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幼少期

もしかして………転生者?

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今の一連の王太子の動きがわざとっぽいと分かった瞬間、私の中で何かがストンと落ち着いた。

(別に気を使わなくても大丈夫そうだな。)

そうしたら、さっきまでの緊張が嘘みたいになくなり、他のことを考える余裕もできてきた。

というか、6歳ってどんな年頃だったかな。

私よりは年上だけど(前世云々は無視したら)、
流石に6歳でこれは大人っぽすぎる。
何か大変なことがあったのかな?
それとも、元からこんな感じなのかな?
後でパパとママに聞いてみよう。

「こちらこそ、はじめまして王太子殿下。
ジュリアニア大公家長女マリンです。
王太子殿下は、ご冗談がお上手ですのね。
貴方様の方が、お美しいと思いますよ。
ところで…無礼を承知で申し上げますがいくら親族だとしても、私達がまだ幼いとしても、婚約者でもない女性の手の甲に口づけするのは、少しいかがなものかと思います。
今後はお気をつけください。」
 
大人気ないって分かってる。
私が今言ったことは、下手したら不敬罪になるかもしれないことも。

でも、私はこの人のタイプが苦手だと意識する一方、言葉では何が何でも負けたくないと思ってる。
他の家の人にどのような態度をとっているかは分からないが、もう私の中では

王太子殿下=笑顔で人を惑わす乙女の敵

だ。

なんか、考え過ぎかもしれないが
(僕がちょっと笑えば、女の子なんてチョロい)
とか思ってそう。
本気で考え過ぎであってほしい。
逆に、6歳にして既にそう思っていたら
一体王太子殿下の過去に何があったのか気になる。

その証拠というわけではないが、私に言い返されたのが意外だったのか、表情が一瞬だけピクって動いたのを私は見逃さなかった。

これでも、人の表情の変化や気持ちの変化を読み取るのは得意なのだ。

「冗談なんかではありませんよ、本当にあなたは美しいです。
それにとても賢そうに感じます。
先程のキスについてはご不快にさせてしまったのなら謝ります。
私が軽率でした。今後は注意しますね。」

…ねぇ、私も人のこと言えないけど、言えないけど
この人本当に6歳?
中身大人なんじゃないの。

ハッ!

(もしかして、私と同じ転生者とか。)

「いえ、私自身のために言ったことですからお礼は不要ですわ。
それに、私なんかより王太子殿下の方が断然賢いと思いますよ。」

そう言って、ホホホホとこれまた最近習った完璧な令嬢の仮面(笑み)を顔に貼り付ける。

お母様たちには、私達が仲良くお互いを褒めあってるように見えてるみたいだけど、事実はお互いの間にはバチバチとなんともいえない雰囲気が漂っている。

「それでは、この辺でしつれ「そうだ、マリンちゃん。今、お庭の薔薇が満開だから王太子様と一緒に見てきたら?」」

お母様は何ということを言うのか。
私は失礼しますと言って、この場を去りたかったのに。

「それは、いいですね。マリン嬢、一緒にいかがですか?」

そして、王太子。
便乗するな、絶対にわざとでしょ。
そのエスコートするように、差し出された手はいらないよ。
今すぐしまって。
あ、この人私の反応を楽しんでる。
周りは気づいてないようだけど、私の目は誤魔化せないからね。

内心(絶対に嫌です!)と思っていたが、
お母様は善意で言ってくれたのだろうし、
パパやママは置いといて、まだあまり交流のない王族の誘いをそんな簡単に断れない。

心の中では絶叫しながら、令嬢の仮面を相変わらず貼り付けて「喜んで。」と差し出されている手にそっと自分の手を重ねた。





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短いですが、きりが良かったのでここまでにします。

本当、6歳って一体…………………………。

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