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第九章 The end
第六話 大人の仮面
しおりを挟む赤澤の時以上にざわつく会議室。
新部長誕生だけではなく、今までになかった副部長というポストの増設、そしてそこについたのが外部からきた外国人だ。見知らぬ外国人の登場に憶測が飛び交い、アルバートを元研修生だと知るものは(特に女性は)感嘆の声を漏らしている。驚愕と浮き足立つ声でそれはもうおかしな空気になっていた。
それを意に介せず赤澤は「えー」と声を発し遮った。
「来年度の採用試験より東亜日本貿易会社では外国人の雇用を本格化させます。この門司支社をグローバル推進の拠点及び他支社への発信源としていきます。その先駆けと土台作りとして、イギリスのアンリスクロス貿易会社よりお招きしました。扱いとしては新入社員ですが、実績を考慮した結果、この度副部長としてその手腕を奮ってくれます」
赤澤の説明で納得をする社員たちだが、春人は何一つ内容が頭に入ってこない。
(なんで……いるの……)
この言葉がずっと脳内でリピートされている。同じ指導員だった隣の松田は「あれアルバートじゃん」と軽く言うが、会社に隕石が落ちたような衝撃を食らった春人は口をぱくぱくさせるだけ。
そしていつの間にかアルバートの挨拶も終わり、管理職の発表は終わった。
今年異動があったのは人事・広報部のみでみな足取り軽く会議室から出ていく。
しかしまだ目の前の現実が受け入れられない春人は椅子の上で固まったまま。「戻ろうぜ」と松田に声をかけられバタバタと立ち上がったが、
「おい、月嶋!」
と前方から呼び止められた。赤澤だ。
手招きをしている。松田に一言告げて春人はもう赤澤・村崎・アルバートしか残っていない前の席へと向かった。
身体は赤澤を向いているが、呆けた表情のまま目だけはアルバートを捉えて離さない。
「やっぱり先に言っとかなくて正解だっただろ? こいつはすぐ顔に出るんだよ。極秘人事を顔面でバラされるところだったな」
と赤澤がそんな春人を見て呆れる。
それすら耳に入っていない春人は「どうしてアルがいるんですか?」と言い放ち赤澤の眉間に皺を寄せさせた。
「お前、俺の話聞いてなかったな? まぁいい、アルバートにあとから全部聞け」
親指をアルバートにクイッと向ける。向けられた本人もようやく緊張が解け、優しく微笑んだ。
「よろしく、月嶋さん」
と握手を求めてくるアルバート。それが昔一緒に働いていた時と重なり、アルバートの入社を現実のものとして受け入れ始める。
「よ、よろしくお願いします!」
握り返し、伝わる熱に喜びが倍溢れる。それを横で見守っていた村崎は嬉しそうに「良かったな」と言い、赤澤はそっぽを向いて頭をかいた。
「言っとくけどイチャイチャしてる暇ねーぞ。採用試験の要綱作成でこき使ってやる。な、アルバート?」
「ああ。勿論だ」
「馬車馬の如く働かせてもらうって即答したの忘れてねーからな。んじゃ、先に戻るか。ほら行くぞ、村崎」
「またなアルバート! 月嶋もさっさと戻ってこいよ」
「はい!」
2人は握手したままの恋人たちに背を向ける。その時、赤澤の足が止まった。
背を向けたまま「月嶋……」と照れたような声で名前を呼ぶ。
「これでチャラだ」
「へ?」
意味を理解していない春人に、肩を震わせる赤澤。だが、こちらを見ずに声だけを張り上げた。
「アルバートのヘッドハンティングで、福岡空港支社で助けてもらった分はチャラだっつってんだよ!」
ポカンとする春人は記憶を必死に辿る。そして思い出した。
確かに赤澤は福岡空港支社の仕事が片付いた時「いつか借りを返す」と言った。
春人はあれを社交辞令だと受け取っていたが、どうやら本気だったようだ。
「俺は借りを作るのが大嫌いなんだよ」
「でも、こんなのおつりが出ますよ!!」
それほどアルバートのヘッドハンティングは春人にとっては衝撃的だった。何故ならこれは会社の発展以上に、アルバートと春人の遠距離恋愛の終わりを意味する。
「つり? んじゃ、その分は村崎の下でバリバリ働け。めでたく来年度もインテリア事業部なわけだしな」
と手を挙げ村崎の肩をわざとらしく「良かったなー」と叩いた。
そして1度もこちらを振り向くことなく「じゃあな」と言って次こそ会議室を出ていった。
会議室の扉が閉まったと同時に、握手していた手をアルバートは引き寄せた。
「うわっ!」
真新しい匂いがするスーツに閉じ込められる。アルバートは春人の頭にスリスリと頬を擦り付けて幸せを噛み締めていた。
恋人のそんな姿に春人ももっとそれを共有したくて、スーツの背中を皺になるほど握りしめた。
そして深呼吸をしたアルバートが春人を解放する。両手を握り締め
「寂しい思いをさせてすまなかった。これからはずっと、君のそばにいると約束しよう」
と明るい未来を約束してくれた。
昨夜、意識が途切れる間際に聞いた「君のそばにいる」が音と色を変える。
直接言葉を貰い、春人の瞳からは涙が零れ落ちる。
「もう、遠距離恋愛しなくていいの?」
「そうだよ。ああ、泣かないでくれ春人。私は駄目な男だ、どうあっても君を泣かせてしまう」
指で拭った雫はいつもより暖かい気がした。指は離れることなく春人の頬を撫でる。その手に自身の手を重ね、春人は目を伏せた。
「これは嬉し泣きだよ。凄く嬉しいんだ。なんて言えばいいか分からないくらい。アルバート……」
真っ直ぐにアルバートを見る。
「僕はずっと隣に居るよ。本当にありがとう……大好き」
ともう一筋涙を流し、背伸びをする。
それに合わせて、背の高い恋人が身を屈める。
「……」
音はしない。
──しかし今までで1番幸せなキスを2人は交わした。
長い、長いキス。
初めてのキスと同じ音で、2人は新しいスタートを切った。
◇ ◇ ◇
春人は今朝アルバートの言っていた「話したい事」がヘッドハンティングの件だと思っていたが「違う。それはまた別だ。今夜君の家に行く」と言われた。
アルバートが実際に出社するのは4月から。引越しは今から荷物が来るそうだ。慌てて会社を去る背中を見つめながら、もう悲しくない別れに春人な手の甲でまた溢れた涙を拭った。
そして夕方、春人が帰宅するのと同時にアルバートも到着した。
2人で家の中に入ると、アルバートは腰に手を回し、やたらめったらくっついてくる。
「今日のアルは甘えん坊だね」
「嫌かい?」
「ううん。嬉しい。そういう面もあるのに、僕の為に日本に来てくれた。僕には真似出来ないよ。やっぱりアルは大人だな」
アルバートの腕を抜けだし、「羨ましい!」と言いながらベッドにダイブする春人。
その横に座りながらアルバートがポツリと呟く。
「私が大人に見えるかい?」
「みえるよ!」
息をゆっくり吐くアルバート。
その姿に「話したい事」が始まると春人も身体を起こして横に座った。
寄り添い、玄関からテーブルに移動したカーネーションを見つめながらアルバートは口を開いた。
「私は大人ではないよ」
アルバートの指が春人の背中をなで上げる。
「君の背中にあんなにキスマークをつけた。あれの意味、君は気が付いているだろうか?」
「……アルバートの恋人ってことでしょ?」
「それもある。だがあれは佐久間さんに向けてだ。私は彼が君に好意がある事を知っていた。だから迫りくる佐久間さんに見せつけていたのだよ。月嶋春人が誰のものか」
思った以上の独占欲に春人は息を飲んだ。
背中で遊んでいた手が、春人の手を握る。
「空港で君の手に愛撫もした。離れる君に忘れて欲しくなかった。最後の最後まで私は君に自分の存在を刻み込んだ」
ギュッと手を握る、アルバートの目が伏し目がちになる。
「あの日、欲求不満だったのではないか? あのような状態で帰されて」
「うん……でも、一人ですれば問題ないから」
「最低なことをした。なのに、私はもっと最低なことをしてしまった」
それが何か分かる。
約束が守られなかったクリスマスだ。
「帰国が叶わなくなったとき、私は直ぐに考えた。どうしたら君が私を忘れないか。それがあの薔薇だった」
「毎週送ってくれた薔薇籠?」
前を見る春人の瞳には薔薇ではなくカーネーション。
しかし、何故最後にカーネーションなのか聞く前に、頷いたアルバートが話を続ける。
「今度は嗅覚で君を支配したのだ。私の香りに似ていただろ?」
背筋がゾワっとした。
あれは意図的に薔薇を送られていたのだ。そしてアルバートの思惑通り、春人は薔薇の匂いに恋人を重ねていた。
本人は存在していない。その反動で、寂しくなるにも関わらず。
「匂いだけ残すことが如何に残酷な事か分かっていた。でも、どうしても君を私に縛り付けておきたかった。最悪だろ? 本当は佐久間さんに嫉妬し、君が離れていくのを恐れ、大人の仮面を被りながら君に醜い独占欲と支配欲を押し付けていた」
落ち込むアルバートに春人は幻滅も喪失感も感じない。
しかしその身体に触れることが出来ず、ただ前だけ見つめた。
カーネーションが小さく揺れる。
「じゃ、どうして昨日はカーネーションだったの?」
「あれの花言葉を知っているかい?」
「うん。調べた。あなたに会いたくてたまらない。アルバートお洒落だね」
「それこそが私の最後の仮面だ」
「え?」
「花言葉で偽装した私の独占欲があのカーネーションにはある」
カーネーションに顔を向けていた春人の顎をとり、アルバートは自分に向かせる。
「私が目の前にいるのに、薔薇は必要はない」
春人にとって薔薇はアルバートだった。薔薇に声をかけ、共に生活し、自慰にまで利用した。
もうあれはもう1人のアルバートだった。
「月嶋春人にとってアルバート・ミラーは一人で十分だ」
──全てを知り、身体が興奮で震え上がる。
あのカーネーションは春人への会いたい想いと、もう一人のアルバートへのお役交代の表明の様なものだった。
「花にすら嫉妬する私の話を聞いてそれでも君は私がよくできた大人だと思うかい?」
全てを話終えたアルバートの瞳は不安に揺れる。
そんな彼を春人はようやく抱きしめた。
「ありがとう」
「……」
「よかった。アルバートにそう思ってもらえる恋人で。僕は子どもで無鉄砲で、きっと大人のアルに愛想を尽かされると思っていたから」
「君はよく我慢していたと思う。昨日、本音が聞けて本当によかった。私の方こそ……」
「僕も同じだよ。アルにダメな姿を見せたくなくて隠した。でも昨日バレた。それでもアルは好きだと言ってくれる。逆も同じのなの! アルが隠しておきたかったその気持ち、僕にとってはとても嬉しいの!! だから、ありがとう!!」
感極まったアルバートが春人を抱きしめかえす。
「ああ。本当に君は最高だ。絶対に手放せない。いや、手放してはいけない。やはりこれは最後の恋だ」
「……最後の恋?」
どこかで聞いた事がある言葉に春人は目をパチクりさせた。
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