『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。

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第6章 組織の疑念とスパイの影

27. 孤立無援の影に、差し伸べられた光

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 味方が、消えた……
 いや、消えたというか、きれいさっぱり抹消された。

『デッド・エンド』から外部への連絡網はすべて遮断された……
 さらに……潜入捜査官としての俺、瀬戸の記録は、
 警察組織側のデータベースからも跡形もなく消去。

 名前なし。履歴なし。
 ついでに、帰る場所もなし。
 おまけに、裏で動く第三勢力の影までちらついている。
 誰が敵で、誰が味方か……もう考えるだけ無駄な状況だ。

 薄暗いセーフルームで、俺は壁に投影した簡易マップを睨んでいた。
 あぁ……ここまでかな。詰んだよ……
 最後にもう一度パンケ―キ食べたかったななんてな……


 その瞬間。

「瀬戸さん」

 背後から、やけに聞き慣れた声。
 振り向くより早く、気配はもうそこにあった。

「……また鍵も使わずに入ってきたのか」

 月明かりの中に立っていたのは、光希。
 音もなく、遠慮もなく、いつも通りだ。

「今は非常事態ですから」
 さらっと言いながら、タブレットを差し出してくる。
 嫌な予感しかしない。

 画面に映し出されたのは、組織の極秘指令。
 赤字で、やたら親切に強調された文字。

 《シャドウ:排除対象》

「組織、決断早いですね」

 どこか感心したような口調。

「捕獲でも説得でもなく、即・排除。
 瀬戸さん、意外と嫌われてました?」

「慰め方が下手すぎるだろ……」

 喉の奥が、ひくりと鳴る。

「……そうか」

 平静を装ったつもりだったが、内心は普通に動揺していた。
 いや、だいぶ。

 その瞬間、光希が一歩近づく。拒む間もなく、腕が伸び、
 俺の身体はやさしく、だが確実に引き寄せられた。

「大丈夫です」

 近い。
 普通に近い。

「世界中を探しても、あなたの味方はいませんから」

 それ、安心させる前振りじゃないよな?

「……僕以外は」

 ……ほら来た。

「ねえ、瀬戸さん」

 額が触れそうな距離で、光希が微笑む。

「僕に、救われてくれませんか?」

 軽い口調。
 でも、選択肢は一つしかない言い方。

 ……分かってる。

 この手を取ったら、
 もう“自由な影”としては生きられない。

 監視付き。
 管理付き。
 たぶん過保護も標準装備。

「……厄介なヒ-ロ-だな」
「褒め言葉として受け取ります」

 俺は、なぜか拒めなかった。

 任務以外のことには無頓着だった俺。
 恋愛経験ゼロ。
 誰かに「守る」と断言される側になるなんて、想定外もいいところだ。

 なのに。
 目の前の、かつて俺が導いた少年で、
 今では俺を囲い込もうとしているガチでやばいヒーローに
 心を絡め取られていく。

 ……ああ、もう後戻りできない。
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