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第1章 目覚め
【カイ視点】追放の決断:アルバス家の食卓
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寒い冬の夜、分厚いオーク材の食卓には、湯気を立てるご馳走が並ぶ。
中央のローストチキンが香ばしい匂いを漂わせ、グラスに注がれたワインが食欲をそそる。
この空間こそが、アルバス家の栄光を象徴する場所だ。
もちろん、あの出来損ないの席は、いつも通り空席のまま。
「カイ、王都からの魔道具の依頼件だが、お前の提案した改良型『守護の腕輪』は好評だったそうだな」
父上が満足げに口角を上げた。
その声には、僕に向けられる確かな期待が込められている。
「はい、父上。旧型に比べ、魔力の消費量を二割削減し、耐久性を三割向上させました。我らアルバス家の技術力を示す良い機会になったかと」
僕は自信に満ちた声で答える。
この成果こそが、僕の、そしてアルバス家の実力だ。
おじいさまも深く頷いている。
「うむ、さすがはカイじゃ。これほどの優れた魔道具師は、この数十年見ておらぬわ」
祖父の言葉に、僕の胸は高鳴る。
「お前こそがアルバス家の真の後継者。魔力も申し分ない」
父の言葉に、祖父は頷き、母は微笑む。
僕は出来損ないと違う。期待されている。必要とされている。
僕こそが、この家を次の世代へと導く存在なのだ。
「しかし……一つ懸念が」
僕はわざとらしく声を潜めた。
皆の視線が僕に集まる。
当然だ。この家の問題は、ただ一つしかないのだから。
「リヒトのことでしょうか、カイ?」
母上が感情のこもらない声で問いかけてくる。相変わらずだ。
あの出来損ないに対する母上の無関心さは、僕でさえ時折、背筋が凍る。
「ええ、母上。来月の王家への報告書作成を控えておりますが、リヒトの研究状況が全く不明です。ただ納屋でガラクタを弄っているだけでは、家の体面に関わります」
父上の顔に不快感が広がるのが見て取れる。
予想通りの反応だ。
「あの出来損ないめが、またぞろ無駄な真似を。何年経っても魔力一つまともに扱えぬ者が、一体何ができるというのだ?」
おじいさまが鼻を鳴らす。
ワイングラスを持ったままテーブルを叩くから、ワインがこぼれそうだ。
しかし、いつもながら、この老いぼれの意見は僕の考えと一致する。
「まったく。魔力のない者が魔道具師を名乗るなど、言語道断。家訓を冒涜するにも程がある」
父上も僕もゆっくりと頷く。
魔力こそが全て。
それは、アルバス家が何世紀もかけて築き上げた揺るぎない真理だ。
それを理解できないリヒトの存在は、邪魔でしかない。
「正直なところ、父上。リヒトの存在は、もはや家の負債でしかありません。私たちがせっかく築き上げた名声に、傷がつく可能性すらある」
僕は決定的な言葉を放った。
もう、リヒトをこの家に置いておく理由など一つもない。
その時、扉が静かにノックされた。
父が入室を許可すると、初老の執事が滑るように食堂へ入ってくる。
「奥様、リヒト様の夕食についてですが……いかがいたしましょうか?」
執事の声は控えめだったが、食卓の会話はぴたりと止まった。沈黙が降りる。
この家で、あの出来損ないの存在を口に出すこと自体、もはやタブーだ。
執事は、場の空気に耐えようと、グッとこぶしを握る。
母上は表情一つ変えず、フォークを静かに皿に置いた。
「リヒトの食事は……ええ、あなた達が食べた後の残り物を持っていくように」
その言葉は、まるでゴミの分別でも決めるかのように淡々としていた。
執事は淡々と「かしこまりました」とだけ答え、静かに部屋を辞す。
「リヒトはもう、この家で果たすべき役割はないな」
父上がワイングラスを傾けながら言った。
「無駄な人材を抱え込む余裕など、今のアルバス家にはない。特にこれからの時代は、より一層効率と実力が求められる。潮時だ」
「これで、我々の研究を邪魔することもなくなります。心置きなく、新たな技術開発に注力できるでしょう」
父の言葉に、僕は満足げに微笑んで返す。
邪魔者がいなくなり、ようやくこの家は、僕を中心に回るようになるのだ。
「これで、アルバス家は真の意味で『魔力こそが全て』の家系となるのぅ。実に喜ばしい」
ワイングラスを掲げる祖父の言葉が、この夜を決定づけた。
僕の人生から、常に付きまとっていた影が消える。
解放感と、確かな優越感が僕の心を支配した。
これで、僕がアルバス家の、真の当主となる道は確実なものになったのだ。
中央のローストチキンが香ばしい匂いを漂わせ、グラスに注がれたワインが食欲をそそる。
この空間こそが、アルバス家の栄光を象徴する場所だ。
もちろん、あの出来損ないの席は、いつも通り空席のまま。
「カイ、王都からの魔道具の依頼件だが、お前の提案した改良型『守護の腕輪』は好評だったそうだな」
父上が満足げに口角を上げた。
その声には、僕に向けられる確かな期待が込められている。
「はい、父上。旧型に比べ、魔力の消費量を二割削減し、耐久性を三割向上させました。我らアルバス家の技術力を示す良い機会になったかと」
僕は自信に満ちた声で答える。
この成果こそが、僕の、そしてアルバス家の実力だ。
おじいさまも深く頷いている。
「うむ、さすがはカイじゃ。これほどの優れた魔道具師は、この数十年見ておらぬわ」
祖父の言葉に、僕の胸は高鳴る。
「お前こそがアルバス家の真の後継者。魔力も申し分ない」
父の言葉に、祖父は頷き、母は微笑む。
僕は出来損ないと違う。期待されている。必要とされている。
僕こそが、この家を次の世代へと導く存在なのだ。
「しかし……一つ懸念が」
僕はわざとらしく声を潜めた。
皆の視線が僕に集まる。
当然だ。この家の問題は、ただ一つしかないのだから。
「リヒトのことでしょうか、カイ?」
母上が感情のこもらない声で問いかけてくる。相変わらずだ。
あの出来損ないに対する母上の無関心さは、僕でさえ時折、背筋が凍る。
「ええ、母上。来月の王家への報告書作成を控えておりますが、リヒトの研究状況が全く不明です。ただ納屋でガラクタを弄っているだけでは、家の体面に関わります」
父上の顔に不快感が広がるのが見て取れる。
予想通りの反応だ。
「あの出来損ないめが、またぞろ無駄な真似を。何年経っても魔力一つまともに扱えぬ者が、一体何ができるというのだ?」
おじいさまが鼻を鳴らす。
ワイングラスを持ったままテーブルを叩くから、ワインがこぼれそうだ。
しかし、いつもながら、この老いぼれの意見は僕の考えと一致する。
「まったく。魔力のない者が魔道具師を名乗るなど、言語道断。家訓を冒涜するにも程がある」
父上も僕もゆっくりと頷く。
魔力こそが全て。
それは、アルバス家が何世紀もかけて築き上げた揺るぎない真理だ。
それを理解できないリヒトの存在は、邪魔でしかない。
「正直なところ、父上。リヒトの存在は、もはや家の負債でしかありません。私たちがせっかく築き上げた名声に、傷がつく可能性すらある」
僕は決定的な言葉を放った。
もう、リヒトをこの家に置いておく理由など一つもない。
その時、扉が静かにノックされた。
父が入室を許可すると、初老の執事が滑るように食堂へ入ってくる。
「奥様、リヒト様の夕食についてですが……いかがいたしましょうか?」
執事の声は控えめだったが、食卓の会話はぴたりと止まった。沈黙が降りる。
この家で、あの出来損ないの存在を口に出すこと自体、もはやタブーだ。
執事は、場の空気に耐えようと、グッとこぶしを握る。
母上は表情一つ変えず、フォークを静かに皿に置いた。
「リヒトの食事は……ええ、あなた達が食べた後の残り物を持っていくように」
その言葉は、まるでゴミの分別でも決めるかのように淡々としていた。
執事は淡々と「かしこまりました」とだけ答え、静かに部屋を辞す。
「リヒトはもう、この家で果たすべき役割はないな」
父上がワイングラスを傾けながら言った。
「無駄な人材を抱え込む余裕など、今のアルバス家にはない。特にこれからの時代は、より一層効率と実力が求められる。潮時だ」
「これで、我々の研究を邪魔することもなくなります。心置きなく、新たな技術開発に注力できるでしょう」
父の言葉に、僕は満足げに微笑んで返す。
邪魔者がいなくなり、ようやくこの家は、僕を中心に回るようになるのだ。
「これで、アルバス家は真の意味で『魔力こそが全て』の家系となるのぅ。実に喜ばしい」
ワイングラスを掲げる祖父の言葉が、この夜を決定づけた。
僕の人生から、常に付きまとっていた影が消える。
解放感と、確かな優越感が僕の心を支配した。
これで、僕がアルバス家の、真の当主となる道は確実なものになったのだ。
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