王子さまは二人いる

綺麗なお姉さんまでいました！ みんなで朝ごはんです！

３

「じゃんけんで負けて、アリナをなだめるお役目に僕ことレフが承ったんだ。大変だったんだからね」
「ああ、昨夜さんざん聞いたよ。悪かったね、その代わり朝食は豪華にしたから」
　お父さんがレフくんを慰めている。

「莉緒、抱きしめていい？」
　突如、アリナさんがわたしに聞いてきて、躊躇うわたし。

「日本育ちの莉緒には馴染みがないかもしれないけれど、嬉しいときとか、挨拶のときには互いに抱きしめ合ってハグをするのよ」
「ああ、そうなんですね。映画とかドラマで見たことがあります」
　
　そうだよね。アリナさんだけじゃなくてお父さんやシオンくんやレフくんはきっと海外暮らしだろうし、それが当たり前の挨拶方法なんだ。
　
　正直、怖いけれど――でも、慣れなきゃ！

「わかりました！　はい、どうぞ！」
　と、わたしはバッと両手を広げて「カモン！」状態。

「そんなに気張らなくていいんだけど」
　と、シオンくん。
「えっ？　そ、そうでしたか？」
「目も瞑ってるし、顔まで強張ってるよ」
　と、レフくんも。

「で、でも！　わたしは日本で育ったので日本人の挨拶だけですけれど、もともとハーフなはずですし、ハグは『親愛の印』だって聞いたことがあります。わたしも皆さんと暮らすんでしたら、海外風の挨拶を慣れないといけないと思いました！」

「莉緒は真面目だね」
　お父さんもクスクス笑ってる。

「おかしい……ですか？」
「気合いがはいりすぎ。フランクでいいのよ、莉緒」
　と、アリナさんがそう言いながらわたしを抱きしめた。

「今日からわたしたちは家族なんだからゆっくり、馴染んでいけばいいのよ」
「……はい」
「でも、お姉さんって呼んでほしいな」
「ア、アリナ姉さん」
「うん、とりあえずはそれで合格！」
「莉緒」
　と、お父さんがわたしとアリナ姉さんを一度に抱きしめる。

「莉奈はここにはいないけれど、きっと探しだす。それまで母親はいないけれど、家族仲良く暮らしていこう」
「……はい。あ、あの」
「なんだい？」
「わたしを探してくれて、ありがとうございます。お、おとう、さん」
　
　呼ぶなら今、と思った。
　チャンスを逃しちゃうと、これから「お父さん」って言いづらそうだもん。
　
　お父さんは、ギュッとわたしとアリナ姉さんを抱きしめる。強すぎて痛いくらい。
「パパ、痛い！　強く抱きしめすぎ！」
　
　アリナ姉さんに叱られて「ごめんごめん」と、離れていく。
　シオンくんと表情を変えずに、レフくんはニコニコしながら私たちを見守っている。
　二人の温度差！

「俺、腹減ったんだけど」
　ボソッとシオンくん。

「親子の再会に水をささったらいけないんだよ、シオン」
「それを言うなら『水をさす』だよ。それに、しょうがないよ。腹が減って倒れそう」
　
　レフくんのつっこみに、さらにつっこみ返すシオンくん。
　だからシオンくんは、機嫌悪そうなのかな？

「ああ、そうだね。ルームサービスを頼もうか」
　お父さんはフロントに注文をしてくれた。
　
　目頭をおさえているお父さんを見て、わたしは胸がポカポカしていた。
　思い切って「お父さん」と呼んでよかった。
　自分のお父さんが、こんなにカッコいいダンディなオジサマだったなんて思ってもみなかったから、すっごい緊張したけれど。
　
　それからアリナ姉さんも。
　どこに同じ遺伝子が組み込まれているのか、謎なほど美少女。
　
　――そして、シオンくんとレフくんも。
　
　お母さんが全員産んではいないのはわかる。産んだのはわたしだけなはず。
　みんな、お母さんが違うってことかな？
　リアル感がなさすぎて、漫画とかアニメの世界みたいで現実味がない。

「うーん」と考え込んでいいたらアリナ姉さんが、
「莉緒、こっち！　わたしの横に座って」
　と、わたしの手を引いて、隣同士に座った。