捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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第1章 目覚め

鈍いが希望の光だ

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 諦めるわけにはいかない。諦めてはいけない。

 僕には、もう、これしかないんだ。

 この短剣タガーこそが、僕がこの世界に存在する意味を証明する、唯一の手段のはず。

 深く息を吸い込み、僕は短剣タガーの柄を両手で握りしめた。

 ひんやりとした感触が、僕のてのひらに吸い付く。

 目を閉じ、僕は己の心の奥底に眠る、微かな、ほとんどないに等しい魔力の源を辿たどった。
それは、幼い頃から否定され続けてきた、僕自身の
だが今、そのが、この禁断の魔道具を起動させるための、唯一の鍵となる。

 小さな種火で、短剣これは本領を発揮するはず。

「……動いてくれ…」

 心の底で、僕はそう呟いた。

 僕のかすかな魔力が、短剣タガーの柄に刻まれた文様へと吸い込まれていく。
それはまるで、僕自身の血が道具へと流れ込んでいくかのような感覚だった。
同時に、周囲に配置した魔力石のかけらから、微弱な光が放たれ、その光の筋が全て短剣へと集中していく。

 しかし、短剣タガーの様子は変わらない。

(…ダメなのか?…)

 僕の魔力はすぐに無くなった。
魔力が吸い取られた感覚はあったのに、何も変化はなかった。

(やっぱり、この程度の魔力ではダメなのか?)

 諦めかけたその時、タガーの刀身が、わずかに、本当に微かに、だが確かに震え始めた。
そして、ぼんやりと、刀身の表面に淡い光が浮かび上がった。

 目を見張る僕の前で、光は次第に強さを増していく。

 最初は青白い光だったが、やがて紫がかった、まるで夜空の星を閉じ込めたような、神秘的な輝きを放ち始めた。
その輝きは、納屋の暗闇を一掃し、僕の顔を明るく照らす。
刀身を伝って熱が僕の掌へと伝わってくる。
熱い、だが、それは心地よい熱だった。

 その光の中で、僕は確かに感じた。
短剣タガーが、周囲の魔力を吸い込み、それを自らの力に変えていることを。

 まるで、飢えた獣が餌を貪るように、魔力を喰らっているのだ。

 魔力石は光を失い、ただの石ころに戻った。
納屋を満たしていた僅かな魔力の気配も、全てタガーの中へと消え去っていた。

「…あ、あ、ああっ…」

 完成した! 完成したんだ!

 僕の目の前で、古びたタガーはきらめく刃を持つ、真の「魔力喰らいの剣」へと変貌していた。
その輝きは、アルバス家のどんな豪華な魔道具よりも、僕には尊く、美しく見えた。
まばゆい光はゆっくりと短剣に吸収されてゆく。

 僕は、震える手でその短剣タガーを握りしめた。

 温かい。そして、強い。

 生まれて初めて、僕は自分の存在を、心から肯定できた気がした。

 この短剣タガーが、きっと僕の人生を変える。
 この短剣タガーが、僕を、家族の呪縛から解き放ってくれる。

 そう確信した瞬間、僕の瞳から一筋の熱いしずくがこぼれ落ちた。
それは、長年の屈辱と絶望が、ようやく溶け出してくれた証だった。

 外では雪が止み、代わりに東の空がゆっくりと白み始めていた。
 新しい朝が来る。
 安堵とともに、僕はパタリと眠ってしまった。
    
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