41 / 42
王子様は二人いる
2
しおりを挟む
「莉緒は、自分が突然『狼男の血』に目覚めて、覚醒するかもしれないって思わない?」
「そういうことって、あるんですか?」
レフくんが頷く。
「生まれてすぐに血に目覚めなかった場合、そういことが起きる確率が高いんだ。――まぁ、そのまま目覚めないってこともあるけれど」
「そうか……だからお父さんとオジサマは、お母さんとわたしを探して引き取ろうとしたんですね」
途中で突然変身したり、能力に目覚めたりしたら、わたしはきっとわけがわからず大混乱するだろう。
お母さんだって、そんなわたしを見て怖がって逃げるかもしれない。
「察しがいいね、その通りだよ。でも、そのほかにも理由はあるよ」
レフくんがわたしの手を取り、片膝をついた。
――あ、これ……
「報告書を読んで僕らは、莉緒が安心して暮らせるように自ら『家族として暮らす』って父さんに提案したんだ。そして僕は、莉緒の王子様になろうって思ったんだよ」
そうしてレフくんは、わたしの手のひらに唇を落とした。
「悪い、俺が先に言っちゃった」
シオンくんが、すかさず挙手して告白する。
「……シオン、おまえなぁ! 僕が先に、莉緒をときめかせようと思ってたのに」
珍しくレフくんが、目じりをあげてシオンくんに怒る。
「だって、聞いただろう? 莉緒が泥棒に捕まったって。不安な莉緒を落ち着かせるのも俺たちの役目だ。そうだろう?」
「……そうだけどさ。抜けがけなんだけど」
二人の雰囲気が、険悪になってきた気がする……
――そうだ!
わたしはシオンくんとレフくんの間に入って、片手ずつ握る。
「シオンくんもレフくんも、ありがとうございます! これからもよろしくお願いします。王子様!」
そう交互に二人に笑いかけた。
シオンくんもレフくんも「しょうがないか」な顔をして笑いあった。
「そういうことって、あるんですか?」
レフくんが頷く。
「生まれてすぐに血に目覚めなかった場合、そういことが起きる確率が高いんだ。――まぁ、そのまま目覚めないってこともあるけれど」
「そうか……だからお父さんとオジサマは、お母さんとわたしを探して引き取ろうとしたんですね」
途中で突然変身したり、能力に目覚めたりしたら、わたしはきっとわけがわからず大混乱するだろう。
お母さんだって、そんなわたしを見て怖がって逃げるかもしれない。
「察しがいいね、その通りだよ。でも、そのほかにも理由はあるよ」
レフくんがわたしの手を取り、片膝をついた。
――あ、これ……
「報告書を読んで僕らは、莉緒が安心して暮らせるように自ら『家族として暮らす』って父さんに提案したんだ。そして僕は、莉緒の王子様になろうって思ったんだよ」
そうしてレフくんは、わたしの手のひらに唇を落とした。
「悪い、俺が先に言っちゃった」
シオンくんが、すかさず挙手して告白する。
「……シオン、おまえなぁ! 僕が先に、莉緒をときめかせようと思ってたのに」
珍しくレフくんが、目じりをあげてシオンくんに怒る。
「だって、聞いただろう? 莉緒が泥棒に捕まったって。不安な莉緒を落ち着かせるのも俺たちの役目だ。そうだろう?」
「……そうだけどさ。抜けがけなんだけど」
二人の雰囲気が、険悪になってきた気がする……
――そうだ!
わたしはシオンくんとレフくんの間に入って、片手ずつ握る。
「シオンくんもレフくんも、ありがとうございます! これからもよろしくお願いします。王子様!」
そう交互に二人に笑いかけた。
シオンくんもレフくんも「しょうがないか」な顔をして笑いあった。
0
あなたにおすすめの小説
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)
たったひとつの願いごと
りおん雑貨店
絵本
銀河のはてで、世界を見守っている少年がおりました。
その少年が幸せにならないと、世界は冬のままでした。
少年たちのことが大好きないきものたちの、たったひとつの願いごと。
それは…
ぽんちゃん、しっぽ!
こいちろう
児童書・童話
タケルは一人、じいちゃんとばあちゃんの島に引っ越してきた。島の小学校は三年生のタケルと六年生の女子が二人だけ。昼休みなんか広い校庭にひとりぼっちだ。ひとりぼっちはやっぱりつまらない。サッカーをしたって、いつだってゴールだもん。こんなにゴールした小学生ってタケルだけだ。と思っていたら、みかん畑から飛び出してきた。たぬきだ!タケルのけったボールに向かっていちもくさん、あっという間にゴールだ!やった、相手ができたんだ。よし、これで面白くなるぞ・・・
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
こわモテ男子と激あま婚!? 〜2人を繋ぐ1on1〜
おうぎまちこ(あきたこまち)
児童書・童話
お母さんを失くし、ひとりぼっちになってしまったワケアリ女子高生の百合(ゆり)。
とある事情で百合が一緒に住むことになったのは、学校で一番人気、百合の推しに似ているんだけど偉そうで怖いイケメン・瀬戸先輩だった。
最初は怖くて仕方がなかったけれど、「好きなものは好きでいて良い」って言って励ましてくれたり、困った時には優しいし、「俺から離れるなよ」って、いつも一緒にいてくれる先輩から段々目が離せなくなっていって……。
先輩、毎日バスケをするくせに「バスケが嫌い」だっていうのは、どうして――?
推しによく似た こわモテ不良イケメン御曹司×真面目なワケアリ貧乏女子高生との、大豪邸で繰り広げられる溺愛同居生活開幕!
※じれじれ?
※ヒーローは第2話から登場。
※5万字前後で完結予定。
※1日1話更新。
※noichigoさんに転載。
※ブザービートからはじまる恋
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる