冥土神楽

来星馬玲

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序・蔵の話

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 古く由緒ある家には付き物と言いましょうか、私がお仕えしている旦那さまのお家にも、一つ、大きな蔵がございます。

 長年、旦那さまのご祖父様……私が以前お仕えしていた、先代の旦那様が亡くなられてからは、誰も利用する方がいなくなってしまいました。

 現在の旦那さまが正当な持ち主であられますが、蔵のある裏庭に足を運ぶこともあまりございません。どうやら、あの蔵への興味をすっかり失ってしまわれたご様子。

 でもまあ……現在の旦那さまにとっては、その方が幸せと言えるかもしれません。このような蔵には何かしらの不吉な存在の一つや二つ、眠っているのが常というものでして。

 あの、常闇の物の怪に触れた記憶は、ご本人が忘れているつもりであっても、ある種の傷跡となって、心の奥底に残り続けているのでしょうね。

 それでも、恩義あるご祖父様が大切になさっていた蔵であるのに違いはありません。それが、そのまま埃を被っているのを見るのは忍びないものでして、私が毎日手入れを欠かすことなく、今日に至っている次第です。

 ですが、このまま何事もなく……という訳には、参りませんね。

 眠り続けるのに耐え切れなくなった魔物は、外部の人間に干渉し、過ちへ誘い込むための罠を張っていますから。

 ……過ち、とは申しましたが、時代の流れによる必然と呼べるものでもありますね。この世の全ては常に形を変え続けていく、どれほど厳重に施錠した封印であっても、やがては朽ち果て、変化を妨げられ続けてきた存在は世に放たれねばなりません。

 まあ、旦那さまにとっては災難でしょうが、私としては楽しみでもあるのですよ。私と旦那さまの絆を思い起こして下さるかもしれませんからね。

 うふふっ。
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