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第25話 鬼蝙蝠
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「キキキィーーー!」
「くそっ! こいつはなんてモンスターだ?」
通路の両側を黒が埋め尽くしたかと思うと、鳥程の大きさのモンスターが飛行して襲ってきた。
「これは鬼蝙蝠(おにこうもり)と言うもののけです。集団で行動し飛び回り、牙で噛みついて攻撃してきます」
キキョウがモンスターの説明をしている間も、鬼蝙蝠は俺たちに攻撃を仕掛けてくる。
コマイヌの身体から現れた警報器は、いまだけたたましい音を立てており、剣を振るって倒している間にも俺たちを囲むモンスターの数は増えていった。
「こいつらの弱点は火です。『ファイア』」
彼女は巻物を取り出すと、火の魔法を使った。
天井を焦がすのではないかという勢いに、鬼蝙蝠が焼かれボトボトと地面に落ちる。
「火よっ!」
その様子をみた俺も、ちょうど火属性剣を装備していたので火の魔法を放った。
「キィィーーーー!」
鬼蝙蝠は旋回して避けるのだが、何匹かは俺の火による攻撃を受けて羽が焦げ動きが鈍くなる。キキョウに比べて威力が低いのでしかたない。
「まずいな……」
今の魔法攻撃で火が有効というのは証明されたが、撃った直後に身体の中から力が抜けて行ったのがわかる。
たった一発撃ったところで即倒れるということはないが、魔法を加えた戦術となると、徐々に疲労が溜まり思考が鈍くなり攻撃を避けられなくなってしまう。
「ライアス! まだまだ集まってきています!」
「一匹一匹は問題雑魚なんだっ! 火で怯ませて倒し続けるしかない!」
隙を見せると齧られる。空を飛び、全方位から攻撃されているので流石に防ぎようがない。
「痛い痛いっ! 耳を噛まれていますっ!」
キキョウは耳や尻尾を重点的に狙われている。警報は既に鳴りやんでいるが、視界一杯を鬼蝙蝠が覆っているので状況がわからない。
たった二人で、大量にモンスターを倒しきる魔法の専門家もいない状況で、現状を覆すのは無理だろう。
「こうなったら……」
俺は剣を振り、彼女に取り付いている鬼蝙蝠を斬り落とすと、彼女を抱き締めた。
「ら、ライアスこんな時に何をっ!」
「結界を張れっ!」
次の瞬間、キキョウが破邪の指輪を使い結界を張る。
「で、ですが、中に残っている鬼蝙蝠が……」
結界は透明な膜のようなものを張ることができるのだが、押し出すように効果を発揮するわけではなく、彼女を中心にドーム型に出現する。
「こいつらさえ倒せば、ひとまず休むことができる!」
見えない膜で中と外が隔離されたので、中にいる鬼蝙蝠さえ倒せば問題はない。
「な、なるほどっ!」
彼女はハッと気づくと武器を持ち、残った鬼蝙蝠を倒すため斬りかかって行った。
「何か、凄く落ち着かない気分ですね……」
結界内の鬼蝙蝠を倒し終えた俺たちは、地面に向かい合って座りながらも結界の外に張り付いている鬼蝙蝠をみた。
先程まで倒していた鬼蝙蝠は牙などのアイテムを落として残りは迷宮に吸収されてしまった。
ガーゴイルのやコマイヌのドロップに関しては、回収する間もなく鬼蝙蝠に襲われてしまったので、どうなっているのかわからない。
「確かに気持ち悪いな……」
赤い目を光らせ口を開いて牙をむき出しにしている。
至近距離でこうして観察していると嫌な気分になる。
「それにしても、キキョウが破邪の指輪を選んでくれて良かった……」
二階に登ってからそれなりに強いモンスターが現れても平気だと考えていたが、まさか弱いモンスターを大量にけしかけてくるとは思わなかった。
あのまま戦っていた場合、それなりに傷を負わされ苦労していたのは間違いない。
「それを言うのなら咄嗟に思いつくライアスも凄いです。私は結界内に敵が入ることばかりに気を取られていて、張った後に倒すなんて考えもしませんでしたから」
「なら、お互いの手柄ってことでいいな?」
俺はそう言うと無限の腕輪からアイテムを取り出す。
「回復石使うからな」
次の瞬間、キキョウの身体を優しい白い光が包み込む。
「ん、自分でヒールの巻物を使うより暖かくて気持ち良いですね」
目を瞑り、回復の力を受け入れるキキョウ。やがて、光が収まると目を開けた。
「どうですか?」
「ああ、齧られた場所は完全に元通りになっている」
「本当に痛かったんです、ミミも尻尾も……。毎日丁寧に扱っていたのに……」
キキョウはそう言うと、外にいる鬼蝙蝠を睨み付けた。
「とりあえず、こいつらがある程度離れるまでは結界を張り続けてくれ。今日はここで休むとするか」
警報器も鳴りやんでいることだし、後ろに詰めて生きるモンスターもその内散るだろう。
「そうですね、まだ二階に上がったばかりです。慎重に行動しましょう」
そう答えると、キキョウは俺に身体を預けて寛ぎ始めるのだった。
「くそっ! こいつはなんてモンスターだ?」
通路の両側を黒が埋め尽くしたかと思うと、鳥程の大きさのモンスターが飛行して襲ってきた。
「これは鬼蝙蝠(おにこうもり)と言うもののけです。集団で行動し飛び回り、牙で噛みついて攻撃してきます」
キキョウがモンスターの説明をしている間も、鬼蝙蝠は俺たちに攻撃を仕掛けてくる。
コマイヌの身体から現れた警報器は、いまだけたたましい音を立てており、剣を振るって倒している間にも俺たちを囲むモンスターの数は増えていった。
「こいつらの弱点は火です。『ファイア』」
彼女は巻物を取り出すと、火の魔法を使った。
天井を焦がすのではないかという勢いに、鬼蝙蝠が焼かれボトボトと地面に落ちる。
「火よっ!」
その様子をみた俺も、ちょうど火属性剣を装備していたので火の魔法を放った。
「キィィーーーー!」
鬼蝙蝠は旋回して避けるのだが、何匹かは俺の火による攻撃を受けて羽が焦げ動きが鈍くなる。キキョウに比べて威力が低いのでしかたない。
「まずいな……」
今の魔法攻撃で火が有効というのは証明されたが、撃った直後に身体の中から力が抜けて行ったのがわかる。
たった一発撃ったところで即倒れるということはないが、魔法を加えた戦術となると、徐々に疲労が溜まり思考が鈍くなり攻撃を避けられなくなってしまう。
「ライアス! まだまだ集まってきています!」
「一匹一匹は問題雑魚なんだっ! 火で怯ませて倒し続けるしかない!」
隙を見せると齧られる。空を飛び、全方位から攻撃されているので流石に防ぎようがない。
「痛い痛いっ! 耳を噛まれていますっ!」
キキョウは耳や尻尾を重点的に狙われている。警報は既に鳴りやんでいるが、視界一杯を鬼蝙蝠が覆っているので状況がわからない。
たった二人で、大量にモンスターを倒しきる魔法の専門家もいない状況で、現状を覆すのは無理だろう。
「こうなったら……」
俺は剣を振り、彼女に取り付いている鬼蝙蝠を斬り落とすと、彼女を抱き締めた。
「ら、ライアスこんな時に何をっ!」
「結界を張れっ!」
次の瞬間、キキョウが破邪の指輪を使い結界を張る。
「で、ですが、中に残っている鬼蝙蝠が……」
結界は透明な膜のようなものを張ることができるのだが、押し出すように効果を発揮するわけではなく、彼女を中心にドーム型に出現する。
「こいつらさえ倒せば、ひとまず休むことができる!」
見えない膜で中と外が隔離されたので、中にいる鬼蝙蝠さえ倒せば問題はない。
「な、なるほどっ!」
彼女はハッと気づくと武器を持ち、残った鬼蝙蝠を倒すため斬りかかって行った。
「何か、凄く落ち着かない気分ですね……」
結界内の鬼蝙蝠を倒し終えた俺たちは、地面に向かい合って座りながらも結界の外に張り付いている鬼蝙蝠をみた。
先程まで倒していた鬼蝙蝠は牙などのアイテムを落として残りは迷宮に吸収されてしまった。
ガーゴイルのやコマイヌのドロップに関しては、回収する間もなく鬼蝙蝠に襲われてしまったので、どうなっているのかわからない。
「確かに気持ち悪いな……」
赤い目を光らせ口を開いて牙をむき出しにしている。
至近距離でこうして観察していると嫌な気分になる。
「それにしても、キキョウが破邪の指輪を選んでくれて良かった……」
二階に登ってからそれなりに強いモンスターが現れても平気だと考えていたが、まさか弱いモンスターを大量にけしかけてくるとは思わなかった。
あのまま戦っていた場合、それなりに傷を負わされ苦労していたのは間違いない。
「それを言うのなら咄嗟に思いつくライアスも凄いです。私は結界内に敵が入ることばかりに気を取られていて、張った後に倒すなんて考えもしませんでしたから」
「なら、お互いの手柄ってことでいいな?」
俺はそう言うと無限の腕輪からアイテムを取り出す。
「回復石使うからな」
次の瞬間、キキョウの身体を優しい白い光が包み込む。
「ん、自分でヒールの巻物を使うより暖かくて気持ち良いですね」
目を瞑り、回復の力を受け入れるキキョウ。やがて、光が収まると目を開けた。
「どうですか?」
「ああ、齧られた場所は完全に元通りになっている」
「本当に痛かったんです、ミミも尻尾も……。毎日丁寧に扱っていたのに……」
キキョウはそう言うと、外にいる鬼蝙蝠を睨み付けた。
「とりあえず、こいつらがある程度離れるまでは結界を張り続けてくれ。今日はここで休むとするか」
警報器も鳴りやんでいることだし、後ろに詰めて生きるモンスターもその内散るだろう。
「そうですね、まだ二階に上がったばかりです。慎重に行動しましょう」
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