こちら、ダンジョン最下層。

Ryo

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第1章

その7

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 制御装置である魔導具、アルカディアーーディアが人型を取り始めて1週間が経った。
 最初こそ戸惑っていた様子のみんなも、今では当たり前のようにに接している。
 特に性別を考えて造ったわけではなかったのだが、ディアの姿からして女性体のようだ。
 魔導具が自我を持ち、しかも勝手に人型を取るようなことは今まで聞いたことがないが、なってしまったものは仕方ない。
 そういうものだろう。

【マスター、どうぞ。】
「ありがと」

 す、と差し出されたカップを受け取る。どこで知ったのか、中身は僕の好きなハーブティだ。
 味も申し分なく、王宮の侍女が入れるような仕上がりだった。

「うん、美味しい」

 僕の感想に小さく頭を下げ、他のみんなにも配って回るディアはとても魔導具とは思えない。
 まぁ、こうやってお茶を淹れてくれるだけでなく、資料をまとめてくれたり掃除をしてくれたり、人型のディアはとても役立つので問題はないだろう。
 そんな彼女の身につけているシンプルな白ドレスのような服の胸元には、僕が造った魔導具である水晶がついている。
 ディアがアルカディアであるという証拠だ。

「ところでユルクよ。階層分けは終わったのか?」

 カップをテーブルに戻した師匠の言葉に、笑みを浮かべて頷く。

「えぇ、もちろん。ディアの手伝いもあって、各ランクへの『ゲート』門も完成しています。あとは内装ですね」

 内装とは、つまりモンスターやトラップ、そして宝箱の配置だ。
 階層ごとの迷宮やモンスターハウス、ボス部屋も作りディアにマッピングさせている。

「今日は各ランクボスを考えようかと」
「……君がダンジョンボスなのは、決定事項なのかな?」
「? はい、それは」

 何を今更、と師匠の言葉に首を傾げる。それは最初に決まっていたことだ。みんなも最後には賛成していたと思っていたけど。
 まぁ……どうしても、と言うのならツテで頼もうかと思っていた相手もいるにはいるのだが。
 しかし、その相手も他のダンジョンボスをやっているので、少しばかり心苦しい。

「まぁまぁ、シャルダンさん。そもそも、ここまで辿り着けるかさえ分からないんですし」
「そうねぇ……A級ダンジョンを攻略できる人もそんなにいませんし」

 ミーナの言う通り、既存のA級ダンジョンを攻略できた冒険者は、ギルドで把握されている人数は30名程度。存命なのは10名程になる。
 それがS級ダンジョンになると、3名にまで減る。

「最初からS級に挑戦できる権利を持っているのは10名いるかどうか、その中で最下層まで来れる可能性のある人物なんて、2人いれば良い方じゃないですかね」

 ライシュの言葉にレイグス夫妻も頷き、師匠も溜息をついて頷いた。

「それもそうじゃの。それで、ランクボスの目処はついとるのか?」
「そうですねぇ……」

 ディアに視線を向けると、腕に抱えている資料の束から一枚の紙を差し出した。
 そこには、彼女と相談しながら出したランクボスの候補が書き出されている。

「まずはーーE級ランクボスとして、ホワイトウルフ」
「初心者向けとしては妥当かと」

 ホワイトウルフとは、名前の通り真っ白な毛皮をした大型狼のD級モンスター。普通の狼に比べ一回りほど大きく、氷の魔法を操る。群れることを嫌い、基本的に単体で行動している。
 氷魔法『氷結』は、局所の温度を急激に下げることで、対象を凍らせる。当たれば厄介に感じるかもしれないが、効果範囲が狭く、尚且つ温度変化で攻撃場所を察知できる為に対処は難しくない。
 移動速度が速いのでこちらの攻撃を当てるのも大変だが、慣れれば規則性や癖も掴める。何より火に弱く、『火球』を何発か当てれれば攻略は可能だ。
 ポイントとしては、前衛がホワイトウルフの動きを妨害しつつ後衛の魔法師が攻撃する。
 ダンジョンは基本的にパーティを組んで挑むものだ。少なくても駄目、多くても駄目。バランスの良いパーティの組み方、そして組む事の大切さを学んで欲しい。

「1人でS級ダンジョンを攻略したユルクさんがそれ言います?」

 ライシュ、深く考えちゃいけない。

「次はD級ランクボス、ボブゴブリン」
「E級を攻略した初心者は、ちょっと気が大きくなっておるからの。敵にも知恵があることを学ぶには良いな」

 小さな小人のような姿だが、人に比べ醜悪な顔と残虐な性格をしているのがゴブリンだ。ボブゴブリンは、小さな集団のリーダー的な存在としている。
 特徴としては体格が一回り大きく、何より知能が高いことだ。ただのゴブリンだけではあまり脅威にならない烏合の衆だが、ボブゴブリンが加わるだけで、危険度はかなり跳ね上がる。
 E級ダンジョンに出るモンスターはほとんど知能が低いせいで、D級に上がった途端に死ぬ冒険者がとても多い。
 知能のあるなしで、その強さは桁違いになることを覚えておかねばならない。
 連携を見直し、正面突破だけが攻略法ではないことも学べるだろう。

「C級では、ワイバーンはどうでしょう」
「ワイバーンですか……それまでは陸上モンスターばかりですし、空上モンスターの練習もしませんとね」

 ワイバーンは大きな翼を持った小型ドラゴンだ。師匠が相手したような本当のドラゴンと違い、3メートルの体長と小さめ。
 しかし、これまでのモンスターと違い飛ぶことが可能になる。長時間飛んでいることはできないが、それでも頭上からの攻撃は脅威だろう。
 鋼のように頑丈な鱗の身体は、生半可な物理攻撃は通じない。耐熱、耐寒にも優れており、魔法さえも今までのままでは役に立たない。
 冒険者にとって、最初に立ち塞がる大きな壁の1つとされていた。
 パーティとしての連携だけでなく、個人の練度も上げなくては敵わない相手になる。仲間がいるからと、修練を怠れば待つのは最悪……パーティ全滅だ。
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