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澪ちゃんを救え!

その3

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「止まれ!止まらんと切るぞ!」

 ――止まるか!

 私は城門を守る兵士達の怒鳴る声に心の中で突っ込みをいれながら、ガーディアンごと城門に突っ込んでいく。
 突っ込み二連発。

 化け物みたいな扉を閉めようとしているけど――にやり、と私は笑う。
「ガーディアン! お前の駿足を見せつける時だよ!」

 リリリリリーン!

 と気合いの入ったベルの音。
 馬だ。まじ馬。

 兵士が槍で私とガーディアンをツツいて止めようとするけど、
「そんな攻撃! 今の私とガーディアンには通用しないんだから!」
 追い出された時、突かれてタイヤをパンクされたことを思い出したのか、ガーディアンが

 リリリリリリリリリリリ!!

 と威嚇のベルを鳴らす。

「ひぃ!」
 その時と速さが違う。
 兵士達は、ガーディアンの風速に吹き飛ばされていった。
 果敢にも飛び込んできた兵士もいたけど――ガーディアンの屈強なボディに弾き飛ばされていく。

「すごい! すごいよ! ガーディアン!」
 ガーディアンがこんなに強かったなんて!

 リーーーーーーーーーン!

 褒められたのが嬉しかったのか、高らかにベルを鳴らす。
「このまま城内に侵入! 最優先事項は澪ちゃん救出! 余裕あったらあのファクターもどきとタラシの殿下を、土下座させるほどにヒィヒィ言わせる!」

 目の前には高くそびえる城があり、そこからワラワラと蟻のように兵士達が私達に向かってきた。

「……さすがに、あの数を相手にするのは無理じゃない?」
 あの軍隊をくぐり抜けて、澪ちゃんのいる部屋を探して脱出するのは骨がおれそう。

 しょぼーん、とやる気が削がれてしまった。
「どうしよう……?どうやって澪ちゃんを助けよう」

 考えろ、私!
 でも迫り来る兵士達の波が迫ってくる。
 焦って、ますますいい案が思いつかない。

「あーん!空へ飛べたらいいのに!」

 できそうもないことを叫んでしまう。

 ――けれど、この私の台詞をガーディアンが叶えてくれた。



「――えっ?」
 身体が浮く?
 ううん、身体だけじゃなくて……

「ガ、ガーディアン!?」

 ふわり、とガーディアンごと宙に浮いてる!?
「あ、あんた……! 浮いてる! 浮いてるって!」

 叫んだ刹那――ガーディアンと乗っている私は空高く舞い上がった。

「えええええええええええええ!?」
 突然、空を飛び始めた乗り物と私に兵士達はどよめき、私達を見上げてる。
「えっ? ええと……? これ、あの……むかーしの人気映画にあったよね? ちょっとまずいよね?パ○リだよね?」
 この世界に、著作権とかなんかとかあるのかは知らない。
 でも、あんまりファンタジーな出来事で私、どう表現したらいいのか分からなくなってる。

「まあ! 籠に何も乗ってないからいいかぁ? で、でも、ちょっと形態変えたいね……」
 いや、それは無理だ。
 帰ってからちょっとそれらしく改造しようかな? 考えてたら、ガーディアンが――ガクン! と上下に揺れた。

「落ちる!?」
 やっぱり普通のチャリだもんね、異世界補正がついても難しかったかな?
 なんて推測してる場合じゃない。このままだと墜落死しちゃうじゃん!
「待って!このまま落ちると私、ヤバいから――……えっ?」

 ペダルが変形してる……?
 ふわりとした羽じゃないけど、機械的な羽だけど、横に大きく伸びていて見かけそれは翼に見える。

「マジか……! すっごい、すっごいよ! ガーディアン!サイコー!!」
 お、お前が一番進化してるよ、ガーディアン!

 リーン!とベルが鳴る。
「よし、このまま上空から澪ちゃんがいる部屋を探すよ!」
 了解! とでもいうようにベルが鳴り、ぐるん、と旋回し、城の上空に向かう。

 といっても敵だって、その辺りの備えはあった。
 私達に向かって矢が飛んできた。

「むん! ガーディアン!」
 心得た、というようにガーディアンは矢が届かないギリギリの場所を飛行する。

 この子、賢いわー。
「ん、ふっふ。持ち主が賢いからかな」
 誰も褒めてくれないので自画自賛する。

「――でも、このまま遊んでられないよ、ガーディアン。魔法攻撃なんてされる前に澪ちゃんを見つけよう!」
 リーン! とガーディアンも了承するようにベルを鳴らすと、ぐるり、と高い場所に目安をつけ城の壁にぶつからないよう、すれすれを飛ぶ。
 私は外から窓の向こう――室内を覗く。

「実里ちゃん!?」
 通り過ぎた窓から澪ちゃんの声が!
 私はハンドルを右に傾けて、Uターンする。

「澪ちゃん!」
 澪ちゃんが窓を開けて上半身を外に出して、私に手を振っている。
「助けにきたよ!今行くから!」
「うん!」
 澪ちゃんが嬉しそうに私に笑いかけてくる。

 それから澪ちゃんはサッシに足をかけ、ますます上半身を外へ出してきた。
「ちょっ! あんまり出したら危ないって!」
 私は伸ばしてくる澪ちゃんの手を掴もうと腕を伸ばしたら――

「実里ちゃん!避けて!」
「――っ!?」

 澪ちゃんが危険を察知し、叫んだと同時だった。

 傾いた私の身体に、雷の形をしたものが刺さる。

 同時――ビリビリと電流が全身を駆けめぐった。

(魔法……?)
 そう気づいたけど、もろに受けた私は――そのまま気を失ってしまったのだ。


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