暗幕の向こう側

秋赤音

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愛し者へ贈る旅

偶然が運命

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時が過ぎ、ライアのお姉様が婚姻したことを家族から告げられる。
ライアの家族のことだから知らせると、『いいな』とごく小さく掠れた声が聞こえた。
拒絶されないことを祈りながら、用意していた揃いの指輪をライアに渡した。
気の利いた言葉が浮かばないまま、『仮予約だ』と言えば意味が伝わったようで、
今にも泣きそうな目で嬉しそうに微笑み抱きついてきた。
互いの指にはめると、ライアは潤んだ目のまま笑顔で僕の頬に口づけをした。
自ら肌を晒して恥じらいながら誘う初心な乙女は、
レイア様の鱗片が見える淫らさでその身の奥深くまで精を貪り、月が昇ると眠った。
毎夜の習慣で部屋にきたレイア様は嬉しそうに僕の頭を撫でた。

「よく頑張りました。
少しだけ、ライアが羨ましいですわ」

「どうしてですか?」

「ヘルガは、あまり自分のことを言わない人だから。
私の願いを聞き入れてはくれるのは嬉しいですが、
私もヘルガの我儘を聞きたいのですわ。
離れて気づいたので、いまさら、ですわね…っ」

互いに一糸もまとわず、繋がったままベッドで抱きしめられていると、
レイア様の寂しさを含んだ声がこぼれた。
僕は我慢ができないだけなのに、とは言わせてもらえない。
再び響く水音に合わせて動けば、嬉しそうに応えてくれる。
奥へ奥へと誘う腰つきに、思わず射精してしまう。

「ヘル様の素直さが私には心地よいのですわ」

「レイア様…」

「ぁ…っ、そう、ですわ。もっと、深く、注いでください…っっ」

ねだられたとおりに欲望を奥へと、高め合った最果てで吐き出した。
落ち着くことを知らない自身が暴れたりないと、さらに攻めようとする。
しかし、気配が変わった。
姿が戻り、誰かは分かっても気づけば布が擦れる音と拘束された体。

「ん…ヘル、まだ、足りませんのね…?」

「ライア」

「夢でしか…ヘルは不安を言葉にしません。
己が抱く想像だと分かっていても、知ることができて嬉しいのです」

激しい水音をさせながら始まった一方的な律動に我慢がきかない。
夢の続きだと、自分に言い訳をした。
初めてライアを遠慮なく暴く。
痛いだろうと思っていたが、
続きをねだり甘い悲鳴をあげながら達したままのライアに安堵した。
僕がいないと生きていけない体になっていると、悦びが芽生えてしまった。

ライアが成人すると、すぐに婚姻の紋を互いに刻んだ。
『守る』役割を言い訳に、家族は渋い反応をしながらも黙ってくれていた。
たとえ家の許しがないとしても、やめる気はなかった。
『何かあっても何とかする』と互いに誓い、成長した魔力をさらに磨いた。

緊張感が抜けない日々は続いたが、それでも幸せだった。
自由にできる場所と魔術のおかげで暮らしには困らない。
ライアとレイア様がいればいい。
しかし、ささやかな幸せはライアのお姉様の早すぎる死の気配が攫った。
知らせを聞いた日に告げられた『万が一があれば、ライアをオーディス家に渡す』決定事項。
いつか奪われてしまうのが怖くなった。
よりにもよって、望むたった一つが攫われようとしている。
守らなければ。
オーディス家に渡すまでは、僕のライアだ。
ライアを守るのが僕の仕事だから。
仕事だから。


夜ごとの秘め事は、続く。
甘え合う関係のレイア様は、僕の精をたくさん受け入れ、
こぼれることすら惜しいように繋がりを解こうとしない。
されるがままに抱きしめられていると、頭を撫でられた。

「不安、ですか?大切な人がいなくなるかもしれないのが」

「とても、不安なんだ」

「ならば、ずっと一緒にいればいいのですわ」

優しい笑みで僕を肯定したレイア様は、
不安を減らす方法を耳元で囁いた。


告げられた方法の中から、僕にできることを考えた。
結果。
まず、部屋を同じにした。
目が覚めて一番に行うのは印付け。
昨晩の名残がある蕩けた蜜口が深く奥まで己をのみこみ、魔力を交わす。
寝食に加えて、排泄のときも必ず傍を離れない。
恥ずかしそうに不要になったものを体から出す姿に興奮した。
僕しか知らないライアだと思うと、たまらない。
体調の良し悪しの目安を逃さなくなり、
ライアはより元気になった。
日が高い時間でも、場所にこだわらないで欲望のまま己の魔力をライアの内にたっぷりと注ぐ。
しだいに何もしなくても秘部から甘い香りと蜜をこぼすようになったライアは、
無意識に視線で僕を誘い、普段よりも身体を密着させてくるようになった。
全てが愛しく、誰にも渡したくない感情は大きくなるばかり。


「ライア、僕のライア」

「はい。私はヘルのライアです」

「みんなが僕からライアを奪おうとしているんだ。
僕の大切な唯一でたった一つの願いすら許さない。
きっと守り方が甘かったんだ。
だから、ね。
まずは、ライアの全てを知ることからだと、僕は考えたんだ」

じっと見つめれば耳まで赤く染まるライア。
座って無防備になっている太ももに触れ、
愛撫した後のように濡れている蜜口を指で愛でた。
与える快楽に従順なライアは、抵抗することなく身を預けてくれる。
この時間が永遠になればいいと、心から願った。

ライアが眠るとレイア様が目を覚ます。
繋がったままの体を見て満足そうに笑みを浮かべるレイア様の姿につられて笑う。

「ヘル様、ライアの移し身を造ればいいですわ」

「どうやって?」

「私とヴィザード家のヘル様なら、できますわ」

明るい笑みを浮かべるレイア様。
再び聞こえ始めた下半身からの交わる水音と共に、脳内へ何かが入ってくる。
個体が持つ因果ごとの人体生成の方法だった。
突然に提示された夢のような道は、本当に叶えられた。
僕のライアの名をイアと改め、僕の家族から身を隠した。

蝋燭の灯りが薄暗く照らす部屋。
触れる前から秘部から蜜をこぼしてベッドで待つ僕のイア。
縁に座り、姿だけで高ぶった自身を見せ、跨ることを許した。
すると、女の本能に抗うことなく美しく乱れる。
いれただけで達した後は、理性が微塵もなくなったような蕩けた笑みで深いところへ僕を誘う。
肌に露のような汗が流れるのを見上げながら、熱くうねるナカを深く突き上げる。

「あっ、それ、いいっ…です…ぅっぁ、あ、イ、く…っ!」

強い締めつけに熱を放つと、余韻に浸るように甘いため息をついたイア。
すべてを注ぎ終えると、瞼を閉じて揺れた体を抱きとめる。
ぬこうとしたが優しく強く包まれている心地よさに断念する。
そのまま抱きしめて運び、眠った。
翌朝。
暖かさと肌寒さ、聞きなれた水音で目が覚めた。
朝一番で交わる魔力はとても美味しかった。
蕩けた笑みで満足そうにしているイアを止めることなく自由にさせていると、
気絶する寸前まで精を貪った後、僕の胸に頬を寄せ瞼を閉じた。

「イア、とっても積極的ですわね。
一時でも離れるのが惜しいなら、傍にいればいいのですわ。
見ているだけなら、わざわざ地上にいなくても方法はあると思いますわ」

わずかに動いたイア、ではなくレイア様は耳元で囁いた。

「知っているが、怪しまれるのは避けたい。
寂しい思いをさせているとは思う」

レイア様は繋がりはそのままで上半身だけを起こし、
惜しむことなく柔い体を見せつけながら笑みを浮かべる。

「私も、寂しいのですわ。
もう、ヘル様がいないと生きていけません。
ずっとお傍にいたいですわ」

「レイア様…ルシア様はヘルガ様のところへ帰りたいのでは」

するりと手をとられ、絡められた指で繋がる両手からは冷めない興奮が伝わってくる。
レイア様は苦い笑みでため息をついた。

「そう、ですけれど…分けられた瞬間にルシアは一度死んだようなものですわ。
レイアは、ヘル様を選びます。
嫌、ですか?」

「二人を守ると、決めた。約束は違えない」

「ヘル様…嬉しいですわ」

レイア様は再び体を伏せて僕を抱きしめる。
そして、静かに眠り始めた。
思念だけを地上へ向けると、目を閉じる。
聞こえる寝言でイアに戻ったことを確認し、
眠りながら再び快楽を求めて動く様に合わせて揺さぶるとすぐに達した。
追いかけるように熱を吐き出し、本当に寝ているのか疑う程に余韻を味わうイアを抱きしめた。

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