王子さまは二人いる

鳴澤うた

文字の大きさ
21 / 42
買い物は楽しい……かな?

しおりを挟む
 
 わたしたちは、遅めのお昼ごはんを食べる。

「ハンバーガーがいい」と探したけれど、ここはチェーン展開しているハンバーガー屋さんはなくて、ちょっと豪華なハンバーガー屋さんに入る。
 
 具だくさんで、食べるときに紙でギュウって押さえて食べなきゃ、こぼれちゃうほどのボリューム。
「食べきれない……」
 わたしもアリナ姉さんと同じ、チキンサラダセットにすればよかったと後悔。

「食べきれないなら、俺が食べてやる」
 シオンくんが「ほら」と、手を差し出してくる。
「で、でも、食べかけだよ……?」
「気になんないよ。残したら作ってくれた人に悪いだろ?」
 
 確かに。お金を払っているとはいえ、人の手で作っている。
 残さずに食べられるならそのほうがいいし、作ってくれた人だって嬉しいに決まってる。

「じゃあ……いいかな? お願いして」
 わたしは手に持っている食べかけのハンバーガーを、包んでいる紙ごとシオンくんに手渡す。

「莉緒、ポテトは全部食べられそう? 無理なら僕がそれをもらうよ」
 と、レフくんも聞いてくれて、わたしはありがたく食べてもらった。
 
 オレンジジュースを飲みながら、シオンくんが私の食べかけバーガーをモクモク食べてるのを見て、顔が熱くなる。
 
 これって間接キス……だよね。
 
 食べた部分を切ってから渡せばよかったかな、なんてあとから思いついて後悔するわたし。
 
 ――き、気にしない! わたしたちは「家族」「きょうだい」!
 食べるのを分け合うのって、家族なら当たり前だもん。
 
 けれど、二人ともよく食べるなぁ……。細い体のどこに入ってるんだろう?

「ここのハンバーガー美味しいな。ポテトも手作りだって」
「うん、もう一個くらいいけそう」
 
 二人のセリフを聞いたアリナ姉さんは、「げっ」という顔をした。

「シオンもレフも、食べすぎ! カロリーすごいよ! その辺で止めときなよ」
「僕たちはアリナみたいにモデルやってないから、カロリーなんて気にしないよ」
「お腹いっぱいにしないと、すぐ腹減るし」
「朝ごはんもたくさん食べたのに、シオンくんもレフくんもすごいんですね」
「「食べ盛りだから」」
 
 二人の声がはもった。二卵性でもさすが双子。
 そういえば、食べ方も似てる。
 自分が食べている物を見つめながら、上品に食べている。
 リスみたい。
 なんだか、おかしくなって笑ってしまう。

「おかしなこと、言ったかな? 僕たち」
「あまりの食欲に、おかしくなって笑ったんじゃない?」

「ねえ、莉緒」とアリナ姉さんが同意を求めてきたので、わたしは笑いながら頷いた。
 
 夢中になって食べている二人がなんか「可愛いな」って思ったのもそうなんだけれど、それは内緒。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

神ちゃま

吉高雅己
絵本
☆神ちゃま☆は どんな願いも 叶えることができる 神の力を失っていた

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

たったひとつの願いごと

りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。 その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。 少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。 それは…

ぽんちゃん、しっぽ!

こいちろう
児童書・童話
 タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜

おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
 お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。  とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。  最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。    先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?    推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕! ※じれじれ? ※ヒーローは第2話から登場。 ※5万字前後で完結予定。 ※1日1話更新。 ※noichigoさんに転載。 ※ブザービートからはじまる恋

処理中です...