かけられたのはDom/Subの魔法でした。

市瀬雪

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従属のルール04

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「俺もこの二次性っていうのについてそんな詳しいわけじゃないんだけど……確かプレイをするような間柄のDomとSubには、一つ決めておかなきゃならないことがあって……セーフワードっていうんだけど」
「そうみたいですね」

 ラファエルは視線を落としたまま、淡々と頷いた。

「それをSubが口にしたら、Domはそれ以上なにもしてはいけない。やりすぎ防止とでも言うんですかね。それがあるから、信頼関係がなりたつとかなんとか……」
「そう、そうなんだよ。さすがラファエル」

 ちょうど今回、カヤが貸し出した翻訳版の文献にもそれはちゃんと書いてある。短時間でよく読み込んでいるなぁと、かたわらに置かれたその書物を見ながら感心する。感心すると同時にほっとして、

「まぁ、それがちゃんと決められていれば、まず問題ないと思うよ」

 カヤは小さく息をつき、自分のカップを引き寄せる。
 けれどもその手はすぐに止まる。

「決めてません」

 ラファエルは微笑って言った。

「え?」
「セーフワード。まだ決めてないんですよ」
「き……決めてない? 必要だって知ってたのに?」

 カヤは瞬き、わずかに身を退いた。

「誤解しないでくださいね。別にわざとじゃないですから」

 カップを下ろしたラファエルがゆっくり視線を上げる。

「だってまさか、自分たちがそんなことになってるなんて思わないじゃないですか。僕だってDomだSubだなんて夢物語のような認識でしたし、ギルベルトにいたってはなにひとつ知らない、理解できない、そんな状況でそこまで冷静にはなれませんよ」
「そ、そっか……そうだよな。ごめん、初めての状況だし、わけわからなくなって当然だよな」

 カヤは同情するように首肯する。わざとじゃないと知って安心もしたし、あらためてラファエルの冷静さに感嘆する。

「でも、とりあえず良かったよ。ギルがサブドロップするようなこともなかったみたいだし……セーフワードの方は、これから決めれば問題ないだろうし」
「はい。今日はのんびりできると言っていましたから、昼までは寝ていると思いますが……起きたら早速聞いてみます。どんな言葉がいいか」
「うんうん。それがいいと思う」

 本当によかった、と自分のカップに口をつけるカヤに、ラファエルはにこりと笑みを深めた。
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