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番外編 伝統行事
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その年の正月。三つ子は五歳になっていた。
十二月三日が誕生日なので、五歳になった翌月が正月なのだった。
司と朗は順調に元気に育っている。
健康がやや不安定になっていた美之も、三歳を過ぎてからは特に問題も出ずに健やかに育っている。
三つ子の長男・司と次男・朗は、一歳くらいから部分的な外見の違いが出てきた。顔は見分けがつかないほど似ているが、司は真っ直ぐな黒髪サラサラヘアーで、朗はくるくる巻き毛の黒髪天然パーマだった。これにより、周囲が司と朗を間違うことはなかった。
美之も黒髪の真っ直ぐな髪だが、美之は髪を伸ばしており、唯一の女の子ということもあって、着ているのはかわいいフリフリのワンピースや着物だったのですぐにわかった。
司と朗は父親・京司朗の系統の顔で、先祖がイタリア人と言っても疑われないハッキリとした目鼻立ちだ。ようするに将来は美形男子の地位が約束された面構えだ。
美之は奥二重で、そこだけはみふゆと礼夏に似ている。しかし、美之も司や朗と同様に大きめの目と、長いまつげや顔立ちは、どことなく胡蝶や楓に似ていた。
しかし、三つ子とはいえ、男女の性差は無くせない。
一月三日━━━
惣領家の年始の伝統行事が行われる日。
年始行事は人を入れ替え二日間に渡って行われる。
男達は老いも若きも白い褌をしめ、祠を祀っている山の中腹、海の見える場所まで登り、一年の無病息災・五穀豊穣・家内安全を祈願する。
初日は惣領家の当主である貴之を筆頭に、惣領家に仕える男達が参加する。翌日は総本家・権現寺の住職・一心を筆頭に、初日に参加できなかった男達が行うことになっている。
今回は司と朗が五歳になったため初参加となった。ふたりは貴之と京司朗に白い褌をしめてもらっていた。
「みゆちゃんも!みゆちゃんもフンドシするーー!!」
褌をしめてもらっている司と朗を見て、美之が地団駄をふんだ。
「美之は女の子だからダメよ」
母親のみふゆが優しく宥めた。
「やだー!やだー!みゆちゃんもーー!おんなじがいいーーー!!」
美之は納得がいかない。女の子だからだめだというのが理解できないのだ。普段は三つ子だからと同列にいるのに、なぜ?
貴之は褌を締め終わった司を抱きあげて言った。
「美之、男には男の役割、女には女の役割がある。今日の祈願登山は男の務めだ。男の役割だ。女は俺達の帰りを待つのが役割だ」
「やだー!みゆちゃんもフンドシしておやまにのぼるー!」
美之は貴之の言葉にもなっとくせず、畳の上に転がってバタバタと抗議している。
「美之!いいかげんにしないか!!」
朗を抱っこしている父親の京司朗が怒った。
めったに怒らない父・京司朗の声に美之がビックリして泣きだした。ついでに朗まで泣きだした。
「おまえを怒ったんじゃない」と朗を宥める京司朗と、美之を必死に宥めるみふゆ。朗は泣き止んだが美之は泣き止む気配が無い。
ここで司が貴之から降りたがった。
貴之が司を降ろすと、司は美之のそばまで行って、
「みゆちゃん、かわいくない」
と言った。
美之が泣き止んだ。
「・・み、みゆちゃん・・、かわいくにゃい・・・?」
『かわいくない』と言われてショックだったのか、美之は目をまん丸にして司の言葉を繰り返した。
司は頷いて、
「フンドシかわいくない」
と、言った。
『フンドシかわいくない』
「・・フンドシ・・かわいくにゃい・・・?」
「フンドシかわいくない!」
司がキリッとした顔できっぱりとまた言った。
「・・お、おかぁ・・しゃん、・・フンドシ、かわいくにゃい・・・?」
美之は首をかしげて念のため母親に確認した。確認大事。
「そ、そーね!かわいくにゃい!かわいくにゃいから!!」
チャンスとばかりにみふゆが語気を強めた。
「みゆちゃんは、あかいおきもの、かわいい。キラキラのかんざしかわいい」
司、生真面目な表情でダメ押しの一言。
『赤いお着物かわいい。キラキラのかんざしかわいい』
「!!」
美之は思い出した。
今日は赤い着物を着る日だ。
お正月用にと、祖父・貴之が三枚の着物と、それらに合わせた帯とキラキラのかんざしをあつらえてくれたのだ。
白とピンクは元旦と昨日着たが、最後の赤い着物はまだ着ていない。(朝からフンドシをするとごねていたから)
様子を見ていた楓が急いで赤い着物とかんざしを持ってきた。
「ほーら、みゆちゃん。とっても豪華でかわいい赤いお着物とキラキラの簪よぉ」
楓が美之の興味をひく言葉で誘惑した。
元旦に着た白地に花柄の着物はちょっと大人っぽいシックな着物だった。昨日の二日に着たピンクの花柄の着物はロマンチックで愛らしい着物だった。そして、今日の赤い着物は三枚のなかでも金糸銀糸があざやかな、一番豪華で華やかでかわいらしさ満載の着物だ。
美之は豪華な赤い着物と司の褌を見比べた。
「・・・みゆちゃん・・、あかいおきものきるー!かわいいのきるー!キラキラのかんざし、つけるー!」
美之はあっさりと掌を返した。
「キャッキャッ」と機嫌が良くなった。
美之には『かわいい』が全てなのだ。
『かわいい』は美之の世界を支配している。
「司のヤツ、美之の扱いかた上手ーな。てっきり俺に似て硬派かと思ったが、意外と女の扱いがうまい女ったらしになるんじゃねぇか?おめーに似てよ」
「俺のどこが女ったらしなんだ。誤解を招く言動はやめてくれ」
「おとーさん、おんにゃったらしー」
朗が覚えた。
みふゆが「えっ!?」と振り向いた
「朗!余計なことを覚えるんじゃない!」
京司朗は朗を叱り、みふゆと目を合わせると
「違うからな!」
と、否定した。
「あ、いえ・・、あの・・・過去のことは・・わたしは・・・別に・・・」
みふゆは京司朗から目をそらし、動揺をおさえつつ美之に着物を着せた。楓が横で笑いながら手伝っている。
「だから違うからな!」
「おい京司朗、俺の娘を泣かせやがったら承知しねーぞ」
「泣かせてねーよ!今のはだいたいあんたのせいだろうが!冤罪だ!」
京司朗が言うと、朗が「えんじゃいだー!」と真似た。
「ははははは」
貴之が笑った。
「会長、代表、皆の準備ができました」
黒岩正吾が自身の三人息子、海斗、永斗、山斗を連れて呼びに来た。海斗と永斗は父・黒岩正吾と同じくらいの身長となり、山斗は少し小柄だが、三人とも幼い頃から鍛えてきただけあって、逞しい肉体を持つ男になった。
「うーん、うちの息子どももカッコイイ引き締まった尻を持った男に成長したわねー。立派立派!ほーんといい尻だわー」
楓が後ろ姿を眺めながら感心感心と頷き、みふゆが「お姉さんってば」と、笑った。
庭には惣領家の男衆が白い褌姿で勢揃いしている。吐く息が白い。
大人の男にまじって子供も何人かいた。子供達は皆、褌姿の上に白い装束を着ている。
司と朗も白い装束を着せられた。
足元は皆、厚手の足袋だ。
「よし!!全員そろってるか!!」
貴之のかけ声に男達の勇ましい返事が響いた。
みふゆと美之、楓、本橋ら使用人など、屋敷に残る女達も勢揃いしている。
貴之は女達を振り向いた。
「今年も行ってくるぜ!!」
貴之の声に、惣領家の女主人としてのみふゆから、
「はい!!いってらっしゃいませ!!」と、声が返った。
みふゆの後ろに並んでいる女達が、「いってらっしゃいませ!」と続いた。
京司朗がニコリと微笑んでみふゆと瞳を合わせた。
みふゆも小さく手を振って笑みを返した。
貴之を先頭に男達は山にむかって練り歩き、歩調を徐々に早くしていく。
見送る笑顔の女達。
男達の姿が見えなくなるまで女達はその場を動かず見送って、そのあとは帰ってくる男達のために労いの酒とご馳走を振る舞う準備をするのだ。
「いってらっしゃーい!みゆちゃんまってるー!」
みふゆに抱っこされた赤い着物の美之が、笑顔で男達の背に手を振った。
その年の正月。三つ子は五歳になっていた。
十二月三日が誕生日なので、五歳になった翌月が正月なのだった。
司と朗は順調に元気に育っている。
健康がやや不安定になっていた美之も、三歳を過ぎてからは特に問題も出ずに健やかに育っている。
三つ子の長男・司と次男・朗は、一歳くらいから部分的な外見の違いが出てきた。顔は見分けがつかないほど似ているが、司は真っ直ぐな黒髪サラサラヘアーで、朗はくるくる巻き毛の黒髪天然パーマだった。これにより、周囲が司と朗を間違うことはなかった。
美之も黒髪の真っ直ぐな髪だが、美之は髪を伸ばしており、唯一の女の子ということもあって、着ているのはかわいいフリフリのワンピースや着物だったのですぐにわかった。
司と朗は父親・京司朗の系統の顔で、先祖がイタリア人と言っても疑われないハッキリとした目鼻立ちだ。ようするに将来は美形男子の地位が約束された面構えだ。
美之は奥二重で、そこだけはみふゆと礼夏に似ている。しかし、美之も司や朗と同様に大きめの目と、長いまつげや顔立ちは、どことなく胡蝶や楓に似ていた。
しかし、三つ子とはいえ、男女の性差は無くせない。
一月三日━━━
惣領家の年始の伝統行事が行われる日。
年始行事は人を入れ替え二日間に渡って行われる。
男達は老いも若きも白い褌をしめ、祠を祀っている山の中腹、海の見える場所まで登り、一年の無病息災・五穀豊穣・家内安全を祈願する。
初日は惣領家の当主である貴之を筆頭に、惣領家に仕える男達が参加する。翌日は総本家・権現寺の住職・一心を筆頭に、初日に参加できなかった男達が行うことになっている。
今回は司と朗が五歳になったため初参加となった。ふたりは貴之と京司朗に白い褌をしめてもらっていた。
「みゆちゃんも!みゆちゃんもフンドシするーー!!」
褌をしめてもらっている司と朗を見て、美之が地団駄をふんだ。
「美之は女の子だからダメよ」
母親のみふゆが優しく宥めた。
「やだー!やだー!みゆちゃんもーー!おんなじがいいーーー!!」
美之は納得がいかない。女の子だからだめだというのが理解できないのだ。普段は三つ子だからと同列にいるのに、なぜ?
貴之は褌を締め終わった司を抱きあげて言った。
「美之、男には男の役割、女には女の役割がある。今日の祈願登山は男の務めだ。男の役割だ。女は俺達の帰りを待つのが役割だ」
「やだー!みゆちゃんもフンドシしておやまにのぼるー!」
美之は貴之の言葉にもなっとくせず、畳の上に転がってバタバタと抗議している。
「美之!いいかげんにしないか!!」
朗を抱っこしている父親の京司朗が怒った。
めったに怒らない父・京司朗の声に美之がビックリして泣きだした。ついでに朗まで泣きだした。
「おまえを怒ったんじゃない」と朗を宥める京司朗と、美之を必死に宥めるみふゆ。朗は泣き止んだが美之は泣き止む気配が無い。
ここで司が貴之から降りたがった。
貴之が司を降ろすと、司は美之のそばまで行って、
「みゆちゃん、かわいくない」
と言った。
美之が泣き止んだ。
「・・み、みゆちゃん・・、かわいくにゃい・・・?」
『かわいくない』と言われてショックだったのか、美之は目をまん丸にして司の言葉を繰り返した。
司は頷いて、
「フンドシかわいくない」
と、言った。
『フンドシかわいくない』
「・・フンドシ・・かわいくにゃい・・・?」
「フンドシかわいくない!」
司がキリッとした顔できっぱりとまた言った。
「・・お、おかぁ・・しゃん、・・フンドシ、かわいくにゃい・・・?」
美之は首をかしげて念のため母親に確認した。確認大事。
「そ、そーね!かわいくにゃい!かわいくにゃいから!!」
チャンスとばかりにみふゆが語気を強めた。
「みゆちゃんは、あかいおきもの、かわいい。キラキラのかんざしかわいい」
司、生真面目な表情でダメ押しの一言。
『赤いお着物かわいい。キラキラのかんざしかわいい』
「!!」
美之は思い出した。
今日は赤い着物を着る日だ。
お正月用にと、祖父・貴之が三枚の着物と、それらに合わせた帯とキラキラのかんざしをあつらえてくれたのだ。
白とピンクは元旦と昨日着たが、最後の赤い着物はまだ着ていない。(朝からフンドシをするとごねていたから)
様子を見ていた楓が急いで赤い着物とかんざしを持ってきた。
「ほーら、みゆちゃん。とっても豪華でかわいい赤いお着物とキラキラの簪よぉ」
楓が美之の興味をひく言葉で誘惑した。
元旦に着た白地に花柄の着物はちょっと大人っぽいシックな着物だった。昨日の二日に着たピンクの花柄の着物はロマンチックで愛らしい着物だった。そして、今日の赤い着物は三枚のなかでも金糸銀糸があざやかな、一番豪華で華やかでかわいらしさ満載の着物だ。
美之は豪華な赤い着物と司の褌を見比べた。
「・・・みゆちゃん・・、あかいおきものきるー!かわいいのきるー!キラキラのかんざし、つけるー!」
美之はあっさりと掌を返した。
「キャッキャッ」と機嫌が良くなった。
美之には『かわいい』が全てなのだ。
『かわいい』は美之の世界を支配している。
「司のヤツ、美之の扱いかた上手ーな。てっきり俺に似て硬派かと思ったが、意外と女の扱いがうまい女ったらしになるんじゃねぇか?おめーに似てよ」
「俺のどこが女ったらしなんだ。誤解を招く言動はやめてくれ」
「おとーさん、おんにゃったらしー」
朗が覚えた。
みふゆが「えっ!?」と振り向いた
「朗!余計なことを覚えるんじゃない!」
京司朗は朗を叱り、みふゆと目を合わせると
「違うからな!」
と、否定した。
「あ、いえ・・、あの・・・過去のことは・・わたしは・・・別に・・・」
みふゆは京司朗から目をそらし、動揺をおさえつつ美之に着物を着せた。楓が横で笑いながら手伝っている。
「だから違うからな!」
「おい京司朗、俺の娘を泣かせやがったら承知しねーぞ」
「泣かせてねーよ!今のはだいたいあんたのせいだろうが!冤罪だ!」
京司朗が言うと、朗が「えんじゃいだー!」と真似た。
「ははははは」
貴之が笑った。
「会長、代表、皆の準備ができました」
黒岩正吾が自身の三人息子、海斗、永斗、山斗を連れて呼びに来た。海斗と永斗は父・黒岩正吾と同じくらいの身長となり、山斗は少し小柄だが、三人とも幼い頃から鍛えてきただけあって、逞しい肉体を持つ男になった。
「うーん、うちの息子どももカッコイイ引き締まった尻を持った男に成長したわねー。立派立派!ほーんといい尻だわー」
楓が後ろ姿を眺めながら感心感心と頷き、みふゆが「お姉さんってば」と、笑った。
庭には惣領家の男衆が白い褌姿で勢揃いしている。吐く息が白い。
大人の男にまじって子供も何人かいた。子供達は皆、褌姿の上に白い装束を着ている。
司と朗も白い装束を着せられた。
足元は皆、厚手の足袋だ。
「よし!!全員そろってるか!!」
貴之のかけ声に男達の勇ましい返事が響いた。
みふゆと美之、楓、本橋ら使用人など、屋敷に残る女達も勢揃いしている。
貴之は女達を振り向いた。
「今年も行ってくるぜ!!」
貴之の声に、惣領家の女主人としてのみふゆから、
「はい!!いってらっしゃいませ!!」と、声が返った。
みふゆの後ろに並んでいる女達が、「いってらっしゃいませ!」と続いた。
京司朗がニコリと微笑んでみふゆと瞳を合わせた。
みふゆも小さく手を振って笑みを返した。
貴之を先頭に男達は山にむかって練り歩き、歩調を徐々に早くしていく。
見送る笑顔の女達。
男達の姿が見えなくなるまで女達はその場を動かず見送って、そのあとは帰ってくる男達のために労いの酒とご馳走を振る舞う準備をするのだ。
「いってらっしゃーい!みゆちゃんまってるー!」
みふゆに抱っこされた赤い着物の美之が、笑顔で男達の背に手を振った。
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