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第六章 Another Sky
第七話 霞むプラチナブロンド
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「月嶋君、こことここの倉庫までの経路お願いできる?」
佐久間は本当に仕事が早かった。
「はい!」
資料を受け取り、空路と航路、そして欧州内での陸路が地図に書き込まれたファイルを引っ張り出す。そして会社名、そして便の本数や時間を調べる。
ほぼ見る事のない欧州方面のそれは細かい。書きこんでしまおうと一度コピーを取る。その間にも佐久間はどこかに電話をしている。
(速い。追いつかない)
複数の経路を探し、ペンで色分けをするが足りない。それくらい入り組んでいた。
焦る春人に横から蛍光ペンが差し出される。
(佐久間さん……)
佐久間は受話器を耳と肩に挟み電話を続け、片方で資料に書きこみ、もう片方で春人に蛍光ペンを差し出していた。そして手が去り際に肩を「大丈夫」と叩く。
深呼吸をする春人。そして大きな地図と向き合う。
(大丈夫。やれる)
と自分を鼓舞する。
これが成功すれば成長できる、そう思えるほど大変で充実している仕事内容だった。
そして寝ても覚めても地図や運送会社の一覧と睨めっこをしているうちに数日が過ぎ、ゴールが見え始める。
「よし。ここかここにしよう」
会議室で大量の地図を重ねて広げる佐久間と春人。オフィスでは収まらず、最近ではここで仕事をしている。
佐久間が最終候補地のいくつかをバツ印で消し、残り2つを赤丸で囲む。
「ドイツですか」
「そう」
「質問!」
「いいよ!」
最近では春人にも余裕ができ、佐久間に欧州事情を質問するまでになっていた。
「フランスの倉庫の方が利便性はありますよね? なのにどうして」
佐久間が×印をつけたフランスの倉庫。最後の最後まで悩んだ結果、佐久間はここを消した。
「確かに俺も悩んだ。でもフランスは労働者のストライキが頻繁に起こる。この倉庫も過去に何度か起こしている。蜂起の回数は比較的少ないけど、時期が問題なんだ」
×印がつけられた会社の資料を春人に渡す。
「クライアントが納品したい月にストライキが被る事が多い。もしかするとその月はその倉庫会社にとって何か悪い月なのかもしれない」
春人が感服の声をあげる。
「確証はないから最後まで残したけど、そんな欠点を抱えている会社を紹介するわけにはいかないでしょ?」
感服の声を上げていた春人は、メモを取る。
その姿に佐久間も「教え甲斐があるなあ」と嬉しそうだった。
そして今からがその倉庫までの運送経路の確保だが……
メモをとっていた春人が顔を上げ、直ぐに運送パターンを並べた書類を出す。
「その倉庫ならパターンAか、このパターンBかな……で、もう1つの倉庫ならパターンHとパターンKだけど、Kはやめますか?」
「どうして?」
「ドイツに支社をおくフランス母体の会社なんです。母体である本社とストライキが連動する事ってありますか? あっ、自分で調べます! ちょっと席を外しますね!」
「了解!」
バタバタと会議室を出て行く春人を見送り、彼が作成した書類に目を通す。
(よくできている。褒めたらどんな顔をするかな? それにフランス情勢への対応も早い。母体の会社まで調べているなんて凄いな)
春人の頭を撫でる様に書類を撫でる。
しばらくすると元気な声で「大丈夫です!」と戻ってきた春人。
「じゃ、2つの倉庫と、それぞれ2パターンの経路をクライアントに提示しよう」
「提示用の資料作成、任せて貰えませんか?」
「お願いしようかな。俺はアポを取るね。月嶋君駄目な日付はあるの?」
「ありません! 平日も休日も空いています! でも休日は相手が嫌か。」
へへへ、と笑う春人の表情は少し暗い。
「月嶋君、ずっと残業しているよね? この書類も一昨日には完成していたのに、昨日も残ってなかった?」
佐久間の問いに春人は瞳を一瞬だけ潤ませた。
「それは……最終確認、最終確認ですよ! 僕、まだミスもあるし、学ぶ事も多いから!」
「でも家でも出来るよね?」
「……」
春人の業務は別段会社でする必要はない。
「何時まで残ってるんだろうと思って勤務時間確認したんだけど、時間は残業になる前に退勤しているし」
それは残業の目的が業務とはかけ離れているからだ。だから勤務時間はホワイト企業並みの数字。
「それにたまに暗い顔するよね?」
会議室の机の向こうから佐久間の顔がグッと寄ってくる。
「もしかして俺が厳しいとか?」
「へっ? いや、それは絶対にありません! 佐久間さんのお陰で僕の貿易実務としてのスキルと知識は格段に上がりました! 残業に関しては僕の勝手な都合なので気にしないでください!」
弁明する春人を見つめている佐久間は疑いの目を向け続ける。
「俺じゃない?」
「違います! むしろ佐久間さんは大好きです!」
「男なのに?」
「そういう意味じゃなくて、えっと、その……」
「ごめんごめん。困らせるつもりはないよ」
佐久間は資料をまとめ始める。
その仕草に春人は焦りを感じる。
「すみません失礼な事を言って」
「気にしてないから大丈夫。逆に俺こそごめんね、色々詮索しちゃって。でも何か悩んでいるなら聞いてあげたくて。まだ短い付き合いだからお節介になった?」
「そんな事ないです! この前、ご飯に誘ってもらえたのも嬉しかったですし!」
佐久間が散乱していたペンを取る手を止める。
「じゃ、また行く? 今度はこの仕事が片付いたら。お疲れ様会って事で」
「はい! 行きます!」
「美味しいお店探しておくね。でも月嶋君は居酒屋より定食屋の方が良いかな?」
と笑う佐久間に春人は安心する。
「もし、その時話せるなら。悩みも話してみてね」
「……はい」
「じゃ、片付けて次の仕事に移ろうか!」
佐久間は止めていた手を伸ばし、ペンを掴む。そして倉庫の候補地に印をつけたヨーロッパの地図の上でペンを動かす。
——最初にバツ印をつけたイギリスに、更に×を重ねた。
◇ ◇ ◇
———パンッ
オフィスにハイタッチをする音が響き渡る。
「終わったのか?」
部長の声で、オフィスの視線は完璧に春人と佐久間に向けられる。
若い2人の短期間での成果にオフィスが沸いた。赤澤も安堵のため息を漏らし、一番安心しきった部長は腕が千切れんばかりに握手を振り回した。
「では、最終報告書を提出して門司支社に戻ります」
佐久間がそう告げた後、赤澤が2人を最初と同じ会議室に呼び出し何度もお礼を言った。そして「佐久間、少し席を外してほしい」と春人だけをそこに残した。
佐久間が「お先に失礼します。 月嶋君、先に報告書仕上げとくね」と春人の肩を叩き会議室を出て行く。
「月嶋」
赤澤がまだ申し訳なさそうな声を出す。
「まじ助かった。ありがとう」
「いえ、お役に立てて良かったです」
「今回の仕事、もとは誰の担当か聞いてるか?」
「今田さんですよね? 体調は回復しているんですか?」
「順調に回復している。……いや、そうじゃない。今田の前の担当だ」
「前?」
赤澤が机の上で祈る様に手を組む。
「もとは、アルバートの仕事だった」
(え?)
急に飛び出した恋人の名前に目の前がチカチカした。
視界がもとに戻った時、春人の前では赤澤が頭を下げていた。
「ちょっ! 赤澤さん?!」
「本当に悪かった。今回の件も、アルバートの件も。本当ならあいつだってまだ日本にいた筈なのに」
「いつかこうなる事は覚悟していましたから!」
「でも3か月を奪う事になってしまった」
「赤澤さんのせいじゃありません」
そう言っても赤澤が帰国の件を悔やんでいる事は一目瞭然だ。
「俺はアルバートの残した仕事を引き受けた。でも予想以上の困窮を極め、結局今田に助けてもらう形になった。貿易実務の基礎しか俺には備わっていないのを痛感したよ」
応用の効かない自身のスキルに不甲斐なさを感じ、赤澤は落ち込んだ。それでも必死に食らいつき、倉庫の確保まで漕ぎ着けた。
「アルバートなら俺の3分の1のスピードで仕上げただろうな」
そして、今田の休職で窮地に追い込まれた。
「でも、赤澤さんは研修生を2人も抱えています」
「いいんだよ、慰めてくれなくて。実際、それで人事・広報部に異動したわけだしな。とりあえず、もう一度礼を言わせてくれ。ありがとう。そして悪かった」
最後の「悪かった」には色々な意味が込められている。そのせいか重みがあり、部屋の空気が変わってしまう。
「この借りは絶対に返す」
「気にしないで下さい! それに佐久間さんのお陰ですから!」
「いや返す。俺は借りを作るのだけは御免だからな。あと……佐久間がアンリスクロス貿易会社とコンタクトを取ったのか?」
「はい!」
「そうか。あの会社はアルバートが勤務しているからお前にって思ったけど……まっ、仕方ねえか」
春人は目をぱちくりさせた。
「アルバートの勤務先なんですか?」
「そうか、お前は研修生の履歴書を見ていないのか。あいつ、かなりのエリートだぞ!」
「それは知っています」
「アンリスクロス貿易会社と化学事業部がコンテナを共有している。その関係で海外留学生の研修先にもなっているんだよ」
初耳だった。
「そうだったんですね」
「あいつも言えばいいのに」
「忙しいんですよ、きっと」
あの自慰をしてしまった電話以降、春人は1日に1通程度のメッセージの交換しかできていない。
目の前の赤澤が首を傾げて顎を擦る。
「そうか? 一昨日電話した時は直ぐに出たけどな。たしかその前も出たぞ」
赤澤の言葉に春人は足の力が抜け、激しい動悸に襲われた。
(僕とはほとんど電話しないのに……仕事が忙しいんじゃないの?)
震えながら時計に指を這わせる。夢の中にいる恋人の顔が上手く思い出せない。
佐久間は本当に仕事が早かった。
「はい!」
資料を受け取り、空路と航路、そして欧州内での陸路が地図に書き込まれたファイルを引っ張り出す。そして会社名、そして便の本数や時間を調べる。
ほぼ見る事のない欧州方面のそれは細かい。書きこんでしまおうと一度コピーを取る。その間にも佐久間はどこかに電話をしている。
(速い。追いつかない)
複数の経路を探し、ペンで色分けをするが足りない。それくらい入り組んでいた。
焦る春人に横から蛍光ペンが差し出される。
(佐久間さん……)
佐久間は受話器を耳と肩に挟み電話を続け、片方で資料に書きこみ、もう片方で春人に蛍光ペンを差し出していた。そして手が去り際に肩を「大丈夫」と叩く。
深呼吸をする春人。そして大きな地図と向き合う。
(大丈夫。やれる)
と自分を鼓舞する。
これが成功すれば成長できる、そう思えるほど大変で充実している仕事内容だった。
そして寝ても覚めても地図や運送会社の一覧と睨めっこをしているうちに数日が過ぎ、ゴールが見え始める。
「よし。ここかここにしよう」
会議室で大量の地図を重ねて広げる佐久間と春人。オフィスでは収まらず、最近ではここで仕事をしている。
佐久間が最終候補地のいくつかをバツ印で消し、残り2つを赤丸で囲む。
「ドイツですか」
「そう」
「質問!」
「いいよ!」
最近では春人にも余裕ができ、佐久間に欧州事情を質問するまでになっていた。
「フランスの倉庫の方が利便性はありますよね? なのにどうして」
佐久間が×印をつけたフランスの倉庫。最後の最後まで悩んだ結果、佐久間はここを消した。
「確かに俺も悩んだ。でもフランスは労働者のストライキが頻繁に起こる。この倉庫も過去に何度か起こしている。蜂起の回数は比較的少ないけど、時期が問題なんだ」
×印がつけられた会社の資料を春人に渡す。
「クライアントが納品したい月にストライキが被る事が多い。もしかするとその月はその倉庫会社にとって何か悪い月なのかもしれない」
春人が感服の声をあげる。
「確証はないから最後まで残したけど、そんな欠点を抱えている会社を紹介するわけにはいかないでしょ?」
感服の声を上げていた春人は、メモを取る。
その姿に佐久間も「教え甲斐があるなあ」と嬉しそうだった。
そして今からがその倉庫までの運送経路の確保だが……
メモをとっていた春人が顔を上げ、直ぐに運送パターンを並べた書類を出す。
「その倉庫ならパターンAか、このパターンBかな……で、もう1つの倉庫ならパターンHとパターンKだけど、Kはやめますか?」
「どうして?」
「ドイツに支社をおくフランス母体の会社なんです。母体である本社とストライキが連動する事ってありますか? あっ、自分で調べます! ちょっと席を外しますね!」
「了解!」
バタバタと会議室を出て行く春人を見送り、彼が作成した書類に目を通す。
(よくできている。褒めたらどんな顔をするかな? それにフランス情勢への対応も早い。母体の会社まで調べているなんて凄いな)
春人の頭を撫でる様に書類を撫でる。
しばらくすると元気な声で「大丈夫です!」と戻ってきた春人。
「じゃ、2つの倉庫と、それぞれ2パターンの経路をクライアントに提示しよう」
「提示用の資料作成、任せて貰えませんか?」
「お願いしようかな。俺はアポを取るね。月嶋君駄目な日付はあるの?」
「ありません! 平日も休日も空いています! でも休日は相手が嫌か。」
へへへ、と笑う春人の表情は少し暗い。
「月嶋君、ずっと残業しているよね? この書類も一昨日には完成していたのに、昨日も残ってなかった?」
佐久間の問いに春人は瞳を一瞬だけ潤ませた。
「それは……最終確認、最終確認ですよ! 僕、まだミスもあるし、学ぶ事も多いから!」
「でも家でも出来るよね?」
「……」
春人の業務は別段会社でする必要はない。
「何時まで残ってるんだろうと思って勤務時間確認したんだけど、時間は残業になる前に退勤しているし」
それは残業の目的が業務とはかけ離れているからだ。だから勤務時間はホワイト企業並みの数字。
「それにたまに暗い顔するよね?」
会議室の机の向こうから佐久間の顔がグッと寄ってくる。
「もしかして俺が厳しいとか?」
「へっ? いや、それは絶対にありません! 佐久間さんのお陰で僕の貿易実務としてのスキルと知識は格段に上がりました! 残業に関しては僕の勝手な都合なので気にしないでください!」
弁明する春人を見つめている佐久間は疑いの目を向け続ける。
「俺じゃない?」
「違います! むしろ佐久間さんは大好きです!」
「男なのに?」
「そういう意味じゃなくて、えっと、その……」
「ごめんごめん。困らせるつもりはないよ」
佐久間は資料をまとめ始める。
その仕草に春人は焦りを感じる。
「すみません失礼な事を言って」
「気にしてないから大丈夫。逆に俺こそごめんね、色々詮索しちゃって。でも何か悩んでいるなら聞いてあげたくて。まだ短い付き合いだからお節介になった?」
「そんな事ないです! この前、ご飯に誘ってもらえたのも嬉しかったですし!」
佐久間が散乱していたペンを取る手を止める。
「じゃ、また行く? 今度はこの仕事が片付いたら。お疲れ様会って事で」
「はい! 行きます!」
「美味しいお店探しておくね。でも月嶋君は居酒屋より定食屋の方が良いかな?」
と笑う佐久間に春人は安心する。
「もし、その時話せるなら。悩みも話してみてね」
「……はい」
「じゃ、片付けて次の仕事に移ろうか!」
佐久間は止めていた手を伸ばし、ペンを掴む。そして倉庫の候補地に印をつけたヨーロッパの地図の上でペンを動かす。
——最初にバツ印をつけたイギリスに、更に×を重ねた。
◇ ◇ ◇
———パンッ
オフィスにハイタッチをする音が響き渡る。
「終わったのか?」
部長の声で、オフィスの視線は完璧に春人と佐久間に向けられる。
若い2人の短期間での成果にオフィスが沸いた。赤澤も安堵のため息を漏らし、一番安心しきった部長は腕が千切れんばかりに握手を振り回した。
「では、最終報告書を提出して門司支社に戻ります」
佐久間がそう告げた後、赤澤が2人を最初と同じ会議室に呼び出し何度もお礼を言った。そして「佐久間、少し席を外してほしい」と春人だけをそこに残した。
佐久間が「お先に失礼します。 月嶋君、先に報告書仕上げとくね」と春人の肩を叩き会議室を出て行く。
「月嶋」
赤澤がまだ申し訳なさそうな声を出す。
「まじ助かった。ありがとう」
「いえ、お役に立てて良かったです」
「今回の仕事、もとは誰の担当か聞いてるか?」
「今田さんですよね? 体調は回復しているんですか?」
「順調に回復している。……いや、そうじゃない。今田の前の担当だ」
「前?」
赤澤が机の上で祈る様に手を組む。
「もとは、アルバートの仕事だった」
(え?)
急に飛び出した恋人の名前に目の前がチカチカした。
視界がもとに戻った時、春人の前では赤澤が頭を下げていた。
「ちょっ! 赤澤さん?!」
「本当に悪かった。今回の件も、アルバートの件も。本当ならあいつだってまだ日本にいた筈なのに」
「いつかこうなる事は覚悟していましたから!」
「でも3か月を奪う事になってしまった」
「赤澤さんのせいじゃありません」
そう言っても赤澤が帰国の件を悔やんでいる事は一目瞭然だ。
「俺はアルバートの残した仕事を引き受けた。でも予想以上の困窮を極め、結局今田に助けてもらう形になった。貿易実務の基礎しか俺には備わっていないのを痛感したよ」
応用の効かない自身のスキルに不甲斐なさを感じ、赤澤は落ち込んだ。それでも必死に食らいつき、倉庫の確保まで漕ぎ着けた。
「アルバートなら俺の3分の1のスピードで仕上げただろうな」
そして、今田の休職で窮地に追い込まれた。
「でも、赤澤さんは研修生を2人も抱えています」
「いいんだよ、慰めてくれなくて。実際、それで人事・広報部に異動したわけだしな。とりあえず、もう一度礼を言わせてくれ。ありがとう。そして悪かった」
最後の「悪かった」には色々な意味が込められている。そのせいか重みがあり、部屋の空気が変わってしまう。
「この借りは絶対に返す」
「気にしないで下さい! それに佐久間さんのお陰ですから!」
「いや返す。俺は借りを作るのだけは御免だからな。あと……佐久間がアンリスクロス貿易会社とコンタクトを取ったのか?」
「はい!」
「そうか。あの会社はアルバートが勤務しているからお前にって思ったけど……まっ、仕方ねえか」
春人は目をぱちくりさせた。
「アルバートの勤務先なんですか?」
「そうか、お前は研修生の履歴書を見ていないのか。あいつ、かなりのエリートだぞ!」
「それは知っています」
「アンリスクロス貿易会社と化学事業部がコンテナを共有している。その関係で海外留学生の研修先にもなっているんだよ」
初耳だった。
「そうだったんですね」
「あいつも言えばいいのに」
「忙しいんですよ、きっと」
あの自慰をしてしまった電話以降、春人は1日に1通程度のメッセージの交換しかできていない。
目の前の赤澤が首を傾げて顎を擦る。
「そうか? 一昨日電話した時は直ぐに出たけどな。たしかその前も出たぞ」
赤澤の言葉に春人は足の力が抜け、激しい動悸に襲われた。
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(5月14日より連載開始)
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