テトテヲトッテ ~杖と拳と時々亜人~

更楽 茄子

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思惑

その6

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シックでなんとも独特な雰囲気の入り口の宿屋がある。

入り口の大きな扉を開けると、そこにはそこそこ広いロビーとカウンターがあり、数人の受付が並んでいた。


黒衣の青年はつかつかと受付の方へと進み、神官の少女はその後を追う。

「お客様、いらっしゃいませ。『青い巨蟹亭』へようこそ。どのようなご用件でしょうか?」

「ここにダースって冒険者が泊ってる筈だ。案内してくれ」


『赤い雄羊亭』でアドルを訪れたその日は、そのまま教会に戻り夜を過ごした。

日が明け宿屋の営業が始まるのを待って、少女達はこの『青い巨蟹亭』へとやってきていたのだ。


「こちらのお部屋となります。ダース様、お客様をお連れしました」

扉をノックして受付が告げると、中から全身よく鍛えられた、壮年の男性が現れた。

昨日はマントや鎧で気付けなかったが、全身いたる所に鉤爪の跡の様な古傷が見て取れる。

「おう、アンタ達か。とりあえず立ち話はなんだ、中に入ってくれ」

2人が部屋に案内されるのを確認すると、連れてきた受付は「失礼します」と一礼をすると、カウンターホールに戻っていった。



「で、どうだ。オレと戦ってくれる気には、なってくれたか?」

目の前に座る青年に、前のめりがちになって男性は尋ねる。

「それなんだが、折角お前が得た賞金を懸けてまで戦うわけだろう?。少し派手にやりたいとは思わないか?」

青年の言いたい事がいまいち見えずに、詳しい説明を求める男性。

青年は「これは城にも協力してもらう前提なんだが」と前振りをしてから概要を伝えた。


「…なるほど、確かにそっちの方が面白そうだ。だがいいのか?、それだと負けた時に大恥をかく羽目になるが?」

男性がすこし意地悪な笑いをしながら質問をする─────が、それに青年は動じた様子もなく、ごく自然に返した。


「…それはそっちも同じことだろう?」

「ほう、言うねえ…だが確かに違いないな。よし、オレはその話に乗ろう」

横でおとなしく話を聞いていた少女が、パチパチと拍手をして2人を祝福する。


「んじゃ、今日はアンタ達を待ってる以外の予定は入れてねぇんだよ。アンタ達さえよければ、このまま城に行くかい?」

「そうだな、よろしく頼む」

準備をするのでホールで待っててくれと男性は言うと、部屋の奥においてある自分の装備の装着を始める。

2人は言われたまま部屋を出ると、カウンターのあるホール横に据えてある、長椅子に座り待つことにする。

しばらくすると下りてきた大剣を背負ったベテラン感漂う男性に合流すると、3人は宿を出発して城を目指した。



城に着いて、昨日の大臣に会いたいと告げると、応接室へと案内されて待つように言われる。

しばらくすると「私もそんな暇な身ではないんですよ…」とブツブツ言いながら、大臣が数人の兵士を引き連れてやってきた。


早速、大剣使いが大臣にさっき宿で合意した内容と、そしてちょっとした提案を告げる。

最初は不信感を前面に出しながら聞いていた大臣だったが、話を聞き進めるたびに目は輝き、最後の方は前のめりになり話を聞いていた。


「─────そちらの言う事は可能とは思います。闘技場の使用もその条件だというのならば許可致しましょう。ただ、問題はですが、そればかりは城の方では何とも…」

大臣は申し訳なさそうな顔をして、正面の男性に言う。

「あぁ、それに関してはこちらでやる。小遣い稼ぎの不正をしない様に監視する、数字に強い人員さえ借りれたら大丈夫だ」

「それならばなんとか…」

大臣は忙しいくなるなとつぶやきながら、うんうんうなって今後を考えてるようだった。



「─────では確認ですの。準備兼こちらのコンディションを整えるために1週間後に、お二人が闘技場で対決という事でいいですの?」

少女が2人に尋ねると、2人は大きく頷くと、大臣も横で「こちらもそのように進めます」と言ってくれた。

話もまとまったので、3人は大臣に礼を言うと、兵士の案内のもと外に出る。


「ところで、こちらの都合でダースさんの滞在が長引きますの。せめて宿代くらいは、こちらで出させていただきたいですの」

少女が男性に提案をした。

「…それなら、その金額でしこたま酒を買ってくれりゃそれでいい」

ワッハッハと楽し気に笑いながら男性は言う。

「飲み過ぎは体に毒なんですのよ?」と少女に釘を刺されながら、3人は街の酒屋目指して街の人ごみへと消えていった。

 
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