1 / 4
アウトフォーカス
将来
しおりを挟む
『勇気が無いのは時代のせい』
学校の机に突っ伏してそう心の中でぽつりと呟いた。組んだ腕の下には書いては消して、消しては書いてを繰り返した進路希望調査用紙。
開いた窓から夕陽がさしこみ、緑のカーテンはゆらゆらと視界の端っこで揺れている。校庭からは野球部の掛け声が聴こえる。教室に残ったカップルは、机を挟んで向かい合って楽しげにしている。至って普通の放課後の光景だ。
平々凡々に生きてきた私はそういって自分に言い訳して生きてきた。ただ、自分の能力がこの時代に活かせれないだけで、例えば、ヨーロッパの中世や日本の戦国時代に行けば、必要に駆られて、“勇気を出さなければ行けない状況”、所謂崖っぷちになったのならもしかしたら歴史に残るくらい、それこそ教科書にも載る程立派な偉業を成せたのかもしれない。
なんて、ありもしない“もしも”の妄想をもんもんと浮かべてながら、シャーペンを強く握りこんだ。
私は、平和な時代で、昔の人が羨むような時代に生まれた。戦争なんて、過去の話で、遠い国の話だ。1日1日をただ酸素を吸って二酸化炭素を吐いているだけで、惰眠を貪って、知らない間に次の日になって、あぁ何にもしてなかったのになぁ、と後悔して過ごしている。
もちろんそんな暗い考えなんてふとした時に心に過ぎるくらいで、学校にいる時とかは、バカみたいな話でお腹を抱えて笑ったりしているただの女子高生だ。高校の偏差値も平均くらいで、運動神経は飛び跳ねたりするのが得意なだけで他は平凡だ。
一つ、自慢できることは、趣味で使っていたMYカメラ(バイト頑張って、少しお高いのを買ったが1年前に壊れた。)を一度分解して、もう一回組み立てることができるという特技だ。御臨終なさった時に、それはもうバラバラにしたものだ。電子回路や配線に関しては、数ヶ月を費やして原理は理解した。構造もしっかりと頭に入っているという、我ながら気持ち悪い趣味だ。
まぁそれを除けば私は謂わば“量産型女子高生”って奴だ。
それでも、私は何かを成したかった。別に新ビジネスと立ち上げて世界的に大成功とかは望んでない。ただ、好きなことを好きなだけやって、それを誰かに褒められてそれで生きて行けたらそれだけでいい。私の人生は“自分の思い通りに好きな事を成し遂げてやった”って言い張って終わりたいんだ。
でも、それをするには私はネガティブ過ぎたらしい。私は今年で18歳だ。今年の大学入試で将来は確実に変わってくる。将来安寧を求めるなら、そこそこの大学に行かなければいけない。でも私は写真家になりたい。専門学校にいって、技術を学びたいのが本心だし、なんなら高卒で一眼レフをもって世界を見て回るのだって夢があっていいと思っている。
でもそこには、世間体、親、生活できるのか、それでいいのか、そんな鉛みたいな言葉がズドンと足に纏わり付いて踏み出せない。
だからこそ私は「勇気がないのは時代のせい」だって言い訳するんだ。
もし、戦国時代に生まれていたら、寿命だって短い筈だ。だからこそ将来にやりたい事はきっとすぐ行動できた筈なんだ。現代の日本は寿命が長いから、そこも考えて生きなきゃ行けない。年老いた自分のせいで私は好きに生きられない。
さぁ、今日はもう考えても、この紙は埋まらないことだろうと悟ったので、筆箱に筆記具を仕舞ってリュックに突っ込んだ。カップル横目に教室を出て階段を降りる。下足のロッカーに教科書を入れて、スニーカーに足をつっこんだ。
駅までの道のりの桜並木はもう、夏の支度に取り掛かっていて春の面影はすっかりと無くなっていた。
3年になってもう2ヶ月が経とうとしている。桜はもう春から夏の切り替えがバッチリと出来ているのに、私はまだ2年と3年のキリ替えが出来ていないままだった。植物に劣等感を抱き始めていよいよもうダメだと思考しつつ、歩く足は止めない。
そしてつい、ぽろっと口に出てしまった。
心からの声が。
『あーあ、現代ってやつは生きづらいなぁ。』
ただこの写真で生きて行けたらいいのにね。
そう願って少女というには少し成長してしまった私は、今日も明日も排気ガスに混ざった酸素を吸って生きている
___筈だった。
学校の机に突っ伏してそう心の中でぽつりと呟いた。組んだ腕の下には書いては消して、消しては書いてを繰り返した進路希望調査用紙。
開いた窓から夕陽がさしこみ、緑のカーテンはゆらゆらと視界の端っこで揺れている。校庭からは野球部の掛け声が聴こえる。教室に残ったカップルは、机を挟んで向かい合って楽しげにしている。至って普通の放課後の光景だ。
平々凡々に生きてきた私はそういって自分に言い訳して生きてきた。ただ、自分の能力がこの時代に活かせれないだけで、例えば、ヨーロッパの中世や日本の戦国時代に行けば、必要に駆られて、“勇気を出さなければ行けない状況”、所謂崖っぷちになったのならもしかしたら歴史に残るくらい、それこそ教科書にも載る程立派な偉業を成せたのかもしれない。
なんて、ありもしない“もしも”の妄想をもんもんと浮かべてながら、シャーペンを強く握りこんだ。
私は、平和な時代で、昔の人が羨むような時代に生まれた。戦争なんて、過去の話で、遠い国の話だ。1日1日をただ酸素を吸って二酸化炭素を吐いているだけで、惰眠を貪って、知らない間に次の日になって、あぁ何にもしてなかったのになぁ、と後悔して過ごしている。
もちろんそんな暗い考えなんてふとした時に心に過ぎるくらいで、学校にいる時とかは、バカみたいな話でお腹を抱えて笑ったりしているただの女子高生だ。高校の偏差値も平均くらいで、運動神経は飛び跳ねたりするのが得意なだけで他は平凡だ。
一つ、自慢できることは、趣味で使っていたMYカメラ(バイト頑張って、少しお高いのを買ったが1年前に壊れた。)を一度分解して、もう一回組み立てることができるという特技だ。御臨終なさった時に、それはもうバラバラにしたものだ。電子回路や配線に関しては、数ヶ月を費やして原理は理解した。構造もしっかりと頭に入っているという、我ながら気持ち悪い趣味だ。
まぁそれを除けば私は謂わば“量産型女子高生”って奴だ。
それでも、私は何かを成したかった。別に新ビジネスと立ち上げて世界的に大成功とかは望んでない。ただ、好きなことを好きなだけやって、それを誰かに褒められてそれで生きて行けたらそれだけでいい。私の人生は“自分の思い通りに好きな事を成し遂げてやった”って言い張って終わりたいんだ。
でも、それをするには私はネガティブ過ぎたらしい。私は今年で18歳だ。今年の大学入試で将来は確実に変わってくる。将来安寧を求めるなら、そこそこの大学に行かなければいけない。でも私は写真家になりたい。専門学校にいって、技術を学びたいのが本心だし、なんなら高卒で一眼レフをもって世界を見て回るのだって夢があっていいと思っている。
でもそこには、世間体、親、生活できるのか、それでいいのか、そんな鉛みたいな言葉がズドンと足に纏わり付いて踏み出せない。
だからこそ私は「勇気がないのは時代のせい」だって言い訳するんだ。
もし、戦国時代に生まれていたら、寿命だって短い筈だ。だからこそ将来にやりたい事はきっとすぐ行動できた筈なんだ。現代の日本は寿命が長いから、そこも考えて生きなきゃ行けない。年老いた自分のせいで私は好きに生きられない。
さぁ、今日はもう考えても、この紙は埋まらないことだろうと悟ったので、筆箱に筆記具を仕舞ってリュックに突っ込んだ。カップル横目に教室を出て階段を降りる。下足のロッカーに教科書を入れて、スニーカーに足をつっこんだ。
駅までの道のりの桜並木はもう、夏の支度に取り掛かっていて春の面影はすっかりと無くなっていた。
3年になってもう2ヶ月が経とうとしている。桜はもう春から夏の切り替えがバッチリと出来ているのに、私はまだ2年と3年のキリ替えが出来ていないままだった。植物に劣等感を抱き始めていよいよもうダメだと思考しつつ、歩く足は止めない。
そしてつい、ぽろっと口に出てしまった。
心からの声が。
『あーあ、現代ってやつは生きづらいなぁ。』
ただこの写真で生きて行けたらいいのにね。
そう願って少女というには少し成長してしまった私は、今日も明日も排気ガスに混ざった酸素を吸って生きている
___筈だった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる