誰にも触れられたくないトコロ 【完結】

うなきのこ

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17 「川釣り」

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後押しをしてくれた半田に全てを打ち明けた。
誘拐されたことは知っていたがレイプされたことは初めて話した。
話し終わると半田は『2人がいて良かったです』とだけ言った。

打ち明けたからと言って態度が変わるわけでもなく、いつも通り気遣いを忘れない人でその優しさにすごく助かっている。

「そういえば最近釣りには行っていないですよね?川釣り経営している友人が居て彼から遊びに来ないかと誘われてるんですよ、行きませんか?」
珍しく半田から出かけようと誘ってきたので4人と1匹で行くことになった。
買い物に行くことはあってもレジャーは初めて一緒に行く。

「川釣りは本当に久しぶりだから楽しみ」
「大きいマス釣りたいな」
「お前のは純粋な釣りを楽しむと言うより食い気だろ?」
「大きいものも釣れるらしいですよ」
「みゃ」
なにを言っているか分からないが目がキラキラしていたさくらは水の音を聞いても怖がらなかった。
今いるメンバーでは巽以外に釣りを嗜むものは居らず巽の持ち物から道具を貸し出す。
「グッてなったら上に持ち上げればいいだけだから、はいこれね」
各々に仕掛けをつけた竿を渡していく

半田の友人が経営しているというこの場所は範囲が広く、ほぼ自然に任せた釣り場らしい。
大きな川があって対岸にも渡れるように100メートル置きに橋が設置されていた。
そのため隣に他の人が入ることは滅多にない。
これなら広々と使えて場所を探すのも楽しめそうだと1人ワクワクしていた。
「愁くん、あそこの岩の影とか狙って投げるともしかしたらいるかも」
仕掛けは色々あるが巽はルアーで愁弥と同じくマス狙いに決めて居そうな場所を探す。
半田とさくら、総一郎はアユ狙いで少し場所が違うところへ行ったので隣には愁弥だけ。
「あの岩の下に投げればいいのか?」
「うん、やってみて」
ヒュンッと小さな音を立ててルアーが狙ったポイントへ綺麗に入っていく。
投げ方も誘い方も上手い愁弥のルアーに魚が食いつくのが見えたと同時にグイッと竿が撓る。
「!大きい!糸が切れないように気をつけてっ」
「おっもいな…竿こんなに曲がってるけど大丈夫なのか?」
「割と丈夫だから」
投げて直ぐに食いついてきた魚を少しずつ寄せて巽が網で取り込む。
「大きいな!」
「最初にこんなサイズ釣れるのは本当に凄い!」
少し離れていたところに様子を見に来た半田の友人、鈴元すずもともこちらへ来た。
「でかいですね、これ魚拓ものですよ!サービスで魚拓もできるので是非よってください」
「へ~そんなサービスもしてるんですね、ありがとうございます」
提案すると「それでは引き続き楽しんでください」と言って直ぐにその場を立ち去った。
「魚拓やれるんだね、後で2人より先に戻って驚かせよう!」
「だな!」
巽も同じところに入れてみるが愁弥の釣った物よりだいぶ小さい。それでも25cmはあったので満足だ。
5匹ずつ釣ったところで先程鈴元に教えてもらった魚拓をしに受付へと戻る。
「あ、2人とも先に戻ってたの?」
「今連絡しようと思ってたところだよ…え!何それ!?」
「大きいだろ?巽が教えてくれたところに投げたらすぐ釣れたんだ」
「魚拓サービスあるって聞いたからやろうと思ってるんだけど2人はどうだったの?」
「アユのサイズはそこそこだけど結構釣れて2人で21匹だよ」
「短時間でそんなに?」
「食べるの楽しみだな」
「鈴木さんに受付の裏にあるBBQ場も借りてるから私はそっちで炭の準備してきますね」
幼馴染み3人は魚拓をしに受付へ行くと施設の従業員に「こんなサイズ釣れたんですか!おめでとうございます!なかなか釣れないんですよ」
手際よく墨と紙を準備しながらべた褒めする。
「良ければ余分に刷って頂けませんか?あそこに飾らせて欲しいのですが」
示された方を見ると4枚の魚拓が飾ってあり、それは今日愁弥が釣ったものと同じくらい大きいものだった。
「あそこに飾らせてもらえるんですか?」
「ぜひ」
練習用紙を施設の人が引き取って額縁に早速飾り立てた。
こうして見るとすごく立派だ。
厚手の和紙に刷り一応乾かすために預かってもらっているが額装したらさぞ目立つだろう。
自分たちもこの魚拓を社長室に飾ろう!と愁弥が言ったが巽が嫌がった。
「俺が釣ったわけじゃないのに社長室には飾りたくない」
らしい。

3人はBBQ場へ半田と合流し、まずは魚に塩を降って塩焼き。やはり川魚と言ったら塩焼きだろう?と愁弥。
半分ほどを塩焼きにして残りは半田がマスでムニエルや刺身など色んな調理法で机に並べていた。
自分たちで釣った魚を新鮮なうちに美味しく頂けるのは半田のおかげも大いにあることだろう。
さくらも刺身に大満足なようで寝てしまった。

腹も落ち着いた頃受付へオーナーの鈴元にお礼と魚拓を引き取って帰路へ着く。

「また行こうね!今度は海!」
「巽のおかげで釣りが楽しいってわかったから興味湧いてきたし今度また釣りデート行こうか」
「釣竿買うことにしたから巽…あ?ねた?」
「さっきまで話してたのにね」
「はしゃいでましたし仕方ないですよ
そういえばさくらも楽しそうに水辺で遊んでたんですよ
後で動画送りますね」
「うわーそれ現場で見たかったな…」
「じゃんけんで負けたけどこれはこれで良かったな
さくらの可愛い姿沢山見れたし」
「…俺だって巽の真剣な姿見れたし?」
謎なマウントをかましながらぐっすり眠るふたりを眺めていると巽が急にパチッと目を開けた。
「うおっびっくりした…」
「まだ着いてないし寝てていいよ」
「……うん」
車内をキョロキョロと見渡したあとまた目を閉じて寝息を立てた。
寝惚けていたのか分からないがその行動が可愛いく思えた。
「なにか探す夢みてたのかね」
「しまった!動画撮っておけばよかった…車内用カメラもつけるように手配しておこう。」
「…総一郎、お前時々変態臭いよな」
「自覚してる」
「あ、そ」
運転している半田はその行動をバックミラーでちらっとしか見ていなかったが顔つきが幼く見えてまたがつかなくなっていたらと気が気でなかった。

家に着いて巽を起こすと普段通りで居たので杞憂に過ぎなかったかと1人胸をなでおろした。



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