夢の記録

さとよだ

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2021.06

2021.06.26 ) 空白の部屋

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 ある施設を訪れた。展覧会や舞台、説明会などの催し物が毎日のように開かれ、いつも多くの人で賑わっている。
 今は舞台の最中なのだろう。人で溢れている一階の広場には誰もいなかった。
 入り口から見て左手にある階段の方に向かうと、舞台に出演する役者たちとすれ違った。簡単に「こんにちは」と言って、歩いていくのを眺める。視界の端に、控えめに設置されたUFOキャッチャーがあるのが見えた。
 私は景品として何が置かれているのか気になって機械に近寄る。UFOキャッチャーは四~五台ほどあったがどれも目ぼしい景品はなさそうだった。
 残念だとしょんぼりしていると、舞台が終了したのか人が次々と階段から降りてきた。そろそろ座りたい。そう思い、私はエントランスの方に向かう。
 エントランスにはたくさん食卓があったはずだが、すでに多くの人で埋まっていた。相席する形で、空いてる席に座る。斜め前の人と隣の人と、いつの間にか仲良くなっていた。
「家買おうと思ってるんだけどさ」
「へぇ、どんな家?」
 斜め前に座る人が間取りのような図面を広げる。立派な家のようで、見る限りかなり広いイメージを持った。
「ここの部屋さ、後ろに空間あるんだ」
「見りゃわかるけど……何これ。意味あるの?」
「追加でお金払えば何の部屋か分かるようになってる」
「なるほどね」
 彼らが指差す部屋の間取りを見ると、確かに謎の空間が存在していた。
「実際に見に行けばその空間が何なのか分かるのでは?」
 その手があったか、彼らはそんな顔をする。さっそく家に向かおうと、慌ただしく席を立って駆けていった。

 部屋はまるでホールのようだった。もちろん客席はなかったが舞台はあり、ここで友人を呼んで催し物ができそうな広い部屋だった。
「間取りによると、この裏が空白のとこかな」
 彼が指差す先には、舞台上の壁際の奥、ちいさな扉があった。執事のような見た目をした管理人に扉を開けてもらう。
 舞台のような部屋に続く部屋。そこは天井が高く、五階立てくらいあるのではないかと思わせるほどだった。
 そんなに高さがあるとは思わず図面をもう一度眺める。すると何も記載がなかった空間に、舞台裏の文字と梯子のイラストがふわっと浮かんできた。
「上にいきましょうか」
 管理人はロープで作られた梯子を持ち出し、慣れた手つきで登っていく。
 私たちは感心していた。上に何があるのかは分からなかったが、この家は豪邸であることは分かった。
 彼らとは解散し、私は近くのコンビニに向かう。もう夜になっており、早く帰ろうと早足になる。キャラクターもののグミを購入し急いで自宅に向かった。

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