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第2章 流浪
お墨付き
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僕の活躍は、やがて王都にまで伝わることになる。
王宮魔導院が、僕の存在に注目しているという噂を耳にした時、僕の心には戸惑いが広がった。
(王宮魔導院?まさか、僕のような者を……)
アルバス家が仕える王家、そしてその直下の魔導院。
それは、僕が最も縁遠いと思っていた場所だった。
ーーーーーーーーーー
ある日の午後、村の広場に数人の衛兵に守られた一台の豪華な馬車がやってきた。
村人たちが集まり、驚きと警戒の眼差しを向ける中、ゆっくりと扉が開く。
降りてきたのは、王宮魔導院の紋章を掲げた品のいい老紳士だった。
「この村に、リヒト殿という魔道具師がおられると伺った。私は王宮魔導院長の、グラハムと申します」
出迎えたガンツが、僕を呼び寄せる。
グラハム院長は、威厳を保ちつつも、どこか穏やかな眼差しで僕を見つめた。
「貴殿が生み出す魔道具について、詳しくお伺いしたい」
僕は緊張した。
アルバス家を追放された身だ。
もし、僕の素性がバレたら、また追われることになるのだろうか。
だが、彼の眼は期待に満ちあふれ、キラキラしている。
「知りたい!」という眼差しに、僕は抗えなかった。
村を案内しながら、僕が開発した魔道具の数々を、グラハム院長に見せる。
簡易魔力ポンプ、土壌活性化の杭、ものを軽く運ぶ板…
その周りには、いつも村人の笑顔があった。
僕が魔力を使わず、周囲の魔力を吸収・変換する仕組みを説明すると、グラハム院長は驚嘆の表情を隠さない。
同時に、矢継ぎ早の質問を受けた。
最後に作業場に案内する。
僕のボロ屋のような納屋を見ても、蔑むような表情は見せなかった。
いや、満面の笑みを返してくれた。
最後に見せたのは「魔力喰らいの剣」。
自らの魔力を吸い取ってよいから、力を見せて欲しいと言ったグラハム院長。
僕は剣の力を彼の前で披露することも厭わなかった。
「……信じられん……。…我々、魔導院の常識を覆す技術だ!
魔力に依存せず、これほどの力を引き出すとは……」
彼は、僕の魔力の有無について一切問わず、純粋に僕の技術に目を向けてくれた。
それは、僕が生まれて初めて、真の魔道具師として認められた瞬間だったのかもしれない。
(アルバス家では、誰も僕の技術を理解しようとしなかったのに……)
「リヒト殿。貴殿の技術は、この王国にとって必要不可欠なものです。
我々魔導院に、貴殿の力をお貸しいただけないでしょうか?」
グラハム院長は、僕に深く頭を下げた。
「え…、あ…、ちょっと…」
王宮魔導院の長が、僕のような者に頭を下げている。その光景に、僕は軽くパニくった。
ドアや窓から村人たちも、固唾をのんで見守っている。
僕の心は揺れた。
王都へ行けば、アルバス家と再会する可能性が高い。
また、あの忌まわしい過去が、僕を苦しめるかもしれない。
だが、この技術を、もっと多くの人のために役立てられるかもしれない。
村の人々に笑顔を戻したように。
「すこし、考えさせてください…」
その夜更け、僕は村の広場で一人、星空を見上げていた。
かつて、納屋で星を眺めながら、僕の魔道具が誰かを照らす光になればいいと願ったことを思い出す。
今、その願いが、現実となるかもしれない場所に、僕は立っていた。
翌朝、僕はグラハム院長に、王都への同行を申し出る。
村人たちは、僕が村を離れると知ると、口々に寂しさ伝えてくれた。
それでも、王国のためになることを理解し、僕に温かいエールを送ってくれる。
出発の日、エレンが小さな包みを僕に渡してくれた。
「道中、気をつけてね。村はずっと、リヒトの帰りを待っているから」
ガンツもまた、静かに僕の手を握り、
「お主なら、きっと大成するじゃろう」
と、力強く頷いてくれた。
僕は、村の人々に見送られながら、馬車に乗り込む。
故郷の屋敷を追い出された時とは違い、僕の心に絶望はなかった。
新しい居場所で得た温かさと、僕の魔道具が誰かの役に立つ喜び。
それらを胸に、僕は戸惑いながらも前を向く。
王都へと向かう馬車が、僕の新たな物語を乗せて、ゆっくりと走り出した。
王宮魔導院が、僕の存在に注目しているという噂を耳にした時、僕の心には戸惑いが広がった。
(王宮魔導院?まさか、僕のような者を……)
アルバス家が仕える王家、そしてその直下の魔導院。
それは、僕が最も縁遠いと思っていた場所だった。
ーーーーーーーーーー
ある日の午後、村の広場に数人の衛兵に守られた一台の豪華な馬車がやってきた。
村人たちが集まり、驚きと警戒の眼差しを向ける中、ゆっくりと扉が開く。
降りてきたのは、王宮魔導院の紋章を掲げた品のいい老紳士だった。
「この村に、リヒト殿という魔道具師がおられると伺った。私は王宮魔導院長の、グラハムと申します」
出迎えたガンツが、僕を呼び寄せる。
グラハム院長は、威厳を保ちつつも、どこか穏やかな眼差しで僕を見つめた。
「貴殿が生み出す魔道具について、詳しくお伺いしたい」
僕は緊張した。
アルバス家を追放された身だ。
もし、僕の素性がバレたら、また追われることになるのだろうか。
だが、彼の眼は期待に満ちあふれ、キラキラしている。
「知りたい!」という眼差しに、僕は抗えなかった。
村を案内しながら、僕が開発した魔道具の数々を、グラハム院長に見せる。
簡易魔力ポンプ、土壌活性化の杭、ものを軽く運ぶ板…
その周りには、いつも村人の笑顔があった。
僕が魔力を使わず、周囲の魔力を吸収・変換する仕組みを説明すると、グラハム院長は驚嘆の表情を隠さない。
同時に、矢継ぎ早の質問を受けた。
最後に作業場に案内する。
僕のボロ屋のような納屋を見ても、蔑むような表情は見せなかった。
いや、満面の笑みを返してくれた。
最後に見せたのは「魔力喰らいの剣」。
自らの魔力を吸い取ってよいから、力を見せて欲しいと言ったグラハム院長。
僕は剣の力を彼の前で披露することも厭わなかった。
「……信じられん……。…我々、魔導院の常識を覆す技術だ!
魔力に依存せず、これほどの力を引き出すとは……」
彼は、僕の魔力の有無について一切問わず、純粋に僕の技術に目を向けてくれた。
それは、僕が生まれて初めて、真の魔道具師として認められた瞬間だったのかもしれない。
(アルバス家では、誰も僕の技術を理解しようとしなかったのに……)
「リヒト殿。貴殿の技術は、この王国にとって必要不可欠なものです。
我々魔導院に、貴殿の力をお貸しいただけないでしょうか?」
グラハム院長は、僕に深く頭を下げた。
「え…、あ…、ちょっと…」
王宮魔導院の長が、僕のような者に頭を下げている。その光景に、僕は軽くパニくった。
ドアや窓から村人たちも、固唾をのんで見守っている。
僕の心は揺れた。
王都へ行けば、アルバス家と再会する可能性が高い。
また、あの忌まわしい過去が、僕を苦しめるかもしれない。
だが、この技術を、もっと多くの人のために役立てられるかもしれない。
村の人々に笑顔を戻したように。
「すこし、考えさせてください…」
その夜更け、僕は村の広場で一人、星空を見上げていた。
かつて、納屋で星を眺めながら、僕の魔道具が誰かを照らす光になればいいと願ったことを思い出す。
今、その願いが、現実となるかもしれない場所に、僕は立っていた。
翌朝、僕はグラハム院長に、王都への同行を申し出る。
村人たちは、僕が村を離れると知ると、口々に寂しさ伝えてくれた。
それでも、王国のためになることを理解し、僕に温かいエールを送ってくれる。
出発の日、エレンが小さな包みを僕に渡してくれた。
「道中、気をつけてね。村はずっと、リヒトの帰りを待っているから」
ガンツもまた、静かに僕の手を握り、
「お主なら、きっと大成するじゃろう」
と、力強く頷いてくれた。
僕は、村の人々に見送られながら、馬車に乗り込む。
故郷の屋敷を追い出された時とは違い、僕の心に絶望はなかった。
新しい居場所で得た温かさと、僕の魔道具が誰かの役に立つ喜び。
それらを胸に、僕は戸惑いながらも前を向く。
王都へと向かう馬車が、僕の新たな物語を乗せて、ゆっくりと走り出した。
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