船に浸かるが、極楽な溜息は出ず、代わりに重たいため息が水面を揺らした。意を決してザバっと上がり、ローションの容器を掴む。
「ッ?!」
温もった秘部にローションの冷たさがダイレクトに伝わる。それすら慣れない身体に鞭を打つように恋人よりか細い人差し指を差し込む。
こうやって春人が一人練習に勤しんでいる事を部屋に居るアルバートは知らない。
経験豊富な彼に追いつこうと必死に足掻き、恥ずかし気に買ったローションが割れ目から太腿を伝う。
「ふあ……」
思わず漏れる声も、一人でする時は我慢が効かずに口から零れ落ちる。だが、恋人がいることを思い出し慌てて唇を噛みしめた。
今日こそはアルバートの大きなあれを受け入れたいと二本目に挑戦する。軽い痛みを伴い目を瞑るが、勢い任せに三本目を挿入した。ゆっくりとバラバラに指を動かし入り口を解す。
「はっ……あ、んあ……」
苦しそうに息を吐き、最後にもう一度ローションを中に流し込む様に指を動かした。
そしてさすがにタイムアップを迎え、何事も無かったかのように部屋着に着替え、隠れる場所を失ったローションを背中に隠して部屋に戻った。
「おかえり」
時間を気にしていた春人とは違い、長風呂を気にも止めないアルバートは炬燵に入り読書を楽しんでいた。
「何読んでるの?」
アルバートが日本語を勉強する為に買った文庫本には日本語で表題が明記されている。しかし、ローションを背中から元の位置に戻すタイミングを伺っているだけの春人にはそれが何の本なのか全く興味はなかった。「スタンダールの『赤と黒』だよ」と丁寧に教えてくれたアルバートに「ふーん。派手な色の組み合わせだね。色の話?」と返事をする。
「いや、中世ヨーロッパの話だ。諸説あるが赤は軍人を表し、黒は聖職者を表している」
説明しながら視線を本に落としたアルバート。チャンスとばかりに騎士も驚く手さばきで春人はローションを引き出しに直し、何処かにいるであろう神に今の所業がばれていない事を祈った。
「炬燵はどう?」
と、身軽になった春人が対面に座る。足を入れると中には既にアルバートの足があって軽く触れる。
「暖かいよ」
「狭くてごめんね?」
「その分、人肌も感じられる」
と言いながらアルバートが春人と足を絡めた。
「ここだけじゃなくて、部屋も。アルの家に比べたら狭いかも。寝室ないし」
玄関を開ければ、一枚扉を隔ててキッチン、そして更に扉があり生活のほとんどが集約されている。テレビに炬燵テーブル、折り畳み式のベッドに本棚、アルバートの部屋に比べれば半分以下の面積だ。
「悪い事ばかりではない。ほら」
長い手が「春人にすぐ手が届く」という言葉と共に伸びてきて、紙の香りがする手が春人の頬に触れた。まだ火照りが収まらぬ春人が、アルバートの冷たい手にうっとりと目を細める。頬を一度擦りつけ掌から離れる。そして主の元へ四つんばいで近づき、初めての日と同じように足の上に跨った。
炬燵と身体の間にすっぽりと納まった春人が今度は額を肩に擦りつける。
優しく漆黒の頭を撫でつけるアルバートはその手を欲しい場所へは持っていかない。それに我慢が出来なくなり、勃ち始めたそれをアルバートの腹部に擦りつける。そして最後に強くひと撫でされ「用意していない。」と宥められる。
さすがに年の瀬にしかも人様の家に準備万端でお邪魔することに躊躇いがあったアルバートの荷物は最低限だった。今日はこのまま春人を抱きしめるだけで十分だと思っていたが、当の本人は今日もやる気満々だ。
「後ろは駄目だよ」
と、せめて前だけでもとようやく手を伸ばしたが、その手は弾かれた。
「後ろが良い。今日こそ挿れたい」
震える声はやけにしっかりしている。
「怪我をしてはいけないから、こっちはまた今度だ」
「大丈夫だってば! ……んあっ!」
何もしていないのに突如甘い声が漏れる。
「春人?」
「早く……中の……出ちゃう」
腰をくねらせる春人。その瞬間微かに卑猥な音がした。「早く。早くして」と腰を落とし塞ごうとする春人は必死に懇願し続ける。
「長風呂の理由はこれか。やられたよ」
「日本人がみんな長風呂だと思ったでしょ」
とまるで勝ち誇ったように言う声に余裕は感じない。限界までじらすのもありだと思ったが、積極的な春人に甘え、彼のズボンと下着を下ろした。
ふわりと漂う石鹸の香り。滑らかな臀部を撫でて割れ目に指を伝わせる。跳ねる身体を宥めようと腰に手を回し抱き寄せると心臓の音が興奮と緊張を伝えてくれる。その早鐘でアルバートも高まり、心臓の音で返事をする。
「アルもまだ緊張してるの?」
「君が突拍子もない事をしてくれるせいでね」
へへへと笑う春人が目をギュッと瞑る。それと同時に秘部も硬くなり、迷ったようにアルバートの指が離れて行く。しかし再び戻ってきて緊張をほぐす様に優しくマッサージした後、グッと力を込めてきた。
「……」
「痛い?」
「……大丈夫」
お風呂で慣らしたおかげでいつもよりすんなりと一本目の侵入を許した。それでも入り口を丹念にクニクニと解し、奥のローションが外へ出ようと下りてくる。次第に卑猥な音を響かせ始め、聴覚の興奮が始まりだした頃に二本目がやって来た。
今度は二本の指が、しなやかな足のように開脚を繰り返す。時たま何かを探す様に奥へと進んで来ようとするが、結局入り口で足踏みをしている。
だが一度細く息を吐いた後諦めたように「やはり我慢できそうにない」と声を放つ。
その発言に覚悟を決めた春人は
「今日こそ頑張るから」
とアルバートの後ろの引き出しでローションと並んでいる避妊具に手を伸ばした。しかし伸ばした手がピンと張る。
「ひうっ」
引き出しの取っ手にかけた指がプルプルと震える。
「待って! 抜いて!」
「我慢できない」と告げたアルバートは指を抜くことなく、逆に奥に侵入してきた。
あの迷いは消え、クネクネ波打つように蜜壺を押し広げてくる。
二本の指先が硬い何かを捉えて侵入を止める。そして小刻みに先端を動かし、春人の新しい性感帯を刺激する。
「ぁあッ!」
背中が仰け反り、腰から脳天にかけて神経を貫かれた様な衝撃が春人を襲う。
「んあ! やだ! そこっ……だめぇ!」
今まで声を我慢していた春人が甲高い声を発し、アルバートにしがみついた。蜜壺の中で動く指は硬いもの——前立腺を何度も刺激する動きを止めない。
「いやぁ、あっ気持ちい……なに、これ。ああっ‼」
経験した事のない快楽に、天を仰ぐ春人。絶妙な力加減でされれば「っ‼」と声にならない声が出て、力の抜けた頭がぐったりとアルバートの肩にもたれかかる。
「んんん」
「また我慢する。こっちを、向いて」
肩に押し付け喘ぎ声を我慢する春人の顎を奪うアルバート。
持ち上げた表情は恍惚な表情を浮かべ、口は真一文字に結ばれている。
「日本人は声を我慢する癖でもあるのかい?」
と、どうしても喘がせたいアルバートは顎を捕らえている親指を春人の咥内に捻じ込んだ。どうしても喘ぎたくない春人は顔を背けようとするが顎は固定されていて、仕方なく捻じ込まれた指をペロリと舐めた。喘がせるつもりが、春人の可愛い行動を見せつけられ、アルバートの下腹部が熱くなる。
「ああ堪らないよ、春人」
まだ前立腺は早いかと迷っていたアルバートなどお構いなしにどんどん煽ってくる春人。これが無意識なのだから余計に恐ろしいと、アルバートは興奮も含めて背筋がゾクリとした。
「もっと見せて。もっと喘いで。気持ちよくなっている君を見せてくれ。私はその姿が一番興奮するのだ」
と、獲物を狙うような鋭い眼光が春人を見下ろす。どうにか収めようと細く息を吐くが、アルバートの下半身も我慢の限界を迎えていた。
「ア、アル……」
指を咥えたまま春人が必死に喋る。最後まで言わずとも熱い雄を欲しているのは濡れた瞳がありありと伝えている。
さっきは届かなかった避妊具に手を伸ばす春人に釣られ後ろを振り向いたアルバートがローションにも気が付く。
クチュッと唾液を絡ませながら口から離れて行った手がそのキャップを片手で簡単に開けてしまう。
そして直接ではなく割れ目からローションを垂らし伝うそれを拭い、熱いそこを解し直す。
「欲しいかい?」
「……うん」
ローションを床に置き、その間も春人から視線を離さず、手探りでベルトを外していく。流れるような動作に春人はうっとりしながらも、その意識は確実に最大の敵にして、今一番欲している物に向けられていた。
顕なったアルバートの下半身は相変わらず春人の倍はある。それをみとめると、いつも通り春人の身体が硬直し、その背中を撫でてから口で避妊具を開封し被せていく。
ゆっくりと腰を上げる春人に合わせ、卑猥な音と共に指が抜かれる。
そして反り勃つそこに腰を下ろしていく。
——グチュ
と音を鳴らし秘部と先端が何度目かの接吻をする。そして太いそれが春人の中へ入りたいと力を込めた。
「っ‼」
「力を抜いて」
「分かってる。んっ……くっ……」
息を止めて腰を深く沈めようとするが、割れ目からもはみ出る性器に阻まれる。
もうこれ以上の失敗は嫌だとグチャグチャに混乱する春人は自身の性器に手を伸ばし扱き始めた。そしてその快楽で痛みを隠し一気に中に誘い込む。
──キリッ
「いたっ!」
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「はあ、はあ、ちょっとだけ入ったね」
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「熱くて溶けてしまいそうだ」
もっと喜んでほしくて春人は更に奥へと性器を沈めて行く。押し広げられる激痛は自慰では分散できない。だが、アルバートの為に春人は最後の力を振り絞った。
——ズブ、ズブブ、ズプン
「ふあー」
全てが入りきった幸福で情けない声がでて、肉壁が中で脈打つ雄を締め付ける。
今度は腰を上げようとするが、春人の太ももは震えていた。無理な体勢と激痛に身体が悲鳴を上げているのだ。
「い、痛い。無理無理無理無理無理無理無理無理」
騎乗位などまだハードルが高かったかと落ち込む春人の性器をアルバートが包み込む。そして「動かないで」と言いながら上下に扱いてくれる。
結局、今日も春人だけが快楽に落ち、欲を吐き出すことになる。どうにかして食い止めたい所存だが、ぐったりとしている春人にはもう抵抗する力は残っていない。時折、蜜壺の中で膨れる性器に身体を跳ねさせながら、アルバートから施される愛撫に全てを預けてしまった。
「……あっ!」
ブルッと震えた春人がアルバートの手の中で果てる。そしてその声に反応する雄を諌めながら、アルバートはゆっくりと蜜壺からそれを抜き、キスをした。
横の折り畳みベッドの上に春人を寝かせ、用意したホットタオルで優しく春人の身体を拭いていく。衣服も身にまとい、性欲など感じさせない男の首に春人は抱きつきベッドへ引き込んだ。
「ごめん」
「どうして?」
「またアルだけいけてない」
それどころか新たな場所まで開発されてしまった。一方的に与えられる快楽に春人の重たい脳が更に重たくなる。
「最後まですることはさほど重要ではない。私は十分楽しんだよ」
「本当に?」
「ああ。気持ちよさそうな顔に下腹部は疼き、君の行動一つ一つに何度理性が切れたか」
「それって僕がエロいみたいじゃん!」
「間違っていないだろ? できればもう少し君の気持ちよさそうな声に浸っていたかったがね」
「もっと喘いでほしいって事?」
春人が事前に予習した動画も外国人の喘ぎ声は我慢を知らなかった。逆に日本人は口を押さえ、ベッドのスプリングだけが音声の大半を占めていた。信じていなかったが、喘ぎの文化は動画の通りで間違っていないのかもしれない。
「それもあるが」
綺麗にした春人の臀部をアルバートが撫でる。そしてツンツンと突いた。
「せっかくだからもっとしてあげたかった」
前立腺が与える快楽を思い出した身体が強張る。そしてゆっくりと足を開いた。
性に目覚めた春人は快楽に抗うことが出来ない。
「年が明ける前までね」
と照れ隠しをした春人。
二度目の射精を迎えた頃には除夜の鐘は鳴り終わり、瞼が意識を攫う間際に聞こえたのは流暢な新年を祝う英語だった。
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