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王子様は二人いる
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しおりを挟む夜、遅くなってもわたしの興奮はおさまらず、ベランダに出てお月様を眺めていた。
あのあと、オジサマが本当のお父さんのことを教えてくれた。
お父さんはオジサマと二卵性の双子で――双子率多いですねって聞いたら、狼のせいか多胎が多い一族なんですって。
世界中にある全部の会社の社長さんだそう。そこでまたビックリするわたし。
だけれど、恋に落ちて素性を知ったお母さんは別れて、あとからわたしがお腹にいることに気づいた。
十年経ってからお父さんは一人でわたしを育てていることを知って、お母さんがいる会社まで迎えに行ったんだそう。
――ここで、二人の居所がつかめなくなってしまった。
正直に話したほうがいいかどうか、とても悩んだそうだ。
けれど、わたしが知らない情報が多すぎて、一度に受け入れられないだろうということ。
しばらくは自分が親代わりとして面倒をみるつもりだから、父と名乗ろうと考えたそう。
「でも、心配しなくていい。二人は生きているよ、双子の片割れの私が言うんだ」
と、オジサマ。総力をあげて捜索しているとも、力強く言った。
「大丈夫、きっと見つかるよ。またお母さんと、会える日が来るよ。そうしたら、本当のお父さんとも会えるんだ」
わたしは独り言を繰り返す。
あまり悲観的にならないのは、きっと満月が、わたしに笑ってくれているから。
――大丈夫だよ。
って、言ってくれている気がするの。
「莉緒」
二人の声がはもる。シオンくんとレフくんだ。
人の姿に戻ってるのは、小さい頃からそういう訓練をしてきたからだって聞いた。
それでも、満月の夜はかなーり気を引き締めないといけないので、人と会わないで部屋に閉じこもるんだって。
ちょっともったいないな、なんて思うわたし。
だって満月の夜は、変身しないわたしだって、体がうずうずしてずっと駆け回りたい気分になるから。
今までは、おかしいと思っていたし、叔母さん家族に迷惑をかけられないから我慢していたけれど。
これからは我慢しなくてもいいのかな、と思うと嬉しい。
「眠れないのか?」
「色々あったからね。しょうがないよ」
わたしを間に挟むように、バルコニーの柵に手をかける二人。
「自分のルーツを知った感想はどう?」
と、レフくん。
「衝撃的でした。でも、ちょっと安心しました。だって、きょうだいだとシオンくんとレフくんのお母さんに、悪いことしたなって思いますから」
お母さんとお父さんは、不倫の関係じゃなかった。わたしは不倫の子じゃなかった。
「理由があって別れたけれど、お母さんとお父さんは想いあって、それでわたしを産んでくれたんだって。それがとても嬉しいんです」
「でも、意外だなぁ」
「なにがですか?」
レフくん、わたしの顔を覗き込むように話しかけてくる。ちょっと、のけぞってしまうわたし。
「『狼男』の血を引いてることに、ショックを受けるかと思ってた。なのに、それは平気なんだね」
「確かにビックリはしましたけど、怖いと思わなかったから……かなぁ、と。『ああ、そうなんだ』って感じでした」
――もしかしたら、わたしの中の『狼男の血』が、あっさりと認めたのかもしれない。なんて思ったりもする。
『狼女』かもしれないけど。
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