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最終章 Gentleman & Sun
第一話 掌の太陽
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11月22日
今日が特別な日である事を知っている春人は、今日が何の日か知らない恋人の家へと向かっていた。
「あっ、花束買っていかないと」
いつもは贈られる側なので、花屋に入る事すら恥ずかしかった。
店の前で迷っていると、女性が目を輝かせて顔を出す。
「ダンディーな英国紳士さんにですか?」
「え?」
店先の花から女性店員に視線を移すと、その人はあの遠距離恋愛時代に春人に薔薇籠を届けていた女性だった。隠しても無駄だと、春人は「……はい」と頷いた。
「もう注文の電話も来ないし、最後がカーネーションだったから心配していたんです。でもこの前、ご本人が直接買いにいらしたので」
電話だけなのに何故顔が分かったのか尋ねると、アルバートが春人と付き合ってからずっとここで薔薇を買っている事が判明した。ラッピングのサービスがあるにも関わらず、「イギリスではそういう文化がないので」とやんわり断り自分でラッピングをする横顔は、誰かを思って綻び、ここの店員だけでなく、客までもメロメロにしていた。
「この前は薔薇を五本ほど」
看病のお礼に貰った本数と一致する。
「そういえばどうして最後はカーネーションだったんですか?」
「それは……えーと……」
「きっと意味があるんだろうなと思って紳士さんに尋ねたんですけど教えて貰えなくて」
それはそうだ。
花にまで嫉妬して、自分自身が家に来るときは薔薇ではなくカーネーションにしたなど、43歳の男がいえる事ではない。
「たぶんそこまで深い意味はないと思います。あっ、あの……それより、薔薇を買ってもいいですか?」
ようやく仕事の表情に戻った店員が何本か見繕い花束を作ってくれる。
「自分でラッピングされますか?」
と笑顔で聞かれたが、今日は失敗できない日だからと、春人は掌を向けた。
そして10本の赤やピンクの薔薇で華やかになった花束を持って、アルバートの家へと向かう。
インターフォンは慣らさずに、合鍵を差し込む。
いつもなら、足音がするのに、今日は全くしなかった。静かにリビングへ向かうと
(あっ、寝てる)
アルバートはソファーに足を投げ出して寝ていた。仕事でかなりお疲れのようだ。
そろりとプライベート用のリュックと花束を床に下ろしてアルバートに近づく。
(あれ?)
いつものアルバートと何か違うことに気がつく。
(イヤホンしてる)
アルバートは腕で目隠しをしていて、その腕の下から白いイヤホンのコードが伸びている。
イヤホンのコードを辿ると、アルバートとソファーの間に落ちてしまっている携帯に繋がっていた。
(アルって、どんな歌を聴くのかな?)
イヤホンを付けているのも珍しいが、彼がどんなのを聴いているのかも気になった。
人の趣味を覗くようで申し訳なかったがアルバートに触れないようにギリギリの所まで耳を近づける。イヤホンからは何も音漏れしていない。流石に外すとバレるだろうかとも思ったが、春人は細心の注意を払って手を伸ばす。
(あと……もう少し……よし、取れた!)
アルバートの耳からイヤホンを取ることに成功し、耳に近づける。
歌声らしきものは聴こえない。しかし、何かが擦れ合う音が聴こえてはいる。
(ヒーリング効果的なやつかな?)
よく分からないまま耳からイヤホンを離そうとしたその時だった……
『あっ……ダメ、アル!』
艶かしい声が聴こえてきた。もちろん歌声ではない。
「??!!」
この声の持ち主は誰が聞いても春人だ。そして熱い吐息の奥では、鈍いような破裂するような、腹に響く音が鳴っている。
『ヒュー、パンッ‼』
この寒い時期には不釣り合いな夏の夜空に咲く華の音だ。
『ああ。すまない、3週間ほどあける』
『えっ? そんなに?』
『寂しい?』
『寂しいよ……アル』
『私も寂しい。だから今、いっぱい抱かせて。君の声も沢山聞かせてくれ』
『僕も、沢山したい。んっ! あんっ、あっ!』
『いい声だね。可愛いよ』
会話の内容から長期の出張前に撮られたものだと判断できる。
つまり……
(今年の夏だ!)
春人はイヤホンを耳から外すと、ゆらりと立ち上がった。
そして先ほど花屋で女性店員をメロメロにしていたダンディーな英国紳士の目を覆う太い腕を退かす。
「んッ……」
流石に目を覚ましたアルバートは、ゆっくりと瞼をあげ水色の瞳を覗かせた。
しかし焦点があっていない上に、春人の頭上から降り注ぐ白色光に目がなかなか開かない。
そんな彼に春人は怒った時にしか出さない低い声で寝起きの挨拶をした。
「おはよう変態紳士」
嬉しくない単語と、春人が手にしているイヤホンで全てを理解したアルバートは、謝るどころか春人の腰を引き寄せた。
「うわっ!」
春人はアルバートの上に跨る形となり、バランスを必死に取ろうともたつく。その隙に、イヤホンはアルバートに奪われ、今度はアルバートの大きな掌の蓋つきで耳を塞いだ。
『んあッ、はあ……アル……きもちい……』
鼓膜を震わせる自身の淫靡な声に春人は耳を塞ぐアルバートの手を退かそうと重ねるがびくともしない。
「や、やだ……」
『やっ、やだああ‼』
現実の声と、録音された自分の声が重なり、ますます頬を染める。アルバートはそれをとても楽しそうに眺めている。寝起きとは思えないほど瞳は意地悪に光り、跨る春人に腰を小刻みに突き上げた。
「だめってば……んっ、恥ずかしい……僕……イきそう……」
アルバートには今、春人の耳の中でどういった行為が繰り広げられているか分からないが、本人が聞かずとも答えてくれた。
絶頂を迎える自分の声を聞きながら、春人は熱く膨らんだ下腹部をアルバートに擦りつける。
「ひッ、んあ……あ、あ、ぁぁああ」
腰を回すように擦りつけたかと思うと、そのままアルバートの胸の上に倒れ込んだ。イヤホンを拝借すると、夏の春人も果てていた。
肩で息をする春人の後頭部を撫で、イヤホンを片付けながらキスを落とす。
「凄く興奮していたな」
と、悪びれもしない声が放たれ、春人は身体を起こした。しかし、その時、湿った下着で下腹部を不快感が襲い、俯く。
「ご、ごめん。ここでイっちゃった……じゃなくて! どういう事なの?!」
「何が?」
春人はイヤホンが抜かれたスマートフォンを指さす。
「なにこれ!」
「君の喘ぎ声だが」
「それは分かってるよ!」
アルバートは春人を抱え上げ、一人でソファーに座らせる。そして涼しい顔でティッシュを手渡した。出張に行くことが決まった日、あの花火大会の日に、興味本位で撮った動画だった。
「なかなか来る気配がなくて、ソファーで横になっていたら思い出したのだ。夏の日のちょっとした悪戯を」
「エッチ! おかずにする気だったんだ!」
「あれで何かいかがわしいことをしようと思ったわけではない」
「嘘だ! それ以外に何に使うのさ!」
「もともと1人でなど、もう何年もしていない。ただ、3週間という長期の出張で何となく見るかもと思い撮ってみたのだ。結果、見ることは無かったのだが。見ずとも本人が来てくれたのだからね」
43歳の誕生日のサプライズを思い出し、アルバートは微笑みながらもう一度春人にキスをした。満更でもない春人は、まだ火照る身体を起こし、今は常時置いている着替えを取りに行った。
綺麗にした身体で戻ってくると、渡すはずだった花束は既にアルバートの手に渡っていた。イヤホンのせいでその存在をすっかり忘れていた春人は「しまった」と足を止める。
その仕草を何と勘違いしたのかアルバートは「ほお。君を口説く熱烈な人がいるようだ。何人だ?」と聞いてきた。
「口説かれてないよ!」
とその手から花束をひったくり、両手で持ち直してから、アルバートに差し出した。
「僕からアルバートに」
「私に?」
嬉しさで固まるアルバートの胸に花束を押し付ける。ようやく受け取ったのを確認すると、今度はリュックを漁り、甘い匂いのする茶色の物体を差し出しだした。
「はいこれ」
「これは?」
「甘さ控えめのガトーショコラです」
そっぽを向いてそういう春人は「前、村崎部長の娘さんにきいたやつ」と、あの日のスイーツ大作戦は今成功した。
アルバートは花束とラッピングされたお菓子を大切にテーブルに置くと、春人を抱きしめた。
「とても嬉しい。ああ仕事の疲れが癒えていく。君は本当に最高だ」
「……いつもお疲れ様」
「これがあればいくらでも頑張れそうだ。しかし、そんなに心配させるほど根を詰めているように見えたのかい?」
「それもあるけど……今日は特別な日だから」
「今日? 11月22日が?」
「うん。今日は……」
春人がアルバートを真っ直ぐに見つめる。
——いい夫婦の日なんだよ
「いい夫婦?」
「1122でいい夫婦。語呂合わせだよ」
「しかし私と君は……」
「そう、夫婦じゃない。でもずっと一緒だから、今日を祝ってもいいって僕は思ってるよ。記念日が増えるのも悪くないしね! はい、それだけ! とりあえずお仕事頑張ってね!」
逃げ場などないのに言い逃げをしようとする春人を捕まえ、アルバートはもう一度彼をソファーへ座らせた。そして自分は座らず、その下で跪き、手の甲にキスをした。
「こんな素敵な伴侶がいる私は幸せ者だ」
「僕の方が幸せだよ」
「私の方が……いや、二人の幸せだな」
手の甲を滑っていた唇が、春人の口を塞ぐ。
「ありがとう春人」
「……う、ん」
春人もアルバートの唇に吸い付き、すぐに口を尖らせる。
「あーあ、あの変態な録音さえなければもっと格好良く決めれたのに」
と先ほどの躓きで花束をスムーズに渡せなかった事が悔やまれる。
「次こそは格好良く決めてやるんだ。英国紳士になんか負けないもんね!」
と失敗を悔しがる日本人が舌を出し、引っ込めた後「ああ、変態紳士か」と嫌味を吐いたので、アルバートも仕返しをした。
「どうだった?」
「何が?」
「自分の喘ぎ声は」
春人の肩が震える。
今度こそその横に座り、肩を引き寄せ、アルバートは「教えて」と囁いた。
「知ってるくせに!」
「私はまだ見ていない」
「えっ?」
「出張で寂しくなるかもと思い撮ったが、結局見ていないのだ」
「見なくていい! だいたい僕がいるんだから、そんなの消してよ!」
と音声の自分に嫉妬する春人にアルバートは愛しさが込み上げた。
(しかし、それとこれとは違う)
「残しておくよ。君を苛めるのに最適だ」
「だったら他のは消して!」
「他の?」
「動画以外にあるでしょ?!」
心当たりがあるアルバートは少し身体を離した。
「僕の寝顔を待ち受けにしていたよね? ってことはまだ画像で持ってるでしょ?! 別に浮気チェックとかじゃないけど、すごくスマホの中が気になる」
「別にフォルダ内をみるのは構わない。だが約束してくれ、絶対に怒らない事と削除しない事を」
「怒らないって何?!」
渋々スマートフォンを差し出したアルバート。その中を見せて貰い、春人は震撼した。
そこには相当枚数の春人の写真があった。
「僕の寝顔ばかりじゃん!」
泊まった回数よりも遥かに多いその数に驚く。しかも色々な角度から撮られている。
「こんなに撮ってどうするの?!」
「角度が違うだけで見え方も違ってくる。だからつい数が増えてしまったのだ」
「しかも寝顔ばかり!」
「こっそり撮っているのだから致し方ない」
「あっ……」
日付を確認すると遠距離になり、アルバートが来日していた時に撮られた寝顔が一番多い。
アルバートの寂しさが伺えてしまい、春人は口を閉ざした。
そんな表情を微塵も見せない男は春人と一緒に写真を見つめながら「やはり君はどんな寝顔でも可愛いね」と呟く。
「でもあのエッチな録音は可愛いとは別物でしょ」
「好奇心だよ。いつになっても好奇心と探究心は持っていないと。しかし、写真は別だ。好きな人の写真を持っていたいのは当然だろ?」
「僕もアルの写真欲しいな」
と、ダメもとで聞いてみると「撮るかい?」と簡単に了承を貰えた。
「いいの?!」
「どうぞ」
アルバートが春人を抱えて膝の上に座らせる。
「えっ? あの……これじゃ、アルバートだけ撮るのは無理なんだけど」
「折角だ。一緒に撮ろう。今日は素敵な記念日だからね」
そしてスマートフォンのカメラを起動させてインカメにする。
「ほら、カメラの方向いて」
春人が前でアルバートが後ろという姿が画面に映る。画面に映る春人は急に一緒に撮影する事になり恥ずかしさで下を向いていたが、観念して顔を上げた。
——カシャッ
二人で確認する。
「僕、顔がぎこちない」
春人は初めてのツーショットがお気に召さなかったようだ。
「なら、もう1枚」
そう言ってもう1度、アルバートはボタンを押したが、その瞬間、キスの届く位置にある頬へと唇を落とした。
——チュッ
「わっ!」
——カシャッ
2枚目は驚いた春人の頬にキスをするアルバートとのツーショットになった。
「アル!」
「もうしないよ。ほら、もう1回」
次こそはと前を向く春人。その春人の耳元に口をもっていき……
「愛しているよ」
「ひうッ」
——カシャッ
3枚目は、火照る前の身震いをするような顔の春人が写っていた。
真っ赤な顔をした春人が写真を確認しているアルバートを睨んでいる。
「もぉ!!!」
「君のタイミングで次はどうぞ」
さすがに次すれば本気で怒られると思ったアルバートは春人にスマートフォンを渡した。
「何もしないでよ!」
「分かっているよ」
そして次は、いつも通り春人の横に座り、彼の肩を抱く。
もう何もしていない、自然体だ。
——カシャッ
春人がシャッターを押してやっと普通の写真が撮れた。
「どうだい?」
満面の笑みを浮かべる春人が「いいかんじだよ!」と熱くなった端末を寄こした。
「ほお。これはなかなか」
そこにはなんとも幸せそうに微笑む2人が写っていた。それを見た瞬間、胸がキュっと締め付けられた。もちろん幸せな痛みだった。
「ありがとう、春人」
「えへへ」と微笑む春人は、撮影を終えた後も、余程嬉しかったのか思い出しては嬉しそうに頬を緩める。
アルバートはすぐさまその笑顔にカメラを向ける。
——カシャッ
「あっ、また撮った!」
「ごめんね。つい」
初めてのツーショットの横には、初めて寝顔以外の表情をした春人の写真が追加された。
それを見る度に、冬の寒さで凍えた身体が火照るような気分になる。
まるで掌に太陽が存在しているようだった。
今日が特別な日である事を知っている春人は、今日が何の日か知らない恋人の家へと向かっていた。
「あっ、花束買っていかないと」
いつもは贈られる側なので、花屋に入る事すら恥ずかしかった。
店の前で迷っていると、女性が目を輝かせて顔を出す。
「ダンディーな英国紳士さんにですか?」
「え?」
店先の花から女性店員に視線を移すと、その人はあの遠距離恋愛時代に春人に薔薇籠を届けていた女性だった。隠しても無駄だと、春人は「……はい」と頷いた。
「もう注文の電話も来ないし、最後がカーネーションだったから心配していたんです。でもこの前、ご本人が直接買いにいらしたので」
電話だけなのに何故顔が分かったのか尋ねると、アルバートが春人と付き合ってからずっとここで薔薇を買っている事が判明した。ラッピングのサービスがあるにも関わらず、「イギリスではそういう文化がないので」とやんわり断り自分でラッピングをする横顔は、誰かを思って綻び、ここの店員だけでなく、客までもメロメロにしていた。
「この前は薔薇を五本ほど」
看病のお礼に貰った本数と一致する。
「そういえばどうして最後はカーネーションだったんですか?」
「それは……えーと……」
「きっと意味があるんだろうなと思って紳士さんに尋ねたんですけど教えて貰えなくて」
それはそうだ。
花にまで嫉妬して、自分自身が家に来るときは薔薇ではなくカーネーションにしたなど、43歳の男がいえる事ではない。
「たぶんそこまで深い意味はないと思います。あっ、あの……それより、薔薇を買ってもいいですか?」
ようやく仕事の表情に戻った店員が何本か見繕い花束を作ってくれる。
「自分でラッピングされますか?」
と笑顔で聞かれたが、今日は失敗できない日だからと、春人は掌を向けた。
そして10本の赤やピンクの薔薇で華やかになった花束を持って、アルバートの家へと向かう。
インターフォンは慣らさずに、合鍵を差し込む。
いつもなら、足音がするのに、今日は全くしなかった。静かにリビングへ向かうと
(あっ、寝てる)
アルバートはソファーに足を投げ出して寝ていた。仕事でかなりお疲れのようだ。
そろりとプライベート用のリュックと花束を床に下ろしてアルバートに近づく。
(あれ?)
いつものアルバートと何か違うことに気がつく。
(イヤホンしてる)
アルバートは腕で目隠しをしていて、その腕の下から白いイヤホンのコードが伸びている。
イヤホンのコードを辿ると、アルバートとソファーの間に落ちてしまっている携帯に繋がっていた。
(アルって、どんな歌を聴くのかな?)
イヤホンを付けているのも珍しいが、彼がどんなのを聴いているのかも気になった。
人の趣味を覗くようで申し訳なかったがアルバートに触れないようにギリギリの所まで耳を近づける。イヤホンからは何も音漏れしていない。流石に外すとバレるだろうかとも思ったが、春人は細心の注意を払って手を伸ばす。
(あと……もう少し……よし、取れた!)
アルバートの耳からイヤホンを取ることに成功し、耳に近づける。
歌声らしきものは聴こえない。しかし、何かが擦れ合う音が聴こえてはいる。
(ヒーリング効果的なやつかな?)
よく分からないまま耳からイヤホンを離そうとしたその時だった……
『あっ……ダメ、アル!』
艶かしい声が聴こえてきた。もちろん歌声ではない。
「??!!」
この声の持ち主は誰が聞いても春人だ。そして熱い吐息の奥では、鈍いような破裂するような、腹に響く音が鳴っている。
『ヒュー、パンッ‼』
この寒い時期には不釣り合いな夏の夜空に咲く華の音だ。
『ああ。すまない、3週間ほどあける』
『えっ? そんなに?』
『寂しい?』
『寂しいよ……アル』
『私も寂しい。だから今、いっぱい抱かせて。君の声も沢山聞かせてくれ』
『僕も、沢山したい。んっ! あんっ、あっ!』
『いい声だね。可愛いよ』
会話の内容から長期の出張前に撮られたものだと判断できる。
つまり……
(今年の夏だ!)
春人はイヤホンを耳から外すと、ゆらりと立ち上がった。
そして先ほど花屋で女性店員をメロメロにしていたダンディーな英国紳士の目を覆う太い腕を退かす。
「んッ……」
流石に目を覚ましたアルバートは、ゆっくりと瞼をあげ水色の瞳を覗かせた。
しかし焦点があっていない上に、春人の頭上から降り注ぐ白色光に目がなかなか開かない。
そんな彼に春人は怒った時にしか出さない低い声で寝起きの挨拶をした。
「おはよう変態紳士」
嬉しくない単語と、春人が手にしているイヤホンで全てを理解したアルバートは、謝るどころか春人の腰を引き寄せた。
「うわっ!」
春人はアルバートの上に跨る形となり、バランスを必死に取ろうともたつく。その隙に、イヤホンはアルバートに奪われ、今度はアルバートの大きな掌の蓋つきで耳を塞いだ。
『んあッ、はあ……アル……きもちい……』
鼓膜を震わせる自身の淫靡な声に春人は耳を塞ぐアルバートの手を退かそうと重ねるがびくともしない。
「や、やだ……」
『やっ、やだああ‼』
現実の声と、録音された自分の声が重なり、ますます頬を染める。アルバートはそれをとても楽しそうに眺めている。寝起きとは思えないほど瞳は意地悪に光り、跨る春人に腰を小刻みに突き上げた。
「だめってば……んっ、恥ずかしい……僕……イきそう……」
アルバートには今、春人の耳の中でどういった行為が繰り広げられているか分からないが、本人が聞かずとも答えてくれた。
絶頂を迎える自分の声を聞きながら、春人は熱く膨らんだ下腹部をアルバートに擦りつける。
「ひッ、んあ……あ、あ、ぁぁああ」
腰を回すように擦りつけたかと思うと、そのままアルバートの胸の上に倒れ込んだ。イヤホンを拝借すると、夏の春人も果てていた。
肩で息をする春人の後頭部を撫で、イヤホンを片付けながらキスを落とす。
「凄く興奮していたな」
と、悪びれもしない声が放たれ、春人は身体を起こした。しかし、その時、湿った下着で下腹部を不快感が襲い、俯く。
「ご、ごめん。ここでイっちゃった……じゃなくて! どういう事なの?!」
「何が?」
春人はイヤホンが抜かれたスマートフォンを指さす。
「なにこれ!」
「君の喘ぎ声だが」
「それは分かってるよ!」
アルバートは春人を抱え上げ、一人でソファーに座らせる。そして涼しい顔でティッシュを手渡した。出張に行くことが決まった日、あの花火大会の日に、興味本位で撮った動画だった。
「なかなか来る気配がなくて、ソファーで横になっていたら思い出したのだ。夏の日のちょっとした悪戯を」
「エッチ! おかずにする気だったんだ!」
「あれで何かいかがわしいことをしようと思ったわけではない」
「嘘だ! それ以外に何に使うのさ!」
「もともと1人でなど、もう何年もしていない。ただ、3週間という長期の出張で何となく見るかもと思い撮ってみたのだ。結果、見ることは無かったのだが。見ずとも本人が来てくれたのだからね」
43歳の誕生日のサプライズを思い出し、アルバートは微笑みながらもう一度春人にキスをした。満更でもない春人は、まだ火照る身体を起こし、今は常時置いている着替えを取りに行った。
綺麗にした身体で戻ってくると、渡すはずだった花束は既にアルバートの手に渡っていた。イヤホンのせいでその存在をすっかり忘れていた春人は「しまった」と足を止める。
その仕草を何と勘違いしたのかアルバートは「ほお。君を口説く熱烈な人がいるようだ。何人だ?」と聞いてきた。
「口説かれてないよ!」
とその手から花束をひったくり、両手で持ち直してから、アルバートに差し出した。
「僕からアルバートに」
「私に?」
嬉しさで固まるアルバートの胸に花束を押し付ける。ようやく受け取ったのを確認すると、今度はリュックを漁り、甘い匂いのする茶色の物体を差し出しだした。
「はいこれ」
「これは?」
「甘さ控えめのガトーショコラです」
そっぽを向いてそういう春人は「前、村崎部長の娘さんにきいたやつ」と、あの日のスイーツ大作戦は今成功した。
アルバートは花束とラッピングされたお菓子を大切にテーブルに置くと、春人を抱きしめた。
「とても嬉しい。ああ仕事の疲れが癒えていく。君は本当に最高だ」
「……いつもお疲れ様」
「これがあればいくらでも頑張れそうだ。しかし、そんなに心配させるほど根を詰めているように見えたのかい?」
「それもあるけど……今日は特別な日だから」
「今日? 11月22日が?」
「うん。今日は……」
春人がアルバートを真っ直ぐに見つめる。
——いい夫婦の日なんだよ
「いい夫婦?」
「1122でいい夫婦。語呂合わせだよ」
「しかし私と君は……」
「そう、夫婦じゃない。でもずっと一緒だから、今日を祝ってもいいって僕は思ってるよ。記念日が増えるのも悪くないしね! はい、それだけ! とりあえずお仕事頑張ってね!」
逃げ場などないのに言い逃げをしようとする春人を捕まえ、アルバートはもう一度彼をソファーへ座らせた。そして自分は座らず、その下で跪き、手の甲にキスをした。
「こんな素敵な伴侶がいる私は幸せ者だ」
「僕の方が幸せだよ」
「私の方が……いや、二人の幸せだな」
手の甲を滑っていた唇が、春人の口を塞ぐ。
「ありがとう春人」
「……う、ん」
春人もアルバートの唇に吸い付き、すぐに口を尖らせる。
「あーあ、あの変態な録音さえなければもっと格好良く決めれたのに」
と先ほどの躓きで花束をスムーズに渡せなかった事が悔やまれる。
「次こそは格好良く決めてやるんだ。英国紳士になんか負けないもんね!」
と失敗を悔しがる日本人が舌を出し、引っ込めた後「ああ、変態紳士か」と嫌味を吐いたので、アルバートも仕返しをした。
「どうだった?」
「何が?」
「自分の喘ぎ声は」
春人の肩が震える。
今度こそその横に座り、肩を引き寄せ、アルバートは「教えて」と囁いた。
「知ってるくせに!」
「私はまだ見ていない」
「えっ?」
「出張で寂しくなるかもと思い撮ったが、結局見ていないのだ」
「見なくていい! だいたい僕がいるんだから、そんなの消してよ!」
と音声の自分に嫉妬する春人にアルバートは愛しさが込み上げた。
(しかし、それとこれとは違う)
「残しておくよ。君を苛めるのに最適だ」
「だったら他のは消して!」
「他の?」
「動画以外にあるでしょ?!」
心当たりがあるアルバートは少し身体を離した。
「僕の寝顔を待ち受けにしていたよね? ってことはまだ画像で持ってるでしょ?! 別に浮気チェックとかじゃないけど、すごくスマホの中が気になる」
「別にフォルダ内をみるのは構わない。だが約束してくれ、絶対に怒らない事と削除しない事を」
「怒らないって何?!」
渋々スマートフォンを差し出したアルバート。その中を見せて貰い、春人は震撼した。
そこには相当枚数の春人の写真があった。
「僕の寝顔ばかりじゃん!」
泊まった回数よりも遥かに多いその数に驚く。しかも色々な角度から撮られている。
「こんなに撮ってどうするの?!」
「角度が違うだけで見え方も違ってくる。だからつい数が増えてしまったのだ」
「しかも寝顔ばかり!」
「こっそり撮っているのだから致し方ない」
「あっ……」
日付を確認すると遠距離になり、アルバートが来日していた時に撮られた寝顔が一番多い。
アルバートの寂しさが伺えてしまい、春人は口を閉ざした。
そんな表情を微塵も見せない男は春人と一緒に写真を見つめながら「やはり君はどんな寝顔でも可愛いね」と呟く。
「でもあのエッチな録音は可愛いとは別物でしょ」
「好奇心だよ。いつになっても好奇心と探究心は持っていないと。しかし、写真は別だ。好きな人の写真を持っていたいのは当然だろ?」
「僕もアルの写真欲しいな」
と、ダメもとで聞いてみると「撮るかい?」と簡単に了承を貰えた。
「いいの?!」
「どうぞ」
アルバートが春人を抱えて膝の上に座らせる。
「えっ? あの……これじゃ、アルバートだけ撮るのは無理なんだけど」
「折角だ。一緒に撮ろう。今日は素敵な記念日だからね」
そしてスマートフォンのカメラを起動させてインカメにする。
「ほら、カメラの方向いて」
春人が前でアルバートが後ろという姿が画面に映る。画面に映る春人は急に一緒に撮影する事になり恥ずかしさで下を向いていたが、観念して顔を上げた。
——カシャッ
二人で確認する。
「僕、顔がぎこちない」
春人は初めてのツーショットがお気に召さなかったようだ。
「なら、もう1枚」
そう言ってもう1度、アルバートはボタンを押したが、その瞬間、キスの届く位置にある頬へと唇を落とした。
——チュッ
「わっ!」
——カシャッ
2枚目は驚いた春人の頬にキスをするアルバートとのツーショットになった。
「アル!」
「もうしないよ。ほら、もう1回」
次こそはと前を向く春人。その春人の耳元に口をもっていき……
「愛しているよ」
「ひうッ」
——カシャッ
3枚目は、火照る前の身震いをするような顔の春人が写っていた。
真っ赤な顔をした春人が写真を確認しているアルバートを睨んでいる。
「もぉ!!!」
「君のタイミングで次はどうぞ」
さすがに次すれば本気で怒られると思ったアルバートは春人にスマートフォンを渡した。
「何もしないでよ!」
「分かっているよ」
そして次は、いつも通り春人の横に座り、彼の肩を抱く。
もう何もしていない、自然体だ。
——カシャッ
春人がシャッターを押してやっと普通の写真が撮れた。
「どうだい?」
満面の笑みを浮かべる春人が「いいかんじだよ!」と熱くなった端末を寄こした。
「ほお。これはなかなか」
そこにはなんとも幸せそうに微笑む2人が写っていた。それを見た瞬間、胸がキュっと締め付けられた。もちろん幸せな痛みだった。
「ありがとう、春人」
「えへへ」と微笑む春人は、撮影を終えた後も、余程嬉しかったのか思い出しては嬉しそうに頬を緩める。
アルバートはすぐさまその笑顔にカメラを向ける。
——カシャッ
「あっ、また撮った!」
「ごめんね。つい」
初めてのツーショットの横には、初めて寝顔以外の表情をした春人の写真が追加された。
それを見る度に、冬の寒さで凍えた身体が火照るような気分になる。
まるで掌に太陽が存在しているようだった。
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沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
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