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第1章
その5
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まずは管理室の要となる制御装置を作ることに。
制御装置とは、自然ダンジョンの象徴とされるもので、ダンジョン全体を管理できる装置だ。自然的にどうやって作られたのかは未だに謎。
地面から石を立てに盛り上げるようにし、腰くらいの高さの小さな柱を作る。
その頂点に、5センチほどの穴を開けた。
「ここに、これを……」
僕はローブのポケットから、半透明な水晶を1つ取り出す。ちょうど穴に嵌るサイズだ。
みんなが興味深そうに手元を覗き込み、代表するようにライシュが口を開いた。
「ユルクさん、それは?」
「僕が造った魔導具ですよ。指定した範囲内の記録・維持・監視、モンスター・トラップの管理ーーーまぁ、簡単に言えば制御装置を模した物です」
「……シャルダン様、それってかなり凄い物ですよね?」
「当たり前じゃ。そもそも、範囲指定も記録や維持、管理は全てバラバラな魔法。一体、いくつの魔法があの魔導具に重ね掛けされておるのやら」
「普通に国宝レベルの物になると思うのですが」
「はは、皆さん大袈裟ですよ」
多重付与といっても、たかが10個程度しかありませんし。これから増えることも予測して、魔導具は少し容量を空けてある。
手にした水晶を、石柱の窪みに嵌める。そして、カチ、という小さな音をたてた。
水晶に手を当て魔力を流し込む。すると微かな熱を持ち、仄かな光が溢れ出した。
「起動。マスター認証、ユルク」
【ーーー認証しました。アルカディア、起動します。】
淡白な、女性とも男性ともつかない中性的な声が響いた。これは他の制御装置で使われていた声を複製している。
ダンジョンの管理室まで辿り着いた者ならお馴染みの声だ。
とりあえず、管理室の大元である制御装置はこれで完成。
「ユルクさん……『アルカディア』というのは」
「ん? あぁ、このダンジョンの名前です。正確には、この魔導具の名ですが」
「まぁ! もう名前が決まっていたのですね、素敵な名前です!」
ミーナが手を合わせて褒めてくれる。センスの良いミーナがそういうのなら、間違いはないだろう。
ありがとう、と彼女の頭を撫でた。くすぐったそうに笑うミーナは、昔から変わらないな。
「……ユルクさん、ミーナは俺のですからね」
「分かっていますよ」
そして、それに拗ねた顔をするライシュも変わらない。成長していないともいう。
僕がミーナはそういった感情で見ていないことは長年の付き合いで知っているでしょうに。困ったものです。
「ユルクさんは、もう少しご自分の容姿を自覚なさった方がよろしいかと」
「容姿……ですか……?」
首を傾げ、足下を見下ろす。まぁ、背は随分と高くなりましたね。気付けば髪も肩ほどまで伸びてました、そろそろ切るか縛るかしないと。
基本的に外見に拘ることがない為、放置だ。不老不死だから勝手に成長することもないし。
確か、昔に寄ったギルドの受付嬢が「女性は清潔な男性を好む」という話をしていた。それも100年近く前の話なので、今も当て嵌まるのか分からないが。
「すみません、髪が鬱陶しかったですか」
「…………」
無言が返ってきたが、何となく「そうじゃない」と言いたげな表情だった。やはりこういった話題は不得手だ。
**********
とりあえず、まずはアルカディアにダンジョン範囲を指定して覚えさせるところから。
今いる場所を最下層として、一旦さっきの休憩所までを登録する。
【ーーー登録しました。記録・維持を開始します。】
これで、自然に空間が潰れる心配はなくなった。
今後、階層を増やしたりモンスターやトラップを増やしたら、アルカディアに登録することで自動管理にできる。
そして、いつまでもダンジョン内へ入るのに、あの魔物が作った洞窟を歩いてくるのも面倒。
なので休憩所まで外から転移できる仕組みをつける。
今のところ僕と師匠、レイグス家の人達以外を中に入れる予定はないので、転移場所はレイグス邸敷地内と休憩所を繋ぐことにした。
僕と師匠は『ゲート』があるので問題ない。
「アルカディア、『ゲート』を常駐する門を休憩所に配置」
【配置します。】
その先は僕が後でレイグス邸に配置すれば良し。
そして、師匠とミーナに頼んでいたスペース内装の予定図案を貰い、それをアルカディアにも読み取らせる。
必要となる家具は買い足して登録すれば、自動的清掃と風化防止がつくようになる。
「便利過ぎませんか⁉︎」
「そうですか?」
簡単にシステムを説明すると、カイシュが随分と食いついてきた。
自然ダンジョンの制御装置も、これくらいのことはできるからなぁ。僕としては、アレが自然で生まれる方が驚きものなんだが。
いっそのこと、誰かがこっそり創ったと言われた方が納得できる。是非とも、その方法をご教授願いたい。
『始まりのダンジョン』と呼ばれる、世界最古のダンジョンであるミスティア。E級ではあるが、ちゃんとモンスターも宝も発生する。
アルカディアと違い、魔法で成っているわけではない。そういうものとして存在している。
『解析』の魔法を使ってみても、マスター権限で履歴を遡ってみても、誕生については知れなかった。
「ふむ。制御装置について、もっと深く研究するのもいいですね。100年くらいかければ、解析できそうな気がするのですが」
「君はもう少しダンジョン以外に興味を持ちなさい」
制御装置とは、自然ダンジョンの象徴とされるもので、ダンジョン全体を管理できる装置だ。自然的にどうやって作られたのかは未だに謎。
地面から石を立てに盛り上げるようにし、腰くらいの高さの小さな柱を作る。
その頂点に、5センチほどの穴を開けた。
「ここに、これを……」
僕はローブのポケットから、半透明な水晶を1つ取り出す。ちょうど穴に嵌るサイズだ。
みんなが興味深そうに手元を覗き込み、代表するようにライシュが口を開いた。
「ユルクさん、それは?」
「僕が造った魔導具ですよ。指定した範囲内の記録・維持・監視、モンスター・トラップの管理ーーーまぁ、簡単に言えば制御装置を模した物です」
「……シャルダン様、それってかなり凄い物ですよね?」
「当たり前じゃ。そもそも、範囲指定も記録や維持、管理は全てバラバラな魔法。一体、いくつの魔法があの魔導具に重ね掛けされておるのやら」
「普通に国宝レベルの物になると思うのですが」
「はは、皆さん大袈裟ですよ」
多重付与といっても、たかが10個程度しかありませんし。これから増えることも予測して、魔導具は少し容量を空けてある。
手にした水晶を、石柱の窪みに嵌める。そして、カチ、という小さな音をたてた。
水晶に手を当て魔力を流し込む。すると微かな熱を持ち、仄かな光が溢れ出した。
「起動。マスター認証、ユルク」
【ーーー認証しました。アルカディア、起動します。】
淡白な、女性とも男性ともつかない中性的な声が響いた。これは他の制御装置で使われていた声を複製している。
ダンジョンの管理室まで辿り着いた者ならお馴染みの声だ。
とりあえず、管理室の大元である制御装置はこれで完成。
「ユルクさん……『アルカディア』というのは」
「ん? あぁ、このダンジョンの名前です。正確には、この魔導具の名ですが」
「まぁ! もう名前が決まっていたのですね、素敵な名前です!」
ミーナが手を合わせて褒めてくれる。センスの良いミーナがそういうのなら、間違いはないだろう。
ありがとう、と彼女の頭を撫でた。くすぐったそうに笑うミーナは、昔から変わらないな。
「……ユルクさん、ミーナは俺のですからね」
「分かっていますよ」
そして、それに拗ねた顔をするライシュも変わらない。成長していないともいう。
僕がミーナはそういった感情で見ていないことは長年の付き合いで知っているでしょうに。困ったものです。
「ユルクさんは、もう少しご自分の容姿を自覚なさった方がよろしいかと」
「容姿……ですか……?」
首を傾げ、足下を見下ろす。まぁ、背は随分と高くなりましたね。気付けば髪も肩ほどまで伸びてました、そろそろ切るか縛るかしないと。
基本的に外見に拘ることがない為、放置だ。不老不死だから勝手に成長することもないし。
確か、昔に寄ったギルドの受付嬢が「女性は清潔な男性を好む」という話をしていた。それも100年近く前の話なので、今も当て嵌まるのか分からないが。
「すみません、髪が鬱陶しかったですか」
「…………」
無言が返ってきたが、何となく「そうじゃない」と言いたげな表情だった。やはりこういった話題は不得手だ。
**********
とりあえず、まずはアルカディアにダンジョン範囲を指定して覚えさせるところから。
今いる場所を最下層として、一旦さっきの休憩所までを登録する。
【ーーー登録しました。記録・維持を開始します。】
これで、自然に空間が潰れる心配はなくなった。
今後、階層を増やしたりモンスターやトラップを増やしたら、アルカディアに登録することで自動管理にできる。
そして、いつまでもダンジョン内へ入るのに、あの魔物が作った洞窟を歩いてくるのも面倒。
なので休憩所まで外から転移できる仕組みをつける。
今のところ僕と師匠、レイグス家の人達以外を中に入れる予定はないので、転移場所はレイグス邸敷地内と休憩所を繋ぐことにした。
僕と師匠は『ゲート』があるので問題ない。
「アルカディア、『ゲート』を常駐する門を休憩所に配置」
【配置します。】
その先は僕が後でレイグス邸に配置すれば良し。
そして、師匠とミーナに頼んでいたスペース内装の予定図案を貰い、それをアルカディアにも読み取らせる。
必要となる家具は買い足して登録すれば、自動的清掃と風化防止がつくようになる。
「便利過ぎませんか⁉︎」
「そうですか?」
簡単にシステムを説明すると、カイシュが随分と食いついてきた。
自然ダンジョンの制御装置も、これくらいのことはできるからなぁ。僕としては、アレが自然で生まれる方が驚きものなんだが。
いっそのこと、誰かがこっそり創ったと言われた方が納得できる。是非とも、その方法をご教授願いたい。
『始まりのダンジョン』と呼ばれる、世界最古のダンジョンであるミスティア。E級ではあるが、ちゃんとモンスターも宝も発生する。
アルカディアと違い、魔法で成っているわけではない。そういうものとして存在している。
『解析』の魔法を使ってみても、マスター権限で履歴を遡ってみても、誕生については知れなかった。
「ふむ。制御装置について、もっと深く研究するのもいいですね。100年くらいかければ、解析できそうな気がするのですが」
「君はもう少しダンジョン以外に興味を持ちなさい」
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