地下鉄ホーム3番線

厠 達三

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地下鉄ホーム3番線

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「あなた、見たところ軽装だけど、ご旅行? どちらまで?」
 ほらきたとメリザは心の中で嘆息した。感謝しているのなら、なぜそんな詮索をするのか、と。顔を正面に向けたまま、視線を向けないのを返事とした。
「ああ、そうよね。そんなことを言ったところで詮無いことよね。これだけたくさんの人の中で、偶然居合わせただけですものね。最近、物騒だから、どこに行くかなんて言うべきじゃないのかもしれないわね」
 女がそう言うと、メリザはひと口コーヒーをすすった。
「私ね、ノーステリアに行くの。故郷に帰るのよ。この街で一生過ごすつもりだったけど、ここは人が多すぎたわ。やっぱり、田舎者には田舎の水が合ってるんでしょうね」
 メリザは女の方をちらと見た。品のよさそうな女性だが、メイクでは隠しきれないあざが顔にあった。
「途中まであなたと一緒なら安心できると思ったのだけど、そんな都合のいい事ないわよね。この子のためにも、私がこれからしっかりしなくちゃいけないのにね」
 再び列車の到着を告げるアナウンスが流れ、人の流れがまた慌ただしくなった。
「ノーステリアに行くのなら、次の列車じゃないんですか?」
 メリザが女をせかすように言った。が、女はメリザの方を向き、笑みをたたえていた。
「よかった。やっと口をきいてくれた。せっかく知り合えたのに、ひと言も交わせないままじゃ、寂しいものね」
 女は少年の手を取り立ち上がった。
「そうね。それじゃあ、そろそろ行くわ。でも、慌てる必要なんかないのよね。ひと便くらい乗れなくたって、故郷に帰れないわけじゃない。乗れなかったら、またここに戻ってくるわね。こんなおばさんでよかったら、また話し相手になってちょうだいね。あ、あなたが暇を持て余していれば、の話だけど」
 メリザは頬杖をついたまま、そっぽを向いていた。女が少年を促す。
「ほら。あなたもお姉ちゃんにお礼を言いなさい」
 すると少年はメリザの正面に立つように移動し、屈託のない笑顔を向けた。
「ありがとう。お姉ちゃん」
 コーヒーを渡したときのよそよそしい態度は子供特有の照れだったのか、あるいは自分に子供を怯えさせる態度があったのか、メリザはそんな風に思った。
「それじゃあね。あなたは迷惑だったかもしれないけど、私は楽しかったわ。くれぐれも変な気は起こさないでね」
 はっとして思わず女の顔を見上げた。相変わらず穏やかな笑みをたたえている。
「私ね、つい最近までここに頻繁に通ってたの。列車に乗るわけじゃない。別の目的があったの。でも、この子のおかげで思い止まれたわ。その頃の私と雰囲気が似ているのよ、あなた。ただの思い過ごしであればいいんだけど。そんな私が余計なお世話と思うけど、あなたにも、きっと大切な人がいるはずよ。今は思い当たらなくても、近い将来、きっとそんな出会いがあるはずよ。だから、列車に乗る目的でないのなら、あなたはここにいるべきではないわ」
 メリザは溜息を吐き、
「本当にただの思い過ごしで、大きなお世話ですね。私はちゃんと列車に乗るためにここに来て、ここに座ってるんです。テレビドラマの見過ぎなんじゃないんですか」
「そう。ならよかったわ。確かに、私は少し神経が過敏になってるのかもね。失礼なこと言ってごめんなさいね」
 女は笑顔を絶やさぬまま、少年の手を引きつつ人波に消えた。メリザは息を吐いてベンチにもたれかかった。周囲は相変わらずの雑踏。大勢の人間がまるでロボットのように行き交っている。
 次のノーステリア方面行きの便。女が言ったとおり、メリザはこの便にするつもりだったのだが、あの親子と知り合ってしまったためにその気も失せた。メリザはもうひと便待つことにした。
 待つこと数分、発車のアナウンスが流れ始めた。やがて列車が一本、発車したが、ついにあの親子は戻らなかった。無事に乗車できたのだろう。メリザは立ち上がり、切符の購入に向かった。行き先はどこでもいい。
 自動券売機の前は来たときと変わらず行列が絶えない。並ぶのもうんざりするがどうせもう二度と並ぶこともないのだ。並ぶ者の中には毎日この苦行に耐えている者もいるのだろう。それを思えば行列に参加するくらい大したことはない。そう、自分に言い聞かせた。
「どうぞ」
 メリザの前に並ぶ人間があと一人となったところで、前の青年が切符を買い終えてメリザを促した。怪訝に思いつつ軽く会釈し、券売機の前に立った。
 メリザが漠然と買った切符は三番線のものだった。行き先など特にないし、何番線であろうと構わない。とにかく切符がなければホームに入れないのだ。
 切符を手に、ホームに降りるエスカレーターに向かう。すると柱にもたれかかっている青年と目が合った。今しがた自分のすぐ前で切符を買った、あの青年だ。目が合うと青年は嬉しそうに微笑み、軽く手を挙げた。
 どこかで会ったことがあるのだろうか? メリザはしばし記憶を辿ったが、券売機で後ろに並んでいたこと以外覚えがない。全くの行きずりだ。しかし手を挙げられ、不審に思いつつも会釈してしまった。それを認めた青年はメリザの元へ歩み寄ってきた。
「やあ。さっき、僕のすぐ後ろに並んでたよね。三番線に行くってことは、君もカレントに行くんだよね。君一人?」
 何かと思えばただのガールハントのようだ。長髪で、ラフな服装で、見た目からして軽薄そうな青年だ。大方、小旅行のついでにアバンチュールでも楽しみたい向きなのだろうと思った。青年には一瞥もくれず、降りのエスカレーターにそそくさと乗った。その間も青年はなにかと声をかけてきたが、メリザは無視を決め込んだ。適当にあしらえばお高くとまってんじゃねえよ、クソ女が、といった、お決まりの捨て台詞を吐いて消えてくれるものと思った。案の定、エスカレーターからホームに着き、しばらく歩くと声が聞こえなくなった。悪態をつかなかったところをみると、まだ良識のある青年だったのかなと少し見直した。
 そのまま改札を潜り、ホームに入ると再び人の波に呑まれた。みな、一秒でも早く乗りたいのか、ただの習性か、線路の際の待機線まで隙間なく並んでいる。列の後方に目をやるとベンチに座る者など一人もいない。これ幸いとメリザはベンチに腰を下ろした。
 ベンチから眺める列車を待つ人の群れは、いつかテレビで見た河を渡る水牛の群れを連想させた。一体なぜそんな危険な場所を渡らねばならないのか分からないが、とにかく危険を冒して、仲間を犠牲にしながら、弱い者から脱落し、生き残ろうとする意志の強い者が他者を押しのけ対岸に至る。彼等も似ている。前に並ぶ者を押しのけ、少しでも自分が前に出ようとする。他者のことなどどうでもいい。群れていながら自分さえ良ければいいのだ。もしもここに飢えたライオンやワニが現れたなら、彼らは自分だけが生き残ろうと、他者を踏みつけわれ先に逃げ出すのだろう。そんな人間ばかりの世の中はやはり間違っている。そう思った。
「みんななにをそんなに急いでるんだろう。自分さえ席に座れればそれでいいのかしら、なんて考えてたでしょ」
 横から声がして振り向くと、さっきの青年が性懲りもなくベンチの傍に立っていた。
「隣、座っていい?」
 などと言いながら青年はさっさと座った。メリザは思わずキャリーバッグを引き寄せ、青年と距離をおいた。
「それ、イケてるよね。なんていうか、君にぴったりだ」
 青年はメリザのキャリーバッグを見ながら言った。もしやこの男、置き引きかなにかかと警戒する。
「そう怖がらなくていいよ。君の荷物をひったくったりしないから。ただ君がこの場所とはなんか雰囲気が違うから、気になっちゃったんだよね」
 青年はなおも気さくに話しかけてくる。メリザは無言でキャリーバッグを見つめる。淡いオレンジ色の、大きくもなく、小さくもない、長い取っ手と小さめの車輪が付いた、どこにでもあるキャリーバッグ。自分の物ではないが、確かに自分にはお似合いなのかなと思った。
「そのバッグの中身、何か当ててあげようか」
 その言葉に思わず青年の方を振り向いた。
「服」
 なんのひねりもない予想が出たので思わず溜息が出た。
「馬鹿馬鹿しい。列車に乗って移動するなら服の一着や二着は入ってて当然でしょう?」
 青年は苦笑しながら頭を掻く。
「でも君、ちょっと驚いてたよね。服っていうのは少し違うかな。衣装と言った方がいいのかな」
 なにをわけの分からぬ事をと思っていると、青年がいたずらっぽく笑う。
「さっきの反応で君の正体もほぼ分かっちゃった。当てて見せようか?」
 メリザは相変わらず怪訝な目つきで青年を見る。
「ずばり、コスプレイヤーさんでしょ」
 自信たっぷりに出た、そのあまりにも的外れな予想にまたも大きく溜息をついた。
「あれ? 当たっちゃった? そう警戒しなくていいよ。今時コスプレなんて珍しくないから。それに俺も日本のゲームやアニメが好きで結構見てるんだ。そこらへんのマナーは心得てるつもりだよ?」
 どうやらメリザの溜息を図星を刺されたものと思っているようだ。面倒なので話を合わせることにした。
「ええ、そうよ。だからあまり人とは関わりたくないの。放っておいてくれると助かる」
「やっぱり。なんか嬉しいなあ。こんな近くにコスプレイヤーさんがいたなんて。で、なんのコスプレ? やっぱりハリウッド映画? それともジャパニメーション? 個人的にはゲームのコスがいいなあ。君に似合ってると思うよ」
 軽くあしらったつもりが、ますます食いついてきてしまった。完全に対応を誤ったと後悔した。
「どこでそんなイベントあるの? 俺も行ってみたいな。一度、日本にも行きたいと思ってるんだ。コスプレイベントってよく聞くけど、実際に参加したことないから」
「残念だけど、カレントから乗り継ぎで国外に出るの。そこでお別れね」
「はあ、やっぱりな。でもまあ、そこまでは一緒なわけだ。退屈な道程と思ってたけど、君と一緒なら時間なんてあっという間に経ちそうだ。どう? カレントまで色々話を聞かせてくれないかな?」
 どうせこの男とはここでお別れするのだ。メリザは少し意地悪な気分になった。
「ええ、いいわよ。ただし、あなたが私の迷惑にならない範囲内でなら」
 この返答に青年はガッツポーズをとる。
「よしっ。なんでも言ってみるもんだ。ぶしつけついでに君の名前を教えてよ。あ、俺はカート。よろしく」
「メリザよ。よろしくね、カート」
 言ってすぐに本名など名乗らなくてもよかった、とも思ったが、なんの不都合もないので大して気にしなかった。
「それで、君はなんのコスプレをするの?」
「ニンフの森の魔女よ。ご期待に添えなくて悪いけど」
「ああ、あの大ヒット映画ね。あれのファンの人も多いよね。まあ、ファンの人なのか、ただコスプレしたいだけの人なのかはよく分かんないんだけど。で? 君は誰になるの?」
 カートは悪気もなさそうに聞いてきたが、正直困った。メリザは映画を見たわけではない。ただニュース映像で映画の試写会かなにかで多くのコスプレをしたファンを見たことがある、というだけだったのだ。だが、ここで嘘を通すヒントをカートが与えてくれたことに気付いた。
「えっと、ごめんなさい。実は私、あの映画は見たことないの。あなたがさっき言った、ただコスプレして騒ぎたいだけの人なの」
「ああ、そうなんだ。いや、決して悪気があって言った訳じゃないんだよ? 俺もあの映画見たことないから。でも、大体主人公のコスプレをみんなするよね。君もその口?」
「ええ、まあ、そんな感じ。あの黒い衣装のね」
「まあ、定番だよね。それじゃあ、普段はなんのジャンルのコスプレしてるの?」
 慣れない嘘などつくものではないと後悔した。すぐにボロが出てしまう。カートの質問の意味すらよく分からない。コスプレにもジャンルがあるとは知らなかった。返答に窮していると、うまい具合に列車の到着を告げるベルが鳴った。ホームに並ぶ人の列にうねりが出始める。次いで列車の到着のアナウンス。
「間もなく、三番線にカレント行き列車が到着いたします。お乗りのお客様は白線の内側にてお待ち下さい。なお、お乗りの際にはお降りのお客様の妨げにならないよう、お願いいたします」
「列車だ。いつも退屈な時間だけど、君と話してたらあっという間だな。この人数じゃ座席には座れないだろうけど、通路で話の続きを聞かせてもらっていい?」
「いいわよ。どうせ私も座れるとは思ってなかったし」
「やった。じゃあ、はぐれないようにしないとね」
 カートとメリザがベンチを立ち、しばし目の前の人の壁が開けるのを待つ。最前列では殺気立った空気すら漂っている。
 だが、線路の奥から列車の近付く音がかすかに聞こえ始めた頃、目の前を塞ぐ人の壁から今までとは違う、不穏な空気が流れ始めた。それはホーム全体に伝播し、最後尾に立つメリザとカートにもその気配が伝わった。
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