童貞魔法使い 異世界へ

ミノル

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現代編

謎の失踪と娘

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 夢の熱々初夜の新婚二人暮らしは、初日の扉を開けた瞬間から夢へと変わり、思いもしなかった不思議な三人暮らしが始まった。

 その日の夜、二人が寝てる横で独り毛布にくるまり、声を押し殺し枕を濡らしたことは、夢であってほしい。

 朝日の眩しさに目を覚まし、昨日の朝まではあり得なかった良い匂いに誘われたからなのか、号泣してスッキリしたからなのか、わからないが気持ち良く起きる事が出来た。

 良い匂いにつられ、リビングへ向かうとエプロン姿の神奈が朝食を作ってくれている。その光景を見ただけで、昨夜の自分が嘘のように心の何処かへ消えていくのを感じた。

 「おはようございます。」
 「おはよう。」

 この他愛のない会話が幸せだ。

 娘のメイも遅れてリビングへ「ペコリ」おじぎをしてテーブルに着く
 三人で朝食を食べる

「お、美味しい!!」

 こんなに美味しい手料理は、生まれて初めてだ。
 独身時代、彼女なんて出来たことがなかったからいつも、自分で作って食べていた。
 誰に教わったか「困った時は、塩を入れておけ!どうにかなるから」をモットーに料理を作って来た俺には、考えられない朝食だ。

 俺が感動していると神奈が笑顔で「あらあら、そんなに喜んでもらえて嬉しいです。」と言ってくれた。
 そんな中、メイは朝食を済ませ学校へ

 俺は、幸せを胸いっぱいにして会社へ出かけた。



 会社では、「ひぃ~先輩」37歳独身、素人童貞と「がっちゅも先輩」茶髪52歳、素人童貞と三人で現場を回している。

 軽く説明すると、「ひぃ~先輩」は、元陸上自衛隊で訓練中、小銃を帰り道に忘れて帰り、上官にめちゃくちゃ怒られた人だ。
 口癖が「ひぃ~」と「痩せました!」である。

 次に「がっちゅも先輩」ナルシストで短気なおじさん
口癖が怒ると「がっちゅ」「がっちゅも」自分より弱い相手を見つけて毎日怒鳴る事を仕事だと思い込んでいる人。

※両方実話です。

 仕事内容は、今話すまでもないだろう。次の機会に話すとして、この人達に囲まれていると、家で幸せを胸いっぱいにしていたこの気持ちは、ポロポロとこぼれ何処かへ消えていくのだ。

 そんな俺だが、今日から五時から男へと変貌した為、元気いっぱいに笑顔で仕事場から真っ直ぐ自宅へ帰った。

「ただいま!」

 お帰りなさいの言葉を期待し待つ俺だが、まず、家の中から人の気配がない。

 買い物にでも、行っているのだろうか。

 しかし、待てども神奈が帰ってくる気配はなく、それでもメイは、夕方過ぎには、帰って来た。

「おかえりなさい。」

(ビクッ……。)


 玄関で待っていた俺に、一瞬、不審者でも見たかのようなリアクションを取られたが、いつものように頭を下げて部屋へ戻った。

 胸がチクッとしたけれど、娘が帰って来たことに安堵する。

 警察に捜索願いを出そうか悩んでいると、テーブルの上に置き手紙がある事に気づいた。

「時が来たら探して下さい。」

 俺は、この手紙を読んで安堵する。

「手紙を書く余裕があると言うことは、拐われた訳じゃないんだな。」

 メイが冷静でいる理由は、何かしらの事情を知っている為だと思い納得できない中で、無理やり納得した。



 今朝の賑やかさが嘘の様に静まりかえっている家の中で、冷静に考えお腹を空かせているだろう、メイの為に俺の男の料理を作り今夜のご飯を済ませた。
 晩御飯を食べる時、メイの顔が引きつっていた様に見えたのは、気のせいではなかった。

 
 結局、その日以来、神奈が帰って来る事はなかった。
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