捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

文字の大きさ
46 / 51
番外編 カイの目覚め

リリアとの出会い

しおりを挟む
 王都の喧騒から隔絶された、静かな療養所の病室。
 そこは、かつてアルバス家の後継者とうたわれたカイの、終わりなき自問自答の場所となっていた。
 窓の外では、陽の光が庭園の木々を照らしている。
 だが、彼の心の中は、常にどんよりとした曇り空だった。

 あの戦いで負った傷は肉体的なものだけではない。兄リヒトの活躍と自らの無力さという、拭いがたい現実が、彼の魂を深く抉っていた。


ーーーーーーーー

 ぼんやりしていた。

 なぜなのか…
 なぜダメだったのか…
 なぜリヒトは…

 なぜ…
  なぜ…
   なぜ…
      なぜ…

 誰とも話したくはなかった。
 まぁ、見舞いに来るのは母上だけだったから、ぼんやりしていた。

 父上もお祖父様も一度もここへは来ていない。
 見限られたのか、リヒトのショックで動けないのか…
 両方かもしれないな…

 そんななか、母上が生き生きしてきた。
 家庭教師をしているらしい。
 僕がどうあれ、とりあえず話しかけるだけ話して帰るようになった。
 最近は私の好物を差し入れしてくれる。

 母上に泣かれないだけで、少し楽になったように思う。
 この間なんか、

「カイ、魔力はあるわよね。気が向いたときでいいから、これに魔力を貯めておいてほしいの。少しずつでいいから、無理のない程度で」

 と小さな魔道具を持ってきた。
 魔力を貯められる魔道具らしい。
 一緒に持ってきたのはオルゴールのキット。

「差し上げたい方がいるから、作ってくれると嬉しいわ。お店を見て回ったけど、カイが作ってくれたのよりいいのがなくて… 無理ならいいの。また探すわ」

 僕はうっすら苦笑した。
 母上は僕のプライドを傷つけず、うまくお願いする方法をいつ身につけたんだろう…。
 小さな魔道具とオルゴールキットをただ見ている私に微笑みかけ、母上は「また来るわね」と帰っていった。


 魔力を込めて魔石を精製するのも、オルゴールを作るのも、本来は魔道具師の初歩的な訓練だ。

(この僕が…)

 ただ、この魔道具は魔力を貯めておくと誰でも取り出せるらしい。

(リヒトだよな…)

 母は口にこそ出さなかったけれど、何となくわかる。
 そんな発想をするのはリヒトしかいない。

 魔道具を前にぼんやりしていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「失礼いたします。カイ様、お加減はいかがですか?」
「変わらない」

 入ってきたにこやかな女性に、僕はそっけなく返す。

「そうですか。悪くなっていないならよかったです。今日も少しだけですが…」

 そう断って、彼女は私の腕に手をかざす。ふんわりと体中が温まった。

 彼女はリリア。王宮に仕える癒しの魔導士見習いらしい。
 ただ、リリアの癒しはすぐに終わる。

「すみません。今日はここまでのようです」

 すまなさそうにうつむくリリアに、何となく頷いた。

「カイ様も魔道具キャリパーをお持ちなのですね。私は貯めるほどの魔力があまり残ってなくって…」

 リリアが自分の魔道具を取り出して見せた。赤くなっている様子から、その中にはもう魔力はなさそうだ。

「貸して」

 僕はためらうリリアから魔道具を受け取ると、魔力を込め始めた。
 魔道具はみるみる青くなっていく。
 リリアが目を見張っていた。

「はい」
「いいのですか?」
「君のだろう?魔力は無駄にあるんだ。ただ、久しぶりにやったからちょっと疲れたかな」

 そう言うと、リリアはヒールをかけてくれた。

「こんなにうまくかけられたのは初めてです! ありがとうございます。カイ様」
「また持ってくればいい」

 すごく楽になったけど、素直にお礼は言えなかった。
 自分の魔力で自分が癒されるのも変な気持ちだった。
 リヒトが作るものは、生活を豊かにしていく。
 分かっているけど…


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

過労死した俺、異世界で最強農業チートに目覚める。神農具で荒野を楽園に変えたら、エルフや獣人が集まって最高の国ができました

黒崎隼人
ファンタジー
「君、死んじゃったから、異世界で国、作らない?」 ブラック企業で過労死した俺、相川大地。 女神様から授かったのは、一振りで大地を耕し、一瞬で作物を育てる**最強の『神農具』**だった!? 右も左もわからない荒野でのサバイバル。 だけど、腹ペコのエルフ美少女を助け、頼れるドワーフ、元気な猫耳娘、モフモフ神狼が仲間になって、開拓生活は一気に賑やかに! 美味しいご飯とチート農具で、荒野はあっという間に**「奇跡の村」**へ。 これは、ただの農民志望だった俺が、最高の仲間たちと世界を救い、種族の壁を越えた理想の国『アグリトピア』を築き上げる物語。 農業は、世界を救う! さあ、今日も元気に、畑、耕しますか!

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

追放された公爵令息、神竜と共に辺境スローライフを満喫する〜無敵領主のまったり改革記〜

たまごころ
ファンタジー
無実の罪で辺境に追放された公爵令息アレン。 だが、その地では神竜アルディネアが眠っていた。 契約によって最強の力を得た彼は、戦いよりも「穏やかな暮らし」を選ぶ。 農地改革、温泉開発、魔導具づくり──次々と繁栄する辺境領。 そして、かつて彼を貶めた貴族たちが、その繁栄にひれ伏す時が来る。 戦わずとも勝つ、まったりざまぁ無双ファンタジー!

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

神眼のカードマスター 〜パーティーを追放されてから人生の大逆転が始まった件。今さら戻って来いと言われてももう遅い〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「いいかい? 君と僕じゃ最初から住む世界が違うんだよ。これからは惨めな人生を送って一生後悔しながら過ごすんだね」 Fランク冒険者のアルディンは領主の息子であるザネリにそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 父親から譲り受けた大切なカードも奪われ、アルディンは失意のどん底に。 しばらくは冒険者稼業をやめて田舎でのんびり暮らそうと街を離れることにしたアルディンは、その道中、メイド姉妹が賊に襲われている光景を目撃する。 彼女たちを救い出す最中、突如として【神眼】が覚醒してしまう。 それはこのカード世界における掟すらもぶち壊してしまうほどの才能だった。 無事にメイド姉妹を助けたアルディンは、大きな屋敷で彼女たちと一緒に楽しく暮らすようになる。 【神眼】を使って楽々とカードを集めてまわり、召喚獣の万能スライムとも仲良くなって、やがて天災級ドラゴンを討伐するまでに成長し、アルディンはどんどん強くなっていく。 一方その頃、ザネリのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 ダンジョン攻略も思うようにいかなくなり、ザネリはそこでようやくアルディンの重要さに気づく。 なんとか引き戻したいザネリは、アルディンにパーティーへ戻って来るように頼み込むのだったが……。 これは、かつてFランク冒険者だった青年が、チート能力を駆使してカード無双で成り上がり、やがて神話級改変者〈ルールブレイカー〉と呼ばれるようになるまでの人生逆転譚である。

婚約破棄&濡れ衣で追放された聖女ですが、辺境で育成スキルの真価を発揮!無骨で不器用な最強騎士様からの溺愛が止まりません!

黒崎隼人
ファンタジー
「君は偽りの聖女だ」――。 地味な「育成」の力しか持たない伯爵令嬢エルナは、婚約者である王太子にそう断じられ、すべてを奪われた。聖女の地位、婚約者、そして濡れ衣を着せられ追放された先は、魔物が巣食う極寒の辺境の地。 しかし、絶望の淵で彼女は自身の力の本当の価値を知る。凍てついた大地を緑豊かな楽園へと変える「育成」の力。それは、飢えた人々の心と体を癒す、真の聖女の奇跡だった。 これは、役立たずと蔑まれた少女が、無骨で不器用な「氷壁の騎士」ガイオンの揺るぎない愛に支えられ、辺境の地でかけがえのない居場所と幸せを見つける、心温まる逆転スローライフ・ファンタジー。 王都が彼女の真価に気づいた時、もう遅い。最高のざまぁと、とろけるほど甘い溺愛が、ここにある。

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

処理中です...