こいじまい。 -Ep.the British-

ベンジャミン・スミス

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第五章 Japanese Culture

第一話 四本の恵方巻(※)

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 一月の合コン事件で完璧に肉体を繋げた春人は、昼の姿からは想像できない豹変ぶりを見せていた。身体だけじゃないと分かっていてもそれは止まらず、逆に春人が「僕は身体だけじゃないからね!」と宣言し、今までと立場が逆になっていた。

 そんな日々を送っていたせいか、会えない期間はとても長く感じてしまう。
一月下旬から二月までしばらくそのような日々が続き寂しさを感じていたある日。

「俺も来週にはデブか」

と松田が単語に反して嬉しそうな声で言う。

「どういう意味ですか?」
「チョコ食いすぎて太ったらどうしよう」

にんまりと笑う男の視線の先には卓上カレンダー。

(あぁ、そういうことか)

「松田さんにチョコあげる人いますかね?」
「何言ってんだ、俺は去年モテモテだったんだぞ!」

来たる2月14日を想像しムフフと怪しい声が出ている。だがその笑いを消す様に後ろから申し訳なさそうな声がした。

「去年は松田も新入社員だったからな。年配の方にたくさん貰っていたな」
「ちょっと、ばらさないでくださいよー、村崎部長」

デスクの横を通り過ぎようとしていた村崎が茶化し、「ごめんごめん」と悪びれもなく謝った。

「なーんだ。そういうことなんですね!」
「一年目は、まだまだ可愛いくみえるもんさ」
「月嶋も人生で一番の量を貰えるかもな!」

どうやらこの会社は新入社員が可愛がられる傾向にあり、その恩恵を去年は松田が受けた。
「高級チョコ貰った」「彼女さんは?」「……」そんな悲しいバレンタイン話でオフィスを賑わせていると、ふと村崎が手にしている物に目がいく。

「それ何ですか?」

村崎の手には百貨店などで貰えるような大きな紙袋が握られていた。
持ち上げながら村崎は困った顔をする。

「少し手伝ってくれないか?」
「?」

 紙袋を広げ、二人は中を覗き込んだ。
 そこにはプラスチックの容器がずらりと重なっていて、その中にはこれまた長い何かが入っている。その端からはみ出る黄色、緑、ピンクに春人と松田はお腹を鳴らした。

「おっ、良い反応だな。一本どうだ?」
「これって恵方巻きですか?」

それは大量の恵方巻きだった。

「支社長からの差し入れなんだけど、貰い手がつかなくて。ほら、節分は今日だろ? 皆既に予約済みでさ」
「なるほど。俺で良いなら貰います!」
「僕も!」
「助かるよ」

若い社員なら自分では恵方巻を予約していないだろうという村崎の考えは的中した。
 紙袋を覗いた2人は好きな具の恵方巻を選ぶ。海鮮系から揚げ物系まで最近の恵方巻は様々だ。他の社員も寄ってきて、各々好きな物を選んでいく。

松田が2本取り出し、1本を春人に「これ、海鮮だぞ」と渡す。
 味にこだわりのない春人はそれを受け取った。

「あっ! 月嶋は、もう1本な」
「?」

そう言って村崎が追加でもう1本渡してくる。容器を春人の手に置く際、意味ありげに力を込めて、ニコリと微笑んだ。

「若いから、沢山食えよ」
「ありがとうございます!」

肩をポンポンと叩きデスクへ戻る村崎。
手にした2本目は春人宛ではない。それを本当の主に届ける為に、春人はスマートフォンを取り出した。

 そして素早くメッセージを送る。

——今夜、家に行ってもいい? 渡したいものがあるんだ。紅茶より緑茶があう食べ物だよ。

 アルバートからの返事は「Ok.」だった。浮き足だって電車に乗り、久しぶりの恋人の家を目指す。
 そして玄関を開けてくれた家主に飛びつく様にお邪魔し、靴を履いたままキスで挨拶をする。アルバートの手が腰に回ってきて中へと催促される。
 貰った恵方巻を渡すと、水色の瞳が輝いた。

「エホウマキ……」

しげしげといろんな角度で恵方巻きを眺めるアルバート。日本文化にかなりご満悦な恋人を眺めた後、相変わらず片付いている部屋を見渡す。
 黒い革のソファーが視界に入った時、下腹部がズクリと疼いた。

(ダメだ。どうしてすぐに盛っちゃうんだ)

自分を諫め、「どう?」とアルバートに無理矢理向き直った。

「具の色彩が綺麗だ。白米の白に映えている」
「それ七福神っていう神様たちにちなんで7つの具を入れるのが好ましいんだって」

実際は消費者向けの好みに合わせ7つも入っていない。だが、せっかくなので春人はアルバートに恵方巻について調べた事を教えた。

「賢いな」
「ネットの受け売りだけどね。あと、食べ終わるまでしゃべっちゃいけないんだよ。願い事が叶わなくなるから!」
「何かお願いしながら食べるのかい?」
「うん! 他には……切り分けちゃダメなんだけど、大きいよね……どうする?」

もう7つ具が入っていない時点で習わしは関係がない。悩んだ末、春人は直接、アルバートは切って食べる事にした。
 二人で今年の方角を向いて恵方巻に口を付ける。
箸で手を添えながら均等に切られた恵方巻を食べるアルバートは優雅だ。どこかの料亭で食べている様に見える。
対して春人は丸々一本にかぶりつき、同じものとは思えない豪快っぷりを見せている。

(お願い、何にしようかな)

ありきたりな物しか浮かばず、願いをきめられぬまま、春人は「いただきます」と手を合わせ、恵方巻に勝負を挑んだ。

「んっ」
「大丈夫かい?」

咥えたまま首を縦に振る姿は何とも言えない愛しさがある。この時はそうだった。しかし必死に食べる姿がアルバートの心を擽りだす。

「ふうん」
「口から離したらいいのでは?」

春人は「切り分けたらいけない。」というルールを「口から離してはいけない」という意味にも勘違いしていた。なので、小さな口で大きな恵方巻にかぶりついたまま、押し込む様に食べ進めていたのだ。

「ん、んむ」

苦しくなり、必死に鼻から酸素を吸い込む。それはキスをしている時と同じ動作で、食事中にも関わらず、春人はいけない事を連想し始める。

——キスをしてくれるアルバート、その唇はそのまま下にいき、春人の性器にもキスをする。

(ダメダメ‼ 何考えてんの‼ これがお願い事になっちゃうよ‼)

 本人の中では想像したことが願いになるというルールのようだ。
咥えたまま頭を振り、煩悩を捨て去る。だが、頬の赤みまでは消すことが出来ず、それを見たアルバートにも、脳内で何を想像しているか伝わってしまう。

「まったく君は……」

嬉しそうに呆れ声を出すアルバートが、春人を抱き上げる。

「んん!」
「食事は続けたまえ。君の願い事が台無しになってはいけない。私は一足先にデザートをいただくよ」

そしてベッドではなく、あのソファーに春人を下ろした。

「君は直ぐに顔に出る。ここで、されたかったのだろ?」
「?!」

つい数分前に、ソファーを見ていた事すら気づかれていた。勿論、恵方巻きを食べながら考えていた事も知られている。
ベルトとチャックが外され、そこから半分勃起した性器が顔を出す。
 それを見たアルバートは「やっぱりね」と言いながら舌を突き出した。そしてそれを性器の先端に当て、舐める事はせず糸だけを引かせる。

「ん? んふ?! んーー!」

今度は間で光る糸に導かれるように舌先を先端に戻し、亀頭を包み込む様にグルリと舐めた。

「ふううんッ!」

口を恵方巻に塞がれ喘ぐことが出来ない。急いで食べ進めようとしても、与えられる快楽で喉を通らなかった。
 奮闘するその下では、剥き出しにされた性器がアルバートの餌食になっていた。

「もうこんなにして」

完璧に勃ちきったそれが震える。

「触って欲しい? それとも舐めて欲しい? ああ、声が出せないのか。では、私の好きにさせてもらうとしよう」

わざとらしく肩を竦めたアルバートは、春人が声を出せないのを良いことに楽しんでいる。
何かを伝えようと唸ったり首を左右上下に振る春人に気が付いてはいるものの無視を決め込んだ。
何をされるか分からない上、口で抵抗する事も出来ない春人はもう行く末を見守ることしか出来ない。
 そしてアルバートの口が大きく開く。

——グチュ、グチュ……ジュプジュル。

「んんんッ?!」

いつも優しく始まるフェラが、今日はすぐに激しくなり天を仰いだ。
 なおも卑猥な音を響かせ、春人の性器から精子を搾り取ろうとする。

「ん、んんッ、んんんーーー‼」

二本の指がそれを挟み、親指の先を裏筋にあてゆっくりと擦り上げる。
口の激しい動きとは真逆の速度に一カ所に二重の快楽を与えられ、春人は身体を仰け反らせた。
忍び込んできたもう片方の手が、シャツの裾から蛇の様に這い、蕾を見つけ周囲を擦る。

「んふ、んんッ‼ ……ンンッ!」

 乳首に触れてほしいもどかしさで、目を細める。「ふううん……」と強請る声を出しても、性器を咥える口角が皺を刻むのみ。
 とことんいじめる気満々のようだ。
触れたかと思えば口が離れ、激しくされても射精の手前で止められ、快楽のアップダウンに腰が砕けそうになる。そして溜まりに溜まった射精感は全てを放つところまで来た。

——グチュ、グチュッ

春人の限界を表す先走りの厭らしい音に


——ヌプ、ニュル、グチュ

と、舌と唇の悪戯な音が重なる。
背骨にまで響く快楽に襲われ、目の前がチカリと白に閉ざされる。そして「ふう、んんふッ」と力なく項垂れ、春人は白濁色の液体を吐き出した。
 舌先で遊んでいたくせに、ちゃっかり全てを咥内に収めたアルバートが喉を鳴らし奥に流し込んでいく。

「んふ! ……アル、飲んじゃ駄目!」

同じくして恵方巻を飲み込んだ春人がようやく日本語を口にする。最初に飛び出した単語は、相手には効果なく、微笑みながら空っぽの唇で性器にキスを落とした。

「食事は終わったかい?」

と涼しい顔をしている男に春人は飛びついた。そして大した力でもないのに、アルバートは押し倒されてくれた。

「積極的だね」
「ちゃんと黙って食べたからね! お願い事叶えてもらわなきゃ!」
「私が?」
「そう!」

 いつのまにやら絶対的な存在になっていた願掛けを実行しようと、春人がアルバートのベルトに手を伸ばす。

「僕のお願いは、アルバートのを咥える事なんだから!」

絶対に違うな、と思い付きの願いに苦笑いが零れるも、仕返しも込めて鼻息を荒くする春人に任せてみたくなった。

「何とも興奮する願いだ」
「ぼ、僕だって頑張ればあんな大きい物でも入るもん!」

下の穴に入ったのに上に入らないわけがない。まだ口にしたことがないそれが春人の目の前に現れる。
 何度見ても躊躇ってしまう大きさ。まだ半分しか勃起していないがそれでも存在感は抜群だ。
 大きく口を開け先端だけ咥える——いや、これでも春人にとっては深くまで咥えたつもりだった。

「……んふッ」

再び恵方巻を食べた様な声が漏れる。
口いっぱいにアルバートの性器を含み、春人はわずかな隙間で舌を動かした。

「ふあ……んんッ、んッ、んッ」

 かなり狭く、苦しいのは眉間の皺がありありと表現してくれている。
その表情にアルバートは下半身を更に大きくした。そして今すぐ秘部にあてがいたい気持ちを押さえる為、頬に手を添える。

「んん?」

濡れた黒い上目づかいが脳を沸騰させる。
一生懸命な姿に征服感が溢れる。

「そのような目で見られると堪らないな」
「?」

目元をなぞる。

「この黒い瞳を見る度に興奮してしまいそうだ」

色気を醸し出しながらほうれい線が深くなり、見とれて呆気にとられた春人から性器が抜かれる。

「え?! まだ……」
「続きは、ベッドの上で」

そして春人を抱きかかけいつもの如く寝室へと攫って行った。
ベッドへ下ろしてすぐに、足をシーツにするように寄ってきた春人が四つん這いになりアルバートの下半身に顔を埋める。

「っ?!」

初めてフェラをする動きはぎこちなく、小さな痛みを伴う。それでも必死になる姿は抱きしめたいほどの愛おしさだ。
 一度口を離し、先端をぺろりと舐め、また生暖かい咥内へと戻す。
仲は湿気と体温で表現しがたい空間になっており、蒸気にも似た蒸し暑さが絡みついて来る性器はますます膨張する。

「ああ。自分の性器に嫉妬してしまいそうだ」

愛する男にぎこちないながらもフェラをされている——それほど甘美な空間に、どこか脳内は冴えてしまい、嫉妬までしてしまう。その余裕から再び芽生えた悪戯心は、突き上げられた無防備な臀部へと手を誘い、身体の許す限り引き寄せた。両手で鷲掴みにすると、春人の肩が飛び跳ね強張る。
 掌に包みこまれた白い臀部は何かを欲してクネクネと動く。その期待に応え、2本の人差し指で交互に秘部を擦り、そして1本ずつ差し込んだ。

「んあッ……あっ、ああ!」

肉壁を広げる指に刺激され天を仰ぐ。

「口がお留守だよ」

寂しくなった性器を春人の顔の前に突き出す。後ろに意識を持っていかれ目を瞑っている春人はそれに気が付かない。

「仕方のない子だ」

 閉ざされた唇に性器を押し付ける

——チュクッ

と唇をこじ開け捻じ込み、春人の秘部を攻めながらゆっくりと腰を動かした。
リズミカルに動くたびに性器が出し入れされ、それに合わせて動く指が春人の蜜壺を刺激する。
 時折あたる前立腺に春人は、腕に力を入れて体勢を保つだけで精一杯だ。

——ジュプ、ジュプ

と、激しくピストンを繰り返す性器をただ口を開いて待つことしかできない。口の端で零れそうになっている唾液をどうにかする事も出来ない。

「んふっ、ふ、ふあ……んぐッ?!」

口の中で熱い棒が脈打つ。頭上で苦しそうな声が聞こえ、ピストンが速く、そして深くなる。
口の上部を何度か擦った性器が動きを止めビク、ビク……ビクッと三度痙攣する。

「?!」

 次の瞬間、口内を苦みが白い洪水となって襲い、溢れたそれが糸を引いて純白の上に垂れて行く。
 絶頂を迎えたアルバートが肩で息をしながら赤く腫れた性器を口から引き抜く。

「へへへ」

と、願いが叶って満足そうな春人。

「Congratulation.」
「ありがとう! 頑張って食べたもんね!」
「……しかし」
「?」

「何か忘れていないかい?」と臀部をつつき、気が付いて逃げようとした身体を押し倒した。
そして願いが叶った幸せ以上の快楽を蜜壺に与え、二人の初めての二月三日は更けていった。
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