ある女の日々

ろんた

文字の大きさ
上 下
3 / 3

高校受験の話

しおりを挟む
私は晴れて高校生になった。
だがこのステージにのし上がってくるまでに鼻を垂らしながら野原を走り回っていたような私でさえ数え切れないほどの努力を重ねてきたのである。

中3、夏。
夏休みに入ってから私が入っていた塾は熱く燃えさかっていた。生徒達はお盆以外の毎日、ほぼ塾に朝から晩までいて塾のファンと化していた。
さらにぼっちを極めた私は夏季合宿などという陰の人間には非常に心苦しい計画を組まれていた。
2018の夏は熱く、重かった。
今まで生きてきたどの夏よりも。

秋もいろいろあったけど、冬。
ラストスパートをかけて毎日ひたすら勉強した。第一志望校に向けて、この勉強をしていて合っているのだろうか、など考えている暇はなかった。ただがむしゃらに勉強した。塾と図書館を往復する毎日を送っていて、あれ、なんか私すげーなとか自惚れていた時間もあった。私なりには今までで一番努力した。

なんだかんだ受験当日。
朝は寒く、外に出た時の空気が異様に冷たかったのを覚えている。祖父にもらったお守りと、父にもらった手紙をポケットにしっかりとしまった。私は、この高校に通う。そう思って試験会場に向かった。
筆記試験後。やりきった。
そう思った。
外に出た時の開放感をかみしめて車で待っている母に元気よく、ただいま!と言った。

合格発表日。
午前は友達と受かってるかな~とか、絶対私落ちてるよ!なんてことを聞きながらぼーっと過ごした。
午後。
母と一緒に合格発表を見に行った。
母は、
行っておいで。と、一言言った。
私は、
うん。といった。

私の受験番号は仮として200番としよう。普通科、合格者。その字を見つけたときは緊張でおかしくなりそうだった。
ゆっくりと、ただゆっくりとみた。
194、196、198、199...次の番号は、



202、だった。



あれ、あれ。あ、あ、え?
理解できなかった。わからなかった。
なにが起こっているのか。
見間違いかと思って熱く重くなった頭で必死に見ても200という番号はなかった。
涙はでなかった。
後ろの方にいた母に静かに、
受からなかった。
そう言った。

言った瞬間に塾の先生やずっと支えてくれた母、家族、あれだけの努力、思い出があふれてきて涙が本当に自然に出てきた。受かった子たちが歓声を上げている中、泣きながらその高校の校門から出て行った。辛い。悲しい。申し訳ない。
それしかなかった。

その日はなにも口に入らず、一日中泣いた。朝起きるとカラカラだった。
でも、学校には行かなきゃいけない。
辛かった。
受かったみんなが妬ましかった。
羨ましかった。
みんな私を可哀想って目でみるんだ。
そう思って学校へ行くと、
同じ塾だった女の子が私をみるなり抱きしめて頑張ったね、頑張ったね。って言ってくれた。
学校では絶対泣かないって決めてた。なのに、なんか。駄目だって。
カラカラなはずなのにどんどん水が出て行って、廊下なのにわんわん泣いた。

私は、志望校に落ちたんだなあ。
そう思った。

今はまた、新しい環境で楽しくやっていけている。でもあの時の悲しさはもう味わいたくない。だから今のうちから勉強をし始めている。大学受験ではあんな思いをまたしないために。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...