『悪の幹部ですが、正義のヒーローの愛が重すぎて殉職しそうです』

るみ乃。

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第9章 熱に溺れる夜 ※微濃厚な甘い描写あり

42.捕まえた光、どうしても離せない

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 正直に言えば……最初は、止めるつもりだった。
 止める、つもり、だった。
 ※大事なことなので二回言う。

 でも、切羽詰まったあんな顔で距離を詰めてこられたら、

「……無理です」
 ……って、それ俺が言う台詞だよな?
 次の瞬間、唇を塞がれて、はい終了。
 逃げ道、ゼロ。

 勢い任せのキスじゃない。
 俺を包み込むみたいに、ゆっくり、逃がさないキス。
 距離の詰め方が、ずるい。

「おい、ちょっと待っ……」

 軽口のつもりだったのに、
 息が乱れて、語尾が情けなく消える。

 触れられるたびに、理性が一枚ずつ剥がれていく。
 シャツの中に入り込んでくる手が、
 確かめるみたいに背中をなぞって、
 胸の敏感なところを掠めた瞬間――

「……んっ、……」

 自分のものとは思えない、甘い吐息が漏れた。
 ……待て待て。
 なんで俺の身体、そんなに正直なんだ。

 悔しいのに、否定できない。
 初めての感覚に、内心ちょっと……いや、だいぶ焦る。

「瀬戸さん」

 名前を呼ばれるだけで、
 身体の奥がじわっと熱くなるのも問題だ。

 光希と俺は、
 悪の幹部シャドウとヒーロー・ルミエール。
 潜入捜査官と、元教官と候補生。

 それだけの関係の、はずだった。
 潜伏先として、少しの間……

 なのに気づけば、
 触れられるのを、待っている。
 ……いや、もっと触れてほしいとか思ってる。

「途中で止まれ、とか言わないでくださいね」

 その声は、冗談でも勢いでもない。
 真剣すぎて、逃げ道を全部塞いでくる。

 ……ああ、だめだ。
 その顔で、それ言うなよ……。

 この手を振りほどいても、ほどかなくても、
 たぶん一生、俺は余計な後悔をする。

 もう、腹の底から湧き上がる
 光希への想いを、隠せそうにない。

「……分かってる」

 そう答えた自分の声が、
 思った以上に低くて、自分で驚いた。

 余裕?
 そんなもの、とっくに行方不明だ。

 ベッドに倒れ込んで、
 額が触れて、呼吸が混ざる。
 不思議と、怖くはなかった。

 触れられるたび、熱が広がって、
 考えることを一つずつ手放していく。

 軽口も、理屈も、立場も、
 全部どうでもよくなっていく。

「……ほんとに、困ったヒーローだな」

 半分本音、半分諦めでそう言うと、
 光希は小さく笑って、さらに距離を詰めてきた。

 あぁ、もう。
 はっきり分かった。
 俺は、こいつに恋してる。

 こんなふうに触れられるのは、初めてで、
 もしかしたら、最後かもしれない。

 それでも。
 今は、離したいとは思わなかった。

 背中に回した腕に、思わず力が入る。
 光希のシャツに指をかけて、体温と、絡まる呼吸に溺れる。

「光希……来い……」

 喉が熱くて、声が掠れる。
 自嘲気味にそう呟いて、それでも、離す気はなかった。

 光希をぎゅっと引き寄せ、今度は俺から唇を奪う。
 合図にするみたいに、夜が、さらに深く沈んでいく……
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