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愛は番の運命に溺れる
1.遠ざかる夢
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結婚を約束する恋人と共に招かれた舞踏会。
支給された支度金。
露店で選んだ揃いの指輪をつけて、衣装を選びに行った幸せな思い出と共に迎えた当日。
愛しい人がもつ紫をドレスに選び、恋人も私がもつ金の色を装飾品に選び身につける。
美味しい料理と楽しいダンスを思い出に、明日も変わらない時間を過ごせる。
赤い章を身につけた者が現れるまでは、幸せだった。
野生動物の血を誇るガディ家の従者に平民は従うしかない。
愛しい温もりを離し、連れられた先にはウォル・ガディ様がいた。
恋人ではない腕に抱かれるのは嫌だ。
しかし、行動の全てに抗うことはできない。
甘い香りがするウォル・ガディ様。
傍にいるだけで、穏やかな愛情とは違う知らない激情に飲まれそうになる。
「俺の、番」
初めての感覚に戸惑っていると、耳元で囁き唸るような声と同時に首筋に走った痛み。
すると、焼けるような熱さが体の底から湧いてくる。
飼育動物の血をもつ母親から聞いたことがある現象だと、番という言葉で思い出した。
抱き上げられて移動する途中にあった鏡に映った自分に驚いた。
発情した雌のように潤んだ目と赤みのある肌。
ドレスに染みる血は首筋の痛みから流れている。
ウォル・ガディ様は、鏡の私と目を合わせると、赤い目を煌めかせ妖しく微笑んだ。
悪寒のような電流が体を巡り、アルトの穏やかで熱い紫の眼光が恋しくなった。
結婚するまでは純潔でいると、互いに抱える欲望を前戯だけで散らし約束を守りあっていた。
静観派の真人族はあまり表情に感情を見せないが、瞳と声色が語る温度に安心して身を預けることができた。
身の内で渦巻く恋人を求める感情と、初めて知る激情に気が狂いそうになる。
気づけば知らない香りの部屋にいて、ベッドの上で、シーツに胸を押しつけられている。
熱い体を守るドレスはなくなっていて。
でも、ありかを探すには身動きがとれなくて。
「似て非なる血と、族種が異なる血を混ぜた子は、どんな力を得るのだろうな?」
背後から、欲望に染まる声が耳元で聞こえた。
耳の縁を甘噛みされ、同時に貫かれた体。
突かれるたびに痛くて、気持ち悪くて、でも、なぜか満たされている感覚が広がっていく。
「いゃぁああっ!!んぁあっ、んはぁあんっ!!あっ、あんっ!奥、いやぁ、んぁあっ!」
「体は心地が良いと濡れ滴っているが、な」
ゆっくりと抜かれ、浅いところをゆるりと出入りする欲望に焦れ燃える体。
私がほしかったのは、抗えない暴力のような快楽ではない。
互いにゆっくりと高め合うような優しい熱が、ほしい。
なのに、どうして。
欲望を求めて動こうとする体に抗うが、煽るような男の熱に犯され馴染んでいく。
本能が叫んでいる。
この男と交われば良い、と。
私は飼育動物と理性を得た真人の子供だから、考え選び生き方を選びたい。
でも、体は意志を無視して動き始めた。
まるで、噂の媚薬を取りこんだ体のような。
「ぁああっ、ん、はぁ…ぅ、んゃあぁあっ」
こんなの、知らない。
足りない幸福感と、満たされ増す高揚感。
知りたくない。
すぐに離れたい。
もっと、ほしい。
これがアルトだったら。
ふと、体が揺れた。
初めてみる天井と、体に這っている棘のある植物と血が流れる皮膚。
男の赤い目は、熱く燃えている。
「俺の番。名は」
促すようにゆっくりとナカを擦られ、繋がる秘部から広がる。
熱い。
不快な、心地よい熱を早く散らしたい。
「ぁっ…んんっ!…っ、ルシア、です」
逆らえない。
立場の違いに。
甘く聞こえる声に。
呼んでほしい。
違う。私が聞きたいのはアルトの。
ふいに体が動かされ、腕が男の首に回される。
アルトと揃いの指輪が見えて、あることに安堵した。
「これは…不要だ。ルシア」
「ひ、ゃ…だ、ぁあっ!んあぁ…っ、や、ぅ、んん…っ!」
細い蔦が私の指から指輪を奪い、目の前で壊した。
同時に、深いところを何度も突かれる。
宝を壊された悲しさは、急速に高められていく快感にのまれる。
「それでいい。ルシアは、俺の、ウォル・ガディの番だ」
「つが、い…ぁんっ!ぁ…あっ、だめ、イく、イく…っ!」
「イけ」
「あっ、あんっ、ぁああ…っ!やぁ…んっ、ぅあっ!ぁんひあぁああああっ!!」
首筋を甘噛みされながら、熱が注がれる感覚を身に受けながら遠くなる意識。
目が覚めると、指には知らない指輪があった。
赤い色の澄んだ石が金色の金属に縁どられている。
起き上がると、体が痛んだ。
足や腕には小さな傷がある。
紺色の服は男性が身につけるもので、甘い香りに包まれている。
香りだけで昨夜の痴態を思い出し、痛みすら熱に変わり始める体に戸惑う。
ふと、気配がした。
香りを纏うその人は、私の背中を抱きしめた。
支給された支度金。
露店で選んだ揃いの指輪をつけて、衣装を選びに行った幸せな思い出と共に迎えた当日。
愛しい人がもつ紫をドレスに選び、恋人も私がもつ金の色を装飾品に選び身につける。
美味しい料理と楽しいダンスを思い出に、明日も変わらない時間を過ごせる。
赤い章を身につけた者が現れるまでは、幸せだった。
野生動物の血を誇るガディ家の従者に平民は従うしかない。
愛しい温もりを離し、連れられた先にはウォル・ガディ様がいた。
恋人ではない腕に抱かれるのは嫌だ。
しかし、行動の全てに抗うことはできない。
甘い香りがするウォル・ガディ様。
傍にいるだけで、穏やかな愛情とは違う知らない激情に飲まれそうになる。
「俺の、番」
初めての感覚に戸惑っていると、耳元で囁き唸るような声と同時に首筋に走った痛み。
すると、焼けるような熱さが体の底から湧いてくる。
飼育動物の血をもつ母親から聞いたことがある現象だと、番という言葉で思い出した。
抱き上げられて移動する途中にあった鏡に映った自分に驚いた。
発情した雌のように潤んだ目と赤みのある肌。
ドレスに染みる血は首筋の痛みから流れている。
ウォル・ガディ様は、鏡の私と目を合わせると、赤い目を煌めかせ妖しく微笑んだ。
悪寒のような電流が体を巡り、アルトの穏やかで熱い紫の眼光が恋しくなった。
結婚するまでは純潔でいると、互いに抱える欲望を前戯だけで散らし約束を守りあっていた。
静観派の真人族はあまり表情に感情を見せないが、瞳と声色が語る温度に安心して身を預けることができた。
身の内で渦巻く恋人を求める感情と、初めて知る激情に気が狂いそうになる。
気づけば知らない香りの部屋にいて、ベッドの上で、シーツに胸を押しつけられている。
熱い体を守るドレスはなくなっていて。
でも、ありかを探すには身動きがとれなくて。
「似て非なる血と、族種が異なる血を混ぜた子は、どんな力を得るのだろうな?」
背後から、欲望に染まる声が耳元で聞こえた。
耳の縁を甘噛みされ、同時に貫かれた体。
突かれるたびに痛くて、気持ち悪くて、でも、なぜか満たされている感覚が広がっていく。
「いゃぁああっ!!んぁあっ、んはぁあんっ!!あっ、あんっ!奥、いやぁ、んぁあっ!」
「体は心地が良いと濡れ滴っているが、な」
ゆっくりと抜かれ、浅いところをゆるりと出入りする欲望に焦れ燃える体。
私がほしかったのは、抗えない暴力のような快楽ではない。
互いにゆっくりと高め合うような優しい熱が、ほしい。
なのに、どうして。
欲望を求めて動こうとする体に抗うが、煽るような男の熱に犯され馴染んでいく。
本能が叫んでいる。
この男と交われば良い、と。
私は飼育動物と理性を得た真人の子供だから、考え選び生き方を選びたい。
でも、体は意志を無視して動き始めた。
まるで、噂の媚薬を取りこんだ体のような。
「ぁああっ、ん、はぁ…ぅ、んゃあぁあっ」
こんなの、知らない。
足りない幸福感と、満たされ増す高揚感。
知りたくない。
すぐに離れたい。
もっと、ほしい。
これがアルトだったら。
ふと、体が揺れた。
初めてみる天井と、体に這っている棘のある植物と血が流れる皮膚。
男の赤い目は、熱く燃えている。
「俺の番。名は」
促すようにゆっくりとナカを擦られ、繋がる秘部から広がる。
熱い。
不快な、心地よい熱を早く散らしたい。
「ぁっ…んんっ!…っ、ルシア、です」
逆らえない。
立場の違いに。
甘く聞こえる声に。
呼んでほしい。
違う。私が聞きたいのはアルトの。
ふいに体が動かされ、腕が男の首に回される。
アルトと揃いの指輪が見えて、あることに安堵した。
「これは…不要だ。ルシア」
「ひ、ゃ…だ、ぁあっ!んあぁ…っ、や、ぅ、んん…っ!」
細い蔦が私の指から指輪を奪い、目の前で壊した。
同時に、深いところを何度も突かれる。
宝を壊された悲しさは、急速に高められていく快感にのまれる。
「それでいい。ルシアは、俺の、ウォル・ガディの番だ」
「つが、い…ぁんっ!ぁ…あっ、だめ、イく、イく…っ!」
「イけ」
「あっ、あんっ、ぁああ…っ!やぁ…んっ、ぅあっ!ぁんひあぁああああっ!!」
首筋を甘噛みされながら、熱が注がれる感覚を身に受けながら遠くなる意識。
目が覚めると、指には知らない指輪があった。
赤い色の澄んだ石が金色の金属に縁どられている。
起き上がると、体が痛んだ。
足や腕には小さな傷がある。
紺色の服は男性が身につけるもので、甘い香りに包まれている。
香りだけで昨夜の痴態を思い出し、痛みすら熱に変わり始める体に戸惑う。
ふと、気配がした。
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