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2話 オムライス

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「早く行きますよ。あまり遅くなってもいけませんから」
「さっきからずっと同じこと言ってると思うんだが?」

 ついさっき、紗霧さんが盛大に自爆した。自覚したけど顔には出せない。せめての抵抗として、その話題をださせないようにしているのだろう。
かといって、二分おきに、はよ行けって言われてもなぁ。

「ちょっと自宅によってもいいですか?」
「おう。どうかしたか?」
「自炊出来ない拓斗君の事なので調味料とかないと思うので自宅から持ってこようかなとおもいまして。」
「調味料くらいあるぞ?」
「なるほど、意外ですね。でもエプロンを取ってこないといけないので結局戻ることになります」
「はいはーい」

 しばらく歩いたら豪邸が見えてきた。俺の部屋があるアパートの近くにある、でかい家だ。
 
「って、これお前ん家だったのかよ!」
「そうですよ。どうかしましたか?」

 いやいやいやいや! 庭に日本庭園がある家とかまじでヤバいって! 宮殿みたいな家とかまじでさー。ね?

 紗霧さんがちょっと助走をつけて、塀の僅かなでっぱりに足をかけて、大ジャンプした。二メートルはある塀を飛びこえた。

「門の意味を教えてくれ」
「なんの意味も無いですよ?鍵すら掛かってませんし」
「じゃあ、」
「『何故門から入らないのか?』ですよね?そんなことも分からないから友達がいないのですよ」

 酷い! 中学の時一人ぐらいいたも……ん……一人いた! 今はいない!

「ごフッ……」
「どうされましたか?」

 門越しに紗霧さんが話しかけてくる。

「なんでもない……」

 自爆です。ハイ。

「そうですか。貴方はそこで待っていてくださいね」
「はーい」

 十五分後

 紗霧さんは白いのオフショルダーにデニム生地のホットパンツで出てきた。

「すいません遅くなりました」
「お、おう。して、何故私服?」
「制服だと色々不便なので」

 そういう事か。同じ校章が着いていると一緒に入るところ見られた時に言い訳が出来なくなるからか。にしても可愛すぎねぇか?

「可愛いな」
「な、なんですか!?」
「いや、思ったことを伝えただけだ」
「ありがとうございます……」
 
 赤くなってもじもじしてる。マジで可愛いな。なでなでしたくなるわ。

「こほん。じゃあ、行きましょうか」
「いや、すぐそこなんだが……」
「近いのですか。なら遅くなっても問題ないですね。助かります」

 お、遅くまでいるつもりか……いいのだが。いいのだが、何をするつもりだ?

「早くしてください。私だけだとエントランスさえ通ることが出来ないのですから。」
「あ、ハイ。すいません。」

 待ってるようなのでさっさと行かねーとな。

「貴方の部屋は何階ですか?」
「三階」
「なるほど、悪くない選択ですね。あまり上の方だと逃げ遅れますし、下の階すぎると防犯面が心配ですから、三階という選択はなかなかいいですね」
「お、おう。ありがとな」

 確かに三階は俺が選んだけど、そんなに考えて選んでないのだが。まぁいい。わざわざ言う必要はない。エレベーターも来たことだし、さっさと行きましょ。

 俺の部屋の前に着いた。三〇二号室の前だ。

「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「どうかしましたか?」
「ここで三分くらい待っていてくれ。片付けて来る。」
「なるほど、エロ本が散らばっていると」
「部屋に下着干してんだよ」
「私は構わないのですが……」
「俺が無理だ!」

 急げ! とにかく急げ! 待たせるのは性にあわん! ということで、たたみましょっと。

 きっかり三分後

「すまん。待ったか?」
「待っていてくれって言ってませんでしたか?アホですか。はぁ~」
「すまんって……」
「いいでしょう。じゃあ、さっそく取り掛かるとしましょうか」

 さっさと中に入っていく紗霧さん。

「食材は?」
「キッチンにある」
「分かりました」

 紗霧さんがエプロンを着……た……思ったことを
素直に言おう……エッロ! マジでエロいんですけども……主に足が……み、見るな! 見たら理性が死ぬ!

「どうかしましたか?」
「なんでもない……」
「そうですか……」

 何故か少し残念そうにしながら、キッチンに行く。

 俺はやることが無いから、食卓でスマホゲームでもしてようか……

 二時間後……

「出来ましたよ」
 
 目の前におかれたのは、デミグラスソースのかかったオムライス。凄く美味しそうだ。卵が半熟なのがまたいい。すっげーいい匂いする。

「ほら、食べていいですよ。一緒に食べさせてもらいますがよろしいですか?」
「いいぞ。断る理由ないし、効率悪いし」
「ありがとうございます」

 って、用意してたのか。俺が断ると思わなかったのだろうか?まぁ、いいや。とりあえず腹減ったし、せっかく作ってくれたのだから、温かいうちに食べるのが礼儀だろう。

「いただきます」
「はい、どうぞ」

 じーっと見られている。感想待ちかな?何をどう考えても美味いだろう。

 そう考えながらスプーンで一口すくう。そして食べる。

 何これうますぎなんだけど……

「めちゃくちゃ美味い……」
「そうですか! よかったです」

 紗霧さん、めっちゃ嬉しそうに見えるのは俺だけだろうか?可愛い顔がニヨニヨしている。

 数分後

「ごちそうさまでした」
「おそまつさまでございます」
「洗い物は俺がするからゆっくりしててくれ」
「では、お言葉に甘えてゆっくりさせていただきます」
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