捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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第1章 目覚め

古いタガー

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 納屋の埃っぽい空気は、もう僕にとって何の苦痛でもなかった。
むしろ、それが僕だけの世界を守る薄い膜のように感じられた。
家族の冷たい視線も、カイの嘲笑も届かない、僕だけの聖域。

 凍えるような冬の夜、屋敷の灯りが完全に消え、漆黒の闇が周囲を覆う頃、僕は密かに作業を始めた。
外では雪がしんしんと降り積もり、世界の全てを白い沈黙で覆い尽くしている。
僕の吐く白い息だけが、納屋のおぼろな光と冷気の中で確かに揺らめいていた。

 手元にあるのは、使い古された短剣タガー
平民でも持っていそうな、何の変哲もない、少し刃の欠けたボロタガーだ。
しかし、これこそが僕の、そして僕が信じるの、全てを賭けた最終試作になる。

 文献のページは、読み込み過ぎて擦り切れている。
いにしえの魔道具師が遺した、魔力にらない道具の本質。
それは、僕が魔力を持たないからこそ、誰よりも深く理解できる真理だった。

 彼は魔力を「道具の燃料」とは考えず、「道具の意思を増幅させる媒体」と捉えた。
そして魔力を吸収し、それ自体を糧として成長する、禁断の技術「」の記述。

 僕は、古びた短剣タガーにすべてを託す。

 手のひらに乗せたタガーは、小さいのにずしりと重い。

 そのには、僕が寝る間を惜しんで研磨し、奇妙な文様を刻み込んだ痕跡が残る。
それは、アルバス家が代々使う流麗な魔導文字とは似ても似つかない、文献から得た不完全な記号の羅列だ。
家族が見たら、きっと「また無駄な遊びを」と嘲笑わらい、取り上げられるだろう。
だが、この記号の一つ一つに、出来損ないの探求の全てが込められていた。
 
 頭を優しく撫でてくれた祖父の大きな手も、抱き上げられた父の力強い腕も、母のほほえみも、小さかった弟がいつも後ろをついてきたことも、思い出は屋敷に置いてきた。

(おばあさま…)

 魔力が少ししかないと分かっても、変わらずかわいがってくれた祖母がいれば、また違っただろうか。

(でも、おばあさまもカイに大きな魔力があると知って安心して亡くなられたんだったな…)

 僕は大きく息を吐いて、目の前のナイフに目を落とした。
 
 最終工程は、魔力の調

 これまでの試作では、微弱な魔力を吸収するだけに留まっていた。
だが、””は、周囲の魔力を根こそぎ奪い、それを己の力として増幅させる。
それは、自然の摂理に反する行為であり、成功すれば奇跡、失敗すれば身を滅ぼす諸刃の剣だ。
 
 僕は、もう一度大きく息を吐き、納屋に散らばる微弱な魔力石のかけらを、タガーの周囲に慎重に配置した。
それは、修理を任された古びた魔道具の残骸から、僕がこっそり抜き取ったものだ。

 心臓がドクドクと大きく脈打つ。
 手が震え、額には冷や汗がにじんだ。

 失敗すれば、また家族に嘲笑わらわれる。いや、僕の心の拠り所よりどころがなくなる。
 その恐怖が、僕の全身を支配した。

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