童貞魔法使い 異世界へ

ミノル

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異世界 編

王と面談そして俺は

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 俺は今、王の目の前にいる。
 妹と神奈の姿が見えない以上、下手に動く事が出来ない。

「約束通り魔王軍大将を討ち取って来たので娘達を返して下さい。」
「何を世迷言を言っている。 こんなに早く出来る訳がないだろ! 娘を助けたいばかりに嘘を付くんじゃない!」

 王は、不機嫌になり俺を城から摘まみ出そうとする。

「ちょっと待ってください! 本当なんです。」
「それならば、討ち取った証拠を出せ! そうしたら信じてやる。」

 王は、絶対的自信を持った顔で俺が困るだろうと見下ろしたが、次の瞬間に、顔色を大きく変えた。

「もちろん、証拠を準備してきました。 こちらが証拠の魔王軍大将を討ち取り、領土にあった宝を手に入れて来ました。」
「な、なんだと! 本当にこの短期間でやりとげたと言うのか!」

 驚愕する王は、困った顔をしたあと考え込み何か思い付いたのだろうか、満面の笑みを浮かべた。

「よくやってくれた! 君は、我が国の最大の英雄だ! 今夜は、永期に渡り続いた戦争の終わりを告げる歴史的な日にやるだろう! みんなで盛大に祝いおうぞ!」
「お言葉ですが、そんな事より約束の娘と神奈を返してください。 無事なんでしょうね?」
「もちろん無事だ! 今は、別の街で大切に扱っているから安心しなさい。 今から使いの者を出すから明日の朝には会えるだろう。 それよりも、今夜は宴だ!」

 王の言葉を聞き安堵する。
 何とか、娘達と無事再会が出来そうで胸に突っ掛かっていた物が取れ、心なしか体が軽くなった気分だ。
 しかし、魔王軍の大将が言っていた事が気になるが、やはり自分の命を守る為の嘘だったのだろうか……。

 どちらにしろ、娘達が帰って来たら後は要なしだから逃げればすむ話か。

 そうこうしている間に宴が始まる。
 俺は、酒が飲めないから代わりに水を飲むと伝え、乾杯してグラスに口をつけ一口飲んだら意識を失いその場に倒れた。

 無味無臭のアルコールに変えられていたらしい。
 俺は、とんでもないバカだった。

 意識を取り戻すと、体の異変に気付く。

「体が重い……。 まるで、自分の体じゃないみたいだ。」

 両手を繋ぐ鎖を引きちぎろうとするが、全く歯が立たない。
 こんな物、簡単に壊す事が出来たはずなのに
 困惑する俺を嘲笑うように王が現れた。

「君が街で暴れた噂などは、聞いていた。 思った通り危険な男の様だから対策を取らせてもらったよ。」

「一体俺に何をした!」

「これは、初期化の石、と言ってね。 君みたいにとても強い人間が触ると全てを鍛える前の状態へ戻してしまうんだ。 一度しか使えないとても貴重な物で私の奥の手だったのだが、君が相手なら仕方ない。 それに、この戦争を終わらせるのは、私の息子のガーターであるべきなのだ。 時期王になる私の息子に英雄になってもらいたいのは、親として当たり前の考えだと思わないかい? だから、君は、邪魔なんだ。 消えてもらうよ。」

「ちょっと待て! 娘達は、どうした!」

「君の娘は、ガーターが偉く気に入ってね。 息子が所有する事にしたよ。 嫁の方は私がもらう事にしよう。 だから、君は安心してゆっくり眠ると良い。」

 城の衛兵が俺をどこかへ連れていこうとする。
 抵抗するが力の差が有りすぎて話にならない。

「俺をどうするつもりだ!」

「行けばわかるさ。」

 しばらく引きずられたどり着いた所は、ダンジョンと呼ばれる洞穴だった。
 ダンジョンは、下層に行けば行くだけ強い魔物が存在し、現在最高到達点は、42階層まで進み未だに最下層がどこまで続いてるかわからない謎の洞窟らしい。

 ダンジョンには、無数の縦穴があり下層に降りるのは思いの外簡単で、自信だけある無謀な冒険者がたまに、降りて行くが帰って来たものはいない。

 そんな場所に連れてこられ、状況の最悪さを感じとり必死に抵抗するが、衛兵はそんな俺を無視して力任せにダンジョンの縦穴に俺を投げ捨てた。

 どんどん小さくなる衛兵を見ながら生き延びたいと伸ばした手は、虚しく空を切り何も掴むことが出来ず、底へと落ちていく。
 視界も暗くなり何も見えなくなった。

「神奈、メイ、助けられなくてごめん。」
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