影に鳴く

秋赤音

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願いの果てに

3.傍にいてほしい

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両親が不正行為をしていたせいで、
ご令嬢も巻き込まれて亡くなってしまった。
ライのお見合い話も自然となくなった。
その後、ライは"隠れ名家"のご令嬢と秘めた愛を実らせて婚姻を結んだ。
それから、お見合いは変わった、らしい。
両家の利益だけではなく、
本人同士の希望も考慮するようになったと聞く。
おかげか、
婚姻を結んだ後の問題が減ったおかげで暗殺は減ったが、
ライと過ごせる時間が増えて嬉しい。
今日も魔物の討伐を終え、
夕食を終えるとライで疲れを癒す。

マイアとメイに結界を張らせて、
ライをベッドへ仰向けに寝かせる。
ゆっくりと服を脱がせると。
露になった下肢のモノはすでに濡れている。

「レン…ゆっくり、して?」

「こんなにこぼして…もう、ほしいんだろ?」

「…っ、ぁ、マイア、みないで…っ」

「いえ。夫へのことを知るのは妻の役割の一つです」

俺が触れると次々に雫が溢れてくる。
妻の視線を感じるとますます濡れる。
褒めるように優しく擦ると、
硬さもさらに増して今にも達しそうだ。

「勤勉な奥様、だな」

「レン、イく、から…それ、は…っぁ」

「奥様が、待っているからな。イけ」

ひくついて待つような窄まりへ自身を一気に埋めると、
ライは音にならない声で白濁を飛ばしながら達した。

「…っ、は…っ、…ぁ…っ、レン、も」

気持ちよさそうに目を細めて俺を見上げるライ。
腰を揺らして自ら快楽を求めている姿に興奮する。
その誘いに応えると、嬉しそうに微笑んだ。

「そろそろ…」

「ん、レン…っ、僕のナカにだして…っっ!!」

その蕩けた艶のある笑みに耐えられず、すべての熱を注いだ。
気だるそうなライを、繋がりを解いて座らせて抱き締める。

「メイ。そういえば、今日、呪詛を受けていたよな」

疲れて俺へもたれているライは俺の肩から顔を覗かせて、
メイを見た。

「まあ、はい。これくらいの毒なら、寝れば治ります」

「そういうことではない。
俺の妻が負傷していることに問題がある。
最愛の心配事も増えるしな。
それとも、ライに触れられるのは嫌か?」

「…!」

メイは黙った。
意識しないように心がけているのは分かっているが、
それではライが切ない想いを募らせるばかりだ。
少しくらい、意地悪をしてもいいだろう。

「結界を維持したまま、触れるくらいの集中力はあるだろう。
ライ、あの呪詛は解けるか?」

「僕を誰だと思ってるの。メイ、少し触るよ?」

「ごめんなさい」

手を差し出すと、ライはメイの指先に触れる。

「いいんだよ。
僕はレンもメイも大切だから。
これ…本気で寝て治す気だった?」

「まあ。時間はかかりますが」

「まあ…って。
そもそも、レンが言わなければ、言うつもりもなかったよね?」

「…まあ」

ライは呆れたようにため息をついた。
そして、俺の膝から降りるとメイを抱き寄せた。

「好きな子が苦しいのは、僕、嫌だよ」

「…はい?」

ついに言った、と。
メイの顔は赤く、口をぱくぱくと動かしている。
これでライの想いが叶うかもしれないと思うと、
幸せを想う反面、想われる羨ましさもある。

「…っ、ははっ、メイの傑作。
俺たちがヤってるのは、
痛みがなくて手っ取り早く全ての呪詛の解除できるからだ。
最愛を余すところなく感じられるしな」

「痛かったよ!」

「今は、良いだろ?」

「……っ!レン」

「言いたいことはあるが、今は治せ。
そして、寝ろ」

「ありがとう。メイ、動かないでね」

ライに呪詛を解いてもらうと、
疲れが出たのかメイは寝る準備を始めた。

翌日。
朝を告げる光の下。
ライはメイへ告白をした。
世間ではメイと俺が夫婦なので我慢するが、
性欲を抑えきれないので、
俺と一緒にメイの人形を作ったこと。
偽装工作の妻は、
その人形にメイの魂を複製してこめただけというネタばらし。
俺とライがしている場所へ同席させたのは、
結界の維持のためと、夫婦生活があるように見せかけるためだということ。

「つまり、ライは私が好き?」

「はい。僕はメイが好きです。
幼い頃からずっと。
メイを守るために強くなりたいからレンに弟子入りしました」

「俺はライを愛している。
傍にいられる機会は、
掴んで離さないほうが自然だと思うが?
なあ、メイ」

メイが、黙って結界を張り続ける理由を考えたことがある。
惚れた男の事情を見せられ続けたとしても傍にはいられる、
くらいしか想像がつかなかった。

「そう、ですね。
理由はなんであれ、傍にいられるなら、そうします。
ライが好きだから」

「メイ…普通とは言えない関係ですが、
これからも一緒にいてくれますか?」

「今さらです。私は納得して傍にいますから」

実は両想いだったのを自覚する二人は、
見つめ合って微笑む。
穏やかなライの様子に、
願いが一つ叶ったことが嬉しかった。
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