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高位鑑定士
その17
しおりを挟む「…それで、鑑定の結果は結局どうなってますの?」
神官の少女が目の前に座る高位鑑定士の女性に尋ねる。
「えっと…現状分かる状況だけで判断しますと、魔力の流れを感じを見る限り、攻撃系は厳しいと予想されます。今なされてる回復系の素養が高いと思います」
女性は姿勢を正して、せめて分かってる事だけでもと少女に伝えていく。
「あと魔力量なのですが、現在感じる限りは通常よりも多少低いかな、と。ただ、低いと言っても一般的な差程度なので、向いてないとかそういう話ではないと思います」
「いまいち分かりませんですけど、このまま神官職を続けて問題はないという事でよろしいですの?」
少女は女性が判断に困っている女性は気にせずに、答えを尋ねる。
「…はい。神官の方向性で力を磨いていく事を、私達はお勧めします」
「そうですの、ありがとうございましたでしたの」
少女はそう言うと席を立つ。
「なんか遅くなってごめんなさいですの。さぁ、リズさん、ラーズさん、早く宿を探しに行きますの」
自分のせいで長々と2人の足止めしてた事に罪悪感を感じているのか、少女は早く宿を決めて休もうと提案する。
確かに長期間の馬車移動の後そのまま鑑定と、忙しく動いた。
正直なところ結構疲れがたまっているのも事実だ。
「…そうだな。マレットの鑑定がはっきりしないのは残念だけど、仕方ないな。よし、じゃあ街に戻って、宿探すか!」
「おー」
「おーですの」
ラーズの提案に2人が賛同して、扉へ行こうとしたところ背後から呼び止められた。
「あの、皆さんちょっといいですか?」
3人が振り返ると、司祭長のキールがいた。
「あの、今お話が聞こえたところ、まだ宿が決定してない御様子。もし予定等に問題ないようでしたら、よろしければこの城の方で一晩過ごしていただく事は可能でしょうか?」
言われた3人に加えて、周囲の鑑定士や司祭が皆「えっ?」と声をあげる。
「もちろん、無理に足止めをするわけですし、料金等はもちろんお取りしません。そして、今晩と明日の朝の食事もこちらの方で用意させていただきます」
良く分からない話の流れに3人は答えられなくなっている。
「そして、お仲間さんを含めて、払っていただいている鑑定代もお返しします。いかがでしょうか?」
ラーズとリズは宿買いが浮いた上に、払った銀貨も帰って来るかも?と盛り上がっている。
ただ少女は一人訝し気にキールを見る。
「当然、それだけしてもらう以上、何かしらの見返りを期待しますのよね?」
少女が言うと、2人も「あっ」と同じくキールを見る。
「はい、はっきり申し上げます。マレットさんの事例は余りに分からない事だらけなんです。ですので、ぜひ明日も調べさせていただきたいのです」
少女はラーズとリズを見ると、視線に気づいたリズがラーズを見る。
「うん、俺達はそれでもいい。どうせあと3泊こっちでするんだし、城に泊まらさせてもらえるなら、むしろこちらからお願いしたいくらいだ」
そして、壁の方からは興味なさげな「まかせる」とだけ声がした。
「では、今晩はこちらでお世話になりますの。よろしくお願いしますの」
少女は一礼して、それを見た司祭長は安堵するのだった。
「しかし、まさかジュライに来てそのまま城に泊めてもらえるとはな…」
ラーズが装備を外し、今まで寝た事のないふかふかのベッドの上で、満面の幸せで寝転がっている。
「うん…マレットちゃんには悪いけど、ホント夢のようだね…」
リズもベットに寝転がり、全く予想をしてなかったふかふかのベッドを堪能する。
今回の発端の当の少女本人は、ベットに飛び込むとそのまま寝てしまっている。
「ご飯も美味しかったね…」
「そうだな…あんなの初めて食べたよ、俺…」
2人はさっき食べた食事を思い返しながら、また顔を緩ませる。
ここは城の客間。
それなりの身分の人を迎える相応の高級感ある室内に、かなり違和感しか感じない4人がいる。
一応部屋の前には見張りの兵士が立っており、トイレなんかの移動の際には城の警備の都合なのか、ついてくる様にはなっている。
それ以外、部屋で過ごす分には見張りの何もなく、今まで味わったことのないハイソな空気を少女達は堪能するのだった。
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