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母親失格よ!夏休みの子供の宿題について聞いてくるママ友にイラッ。若かりし頃の自慢話にもイラつく私

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近所の商店街に行ったところで、ママ友の晴香さんとバッタリ会ってしまった私。
「暑いわね、どう?息子さん、宿題は捗ってる?」
「いいえ、ぜんぜん。もう熱くて、宿題も手につかないみたいで」
「あら、あなたの家にクーラーはないの?」
「いいえ、ありますよ。でも、子供はおなかが弱くて、あまり部屋を冷やしすぎるとダメなんですよ」
「んま、そういえばあなたの息子さん、好き嫌いが激しいのよね?」
「え、ええ。食べれるものが少なくて・・・」
だから痩せてるのね、ちゃんと食べさせなくちゃだめよ。小学校低学年のうちに骨が形成してね、背が高くなるか、低くなるか決まっちゃうんだから」
「え?!本当ですか?」
「まったく、なにもわからないのね。母親失格よ!うちなんてさ、とにかくたくさん食べさせるの。嫌いなものでもね。おかげで背は高いし、体格も良くなったわ」
「・・・」
「ま、うちはクーラーがあるから涼しい部屋で子供も勉強がしっかりできるのよ。だからさ、勉強も捗って、宿題も終わりそうよ」
「え?夏休みになってまだ1週間ですけど、もう終わりそうなんですか?」
「そ、ね、うちのタクちゃんの今年の自由研究のテーマはなんだと思う?」
「えっと、カブトムシの研究とかですか?」
「はあ?なによそれ、もっとむずかしい課題の自由研究よ」
「温暖化とか地震とかですか?」
「いいえ、ゴキブリの研究よ」
「ゴキブリの研究?!」
「そ、家にたくさんいるからさ、お金もかからないし。なにかと調べたいじゃない。何億年も前から生きていただなんて、どんな生態なのか知りたいのよ」
「・・・」
「よく見ればさ、カブトムシに似てるじゃない?ただで虫の観察ができるんだから安いものでしょ」
「そうかもしれませんが・・・」

手に持ったお茶をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み干した晴香さんは、商店街のど真ん中でゲップをする。
「それよりもさ、プール行かない?」
「プールですか?」
「そう、新しいプールできたでしょ?行ってみたいのよねえ」
「私も何年も行ってないですね。昔着ていた水着、もう着れないかな」
「どんな水着?」
「ショートパンツタイプの水着なんですけどね」
「なにそれ?水着っていったらビキニでしょ。あたし、昔はよくジャグジー風呂のあるホテルに泊まったものよ」
「ジャグジーですか、ゴージャスですね」
「昔はよかったわよ、座ってるだけで男が次から次へと声をかけてくるんだから」
「ほんとですか?」
瞼は厚く、二重顎でシミだらけの顔の晴香さんがそんなにモテただなんて信じられない。
「そ、あたしをナンパするために男が列をなしてたわよ。その中でもとびきりイケメンの男を選んだってわけ。それが今の旦那」
旦那さん、不細工だけど・・・
「あ、昔のあたしの写真を見せてあげるわね」
スマホを取り出すと、若い女性と男性の画像を見せてくれた。
「え?!これ、晴香さんですか?」画像には、スレンダーな美女が写っていた。
「こ、これが晴香さんで、こっちが・・・旦那さん!?」横にはモデルかと思うほどのイケメンが立っていた。
「まあね、この頃は旦那もかなりモテてたわ。海外に行ったときなんてね、富豪の男が結婚してほしいって口説いてきたほどよ」
「富豪が?!」
「そ、でもね、もう旦那と付き合ってから振ってやったのよ」
「もったいないですね」
「ま、お金より愛よ。愛が1番大事なんだわ」
「そうですけど・・・」

だからって、人から食材をねだったり、服を貸してだなんて言ってきてもらいたくないわ。
ほんと、ずいぶんと人って変わるのねとかなり驚く写真だった。

その1週間後。

「はーい、お待たせ」待ち合わせのビーチに現れた晴香さんの姿を見て、ママ友はみな仰天した。
これでもかというほど小さな水着は、これまた細い紐でかろうじて繋がっていた。
そして、Fカップかと思うほど大きなバストをユッサユッサと大胆に揺らしながら、ビーチサンダル姿で走ってくる。
しかし、大きな胸よりも驚いたのが、3段腹のおなかだった。
丸太?と思うほど寸胴鍋のようなおなかには腹毛が生えている。
手を高くあげると、処理をしていないワキ毛が見える見える。
また、Vゾーンの毛も未処理のようで、正直、だいぶはみ出ていた。
「怖いよ!」
30代デブおばさんのビキニ姿は子供に毒だった。
「お、お母さん。僕、帰りたいよ」
「我慢しなさい」少し強い口調で小学生の息子を叱咤した。

周囲の目線も気にせずに、海で子供のようにはしゃぐ晴香さんは、浮き輪をおなかにハメると抜けなくなり、パニック状態に陥る。
子供は早く帰りたいと泣き出し、ママ友も二度と一緒に来たくないと騒ぎ出した。
このことがきっかけで、晴香さんはダイエットを始めた。

しかし、痩せても老け顔の晴香さんは、元のように美人にはならず、皮はたるみ、セルライトがキモい老け顔のおばさんになってしまった。
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