捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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番外編 カイの目覚め

リリアとの出会い

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 王都の喧騒から隔絶された、静かな療養所の病室。
 そこは、かつてアルバス家の後継者とうたわれたカイの、終わりなき自問自答の場所となっていた。
 窓の外では、陽の光が庭園の木々を照らしている。
 だが、彼の心の中は、常にどんよりとした曇り空だった。

 あの戦いで負った傷は肉体的なものだけではない。兄リヒトの活躍と自らの無力さという、拭いがたい現実が、彼の魂を深く抉っていた。


ーーーーーーーー

 ぼんやりしていた。

 なぜなのか…
 なぜダメだったのか…
 なぜリヒトは…

 なぜ…
  なぜ…
   なぜ…
      なぜ…

 誰とも話したくはなかった。
 まぁ、見舞いに来るのは母上だけだったから、ぼんやりしていた。

 父上もお祖父様も一度もここへは来ていない。
 見限られたのか、リヒトのショックで動けないのか…
 両方かもしれないな…

 そんななか、母上が生き生きしてきた。
 家庭教師をしているらしい。
 僕がどうあれ、とりあえず話しかけるだけ話して帰るようになった。
 最近は私の好物を差し入れしてくれる。

 母上に泣かれないだけで、少し楽になったように思う。
 この間なんか、

「カイ、魔力はあるわよね。気が向いたときでいいから、これに魔力を貯めておいてほしいの。少しずつでいいから、無理のない程度で」

 と小さな魔道具を持ってきた。
 魔力を貯められる魔道具らしい。
 一緒に持ってきたのはオルゴールのキット。

「差し上げたい方がいるから、作ってくれると嬉しいわ。お店を見て回ったけど、カイが作ってくれたのよりいいのがなくて… 無理ならいいの。また探すわ」

 僕はうっすら苦笑した。
 母上は僕のプライドを傷つけず、うまくお願いする方法をいつ身につけたんだろう…。
 小さな魔道具とオルゴールキットをただ見ている私に微笑みかけ、母上は「また来るわね」と帰っていった。


 魔力を込めて魔石を精製するのも、オルゴールを作るのも、本来は魔道具師の初歩的な訓練だ。

(この僕が…)

 ただ、この魔道具は魔力を貯めておくと誰でも取り出せるらしい。

(リヒトだよな…)

 母は口にこそ出さなかったけれど、何となくわかる。
 そんな発想をするのはリヒトしかいない。

 魔道具を前にぼんやりしていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「失礼いたします。カイ様、お加減はいかがですか?」
「変わらない」

 入ってきたにこやかな女性に、僕はそっけなく返す。

「そうですか。悪くなっていないならよかったです。今日も少しだけですが…」

 そう断って、彼女は私の腕に手をかざす。ふんわりと体中が温まった。

 彼女はリリア。王宮に仕える癒しの魔導士見習いらしい。
 ただ、リリアの癒しはすぐに終わる。

「すみません。今日はここまでのようです」

 すまなさそうにうつむくリリアに、何となく頷いた。

「カイ様も魔道具キャリパーをお持ちなのですね。私は貯めるほどの魔力があまり残ってなくって…」

 リリアが自分の魔道具を取り出して見せた。赤くなっている様子から、その中にはもう魔力はなさそうだ。

「貸して」

 僕はためらうリリアから魔道具を受け取ると、魔力を込め始めた。
 魔道具はみるみる青くなっていく。
 リリアが目を見張っていた。

「はい」
「いいのですか?」
「君のだろう?魔力は無駄にあるんだ。ただ、久しぶりにやったからちょっと疲れたかな」

 そう言うと、リリアはヒールをかけてくれた。

「こんなにうまくかけられたのは初めてです! ありがとうございます。カイ様」
「また持ってくればいい」

 すごく楽になったけど、素直にお礼は言えなかった。
 自分の魔力で自分が癒されるのも変な気持ちだった。
 リヒトが作るものは、生活を豊かにしていく。
 分かっているけど…


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