捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

文字の大きさ
9 / 51
第2章 流浪

出会い

しおりを挟む
 僕は恐る恐る村に足を踏み入れる。
 村の入り口には、かろうじて形を保っている木製の柵があるものの、あちこちちて今にも崩れ落ちそうだった。

 村の中も同様に、家々は傾き、畑は痩せ細って、作物の姿はほとんど見えない。
時折聞こえるのは、風に揺れる枯れ草の音と、遠くで響く魔物の咆哮ほうこうらしき不気味な響きだけだった。

 人々は僕のような見慣れない旅人に対して、警戒の色を隠さない。
彼らの視線は、僕の古びた衣服と、背中に背負った包みに向けられていた。

 そんな中、僕は、か細い腕で井戸から必死に水をくみ上げている女性に声をかけた。
僕と同じくらいの年だろうか…

「お手伝いしましょう」

 僕の声に、女性は警戒するように振り向いた。
その顔は土埃つちぼこりに汚れ、髪は乱れ、痩せこけているにもかかわらず、瞳には強い意志と警戒の光が宿っている。
しかし、体全体には疲労の色が色濃く浮かんでいた。

「旅の方……こんな僻地で、何か御用ですか?」

 彼女の声はかすれていて、今にも消え入りそうだった。

  僕は慌てて首を横に振る。

「いえ、その……道に迷ってしまい、それで、ここに……」

 自分の口下手に嫌気がさす。

(けど、何を言っても、きっと怪しまれるよな…)

 彼女は僕の返事に眉をひそめ、さらに警戒心をあらわにした。
 彼女は僕の体をじっと見つめた後、かすかにため息をつく。

「この村には、旅人を泊める余裕なんてありませんよ。それに、今は魔物も頻繁に出る。
危ないですから、早くここを離れた方がいい」

 彼女の言葉は突き放すようだったが、その奥には、僕を心配するような響きが微かに感じられた。
僕は、何かできることはないかと必死に考えた。

「あの……僕、魔道具師なんです。もし、何か困っていることがあれば、お役に立てるかもしれません」

 僕の言葉に、彼女は呆れたような顔をした。

「魔道具師?あんたが? 
こんな辺境の、魔力すら枯れかかっているような村で、一体何の役に立つというの?
それに、あんた、魔力あるの? なさそうだけど」

 彼女の言葉は、まるでかつての家族のようだった。いや、家族よりはやさしいか。

 どう返そうかと思っていた時、一人の老人がゆっくりと井戸に近づいてきた。
深い皺が刻まれた顔には、村の苦労がそのまま刻まれている。

「エレン、どうした?ん?見慣れない顔だのう」
村長むらおさ…」

 長老か…
 どうりで年老いているが、声に落着きがある。
 彼女エレンが僕のことを説明した。
長老は僕の全身をじっと見つめる。その目は僕の持つ「魔力喰らいの短剣」が包まれたボロ布に一瞬止まった。

「魔力は感じんのぅ。が……それで魔道具師か。珍しいのう」

 長老は僕に、嘲笑ではなく、どこか興味深げな視線を向けた。

「ワシはこの村をべるガンツじゃ。
何か困っていることがあれば、と申したな。この村は、今、大変な飢饉に苦しめられておる。
畑は荒れ果て、魔物は作物を食い荒らし、水も枯れかけている。
もし、本当に魔道具師であるならば、この状況を打開する術があるのか、見せてもらえんか」

 ガンツの言葉は、僕にとっての試練であり、同時に希望でもあった。

(僕の、魔道具なら……!)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

追放されたので田舎でスローライフするはずが、いつの間にか最強領主になっていた件

言諮 アイ
ファンタジー
「お前のような無能はいらない!」 ──そう言われ、レオンは王都から盛大に追放された。 だが彼は思った。 「やった!最高のスローライフの始まりだ!!」 そして辺境の村に移住し、畑を耕し、温泉を掘り当て、牧場を開き、ついでに商売を始めたら…… 気づけば村が巨大都市になっていた。 農業改革を進めたら周囲の貴族が土下座し、交易を始めたら王国経済をぶっ壊し、温泉を作ったら各国の王族が観光に押し寄せる。 「俺はただ、のんびり暮らしたいだけなんだが……?」 一方、レオンを追放した王国は、バカ王のせいで経済崩壊&敵国に占領寸前! 慌てて「レオン様、助けてください!!」と泣きついてくるが…… 「ん? ちょっと待て。俺に無能って言ったの、どこのどいつだっけ?」 もはや世界最強の領主となったレオンは、 「好き勝手やった報い? しらんな」と華麗にスルーし、 今日ものんびり温泉につかるのだった。 ついでに「真の愛」まで手に入れて、レオンの楽園ライフは続く──!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

処理中です...