16 / 20
第16話 野々宮 凛 (25歳 事務) 〜 結城 悠人
しおりを挟む
都会の喧騒が遠く、微かな残響となって消えていく。
新宿の片隅、重厚な石造りのビル。その一角に掲げられた「Le Sanctuaire」の控えめなプレートが、凛の視界で歪んでいた。
逃げ出したい……、けれど、縋らなければ壊れてしまう。
野々宮凛は、冷え切った指先で自分の二の腕を強く掴んだまま、祈るような心地でその重い扉を押し開けた。
カチリ、と背後で鍵の閉まる音が響く。
室内を支配するのは、外界の毒を濾過したような濃密な沈黙。
安息を誘う乳香――サンダルウッドの深く、どこか神聖な薫りが、鼻腔をくすぐり、肺の奥まで満たしていく。
それは、日々の事務作業と他人の顔色を伺う生活の中で、磨り減り、削り取られてきた彼女の心を、一時だけ凪の状態へと導いてくれる気がした。
凛は、ずっと自分の輪郭が嫌いだった。
鏡を見るたび、そこに映る整わない顔立ち、垢抜けない指先、どこか自信なげな猫背……。
他人の視線に晒されるたび、それらは「美しくない」という罪状となって、彼女の背に重くのしかかる。
愛されたい、認められたいと願うほどに、自分を愛せない矛盾。
その苦しみが、喉の奥で溶けない氷の塊となって、彼女の呼吸を浅くさせていた。
「凛さん。お待ちしておりました。」
耳を打ったのは、深みのある、それでいて慈愛に満ちた低音の響き。
現れた結城悠人は、怯える仔鹿のように彷徨う凛の瞳を、逸らすことなく真っ直ぐに見つめた。
彼は、彼女が恥じ入るように隠そうとした、震える指先を……。
壊れ物を扱うかのような、恐ろしいほどに優しい手つきで、そっと留める。
「……私の、こんな手……っ、ごめんなさい。綺麗じゃなくて、節くれだっていて……」
「いいえ。とても、愛らしく、尊い手です。今まで一生懸命、社会の中で、自分を守ってきた証ですね……」
悠人の温かな掌が、凛の冷え切った指先を包み込む。
その、抱擁のような温度。
指先から心臓へと、直接熱が流れ込んでくるような感覚に、彼女の頑なな自罰感情が、一瞬だけ、確かに揺らいだ。
彼に導かれ歩む廊下。
足元を照らす揺らめく間接照明の柔光が、彼女の卑屈な影を、ゆっくりと、優しく溶かしていく。
案内された部屋の奥。
清潔なリネンが敷かれた施術台に身を預ければ、そこはもう、外界から完全に隔絶された二人だけの聖域だった。
「身体が……とても、強張っている。……いいんですよ。僕の前では、飾る必要なんてありません」
悠人の指が、凛の耳朶を、うなじを、羽毛のような軽やかさで掠める。
カサリ、と乾いた音がした気がした。
彼女の緊張が、彼の指先を通じて、ひとつ、またひとつと解かれていく。
「ゆうき、さん……っ……でも、私……、脱いだら、もっと醜くて……」
「凛さんは、そのままで十分に、溜息が出るほど美しい。それを、今からこの肌に、直接刻み込みます……」
囁きと共に、温められたサンダルウッドの香油が、彼女の背中に落とされる。
じゅわ、と、熱が皮膚を透過し、心まで染み渡るような錯覚。
悠人の大きな手が、肩甲骨の縁をなぞり、ゆっくりと、慈しむように腰の窪みへと滑り降りる。
触れられるたび、凛の内側で、厚く張り付いていた氷の層が音を立てて砕け、熱い奔流へと変わっていった。
「あ……っ、んんっ……。あつい……っ」
「身体が、喜んでいますね。……この滑らかな曲線も、柔らかい肌も、すべてがあなたという奇跡の一部です……」
彼の愛撫は、文字通り「慈しむ」ためのものだった。
自分でも目を背けていた、少し肉の付いた二の腕、コンプレックスだった太ももの柔らかさ、腰の肉付き。
それらを、彼は一つひとつ丁寧に、まるで極上の絹を検品するかのように、吸い上げるように愛でていく。
その、手のひらの大きな円を描くような動きは、彼女という存在そのものを、全肯定する儀式のようであった。
「あ、っ……ん……っ♡ なんで……そんなに、優しく……っ。私、なにも、返せないのに……」
「あなたの全てが、愛おしいからです。……ほら、こんなに熱くなって、私の手を求めてくれている……」
悠人の指先が、膝の裏を愛撫し、やがて太ももの内側……、秘められた花弁の入り口へと、躊躇いなく寄せられる。
凛は羞恥に顔を染め、膝を閉じようとしたが、彼の瞳には軽蔑の色など微塵もなかった。
そこにあるのは、深い海のような、静謐で、包容力に満ちた愛だけだ。
「ここも……、こんなに震えて、蜜を零している。……自分を責める必要なんて、どこにもないんですよ」
「ひ、あ……っ♡ ゆうき、さん……っ、そこ、は……あぁっ!」
指先が、とろけるような粘膜を割り、ゆっくりと、奥へ。
内側に直接触れられる衝撃に、凛の背中が弓なりに反った。
自分の身体の中に、これほどまでに熱く、敏感な場所があったなんて。
彼の指が、内側の壁を優しく、かつ力強く撫でるたび、頭の中が真っ白に塗り潰されていく。
「ひぐっ、あ゛、あぁ……っ♡ いいの……? 私、こんな……はしたない、声を……っ」
「いいですよ……。もっと、自分を許して。……壊れるくらい、感じていいんです。……もっと、私に溺れてください」
悠人の動きが、熱を帯びて加速する。
もう一方の手が、彼女の胸の先端を優しく摘み、指先で転がす。
上下から攻め立てられる快楽の波。
それは、彼女が今まで抱えてきた劣等感、執着、自己嫌悪を、根こそぎ洗い流していく。
濁音の喘ぎが、静かな部屋に木霊し、彼女の身体は、自分でも知らなかった官能の深淵へと、真っ逆さまに沈んでいった。
「あ、あ……っ♡ ひぐっ……、あ゛ぁぁっ! くるしい、……きもちいい、のが……っ、とまらな、い……っ♡」
「そのまま、解き放たれて。……凛さん、あなたは今、最高に輝いていますよ……」
指先が、彼女の最奥、最も熱い一点を、弾くように、抉るように愛撫する。
クチュ、と、濡れた音が、静寂の中で淫らに響く。
その音さえも、今は自分を肯定する音楽のように聞こえた。
内側から溢れ出す熱い雫が、彼の指を濡らし、彼女の足元を汚していく。
けれど、その汚れさえも、今は「生きている」という証左に他ならなかった。
「あ、っ、あ゛ぁぁぁぁ――っ♡」
絶頂の瞬間。
視界を、眩いばかりの白い閃光が走り、彼女は悠人の逞しい腕にしがみついた。
全身の筋肉が硬直したあと、一気に弛緩していく。
溢れ出したのは、快楽の雫だけではなかった。
「自分でもいいのだ」「このままの私で、愛されていいのだ」という、魂からの許し。
それが、熱い涙となって頬を伝い、彼の肩を、ぐっしょりと濡らした。
……はぁ、……はぁ、……っ……。
やがて訪れたのは、深い海の底のような、完全な、慈愛に満ちた静寂。
悠人は、力尽きた凛を、壊れ物を抱くように抱き寄せた。
その髪を、何度も、何度も、宝物を確かめるように撫でる。
「……生まれ変わったみたい。……私、生きていて、いいんですね。……こんな私でも、いいんですね」
「ええ。あなたは、世界でたった一人の、かけがえのない、美しい女性です……」
凛の瞳には、先ほどまでの怯えや、自己を呪う影は、もうどこにもなかった。
窓のない室内。
けれど、彼女の心には、確かな金の粒子が舞い、暗かった未来を、眩いほどに照らしている。
サンダルウッドの薫りが、心地よい疲れと共に、余白を埋めるように漂う。
指先が肌を掠める、その微かな摩擦音さえも、今は愛おしい音色として、彼女の胸に響いた。
再生の余韻を、全身の細胞で噛み締めるように。
彼女は彼の腕の中で、深く、深く、重く溜まっていた毒を吐き出すように、息を吐いた。
音のない間。
愛されたという、鮮烈で温かな記憶だけが、消えることのない灯火となって、彼女の内に、いつまでも、いつまでも灯り続けていた。
新宿の片隅、重厚な石造りのビル。その一角に掲げられた「Le Sanctuaire」の控えめなプレートが、凛の視界で歪んでいた。
逃げ出したい……、けれど、縋らなければ壊れてしまう。
野々宮凛は、冷え切った指先で自分の二の腕を強く掴んだまま、祈るような心地でその重い扉を押し開けた。
カチリ、と背後で鍵の閉まる音が響く。
室内を支配するのは、外界の毒を濾過したような濃密な沈黙。
安息を誘う乳香――サンダルウッドの深く、どこか神聖な薫りが、鼻腔をくすぐり、肺の奥まで満たしていく。
それは、日々の事務作業と他人の顔色を伺う生活の中で、磨り減り、削り取られてきた彼女の心を、一時だけ凪の状態へと導いてくれる気がした。
凛は、ずっと自分の輪郭が嫌いだった。
鏡を見るたび、そこに映る整わない顔立ち、垢抜けない指先、どこか自信なげな猫背……。
他人の視線に晒されるたび、それらは「美しくない」という罪状となって、彼女の背に重くのしかかる。
愛されたい、認められたいと願うほどに、自分を愛せない矛盾。
その苦しみが、喉の奥で溶けない氷の塊となって、彼女の呼吸を浅くさせていた。
「凛さん。お待ちしておりました。」
耳を打ったのは、深みのある、それでいて慈愛に満ちた低音の響き。
現れた結城悠人は、怯える仔鹿のように彷徨う凛の瞳を、逸らすことなく真っ直ぐに見つめた。
彼は、彼女が恥じ入るように隠そうとした、震える指先を……。
壊れ物を扱うかのような、恐ろしいほどに優しい手つきで、そっと留める。
「……私の、こんな手……っ、ごめんなさい。綺麗じゃなくて、節くれだっていて……」
「いいえ。とても、愛らしく、尊い手です。今まで一生懸命、社会の中で、自分を守ってきた証ですね……」
悠人の温かな掌が、凛の冷え切った指先を包み込む。
その、抱擁のような温度。
指先から心臓へと、直接熱が流れ込んでくるような感覚に、彼女の頑なな自罰感情が、一瞬だけ、確かに揺らいだ。
彼に導かれ歩む廊下。
足元を照らす揺らめく間接照明の柔光が、彼女の卑屈な影を、ゆっくりと、優しく溶かしていく。
案内された部屋の奥。
清潔なリネンが敷かれた施術台に身を預ければ、そこはもう、外界から完全に隔絶された二人だけの聖域だった。
「身体が……とても、強張っている。……いいんですよ。僕の前では、飾る必要なんてありません」
悠人の指が、凛の耳朶を、うなじを、羽毛のような軽やかさで掠める。
カサリ、と乾いた音がした気がした。
彼女の緊張が、彼の指先を通じて、ひとつ、またひとつと解かれていく。
「ゆうき、さん……っ……でも、私……、脱いだら、もっと醜くて……」
「凛さんは、そのままで十分に、溜息が出るほど美しい。それを、今からこの肌に、直接刻み込みます……」
囁きと共に、温められたサンダルウッドの香油が、彼女の背中に落とされる。
じゅわ、と、熱が皮膚を透過し、心まで染み渡るような錯覚。
悠人の大きな手が、肩甲骨の縁をなぞり、ゆっくりと、慈しむように腰の窪みへと滑り降りる。
触れられるたび、凛の内側で、厚く張り付いていた氷の層が音を立てて砕け、熱い奔流へと変わっていった。
「あ……っ、んんっ……。あつい……っ」
「身体が、喜んでいますね。……この滑らかな曲線も、柔らかい肌も、すべてがあなたという奇跡の一部です……」
彼の愛撫は、文字通り「慈しむ」ためのものだった。
自分でも目を背けていた、少し肉の付いた二の腕、コンプレックスだった太ももの柔らかさ、腰の肉付き。
それらを、彼は一つひとつ丁寧に、まるで極上の絹を検品するかのように、吸い上げるように愛でていく。
その、手のひらの大きな円を描くような動きは、彼女という存在そのものを、全肯定する儀式のようであった。
「あ、っ……ん……っ♡ なんで……そんなに、優しく……っ。私、なにも、返せないのに……」
「あなたの全てが、愛おしいからです。……ほら、こんなに熱くなって、私の手を求めてくれている……」
悠人の指先が、膝の裏を愛撫し、やがて太ももの内側……、秘められた花弁の入り口へと、躊躇いなく寄せられる。
凛は羞恥に顔を染め、膝を閉じようとしたが、彼の瞳には軽蔑の色など微塵もなかった。
そこにあるのは、深い海のような、静謐で、包容力に満ちた愛だけだ。
「ここも……、こんなに震えて、蜜を零している。……自分を責める必要なんて、どこにもないんですよ」
「ひ、あ……っ♡ ゆうき、さん……っ、そこ、は……あぁっ!」
指先が、とろけるような粘膜を割り、ゆっくりと、奥へ。
内側に直接触れられる衝撃に、凛の背中が弓なりに反った。
自分の身体の中に、これほどまでに熱く、敏感な場所があったなんて。
彼の指が、内側の壁を優しく、かつ力強く撫でるたび、頭の中が真っ白に塗り潰されていく。
「ひぐっ、あ゛、あぁ……っ♡ いいの……? 私、こんな……はしたない、声を……っ」
「いいですよ……。もっと、自分を許して。……壊れるくらい、感じていいんです。……もっと、私に溺れてください」
悠人の動きが、熱を帯びて加速する。
もう一方の手が、彼女の胸の先端を優しく摘み、指先で転がす。
上下から攻め立てられる快楽の波。
それは、彼女が今まで抱えてきた劣等感、執着、自己嫌悪を、根こそぎ洗い流していく。
濁音の喘ぎが、静かな部屋に木霊し、彼女の身体は、自分でも知らなかった官能の深淵へと、真っ逆さまに沈んでいった。
「あ、あ……っ♡ ひぐっ……、あ゛ぁぁっ! くるしい、……きもちいい、のが……っ、とまらな、い……っ♡」
「そのまま、解き放たれて。……凛さん、あなたは今、最高に輝いていますよ……」
指先が、彼女の最奥、最も熱い一点を、弾くように、抉るように愛撫する。
クチュ、と、濡れた音が、静寂の中で淫らに響く。
その音さえも、今は自分を肯定する音楽のように聞こえた。
内側から溢れ出す熱い雫が、彼の指を濡らし、彼女の足元を汚していく。
けれど、その汚れさえも、今は「生きている」という証左に他ならなかった。
「あ、っ、あ゛ぁぁぁぁ――っ♡」
絶頂の瞬間。
視界を、眩いばかりの白い閃光が走り、彼女は悠人の逞しい腕にしがみついた。
全身の筋肉が硬直したあと、一気に弛緩していく。
溢れ出したのは、快楽の雫だけではなかった。
「自分でもいいのだ」「このままの私で、愛されていいのだ」という、魂からの許し。
それが、熱い涙となって頬を伝い、彼の肩を、ぐっしょりと濡らした。
……はぁ、……はぁ、……っ……。
やがて訪れたのは、深い海の底のような、完全な、慈愛に満ちた静寂。
悠人は、力尽きた凛を、壊れ物を抱くように抱き寄せた。
その髪を、何度も、何度も、宝物を確かめるように撫でる。
「……生まれ変わったみたい。……私、生きていて、いいんですね。……こんな私でも、いいんですね」
「ええ。あなたは、世界でたった一人の、かけがえのない、美しい女性です……」
凛の瞳には、先ほどまでの怯えや、自己を呪う影は、もうどこにもなかった。
窓のない室内。
けれど、彼女の心には、確かな金の粒子が舞い、暗かった未来を、眩いほどに照らしている。
サンダルウッドの薫りが、心地よい疲れと共に、余白を埋めるように漂う。
指先が肌を掠める、その微かな摩擦音さえも、今は愛おしい音色として、彼女の胸に響いた。
再生の余韻を、全身の細胞で噛み締めるように。
彼女は彼の腕の中で、深く、深く、重く溜まっていた毒を吐き出すように、息を吐いた。
音のない間。
愛されたという、鮮烈で温かな記憶だけが、消えることのない灯火となって、彼女の内に、いつまでも、いつまでも灯り続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる