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町の日常
0.帰りたい。~目が覚めると、
しおりを挟む「今日の夕飯、何にしようか?」
「オムライス」
「わかった」
「いってらっしゃい」
紗理奈は、仕事に行く夫を玄関まで見送ると
自身も予定先へ向かう。
「おはようございます」
「おはようございますー!」
「ゆいしろ姉さん!」
今日は、農家をしている友人の助っ人。
広い畑の収穫作業は、かなり体力がいるが、良い運動にもなる。
「結城さん、です」
「ゆうき姉さん」
「呼びやすい方でいいよ」
「ゆいしろ姉さん!」
友人の子供が旧姓で呼ぶことを直そうとしているが、
今のところ叶ってはいないらしい。
個人的には、どちらでもいいと思っている。
「ごめんね」
「いいよ。香奈も呼びやすいほうでいいし」
「そう?」
「そう」
その日は、『気持ちだけ』と収穫した一部を頂いて、
夕暮れの家路を車で走る。
家につくと、手早くシャワーを浴び、身支度をして料理をする。
「ただいま」
「樹さん。おかえりなさい」
「紗理奈は、相変わらず器用だな」
「ありがとう」
連絡通りに帰宅した夫が、テーブルに並ぶオムライスをみて笑った。
黄色い面には、出来心で描いたケチャップの花の絵がある。
サラダの野菜も一部は、食べやすい形の飾り切り。
凝らなくていい部分に手間をかける私を
面倒がらず否定せずにいてくれるのは、
思考の真反対な血の繋がる家族ではなく夫や友人だった。
個人の感性は様々なので、家族とはそれなりにやっている。
大切な人たちと会って話せること。
一緒に食事をしたり、同じ朝を迎えられる幸せをかみしめる。
明日もきっと良い日にしよう、と心で唱えて、
いつものように眠った。
「友理奈、起きなさい。友理奈!」
声が聞こえる。友理奈とは誰だろう?
私の体を揺さぶりながら、知らない名前を連呼されている。
「…おはようございます」
「友理奈。早く出ないと学校に遅れますよ」
学校?どういうことだろう?
状況を把握しようと周囲を見渡すと、
突然、大量の記憶が流れ込んできた。
おかげで現状は分かったので、
『友理奈』として生きながら現代に戻る方法を探すことに決めた。
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