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3話 看病?

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 洗い物を終わらして食卓に戻ると、ぼーっとしている紗霧さんがいた。俺が洗い物をしている間ずっとぼーっとしていたのだろうか。

「おーい。紗霧さん?」
「……っ! どうかされましたか?拓斗君」
「いや、ぼーっとしているなーっと思ってさ。どうかしたのか?」
「いいえ。なんでもないですよ」
「そうか……」

 心なしか元気がないように見えた。ただ本人がなんでもないと言った以上詮索するのはいけないと思うのでこれ以上踏み込まない。まぁ、熱があるような気がするんだけど……

「では、そろそろ帰ります」
「おう。今日はありがとな」
「いえ、やりたくてしただけです」
「いや、それでもさありがとう。もう遅いし送っていくよ」
「けっ……いや、お願いします」

 一瞬断られかけたな……まぁ、いいのだが。自分の体調は自分が一番分かっているのだろう。明日は学校休みだし看病するべきか?紗霧さんの家にあがっていいのだろうか?

 ということで靴をはいてエレベーターを呼ぶ。

「どうして拓斗君は私を嫌がらないのですか?私の素を知った人はみんな私をとうざけようとしてきました。なんで拓斗君は私を嫌がらないのですか?」

 こいつ……判断能力落ちてね?いつもなら絶対に言わないこと言ってるよ。本格的に大丈夫か?
具体的には明日の朝思い出した時とか。

「うーんなんでだろうな……多分それは」

 その時、ちょうどエレベーターがきたので乗り込む。そして一階を選択する。

「で?それはの続きは?なんですか?」

 末期症状だ……どう答えようか……そうだついでに体調が悪いかどうかも確認しよ~

「そうだな……お前の体調がなおったら教えてやることにしようか」
「バレてましたか。頭の悪い拓斗君の事なのでバレないとばかり思っていました」
「明日はゆっくり休めよ」
「はい。言われなくても分かってます」

 よかった。あっとったわ。もし違ったら、くっそ恥ずかしかったぞ。
 
 エレベーターが一階についた。エントランスを抜ける鍵……ある。よし、いくか。

 昼間は暖かくなってきたが、まだ五月なので夜は少し冷える。

「少し寒いですね」
「そうだな」
「あ、ここら辺でいいですよ?ありがとうございました。わざわざ送っていただいて」
「こちらこそ夜ご飯、ありがと」

 では、と言って門から入っていったそして戻ってきた。

「明日は看病しに来てくださいね」

 と、言い残し、また去っていった。

「明日、行くか……」

 来てくれと言われて嬉しい訳じゃねーぞ。と、誰に聞かれた訳でもないのに心の中で言い訳をしていた。

 翌日、朝九時

 朝、飯を食べようと思って冷蔵庫を開けたら大量のタッパーに入った料理があった。そして、ようやく納得が出来た。あの大量の食材、俺のためだったのか……感謝感謝。

 三十分後

「行くか……」

 ジーパンにTシャツといういたってありきたりな格好で行く。てか、そんな服しかない。体調が戻っていたら、絶対毒吐かれる。それで体調をはかろうと思う。

 エントランスをぬけ、すぐ近くの豪邸に行く。

「やっぱ何回見てもでかいよな……」

 昨日の紗霧さんみたいな芸当は出来ないので素直に門から入る。門の鍵はあいていた。

 セキュリティ大丈夫か?いや、大丈夫か。気圧されて誰も入らないだろう。

 門から庭を抜け、玄関に行く。インターホンを押す。すると、返事がスマホからきた。

『空いてます』

「はいはーい。お邪魔しマース」

 内装は至ってシンプルで無駄な装飾がない。ただただ広いリビングにでる。そして思った。

 広すぎて紗霧さんの部屋分かんねー

『今、リビングですか?』

 タイミングよすぎてこえーよ。的確なのがなお怖い。

『階段を上がって突き当たりの部屋です』

 二階か……階段どこだ?

 しばらく探すとあった。上がると、廊下の左右に部屋があり、突き当たりにもあった。

 コンコンコン

「はいるぞー」
「はい。大丈夫ですよ」

 ドアを開けるとそこには外出用の服を着た紗霧さんがいた。

「想像通りの冴えない格好ですね」
「元気じゃねーか」
「なおりました」

 まぁ、元気でよかった。体調不良がなおったなら、もういる理由はないだろう。お礼を言って帰るか。

「作り置きありがとな。助かるぜ」
「いいですよ別に気にしなくても。やりたくてしただけですから」
「それでもだよ」
「そうですか。ならその感謝は受け取ることにします」
「ありがとな。じゃあ帰るわ。明日はゆっくり休めよ」
「はい」

 玄関から出て、俺の部屋にかえる。なんか凄く疲れた気がする。でも、それ以上に楽しかった気がする。次に会うのが二日後だと考えると何故か寂しく感じた。

 


 
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