王子さまは二人いる

鳴澤うた

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王子様は二人いる

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「莉緒は、自分が突然『狼男の血』に目覚めて、覚醒するかもしれないって思わない?」

「そういうことって、あるんですか?」
 レフくんが頷く。

「生まれてすぐに血に目覚めなかった場合、そういことが起きる確率が高いんだ。――まぁ、そのまま目覚めないってこともあるけれど」

「そうか……だからお父さんとオジサマは、お母さんとわたしを探して引き取ろうとしたんですね」
 
 途中で突然変身したり、能力に目覚めたりしたら、わたしはきっとわけがわからず大混乱するだろう。
 お母さんだって、そんなわたしを見て怖がって逃げるかもしれない。

「察しがいいね、その通りだよ。でも、そのほかにも理由はあるよ」
 
 レフくんがわたしの手を取り、片膝をついた。
 
 ――あ、これ……

「報告書を読んで僕らは、莉緒が安心して暮らせるように自ら『家族として暮らす』って父さんに提案したんだ。そして僕は、莉緒の王子様になろうって思ったんだよ」
 
 そうしてレフくんは、わたしの手のひらに唇を落とした。

「悪い、俺が先に言っちゃった」
 シオンくんが、すかさず挙手して告白する。

「……シオン、おまえなぁ! 僕が先に、莉緒をときめかせようと思ってたのに」
 珍しくレフくんが、目じりをあげてシオンくんに怒る。

「だって、聞いただろう? 莉緒が泥棒に捕まったって。不安な莉緒を落ち着かせるのも俺たちの役目だ。そうだろう?」

「……そうだけどさ。抜けがけなんだけど」
 
 二人の雰囲気が、険悪になってきた気がする……
 
 ――そうだ!
 
 わたしはシオンくんとレフくんの間に入って、片手ずつ握る。

「シオンくんもレフくんも、ありがとうございます! これからもよろしくお願いします。王子様!」
 
 そう交互に二人に笑いかけた。
 
 シオンくんもレフくんも「しょうがないか」な顔をして笑いあった。




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