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第三話『王子の企み』
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寝室で僕は一通の手紙を読む。
封から察するに、王家のものだ。
中を見ると、幼馴染であるシュタルツからだった。
「招待状が届いた」
「どこから?」
「シュタルツ王子が、僕の可愛い花嫁を一度見たいんだってさ」
僕が笑いながら言うと、ルスクはつまらなさそうにしていた。
ルスクは溜息を吐く。
「面倒くさいことになんなきゃいいけど」
うちのバリエ家と国家グルコーレ家は親交の証として、行き来できる魔法固定移動装置――、ワープポイントをそれぞれ設置している。
そんな面倒なことはない、はずだ。
ワープポイントを使って城内に降り立つと、衛兵に駆け寄られる。
「ボルド様! お待ちしていました!」
「あ、ありがとう。シュタルツはどこにいるのかな」
「シュタルツ様は自室に籠っていらっしゃいます」
「わかった、僕が迎えに行くよ」
シュタルツは明朗快活な男なので、引き籠るなんて珍しい。
いや、昔はそうでもなかったか。
僕は嫌そうにしているルスクを無理矢理連れ立って、シュタルツの自室へと向かった。
扉をノックすると、返事がない。
「シュタルツ、僕だよ。ボルドだ」
「……入れ」
ドアノブがかちゃりと音が鳴る。どうやら、謁見の機会は与えられたらしい。
僕がドアノブに手をかけ、扉を開けると、机で項垂れているシュタルツがいた。
シュタルツは銀の髪に金の瞳をしているのだが、どちらも濁っているように見えた。
あれほど見た目に気を遣う男のこの憔悴ぶりは心が痛んだ。
「シュタルツ、どうしたんだ。周りの人も心配してるぞ」
「お前が」
「?」
「ボルドの横にいるその男が、お前の花嫁か」
ルスクは急に話を振られて焦りを見せたが、すぐに「はい」と返事をした。
招待状の文面から察するに、シュタルツはルスクに強い興味を抱いているようだった。
シュタルツはルスクの頭の端から爪の先まで見ているようだ。
ルスクは居心地が悪そうに腕を組んだ。
暫くの間、無音だったが、それはシュタルツの一言で破られた。
「綺麗な顔をしている」
「お褒めに預かり光栄でございます、王子」
ルスクは恭しく応じた。
シュタルツは鼻で笑う。
「見目だけは美しい。何故、ボルドと結婚した?」
「家の命令だったもので」
「愛はないと」
「さあ。どうでしょう」
ルスクは嘲笑うかのように言った。
先ほどからルスクとシュタルツの間に、嫌な空気が漂っているように感じるのは僕だけだろうか。
僕は空気を変えるため、手土産を差し出した。
可愛いらしい装飾が施された缶だ。中にはシュタルツの好きなクッキーが入っている。
「みんなでクッキーでも食べよう」
「いらない」
「結構だ」
ルスクからは断られるかもと思っていたが、まさかシュタルツにまで断られるとは思っていなかった。意外だ。あんなに普段、クッキーが大好きな人なのに。
今日は一体どうしたんだろうか。
「ボルド、結婚生活は楽しいか」
「楽しいよ。毎日が新鮮だ」
「俺に振り回されているともいうな」
「ルスク……!」
僕のことを振り回している自覚があったのか。
振り回される僕の身にもなってほしい。
シュタルツを見ると、酷い顔をしていた。
怒りのような、悲しみのような。この世全ての悲劇が混じった表情をしている。
「お前たちは本当に愛し合っているのか」
「さあ」
「僕はルスクのこと好きだよ」
「……なるほど。理解した」
シュタルツがふ、と笑う。ひどく疲れた顔だった。
「好きなのはボルドだけで、ルスクは別にそうでもないのだな」
「!」
「まあ、そうなるね」
ルスクがその言葉に合意を示したことに、僕は少しショックを受けた。
分かっている。分かっていたことだ。
シュタルツが穏やかな笑みで言う。
「では、ボルドは私が貰ってもいいわけだ」
「はあ?」
「え、何を言ってるんだよ」
僕とルスクは結婚しているんだぞ。そう易々と別れられるはずがない。
そして、そもそもなぜシュタルツは僕のことを貰うなどと言ったのか。
「ボルドのことが好きな私の方が、ボルドの伴侶として相応しい。違うか?」
「えっ。僕のことが好きだったの?」
「そうだ。ずっと、ずっと好きだった」
「俺、帰ってもいいか?」
ルスクがうんざりした顔で、足で地面を叩く。
「帰ってよい。私はボルドと好きなようにする。なにせ、ボルドは私の花嫁となるのだからな」
せせら笑うシュタルツにルスクはイラついたのか、言葉で嚙みついた。
「へえ。シュタルツ王子様はお古が好きなんだ」
「は?」
空気がさらに悪化するのが僕でも分かった。
「ボルドの初めては俺が貰った。開発だって俺がしてる。それに、先に結婚したのは俺だ」
なぜ、そんな煽るようなことを言うのか。
僕には理解できなかった。
「では、証明できるか?」
「いいぜ。ボルド、こっちに来て」
誘われた先はベッドだった。酷く嫌な予感がする。
「俺達の愛を証明しろだってさ。いつものように可愛く啼いてくれよ」
「……」
「ボルド?」
「……いやだ!!!!」
僕は、こんな見世物みたいに好きな人とセックスしたいわけじゃない。
好きな人とは、穏やかに、密やかに、甘やかに、行為をしたいのだ。
「ルスクもシュタルツも僕の意思を無視して全部決める。そういうのは、いやだ」
「すまない、ボルド。そういうわけでは」
「僕と結婚したのはルスクだ。この話はこれでおしまい! クッキーを食べよう」
僕はテーブルの上でクッキー缶を開ける。甘い匂いが広がった。
僕が一つクッキーを手に取って食べると、シュタルツもそれに続く。
ルスクは暫し躊躇った後、ジャムのクッキーを食べていた。
三人が無言でクッキーを食べる、という構図が可笑しかった僕がつい笑うと、シュタルツも困ったように目尻を下げて笑った。
「馬鹿馬鹿しい。痴話げんかなら他所でやってくれ」
ルスクは呆れたように言った。
シュタルツは真面目な顔をして、僕に言う。
「ルスクが死んだら、俺がボルドを花嫁に貰ってやる」
「やめとけ」
「いやだ」
シュタルツはその答えが不服だったのか、頭に青筋が入っていた。
どうして、シュタルツは僕と結婚したかったのか。
僕とシュタルツは幼馴染で、気安い仲だから?
「ボルドにルスク・ウォータルを紹介しなければよかった」
「王子様がボルドに俺を紹介したのかよ」
「そうだ。君が猫を拾って、助けていた一部始終を私とボルドは知っている。悪名高い花嫁のくせにな」
「人間より動物の方がましだからな」
そう。僕がルスクを好きになったのは、まずはその美しい容姿からだったけど、子猫の家探しに奮闘するルスクを見て、その心根に惚れこんでしまったんだ。
恋というのは、惚れた方が弱いのだ。
その後も何度か会話をしたが、シュタルツは少し元気になったようだった。
曰く、「まだ諦めない」とのことだ。
僕達は二人で家に帰り、寝室のベッドで横になっていると、ルスクが覆い被さってきた。
「ボルドって本当に俺のこと、好きだよな」
彼の言葉は、いつものように棘を滲ませるものではなく、少し慈愛の入ったものだった。
「好きだよ、ルスク。……ルスクは僕のことをどう思ってる?」
「お人好しのお坊ちゃん」
「手厳しいな……」
「なあ。今日は少し激しくしていいか」
「いいよ、好きなだけ」
僕がそう答えるやいなや、ルスクは僕の服を脱がしにかかる。
身体中にキスの雨を降らされる。
ちゅっ、ちゅっ、という音が心地よく、少し淫らなのが興奮した。
徐に胸の飾りに手を伸ばされ、弄られる。
「あっ、んんっ」
「胸も随分と感じるようになったもんだな」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「俺のせい?」
ルスクが意地悪く笑うと、僕は不思議と嬉しくなった。
彼に甘えられると、僕は暖かい気持ちで心が満たされる。
「ルスク、胸よりもその……」
「なに? ちゃんと言わなきゃわかんねーよ」
「お尻を弄ってほしい。今日はちゃんと僕の方で綺麗にしたから」
ルスクがははは、と馬鹿にしたように笑う。でも、それはどこか幸せも滲み出ていて。
ルスクが潤滑ゼリーを指で纏い、僕のアナルに入れていく。
指でぐにぐにと中を広げられると、少し違和感があったが、しばらくすると快感の方が勝って来た。
ある一点を擦られると、電撃が走ったような衝撃を受けた。
「あ! ああっ!」
「気持ち良い?」
「気持ちいい! そこ、好き……っ!」
何度もその気持ちいいところを指で潰されると、僕はイってしまった。
「はあ、はあ……」
「じゃあ今度は俺の番ね」
ルスクの見事に勃起した陰茎が僕の中に入って来る。
ルスクは、すぐには入れなかった。
焦らすように、ゆっくりと中に深く差し込んでくる。
そうすると、ルスクの陰茎の形がよりわかるのだ。
中がルスクの陰茎でいっぱいになる。中の形がルスクの陰茎になったころ、ルスクは緩く動き始めた。
「今日、激しくするって、言ってたのに……!」
「こういうのもいいだろ」
緩慢な腰つきで僕の中をゆるゆると動く。
今日のルスクはいつもよりも甘い気がした。
だから、僕は思い切って言ってみる。
「ルスク」
「ん」
「めちゃくちゃにして」
僕はそう言ってルスクを抱き締める。ルスクは暫く固まっていたが、顔を上げる。
欲に塗れた表情をしていた。
「いいよ」
瞬間、ルスクの陰茎が中を穿つ。激しく、何度も何度も。
僕はその度に軽くイって、中を締め付けた。すると、よりルスクのそれを感じてしまう。
「締め付けやば……っ!」
「あっ、あ、あ、んぁ、ああっ、あ!」
「あは。もうイくわ」
中にルスクの精液が流し込まれるのがわかった。あつい、気持ちいい。
ぞくぞくした悦楽が体中を駆け巡っていく。
「はあーっ、はあっ、あ……」
「はは、今日もよかったよ。またシような」
「うん……」
ルスクが僕の隣で横になった。
僕は色気溢れるルスクの姿を見て、ごくりを喉を鳴らした。
「なに? まだシ足りない?」
「ううん、大丈夫」
僕は、思ったよりも性欲が強いみたいだ。
ルスクに付き合わせるのは悪いから、後で抜いておこう。
「王子様とは付き合い長いの?」
「ほぼ産まれた時からの付き合いだから……二十二年だね」
「あっそう」
「……拗ねてる?」
「べつに」
ルスクに背中を向けられてしまった。
僕は、その背中にそっと手のひらを置く。
「僕が一番好きなのは、ルスクだよ」
「一目惚れ?」
「そう。だけどそれだけじゃない。君の心の美しさにも惚れたんだ」
「はは! そう、そうなんだ……」
ルスクの語尾が少しずつ小さくなっていく。自信家の彼らしくない行動に少し驚いた。
でも僕はそういう部分を、僕だけに見せてくれているのが嬉しかった。
「おやすみ、ルスク。よい夢を」
「ん、おやすみ、ボルド」
僕は後ろからルスクを抱き締めて、そのまま眠りに落ちた。
封から察するに、王家のものだ。
中を見ると、幼馴染であるシュタルツからだった。
「招待状が届いた」
「どこから?」
「シュタルツ王子が、僕の可愛い花嫁を一度見たいんだってさ」
僕が笑いながら言うと、ルスクはつまらなさそうにしていた。
ルスクは溜息を吐く。
「面倒くさいことになんなきゃいいけど」
うちのバリエ家と国家グルコーレ家は親交の証として、行き来できる魔法固定移動装置――、ワープポイントをそれぞれ設置している。
そんな面倒なことはない、はずだ。
ワープポイントを使って城内に降り立つと、衛兵に駆け寄られる。
「ボルド様! お待ちしていました!」
「あ、ありがとう。シュタルツはどこにいるのかな」
「シュタルツ様は自室に籠っていらっしゃいます」
「わかった、僕が迎えに行くよ」
シュタルツは明朗快活な男なので、引き籠るなんて珍しい。
いや、昔はそうでもなかったか。
僕は嫌そうにしているルスクを無理矢理連れ立って、シュタルツの自室へと向かった。
扉をノックすると、返事がない。
「シュタルツ、僕だよ。ボルドだ」
「……入れ」
ドアノブがかちゃりと音が鳴る。どうやら、謁見の機会は与えられたらしい。
僕がドアノブに手をかけ、扉を開けると、机で項垂れているシュタルツがいた。
シュタルツは銀の髪に金の瞳をしているのだが、どちらも濁っているように見えた。
あれほど見た目に気を遣う男のこの憔悴ぶりは心が痛んだ。
「シュタルツ、どうしたんだ。周りの人も心配してるぞ」
「お前が」
「?」
「ボルドの横にいるその男が、お前の花嫁か」
ルスクは急に話を振られて焦りを見せたが、すぐに「はい」と返事をした。
招待状の文面から察するに、シュタルツはルスクに強い興味を抱いているようだった。
シュタルツはルスクの頭の端から爪の先まで見ているようだ。
ルスクは居心地が悪そうに腕を組んだ。
暫くの間、無音だったが、それはシュタルツの一言で破られた。
「綺麗な顔をしている」
「お褒めに預かり光栄でございます、王子」
ルスクは恭しく応じた。
シュタルツは鼻で笑う。
「見目だけは美しい。何故、ボルドと結婚した?」
「家の命令だったもので」
「愛はないと」
「さあ。どうでしょう」
ルスクは嘲笑うかのように言った。
先ほどからルスクとシュタルツの間に、嫌な空気が漂っているように感じるのは僕だけだろうか。
僕は空気を変えるため、手土産を差し出した。
可愛いらしい装飾が施された缶だ。中にはシュタルツの好きなクッキーが入っている。
「みんなでクッキーでも食べよう」
「いらない」
「結構だ」
ルスクからは断られるかもと思っていたが、まさかシュタルツにまで断られるとは思っていなかった。意外だ。あんなに普段、クッキーが大好きな人なのに。
今日は一体どうしたんだろうか。
「ボルド、結婚生活は楽しいか」
「楽しいよ。毎日が新鮮だ」
「俺に振り回されているともいうな」
「ルスク……!」
僕のことを振り回している自覚があったのか。
振り回される僕の身にもなってほしい。
シュタルツを見ると、酷い顔をしていた。
怒りのような、悲しみのような。この世全ての悲劇が混じった表情をしている。
「お前たちは本当に愛し合っているのか」
「さあ」
「僕はルスクのこと好きだよ」
「……なるほど。理解した」
シュタルツがふ、と笑う。ひどく疲れた顔だった。
「好きなのはボルドだけで、ルスクは別にそうでもないのだな」
「!」
「まあ、そうなるね」
ルスクがその言葉に合意を示したことに、僕は少しショックを受けた。
分かっている。分かっていたことだ。
シュタルツが穏やかな笑みで言う。
「では、ボルドは私が貰ってもいいわけだ」
「はあ?」
「え、何を言ってるんだよ」
僕とルスクは結婚しているんだぞ。そう易々と別れられるはずがない。
そして、そもそもなぜシュタルツは僕のことを貰うなどと言ったのか。
「ボルドのことが好きな私の方が、ボルドの伴侶として相応しい。違うか?」
「えっ。僕のことが好きだったの?」
「そうだ。ずっと、ずっと好きだった」
「俺、帰ってもいいか?」
ルスクがうんざりした顔で、足で地面を叩く。
「帰ってよい。私はボルドと好きなようにする。なにせ、ボルドは私の花嫁となるのだからな」
せせら笑うシュタルツにルスクはイラついたのか、言葉で嚙みついた。
「へえ。シュタルツ王子様はお古が好きなんだ」
「は?」
空気がさらに悪化するのが僕でも分かった。
「ボルドの初めては俺が貰った。開発だって俺がしてる。それに、先に結婚したのは俺だ」
なぜ、そんな煽るようなことを言うのか。
僕には理解できなかった。
「では、証明できるか?」
「いいぜ。ボルド、こっちに来て」
誘われた先はベッドだった。酷く嫌な予感がする。
「俺達の愛を証明しろだってさ。いつものように可愛く啼いてくれよ」
「……」
「ボルド?」
「……いやだ!!!!」
僕は、こんな見世物みたいに好きな人とセックスしたいわけじゃない。
好きな人とは、穏やかに、密やかに、甘やかに、行為をしたいのだ。
「ルスクもシュタルツも僕の意思を無視して全部決める。そういうのは、いやだ」
「すまない、ボルド。そういうわけでは」
「僕と結婚したのはルスクだ。この話はこれでおしまい! クッキーを食べよう」
僕はテーブルの上でクッキー缶を開ける。甘い匂いが広がった。
僕が一つクッキーを手に取って食べると、シュタルツもそれに続く。
ルスクは暫し躊躇った後、ジャムのクッキーを食べていた。
三人が無言でクッキーを食べる、という構図が可笑しかった僕がつい笑うと、シュタルツも困ったように目尻を下げて笑った。
「馬鹿馬鹿しい。痴話げんかなら他所でやってくれ」
ルスクは呆れたように言った。
シュタルツは真面目な顔をして、僕に言う。
「ルスクが死んだら、俺がボルドを花嫁に貰ってやる」
「やめとけ」
「いやだ」
シュタルツはその答えが不服だったのか、頭に青筋が入っていた。
どうして、シュタルツは僕と結婚したかったのか。
僕とシュタルツは幼馴染で、気安い仲だから?
「ボルドにルスク・ウォータルを紹介しなければよかった」
「王子様がボルドに俺を紹介したのかよ」
「そうだ。君が猫を拾って、助けていた一部始終を私とボルドは知っている。悪名高い花嫁のくせにな」
「人間より動物の方がましだからな」
そう。僕がルスクを好きになったのは、まずはその美しい容姿からだったけど、子猫の家探しに奮闘するルスクを見て、その心根に惚れこんでしまったんだ。
恋というのは、惚れた方が弱いのだ。
その後も何度か会話をしたが、シュタルツは少し元気になったようだった。
曰く、「まだ諦めない」とのことだ。
僕達は二人で家に帰り、寝室のベッドで横になっていると、ルスクが覆い被さってきた。
「ボルドって本当に俺のこと、好きだよな」
彼の言葉は、いつものように棘を滲ませるものではなく、少し慈愛の入ったものだった。
「好きだよ、ルスク。……ルスクは僕のことをどう思ってる?」
「お人好しのお坊ちゃん」
「手厳しいな……」
「なあ。今日は少し激しくしていいか」
「いいよ、好きなだけ」
僕がそう答えるやいなや、ルスクは僕の服を脱がしにかかる。
身体中にキスの雨を降らされる。
ちゅっ、ちゅっ、という音が心地よく、少し淫らなのが興奮した。
徐に胸の飾りに手を伸ばされ、弄られる。
「あっ、んんっ」
「胸も随分と感じるようになったもんだな」
「誰のせいだと思ってんだよ」
「俺のせい?」
ルスクが意地悪く笑うと、僕は不思議と嬉しくなった。
彼に甘えられると、僕は暖かい気持ちで心が満たされる。
「ルスク、胸よりもその……」
「なに? ちゃんと言わなきゃわかんねーよ」
「お尻を弄ってほしい。今日はちゃんと僕の方で綺麗にしたから」
ルスクがははは、と馬鹿にしたように笑う。でも、それはどこか幸せも滲み出ていて。
ルスクが潤滑ゼリーを指で纏い、僕のアナルに入れていく。
指でぐにぐにと中を広げられると、少し違和感があったが、しばらくすると快感の方が勝って来た。
ある一点を擦られると、電撃が走ったような衝撃を受けた。
「あ! ああっ!」
「気持ち良い?」
「気持ちいい! そこ、好き……っ!」
何度もその気持ちいいところを指で潰されると、僕はイってしまった。
「はあ、はあ……」
「じゃあ今度は俺の番ね」
ルスクの見事に勃起した陰茎が僕の中に入って来る。
ルスクは、すぐには入れなかった。
焦らすように、ゆっくりと中に深く差し込んでくる。
そうすると、ルスクの陰茎の形がよりわかるのだ。
中がルスクの陰茎でいっぱいになる。中の形がルスクの陰茎になったころ、ルスクは緩く動き始めた。
「今日、激しくするって、言ってたのに……!」
「こういうのもいいだろ」
緩慢な腰つきで僕の中をゆるゆると動く。
今日のルスクはいつもよりも甘い気がした。
だから、僕は思い切って言ってみる。
「ルスク」
「ん」
「めちゃくちゃにして」
僕はそう言ってルスクを抱き締める。ルスクは暫く固まっていたが、顔を上げる。
欲に塗れた表情をしていた。
「いいよ」
瞬間、ルスクの陰茎が中を穿つ。激しく、何度も何度も。
僕はその度に軽くイって、中を締め付けた。すると、よりルスクのそれを感じてしまう。
「締め付けやば……っ!」
「あっ、あ、あ、んぁ、ああっ、あ!」
「あは。もうイくわ」
中にルスクの精液が流し込まれるのがわかった。あつい、気持ちいい。
ぞくぞくした悦楽が体中を駆け巡っていく。
「はあーっ、はあっ、あ……」
「はは、今日もよかったよ。またシような」
「うん……」
ルスクが僕の隣で横になった。
僕は色気溢れるルスクの姿を見て、ごくりを喉を鳴らした。
「なに? まだシ足りない?」
「ううん、大丈夫」
僕は、思ったよりも性欲が強いみたいだ。
ルスクに付き合わせるのは悪いから、後で抜いておこう。
「王子様とは付き合い長いの?」
「ほぼ産まれた時からの付き合いだから……二十二年だね」
「あっそう」
「……拗ねてる?」
「べつに」
ルスクに背中を向けられてしまった。
僕は、その背中にそっと手のひらを置く。
「僕が一番好きなのは、ルスクだよ」
「一目惚れ?」
「そう。だけどそれだけじゃない。君の心の美しさにも惚れたんだ」
「はは! そう、そうなんだ……」
ルスクの語尾が少しずつ小さくなっていく。自信家の彼らしくない行動に少し驚いた。
でも僕はそういう部分を、僕だけに見せてくれているのが嬉しかった。
「おやすみ、ルスク。よい夢を」
「ん、おやすみ、ボルド」
僕は後ろからルスクを抱き締めて、そのまま眠りに落ちた。
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