師追う背陰

秋赤音

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流れる葉のようにーif.流れ睦まじく

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ある日の夕刻。
一人で庭を散歩していると、一兎いちと様が誰かを探しているところを見つけた。私には気づかないまま姿が見えなくなる。そして、一兎いちと様の近くにいた知らない男性と目があった。顔立ちは一兎いちと様に似ているが、色が違う。男性は私に微笑みかけてくれた。
直後。遠くで一兎いちと様の大きな声が聞こえた。なにを言ったかはわからない。追いかけようとするが、知らない男性に腕を捕まれる。

「離してください!」
「申し訳ありません。命令なので」

言い返そうとしたが、お腹への強い衝撃で意識が揺らいだ。一兎《いちと》様の声がどんどん遠くなる。



目が覚めると、知らない場所に、知らない男性がいた。あれから気絶していたようだった。体を動かそうとするが、なぜか動かない。チャリチャリと鎖の音がした。

「申し訳ないですが、事が終わるまで拘束します」

知らない男性は慣れた手つきで服を脱がした。鎖の音を聞きながら、開かれ固定される足で事の度合いを想像して怖くなる。

「なに、を…っ!なに、ぬって…ぅうっ…ヒリヒリして、熱い…っ?」

甘い香りがするサラッとした何かが皮膚に塗られている。意識するほど燃えるように熱くなる。

「即効性なので、すぐヨクなります」

意味深に足の付け根を撫でられ、これから始まる事が予想通りだと確信した。

「ぃやぁあ…っ、私は一兎いちと様の恋人で…んひぃっ!さわら、ないでっんぁあっ!なか、かき回さないでっ!…ぃっ、ゃ…ぁ、あっ、あ、ひ…ぅっ!」

「効果でてますね。男なら、雄つきの雌でもイけそう」

『ながれさん、ながれ、さん…薬の効果はどうですか。男なら、いえ。雄つきなら同性でもイけそうですね』

『ろつとぉ…意地悪しないで…っ、お薬は、簡単に、ぃ…使うと、危ないって…わ、かったぁあんっ!イチト様も昔、同じことされ、た、ぁ…あっ!待って…あぅっ!あぁあっ!今だめっ!きもち、いぃからぁあっ!』
『知ってます。ながれさん…今だけは自分だけの女でいてください』

嫌なのに、雄を知った体は雄を求めて動く。この感覚も初めてではない。待っていたモノと繋がって、満たされる。これが一兎いちと様なら、いいのに。でも、私、この人を知ってる?なんで?

「いち、と…さまぁああっ!いちとさま…っ」

「同じ…どう、して……違う、ムツトです。ムツトって、呼んで?」

「むつ、と様?」

「うん。そう…嬉しい。るかさん」

『嬉しいです…ながれさん』

知らない男性が焦がれ満たされた声が、表情が胸を締め付ける。不意に記憶が重なる。体に溶け込んでいく。この人の、この顔を知っている。

『ムツト。ムツト…っ。ごめんなさい。愛してるわ、ムツト…っ…んぁああっ!また、おっきく…なって、んぅっ!』

記憶と同じ、ナカで存在を主張するモノはさらに大きく圧迫してくる。だけど、これも愛しい存在だから怖くない。愛を教え、教えてくれる大切な教え子の体だから。

「るかさん。夫になる人の体、覚えてくださいね」

「え、どういう…っ!ん、んぁっ!おく、ふかぃいっ!」

中性的で優しく激しい一兎いちと様とは違う熱量に圧倒される。荒っぽく強い雄に飲み込まれる怖さと心地よさ。ぼんやりと見た先に見えたのは鍛えられた体。記憶よりも大人になっているそれに感動し、興奮した。突かれるたび、ただの雌になっていく。

「るかさん。嬉しいな…奥まで、俺で満たすから。貴女を守れるように、強くなったから…今度は、俺が、幸せに、一緒に…幸せに…なって」

  震える涙声に思わず男性を抱き締める。私は「自分が幸せにする」と一方的に与えられるものを求めていなかった。あれも幸せだが、理想は違った。私のため、と嘘でも優しい声に心が揺らいだ。でも。私、私をみているのか。私の記憶を見ているのか。わからない。

「るかさん」

呼び掛けに目を向けると、優しい笑みと視線が絡む。

「むつと、さん」

本当は、私も誰かを幸せにしたかった。私、私が?私は、誰かに愛されたいのに。心の底から沸き上がる激情に混ざって、理性は眠る。嘘でもいいから、愛されたい。本能だけで彼を求め、自分から彼の唇に近づいた。重なった唇と絡み合う舌の柔らかさを味わいながら、彼の愛撫を受け入れる。快楽漬けは心地よかった。彼の吐息が耳元をかすめればナカが締まり、爪先が肌をなぞるだけで絶頂する。何度も精を受け入れて。

互いの肌を重ねたまま、翌日を迎える。
眠り始めた彼の腕に抱かれたまま瞼をとじる。一緒に…幸せに、なろうね。
私の、夫。ムツトさま。
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