操り人形は幸せを見つける

秋赤音

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【第一章】祈り

69.協定と婚約

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「クレセント国の王子と、アスカ国の王女がご婚約されたぞ」
「三国が不況を助け合う協定を結んだそうだ。
これで生活が少しでも楽になれば…」

寒さが和らぎ、新入生を迎える季節となった頃。
三国の民の間では、国を繋ぐ婚約と協定の話でにぎわっていた。
不況を考慮して、お祝いは簡素に親族のみで行われた。
苦境を越えられるかもしれない希望へすがるように、期待が集まっている。


「レオン様だわ。今日も一壬様とご一緒にお食事されたとか」
「民への奉仕活動も共に行っているそうです」
「国のためにも、頑張っていただきたいですわ」

レオンやレイア、一壬が
学院を歩いているだけで遠くから聞こえるようになった声たち。
実害がでていないので放置しているが、
期待が脅威になる可能性もある程度には、危うい状況は続いている。

良い兆しが見えない状況で、すべては変わった。
見栄の婚姻や品物の売買契約は、影も残っていない。
将来の地位向上や財産目当てに媚びを売る余裕もなく、
むしろ責任が降りかかる立場を避けるように、
近い立場同士で協力し合うようになっている。

「そういえば、この間、フィン様と一緒にいるレイア様を見たわ」
「私も。支え合う姿は我が国の誇りだわ。未来の王座も安心ね」
「私たちも、自分にできることを精一杯やりましょう。
魔法が使えるのだから、やれることは多いはず」
「「「 はい 」」」

遠ざかる声に安堵する三人。

「…そのうち、果実を食べただけで話題になりそうだな」
「ありえますね。お菓子は早くから禁止にしてよかった」
「この間、リンゴを食べているだけで、たくさんの視線が…」
「「「 ・・・・・」」」

すでに起こっている現象と、悪化するであろう状況に
三人はため息をついた。
その胸元には、光に透かせると国章がみえる婚約の証がある。
ある一定の年齢になると、
おそろいのペンダントを持つだけで良い仲に見られるが、
国章つきは正式な婚約の証。

王族として重い責任を胸に、少しでもできることを増やそうと、
次の講習へ向かった。

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