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第1話 転移から始まる物語
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「これで、ようやく全員が上位ジョブにクラスチェンジできるな」
目の前では親友であり『ブレイブ』のトーリが、白い歯をキラリと輝かせながら俺に笑いかけている。
「それにしても、ライアスだけ成長限界まで随分と時間かかったわよね?」
そう言葉を発したのは『アークウィザード』のキャロ。彼女は悪戯な笑みを浮かべると、頬に手を当て首を傾げた。
「つまり、それだけ期待できるってことですよ。成長に時間を費やしたぶんだけ、クラスチェンジで凄いジョブを引き当てられる確率が高いことは有名ですからね」
『アークビショップ』のメアリーが言う。彼女に優しい瞳を向けられると、心臓がドキッとする。
「あー、また二人が見つめ合ってるよ!」
「本当に。お前ら時と場所を考えろよな?」
トーリとキャロがはやし立てると、俺たちは咄嗟に顔を逸らした。
「もうっ! そんなんじゃありませんからっ!」
メアリーは顔を赤くして否定する。
「それにしても、パーティーを組んでから三年。ライアスがクラスチェンジすればいよいよ俺たちもBランク探索者になれそうだな」
「そしたら、もっと難関迷宮に挑めるようになるわね」
「将来の目標は最難関迷宮ですね」
三人は盛り上がりを見せる。
「三人とも、気が早いって。まだ俺、クラスチェンジもしてないのに。もし外れだったらどうするつもりなんだよ?」
三人はクラスチェンジを終え、それぞれが希少ジョブと呼ばれる上位ジョブを与えられている。
トーリの『ブレイブ』は集団戦で効果を発揮し、仲間同士の信頼をそのまま力にすることができる。
キャロの『アークウィザード』は多種多様の強力な魔法が使えるようになり、その恩恵は大量の敵と対峙した時に発揮される。
メアリーの『アークビショップ』はある意味反則で、ほとんど使える者が存在しない治癒魔法で怪我を癒すことができ、支援魔法で味方の能力を底上げすることができる。
いずれも、国や魔道士ギルド、神殿からスカウトが来る程なのだが、三人はそれをかたくなに断っていた。
「もし、ライアスの上位ジョブが外れだったら? そんなの決まってる」
「私たちはあんたが使える人間だから付き合ってるわけじゃないわ」
「背中を預けたくなる仲間だから、だから一緒にいるんです」
トーリが、キャロが、メアリーがそれぞれ言ってくれる。
「もし、お前の上位ジョブが弱くても、俺たちが鍛えてやるからさ」
「死にそうなほど酷使するから安心してよね」
「どんな重傷を負っても私が治しますから!」
結果はどうなっても俺と一緒にいてくれると言っている。俺は三人の温かい言葉を聞くと、先程までの不安が消えていた。
街の中心にそびえたつ漆黒の物体。これは『モノリス』と呼ばれており、どの街にも必ず一つこれが存在している。
この『モノリス』はこの世界に存在していない材質で出来ていて、人が存在する前からこの世界に存在していた。
モノリスを利用しようとした人間がその場に集まり、街や国を後から作ったのだ。
モノリスに触れると、自分が持つ情報をわかりやすく数値で示してくれる。
先程の話、トーリたちのジョブについてもモノリスに表示された情報の一つだ。
クラスチェンジに必要なのはモンスターを討伐した際に得られる経験だと言われている。
モンスターとの戦闘や迷宮探索を生業としている者が触れると『成長限界』という情報が浮かび上がることがある。
これが出ると上位ジョブへとクラスチェンジすることができ、より強力な力を身に着けることができるのだ。
すべての儀式はモノリスで行われるので、今も何人かの人間が、モノリスに触れ情報を引き出したりなどしていた。
「それじゃあ、行ってくる」
覚悟を決めた俺は、三人にそう告げるとモノリスへと近付いていく。
基本的に個人情報を他人に知られたくない人間が多いので、同行はしないことになっている。利用している人間に近付かないのがマナーになっているので、彼らはここで待機だ。
「ま、待って、ライアス」
少し歩いたところで、キャロが追いかけてきた。
彼女は俺の前で立ち止まると、
「え、えーとさ……」
普段の沈着冷静な姿とは違い、何かを言い淀んでいる。
戦闘や買い物の時でも即決断して、俺やメアリーを急かす彼女にしては珍しく歯切れが悪い。
「なんだよ? クラスチェンジをすぐ済ませるから、その後でもいいか?」
言葉を待っている間に不安が増幅してきた。早く自分の上位ジョブを確認して安心したくなったのだ。
「この後、時間ちょうだい!」
「へ? この後って、クラスチェンジの後?」
「うん」
「別に構わないけど?」
夜からは俺のクラスチェンジの御祝いに酒場へと繰り出すことになっている。その前の時間なら空いている。
「抜け駆けとか、メアリーに悪い気もするけど、勝機があるうちに仕掛けておきたいからね」
彼女は「よし!」と拳を握りしめるとぶつぶつと呟いた。
「わかった、じゃあ終わったら一緒に茶でも飲みに行こう」
「楽しみにしているからね」
キャロはこれまで見たことがないような嬉しそうな笑みを俺に見せると、トーリたちの下へ戻った。
「さて、俺の上位ジョブは何になるのか……?」
信頼できる仲間がいる。気の合う友人もいる。一生共に過ごしたい人がいる。
未来は明るく、これから先の幸せも保証されている。
そう念じ、俺はモノリスに触れると、自分の情報を引き出した。
名 前:ライアス『成長限界』
年 齢:18
職 業:探索者
称 号:Cランク探索者
筋 力:150
敏捷度:145
体 力:130
魔 力:13
精神力:20
器用さ:109
運 :111
魔法がまったく使えず、剣で戦ってきたせいか、総じてそれらの数値が高くなっている。
クラスチェンジをするのは簡単で、この『成長限界』という文字に触れてやり、出てくるメッセージを読み、その下に表示される『はい』の文字に触れるだけで良い。
皆を待たせている焦りもあったからか、早く三人に追いつきたい気持ちが強かったからか、それとも先程のキャロの笑顔が今までよりも可愛かったことを思い出したからだろうか?
「『成長限界』の確認をしました。ユグドラシルへの転移を行いますがよろしいですか?」
出てくるメッセージをよく読まず、俺は『はい』の文字に触れると、
「えっ?」
身体が浮かぶ感覚がして、目の前の景色が、一瞬で切り替わった。
目の前では親友であり『ブレイブ』のトーリが、白い歯をキラリと輝かせながら俺に笑いかけている。
「それにしても、ライアスだけ成長限界まで随分と時間かかったわよね?」
そう言葉を発したのは『アークウィザード』のキャロ。彼女は悪戯な笑みを浮かべると、頬に手を当て首を傾げた。
「つまり、それだけ期待できるってことですよ。成長に時間を費やしたぶんだけ、クラスチェンジで凄いジョブを引き当てられる確率が高いことは有名ですからね」
『アークビショップ』のメアリーが言う。彼女に優しい瞳を向けられると、心臓がドキッとする。
「あー、また二人が見つめ合ってるよ!」
「本当に。お前ら時と場所を考えろよな?」
トーリとキャロがはやし立てると、俺たちは咄嗟に顔を逸らした。
「もうっ! そんなんじゃありませんからっ!」
メアリーは顔を赤くして否定する。
「それにしても、パーティーを組んでから三年。ライアスがクラスチェンジすればいよいよ俺たちもBランク探索者になれそうだな」
「そしたら、もっと難関迷宮に挑めるようになるわね」
「将来の目標は最難関迷宮ですね」
三人は盛り上がりを見せる。
「三人とも、気が早いって。まだ俺、クラスチェンジもしてないのに。もし外れだったらどうするつもりなんだよ?」
三人はクラスチェンジを終え、それぞれが希少ジョブと呼ばれる上位ジョブを与えられている。
トーリの『ブレイブ』は集団戦で効果を発揮し、仲間同士の信頼をそのまま力にすることができる。
キャロの『アークウィザード』は多種多様の強力な魔法が使えるようになり、その恩恵は大量の敵と対峙した時に発揮される。
メアリーの『アークビショップ』はある意味反則で、ほとんど使える者が存在しない治癒魔法で怪我を癒すことができ、支援魔法で味方の能力を底上げすることができる。
いずれも、国や魔道士ギルド、神殿からスカウトが来る程なのだが、三人はそれをかたくなに断っていた。
「もし、ライアスの上位ジョブが外れだったら? そんなの決まってる」
「私たちはあんたが使える人間だから付き合ってるわけじゃないわ」
「背中を預けたくなる仲間だから、だから一緒にいるんです」
トーリが、キャロが、メアリーがそれぞれ言ってくれる。
「もし、お前の上位ジョブが弱くても、俺たちが鍛えてやるからさ」
「死にそうなほど酷使するから安心してよね」
「どんな重傷を負っても私が治しますから!」
結果はどうなっても俺と一緒にいてくれると言っている。俺は三人の温かい言葉を聞くと、先程までの不安が消えていた。
街の中心にそびえたつ漆黒の物体。これは『モノリス』と呼ばれており、どの街にも必ず一つこれが存在している。
この『モノリス』はこの世界に存在していない材質で出来ていて、人が存在する前からこの世界に存在していた。
モノリスを利用しようとした人間がその場に集まり、街や国を後から作ったのだ。
モノリスに触れると、自分が持つ情報をわかりやすく数値で示してくれる。
先程の話、トーリたちのジョブについてもモノリスに表示された情報の一つだ。
クラスチェンジに必要なのはモンスターを討伐した際に得られる経験だと言われている。
モンスターとの戦闘や迷宮探索を生業としている者が触れると『成長限界』という情報が浮かび上がることがある。
これが出ると上位ジョブへとクラスチェンジすることができ、より強力な力を身に着けることができるのだ。
すべての儀式はモノリスで行われるので、今も何人かの人間が、モノリスに触れ情報を引き出したりなどしていた。
「それじゃあ、行ってくる」
覚悟を決めた俺は、三人にそう告げるとモノリスへと近付いていく。
基本的に個人情報を他人に知られたくない人間が多いので、同行はしないことになっている。利用している人間に近付かないのがマナーになっているので、彼らはここで待機だ。
「ま、待って、ライアス」
少し歩いたところで、キャロが追いかけてきた。
彼女は俺の前で立ち止まると、
「え、えーとさ……」
普段の沈着冷静な姿とは違い、何かを言い淀んでいる。
戦闘や買い物の時でも即決断して、俺やメアリーを急かす彼女にしては珍しく歯切れが悪い。
「なんだよ? クラスチェンジをすぐ済ませるから、その後でもいいか?」
言葉を待っている間に不安が増幅してきた。早く自分の上位ジョブを確認して安心したくなったのだ。
「この後、時間ちょうだい!」
「へ? この後って、クラスチェンジの後?」
「うん」
「別に構わないけど?」
夜からは俺のクラスチェンジの御祝いに酒場へと繰り出すことになっている。その前の時間なら空いている。
「抜け駆けとか、メアリーに悪い気もするけど、勝機があるうちに仕掛けておきたいからね」
彼女は「よし!」と拳を握りしめるとぶつぶつと呟いた。
「わかった、じゃあ終わったら一緒に茶でも飲みに行こう」
「楽しみにしているからね」
キャロはこれまで見たことがないような嬉しそうな笑みを俺に見せると、トーリたちの下へ戻った。
「さて、俺の上位ジョブは何になるのか……?」
信頼できる仲間がいる。気の合う友人もいる。一生共に過ごしたい人がいる。
未来は明るく、これから先の幸せも保証されている。
そう念じ、俺はモノリスに触れると、自分の情報を引き出した。
名 前:ライアス『成長限界』
年 齢:18
職 業:探索者
称 号:Cランク探索者
筋 力:150
敏捷度:145
体 力:130
魔 力:13
精神力:20
器用さ:109
運 :111
魔法がまったく使えず、剣で戦ってきたせいか、総じてそれらの数値が高くなっている。
クラスチェンジをするのは簡単で、この『成長限界』という文字に触れてやり、出てくるメッセージを読み、その下に表示される『はい』の文字に触れるだけで良い。
皆を待たせている焦りもあったからか、早く三人に追いつきたい気持ちが強かったからか、それとも先程のキャロの笑顔が今までよりも可愛かったことを思い出したからだろうか?
「『成長限界』の確認をしました。ユグドラシルへの転移を行いますがよろしいですか?」
出てくるメッセージをよく読まず、俺は『はい』の文字に触れると、
「えっ?」
身体が浮かぶ感覚がして、目の前の景色が、一瞬で切り替わった。
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