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五章 五節の柏餅とザンギ。子供の日は子供のリクエストを
(2)
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(なんていうことでしょう!)
電話のあと、菜緒は当初の目的である買い出しに行った。
そうして、気が付けば当初の予定になかった食材を大量に買ってしまった。
手には鶏もも肉三キロ。
卵にサラダ油。
重たい物ばかりだ。
軽いのと言えば、履歴書とそれ用の写真ぐらい。
ついでに本来買いたかった食材まで買ったものだから、両手に花ではなく両手に荷物状態である。
(いくら国産鶏肉が安かったからって、三キロも買ってどうするつもりなの? 私)
自分の行動が全く理解できない。
アパートの自分の部屋には単身者用とはいえ立派ではある冷蔵庫だが、三キロの肉なんて入るわけがない
大好きなアイスが冷凍庫の半分も占めている状態なのに、絶対に入らない。
(うううう、どう消化しようか……調味料に漬けて毎日消費してどうにかなるの?)
荷物で行きの二倍の時間をかけて、どうにか我が家のアパート前まで辿り着いた。
あと少し、と安堵しているところに、
「菜緒!」
と自分を呼ぶ幼い声に振り向く。
木造平屋の住宅から鯛が駆け出てきたのだ。
「待ってたの!」
明るい笑顔で菜緒の腕を掴む。
「あ、危ない~! こっち卵入ってるの。引っ張っちゃ駄目、割れちゃう」
鯛に落ち着くように諭す。
「ごめんね、菜緒。僕、嬉しくって。今日は『子供の日』なの」
そう、今日はこどもの日だ。菜緒が働いている工場は盆と年末年始以外は稼働しているので、気づかなかった。
現にゴールデンウィークなのに昨日今日と出勤したし。
そこは年中無休と言っても過言ではない病院で働いていたときと、そう変わらないので体力は大丈夫だが。
ただ、病院勤めの頃と比べたら日にちの感覚がなくなっている気がする。
(だからさっき電話するまで気づかなかったのよねぇ)
「そういえば、そうね。もうお祝いはしたの?」
「ううん、これから」と鯛。
それからまた鯛は菜緒の腕を引っ張る。今度は荷物に気をつけて優しく。
「あのね、今日は『こどもの日』でしょ? だから辰巳が『食べたい物作ってあげる』って! だから、『ザンギっていうの食べたい』って言ったんだ」
「ザンギ?……って、鯛は知ってるの?」
「うん! だから菜緒を待ってたの! 鶏肉たくさん買ってきたんでしょ?」
「うん、三キロ………………って、どうして知ってるの!?」
「だって、恵比寿様が『お願いしておいた』って言ってたもの。あとザンギに使う材料も!」
恵比寿様?
――っていうのは、商売繁盛に御利益のある神様?
(まさかねぇ? 恵比寿は恵比寿でも、きっと苗字よね?)
どうして鶏肉を三キロも購入してしまったことを知っているのかも驚かされたが、恵比寿様がお願いしておいたってどういうことなのかさっぱりで、頭が理解できない。
「ねぇ、鯛。恵比寿様って鯛の知り合いかな?」
「菜緒は知らないの?」
意外、という顔をされたて菜緒は苦笑する。
「私の知り合いには『えびす』という苗字の人はいないなぁ……」
「違うよー、恵比寿様は神様でしょ?」
「お、おう……」
「お金使わせちゃったからって、菜緒にいい職場を紹介したって言ってたよ」
「???? もしかしたら、私が求人見て電話して空振ったの知ってるの?」
そう、あの後すぐに電話を掛けたが、今日はこどもの日でゴールデンウィークだ。
大抵、個人のクリニックは休みだ。
とりあえず留守電に入れといたが、ゴールデンウィーク明けの明日にも掛けるつもりでいた。
「よかったね、菜緒。きっと良いご縁のところだよ。だって恵比寿様のご紹介だもの!」
「お、おおう……」
ニコニコと太陽が輝いているような笑顔で言われては、菜緒は何も言えない。
鯛の妄想かもしれない。このくらいの歳の子は現実と夢の世界をごっちゃにして語ることも多い。
だからと、ここで否定をしてはいけない。
(ただ、辰巳さんにはお話しておいた方がいいかもしれない)
だって神様と話ができるって鯛の親がどこかの怪しい宗教に入信していて、その影響かもしれないし。
と、ここではたと気づいて菜緒は足を止める。
前回の菓子折訪問のとき、自分がここに来ることを歓迎していないように思えた。
自分が入ってもいいのだろうか?
「どうしたの? 菜緒」
「辰巳さんは知ってるの? このこと。私、事前に連絡もなしに入っちゃっていいのかな?」
「大丈夫だよ。辰巳も知ってる。今台所で柏餅作っていて手が離せないの。だから僕が迎えにきたの」
「そうなんだ」
今日は歓迎ムードでホッとした菜緒は、鯛に続いて玄関に入っていった。
電話のあと、菜緒は当初の目的である買い出しに行った。
そうして、気が付けば当初の予定になかった食材を大量に買ってしまった。
手には鶏もも肉三キロ。
卵にサラダ油。
重たい物ばかりだ。
軽いのと言えば、履歴書とそれ用の写真ぐらい。
ついでに本来買いたかった食材まで買ったものだから、両手に花ではなく両手に荷物状態である。
(いくら国産鶏肉が安かったからって、三キロも買ってどうするつもりなの? 私)
自分の行動が全く理解できない。
アパートの自分の部屋には単身者用とはいえ立派ではある冷蔵庫だが、三キロの肉なんて入るわけがない
大好きなアイスが冷凍庫の半分も占めている状態なのに、絶対に入らない。
(うううう、どう消化しようか……調味料に漬けて毎日消費してどうにかなるの?)
荷物で行きの二倍の時間をかけて、どうにか我が家のアパート前まで辿り着いた。
あと少し、と安堵しているところに、
「菜緒!」
と自分を呼ぶ幼い声に振り向く。
木造平屋の住宅から鯛が駆け出てきたのだ。
「待ってたの!」
明るい笑顔で菜緒の腕を掴む。
「あ、危ない~! こっち卵入ってるの。引っ張っちゃ駄目、割れちゃう」
鯛に落ち着くように諭す。
「ごめんね、菜緒。僕、嬉しくって。今日は『子供の日』なの」
そう、今日はこどもの日だ。菜緒が働いている工場は盆と年末年始以外は稼働しているので、気づかなかった。
現にゴールデンウィークなのに昨日今日と出勤したし。
そこは年中無休と言っても過言ではない病院で働いていたときと、そう変わらないので体力は大丈夫だが。
ただ、病院勤めの頃と比べたら日にちの感覚がなくなっている気がする。
(だからさっき電話するまで気づかなかったのよねぇ)
「そういえば、そうね。もうお祝いはしたの?」
「ううん、これから」と鯛。
それからまた鯛は菜緒の腕を引っ張る。今度は荷物に気をつけて優しく。
「あのね、今日は『こどもの日』でしょ? だから辰巳が『食べたい物作ってあげる』って! だから、『ザンギっていうの食べたい』って言ったんだ」
「ザンギ?……って、鯛は知ってるの?」
「うん! だから菜緒を待ってたの! 鶏肉たくさん買ってきたんでしょ?」
「うん、三キロ………………って、どうして知ってるの!?」
「だって、恵比寿様が『お願いしておいた』って言ってたもの。あとザンギに使う材料も!」
恵比寿様?
――っていうのは、商売繁盛に御利益のある神様?
(まさかねぇ? 恵比寿は恵比寿でも、きっと苗字よね?)
どうして鶏肉を三キロも購入してしまったことを知っているのかも驚かされたが、恵比寿様がお願いしておいたってどういうことなのかさっぱりで、頭が理解できない。
「ねぇ、鯛。恵比寿様って鯛の知り合いかな?」
「菜緒は知らないの?」
意外、という顔をされたて菜緒は苦笑する。
「私の知り合いには『えびす』という苗字の人はいないなぁ……」
「違うよー、恵比寿様は神様でしょ?」
「お、おう……」
「お金使わせちゃったからって、菜緒にいい職場を紹介したって言ってたよ」
「???? もしかしたら、私が求人見て電話して空振ったの知ってるの?」
そう、あの後すぐに電話を掛けたが、今日はこどもの日でゴールデンウィークだ。
大抵、個人のクリニックは休みだ。
とりあえず留守電に入れといたが、ゴールデンウィーク明けの明日にも掛けるつもりでいた。
「よかったね、菜緒。きっと良いご縁のところだよ。だって恵比寿様のご紹介だもの!」
「お、おおう……」
ニコニコと太陽が輝いているような笑顔で言われては、菜緒は何も言えない。
鯛の妄想かもしれない。このくらいの歳の子は現実と夢の世界をごっちゃにして語ることも多い。
だからと、ここで否定をしてはいけない。
(ただ、辰巳さんにはお話しておいた方がいいかもしれない)
だって神様と話ができるって鯛の親がどこかの怪しい宗教に入信していて、その影響かもしれないし。
と、ここではたと気づいて菜緒は足を止める。
前回の菓子折訪問のとき、自分がここに来ることを歓迎していないように思えた。
自分が入ってもいいのだろうか?
「どうしたの? 菜緒」
「辰巳さんは知ってるの? このこと。私、事前に連絡もなしに入っちゃっていいのかな?」
「大丈夫だよ。辰巳も知ってる。今台所で柏餅作っていて手が離せないの。だから僕が迎えにきたの」
「そうなんだ」
今日は歓迎ムードでホッとした菜緒は、鯛に続いて玄関に入っていった。
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