小さな貴族は色々最強！？

42話

    「もうちょっとこっちに敷物を敷きましょう。」

    「ここか？」

   「違うわ、もうちょっとこっち。お昼ぐらいになると太陽の位置が変わるでしょう。日焼けしてしまうわ。ウィルの真っ白なお顔が、真っ黒になってしまったらどうするのよ。」

     「あぁ、そうだな。じゃあここら辺か？」
 
    「そうね。」

     「ふぅ。りょーかい。」

お母様は、敷物の位置を護衛騎士とお父様に指示していた。「大変ですね、侯爵様も。」と、騎士の声が聞こえた。

    「エリス、薬草採取する時着いてきて欲しいなぁ。」

ウィリアムは、目をうるうると潤ませながらエリスの目を見た。パチッと目が合うと、エリスは微笑みかけた。

    「私は、ウィリアム様にどこまでもついて行きますよ。」

 うーん、なんかちょっと重いような気がするけど着いてきてくれるのは良かったよ。

    「僕も、心配だから着いていくね。」

    「え！？お兄様も、来てくれるんですか！」

   「うん、せっかく来たんだからウィルと一緒にいたいなって。」
  
    「やったー！」

お兄様も来てくれるなんて、楽しさ100倍だよ！

 ウィリアムは、心の中でガッツポーズをした。

   「二人ともー。準備出来たわよー。」

   「はーい。」

ウィリアムは侯爵夫人の元へ駆けて行き、その後ろを二人は歩きながらついて行った。

    「じゃじゃーん。」

侯爵夫人は、ランチボックスを開けた。中から出てきたのは、卵焼き、サンドイッチ、ソーセージ、唐揚げなど、他にも色々と作られており家庭的な物が詰められていた。

    「ふわわわぁ、美味しそうです！」

    「凄く美味しそうだな。」

    「色とりどりでとても美味しそうですね。」

  僕だけじゃなくて、お父様もお兄様もお母様のお料理を褒めていた。

     「腕を奮っちゃった、味は保証するわよ。」

お母様は、お料理に自信があるんだ。食事制限なしに色々な食べ物を食べられるの幸せだなぁ。




    『いただきまーす。』

  3人はそれぞれ、食事前の恒例挨拶を行った。これは、日本と同じ文化だよね。ところどころ、前世と同じ部分がある気がする。もしかして、僕だけじゃなくてずぅーっと前にも僕と同じ転生者がいたのかな。
      
 家族それぞれ食事が終わり、最近の出来事など談笑をした。ウィリアムは、立ち上がり風に舞うルミエラの花びらを掴もうとしている。

侯爵達は、その様子を微笑ましく見守っていた。

    「私とギルベルトの出会いは、フィールの森なのよ。」

侯爵夫人は、懐かしむようにウィリアムを見ながら言った。

    「そうなんですか？」

    「あぁ、私が夜ルミエラの花を見るためにフィールの森に来たんだ。しばらく、寝転がって綺麗に咲いているルミエラを見ていると、屋敷から脱走してきたリズがいてな。」

    「え、母上の故郷とは随分離れていますよね？」

    「私も初めは驚いてな。」

侯爵夫人は、帝都より離れている領主の娘だった。ルーカスも、何度か行ったことがあったのでその遠さに驚き尚且つ脱走してきたことに驚きが隠せなかった。今となっては、大人しいが若い頃は天真爛漫さが垣間見える。

    「ここは、一度行ってみたかったのよ。脱走して来た甲斐があったわ、こんなにいい人と出会ってかわいい2人の息子とも出会えたんだもの。」

   「そうだな、リズとも出会えて私は幸せ者だなぁ。」

侯爵は互いに、微笑みあっている。穏やかな生活を送っていることに、幸せを感じていたのだ。