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後悔の先に03
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いなけりゃいないで、別に気にならない。
そばにいたって、いちいち楽しくおしゃべりしたり、一緒にゲームをしたり――なんてことはほとんどない。
それでもともにいる時間はそれなりに長く、いつしか同じ空間にいることが当たり前みたいになっていた。それは今回の魔法事故に遭う前からそうだった。
「……晴れてんな」
昨日は雪が降っていた。積もるほどではなかったが、そうなると外出は面倒だ。なにより寒いし。
ギルベルトは窓越しの空を見上げて、仕方ないとばかりに息をついた。
ラファエルが姿を消して二日、適当にあるもので朝食を済ませたギルベルトは、愛用のモッズコートに袖を通し、リリスに借りたマフラーを巻いて外に出た。
「さっみ……」
ばさりと蝙蝠のような羽を広げる。この時期に空を飛ぶのはやはり寒い。寒いけれど、地上を歩くよりはずっと効率的だから選択肢からは外せない。
「風邪でもひいたらてめぇのせいだからな」
ぶつぶつとこぼしながらマフラーに鼻先まで埋めて、あまり速度を出さずに飛行を続ける。
例の魔法はまだとけていないようだった。だってまだ、思い出すだけで変な高揚感がある。
ラファエルのグレアを浴びながら、〝キスして〟と甘く告げられる。従えば〝いい子〟と優しく微笑まれ、頭をそっと撫でられる。
昨夜だってそんな夢を見たばかりに、朝は下着が濡れていた。最悪だった。
「やぁ、ギル」
「カヤ」
いつもよりゆっくり飛んでいたからか、寒くて視線が下がっていたからか、声をかけられるまでその気配に気付かなかった。顔を上げると、そこに浮いていたのはカヤだった。
カヤは箒に乗っているから、羽音がしない。そのせいでよけいにわからなかったのかもしれない。
「身体の方は大丈夫?」
「別に平気」
なんのことを言っているかはすぐにわかった。文句を言ってやりたい気持ちもあったけれど、寒い上に面倒が買ってギルベルトは適当に頷くだけにした。かたわら、視線を周囲に巡らせる。
「さっき、ラファエルらしき人が向こうの湖畔にいたんだけど……見間違いかな」
「あ?」
ギルベルトは瞬いた。それから思わず失笑する。
「ほらな」
「え?」
「なんでもねー」
こんなふうに、あの潔癖な天使さまなら絶対にすぐ見つかると思っていた。ギルベルトは呼気を揺らし、ばさりと羽音を響かせる。
カヤの言う湖畔は、もともと捜索する場所として候補にあった。それもわりと有力な方に。
「ああ、あと、ギルたちにかかってる魔法のことだけど、さすがにそろそろとけると思うから。早まることはあっても、長引くことはないと思うよ」
ギルベルトは飛行速度を上げた。その分カヤと距離が開いたけれど、すぐさままた並ばれる。
さすがは腕利きの魔法使い――と思ったら、急にその姿が視界から消えた。
「わ――!」
カヤの高度が一気に下がる。次には遠ざかる悲鳴を残し、あっというまに眼下の森の中へと落ちていった。
「……そういやあいつ、箒と相性悪いんだったな」
こぼしながらも、ギルベルトは進路を変えない。カヤにとっては日常茶飯事のことだと聞いているし、カヤなら大丈夫だろうと勝手に結論づけて、視線はまっすぐ前方に据えた。
「……そろそろとける、か……」
わかっていたことを反芻しながら、ギルベルトは更に速度を上げる。マフラー越しに霞む吐息が、あっというまに流れて消えた。
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